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大島輝之インタビュー ~『The Sounds Fur Klastar Point』

大谷能生、植村昌弘とのユニットsim(シム)や、gnom゜(ノーム)など複数の名義で多彩に活動する大島輝之が
4月6日に5年ぶりとなるソロアルバム『The Sounds Fur Klastar Point』をリリースします。

生楽器の演奏による録音素材を細分化して、さまざまな音楽スタイル、響き、サウンドスケープを表現した作品となっています。

ゲストに、相対性理論のやくしまるえつこ、大谷能生、吉田隆一らを迎えながらも、
彼自身の個性が浮かび上がる渾身の最新作です!



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大島輝之インタビュー

■ ソロ作品としては前作『into the black』(ewe)から5年が経っています。今回のアルバム制作に至ったきっかけや経緯を教えてください。

今回は、レーベルの方からお話しをいただいてから内容を考えてのリリースですので、お話しをいただくまではもちろん全く白紙の状態でした。前作into the blackからの関連性も特にありません。お話しをいただいた時、何か面白い事が出来ると思い、そこからコンセプトを立ててみました。

コンセプトのようなものが浮かんだのは、お話しを貰って1ヶ月ほどたってからで、最初から曲があってライブなどでも演奏してからレコーディングする普段やっているsimなどのユニットと違い、制作過程で曲のアイデアを具体化していくという事に決定しました。それと、各楽器をバラバラに録音して、人間では可能なようで不可能なグルーブを作るというのもその時に浮かびました。


■ アルバムタイトルについて教えてください。

クラスターポイントは、集合点のような意味で、「集合の中の一つの点」ではあるのですが、逆に、「その一つ一つの点が意思を持って存在しているものの集合」、という意味に捉えてみると、非常にコンセプトに近いのでこのタイトルにしました。


■ 音が刻まれ、曲全体が点描画のような印象を受けました。刻んだ音で別の風景を再構築する面白みは何ですか?

上記の答えに近いものになってしまいますが、一つの点の集合、一つ一つがうご
めいて、違う形にモーフィングしていくようなものを作りたくて、こういう手法になりました。ドラムはまず、キック、次にスネア、次にハイハット・・・とキット別で録って、ドラムセットという扱いではなく一つの音源が基本ループなんだけど実は徐々に違う表情を見せていき、そして気付いたら違うものに変容している、ということが非常に興味深かったです。
他の楽器、声なども同様で、同じようなことを試していくと、全部の楽器の一つ一つが非常にゆっくりと動く動物の様な感覚に陥るかと思います。
手法は、ポリリズムやカノンが多いのですが、そういった言葉ですまされる陳腐なイメージとは違うものが出来たかなと思います。


■ 相対性理論のやくしまるえつこさんなどゲストが参加しています。人選の理由について教えてください。

やくしまるさんは、以前simが相対性理論のイベントに呼んでもらってからのお付き合いですが、彼女の声は非常に顔がない、というか、無表情というか、そこが魅力的で今回のコンセプトにはぴったりだなと思って、参加していただきました。
ボーカリストって、自分の内面を出すタイプと、内面を出さず単にスタイリッシュに歌う2つのパターンがあると思うのですが、彼女の歌や声はそのどちらでもない、非常にクールな側面があって、僕の音楽にも実は上手く溶け込む事の出来る存在だと思いました。


■ ゲストミュージシャンは曲の全体像を知らないままに録音をしたそうですが、これはどうしてでしょうか?

録音をしつつ作曲しているようなものでしたので、単純に前もって演奏家の方々に資料をきちんと渡せなかったというのが理由の一つですが、次に、曲の全体像を知っていると、何故か無意識に演奏家の方が音に表情を加えるという事があるのですが、今回に関しては、それは逆にいらなかった、という事もあります。
点はあくまで点でいて欲しかったので、一つ一つの点に意思はあるのですが、表情という形ではいらないと思いました。


■ 多数の活動名義をお持ちですが、今後の活動について教えてください。

昨年はこのアルバム制作が主な活動だったのですが、今年から2つのグループを新たに作りました。
1つは「弧回」というグループで、僕が歌を歌っています。
もう一つは「plus3」というグループで、非常にストイックかつ暴力的なグループです。

今年はsimのニュー・アルバムも制作する予定です。
弧回も早くもレコーディングする予定です。

各ユニットそれぞれライブ活動もやっております。
一度ぜひおこしください。よろしくおねがいします。

[Interview:樋口亨]


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■タイトル:『The Sounds Fur Klastar Point』
■アーティスト:大島輝之
■発売日:2011年4月6日
■レーベル:AIRPLANE LABEL
■カタログ番号:AP1043
■価格:2,300円(税込)




大島輝之 プロフィール】

東京のインプロ・音響シーンなどで活動するギタリスト/コンポーザー。
初の正式音源作品はfeepの「The great curve」(2003/mao)。その後自らがリーダーを
務めるsimを結成し、2005年に「sim」(WEATHER/HEADZ)をリリース。2009年には大友良英とのコラボレーション作であるsim + otomo「Monte Alto Estate」(doubt music)を発売し話題を集める。ソロ作では「into the black」(EWE)、gnom°名義で「Enigma Variations」(mao)をリリースしている。

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