Title : 『The Birthday Concert』
Artist : Jaco Pastorius
「"最初に触れたジャズアルバムを自身の思い出とともに"とのことですが、正確な最初のジャズとの接触はMarcus Millerの『Live &More』 になります。
が、後述の流れで能動的な接触、という意味でこのアルバムを選ばせていただきました。
ジャズの定義にもよりますが、広義、そして自分にとっての、という観点の内容になります。
明らかにジャズ、という意味で初めて心から感動したものはVictor Feldmanの「The Arrival of Victor Feldman」のScott LaFaroのプレイでした。
話を本題に戻します。
1980年生まれの私がベースを始めたのは高校生の頃。当時はハードロックやメタルを愛聴していて、MR.BIGのBilly Sheehanに夢中でした。高校三年生の時に友人から借りたMarcus Millerの『Live &More』 が広義的JAZZとの遭遇でした。この時の私は...この音楽に全く興味が持てなかったのです!
貸主である友人は「マーカス・ミラーを聴いて興味が湧かないなら、ジャコ・パストリアスを聴いてみたらいいのでは?」と助言してくれました。1997年頃ですね。同じ時期にBilly Sheehanと John Myung (Dream Theater)が表紙の中古の「Player」誌を購入したところ、ジャコ・パストリアスが特集されていたのです。
おお、これが噂のジャコ・パストリアスか...と。この「Player」誌は95年のもので、当時の新譜だったのが 今回紹介する『バースデイ・コンサート(The Birthday Concert)/ジャコ・パストリアス』です。今思えば、この時の特集は81年に録音された未発表音源として95年に発売されたこの作品のプロモーションの一環だったのです。
現在の私はジャコ・パストリアスの熱狂的な愛好家です。ジャコ・パストリアスの活動の時系列を把握していない当時の私はなにも考えずにこの時新譜として扱われていたこのライブ盤を購入しました。
初めて聴く、ジャコ・パストリアスの音です。
緊張と共に再生しました。
...
何も感じなかったんです!!
ビリー・シーンの方がずっとかっこいいじゃないか。
と。
続けてファーストアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」を購入しました。
ジャコ・パストリアスにまつわるインタビューなどを読んでも、世界中のあらゆる世代のベーシストがこのファーストアルバムの一曲目に収録されている「Donna Lee」を聴いた感想を語っています。
「雷に打たれるような衝撃だった」
「アメイジング」
「エレクトリックベースから出ているトーンだとは信じられない」
「ベースを新しい次元に高めたのだ」
「世界中のベーシストがベースケースを閉じる音が聞こえたよ」
などなど...
CDをプレイヤーに置いて、その衝撃を味わおうと...再生しました。
...
世界中のベーシストの脳天に堕ちた衝撃はわたしには全く訪れませんでした。
ショックでした。
全く感動しませんでした。
関心すら...生まれませんでした。
何回聴いてもわからない。
...
その数年後、熱烈なジャコ・パストリアスのファンになる訳ですが、
初めての出会いは...
感受する力がないことへの失望が強烈に印象に残っています。」
織原良次
2021年12月7日(火)発売『VIRTUAL SILENCE』
ジャズボーカル西村知恵とフレットレスベース奏者織原良次によるデュオユニット、Virtual Silence。
ギタリスト井上銘とドラマー本田珠也を迎え、既存の文脈から解き放たれた表現がここに産まれた。ヴァーチャル・サイレンス。
'今'を描くドキュメント。