feed markRSS
JJazz.Net Blog Title

AIRPORT特別企画 feat bar buenos aires

近年音楽ファンの間で静かに注目を集めているのが、
カルロス・アギーレに代表されるアルゼンチン周辺の音楽。

クラシックやフォルクローレ、そしてECMの諸作品を連想させる、
特別な響きを内包したような洗練されたサウンドに魅せられた方も少なくありません。

その静かなムーブメントを牽引する存在となったのが、アルゼンチン至高の音楽家
カルロス・アギーレが描く音像風景と共鳴する世界の美しい音楽を集めた選曲会bar buenos aires

今回はそのbar buenos aires(吉本宏 山本勇樹 河野洋志)選曲/対談による特別企画。
「AIRPORT feat bar buenos aires」(放送期間:2012.1/18-2/15)と題しお送りします。

静かで美しい音楽を愛する想いが波紋のように広がり、
カルロス・アギーレ奇跡の来日、そしてCDリリースへ。
まさに音楽への情熱と音楽が持つチカラを感じずにはいられません。

繊細でいてメランコリック。
bar buenos airesによる、静かなる音風景をお楽しみ下さい。

[Text:岡村誠樹]


【JJazz.Net AIRPORT feat bar buenos aires 楽曲レビュー】


選曲:吉本 宏

M1:「Los Tres Deseos De Siempre / Carlos Aguirre Grupo」

Crema


Crema / Carlos Aguirre Grupo

リリース:2010年8月27日
Rip Curl Recordings / Inpartmaint inc.
製品番号:RCIP0144

カルロス・アギーレの描く音像風景と共鳴する選曲会bar buenos airesをはじめるきっかけとなった1曲で、彼のファースト・アルバム『Crema』のオープニングに収められています。雄大なパラナ河の流れや、草原を渡る風、草木にしたたる雫を音楽に映したような、カルロス・アギーレ・グルーポの目指す音の世界が美しくデリケイトに描かれています。遠いアルゼンチンの地にこんなにも繊細な音楽があったことに僕たちは感動し、この音楽をみんなで共有したいという想いでこの選曲会を始めました。実際にこの曲をかけていると、多くの人たちに「これは誰の曲ですか」とたずねられました。言葉を超えた、音楽のみが伝えることのできる感情をこの曲は持っていると思います。




M2:「Fix The Stars / Girl With The Gun」
Girl With The Gun


Girl With The Gun / Girl With The Gun

リリース:2010年7月22日
YACCA / Inpartment Inc.
製品番号:YAIP-6020

bar buenos airesは、単にアルゼンチンの音楽だけを紹介する選曲会ではありません。南イタリアのレッチェを中心に活動するマティルデとアンドレアによるユニットも、カルロス・アギーレのような繊細な音楽を奏でています。国もジャンルも異なる楽曲が、カルロス・アギーレの音楽からつながっていくことはとても自然なことでした。それは、僕たちがジャンルに関係なく自由に音楽を聴いているからだと思います。後で気づいたのですが、流れ星への願いについて歌ったカルロス・アギーレの曲から、偶然にも"星"でつながっていました。




M3:「Madrugada / Andres Beeuwsaert」
Dos Rios


Dos Rios / Andres Beeuwsaert

リリース:2010年6月19日
Distribuidora Sur
製品番号:NSB-5211

アンドレス・ベエウサエルトは、カルロス・アギーレと並びbar buenos airesの世界観を象徴するアルゼンチンのアーティストです。アカ・セカ・トリオのピアニストであり、2009年にリリースした初めてのソロ・アルバム『Dos Rios』は、未知なる心の内面を探求するような幽玄の美が宿っています。その透明感のあるピアノの音色や深遠なたたずまいは、ヨーロッパを代表する名門ジャズ・レーベルのECMの諸作にも通じる響きがあります。こうして、自然につながっていく音楽を聴いていると、目を閉じるだけで世界を旅しているような気分にさせてくれます。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
選曲:山本勇樹

M4.「Ma-Ma Fc / Ballake Sissoko & Vincent Segal 」
Chamber Music


Chamber Music / Ballake Sissoko 、 Vincent Segal

リリース:2011年3月13日
Plankton
製品番号:VIVO-257

世界中の美しい音楽をあつめるbar buenos airesには民族楽器の崇高な響きは欠かせません。アルゼンチンにもアレハンドロ・フラノフやサンティアゴ・ヴァスケスのように土着的でありながら洗練的な要素も兼ねそなえたアーティストが数多く存在しますが、彼らが奏でるシタールやムビラ、アルパといった倍音を含んだ音を聴いていると自然と心が穏やかに鎮まります。西アフリカのコラ奏者バラケ・シソコと、フランスのチェロ奏者ヴァンサン・セガールの共演盤を聴いていても同様な気持ちになります。それに反復的なリズムやエレガントな室内楽アレンジはエレクトロニカやアンビエントとも意外な相性のよさをみせてくれます。



M5. 「Portrait For Frazer / The Durutti Column」
Lc


Lc / The Durutti Column

リリース:2011年9月14日
VIVID
製品番号:VSCD-9713

フリー・ペーパー「素晴らしきメランコリーの世界」のbar buenos aires特集号で、吉本さんが「キケ・シネシの陽炎のような弦の響きからドゥルッティ・コラムへのつながりは、淡い水彩画のようにデリケイトな中間色が美しく混ざりあう...」と書いていたように、ヴィニー・ライリーとキケ・シネシは儚くも繊細な心情風景を描くギタリストとして互いにサウンドを超えた部分でも共鳴をしているかもしれません。同じようにパット・メセニー、ライアン・フランチェスコーニ、ブルース・コバーン、藤本一馬なども同じ感覚で語ることができる素晴らしいギタリストたちです。選曲会でも彼らの楽曲を自由につないでbbaらしい音の風景を描けるように心がけています。






M6.「San Solomon / Balmorhea」
Chill-Out Mellow Beats~Harmonie du soir


Chill-Out Mellow Beats~Harmonie du soir / V.A

リリース:2010年7月22日
Rip Curl Recordings / Inpartmaint inc.
製品番号:RCIP-0145

僕たちが目指すbar buenos airesの音空間を見事に表現している楽曲はいくつも存在しますが、中でもこれは奇跡の楽曲といってもいいかもしれません。ビル・エヴァンス「Children' Play」のイントロを彷彿させる海辺のノスタジックなフィールド・レコーディングから、クロノス・クァルテットのようなたおやかなストリングスの調べは何度聴いても心震えますし、以前、選曲会で流していたらその美しいサウンドに反応した女性たちがブースに集まってきたこともありました。ちなみに、このバルモレイのアルバム『Rivers Arms』の素敵なジャケット・デザインはbar buenos airesの第2回選曲会のフライヤーのモティーフにもなりました。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
選曲:河野洋志

M9:「LA GLORIA ERES TU / Jose Antonio Mendez」
フィーリンの誕生


フィーリンの誕生 / Jose Antonio Mendez

リリース:2007年9月16日
EL SUR RECORDS
製品番号:ELSURRECORDS001

bar buenos aires選曲会の定番曲でもあるキューバの伝説的シンガー、ホセ・アントニオ・メンデスによる50年代半ばの音源です。アフリカ伝来の黒人音楽やスペイン伝来の白人音楽の混血でもあるキューバ伝統音楽に、ナット・キング・コールに代表される北米のジャズ・ヴォーカルの要素が交わることによって1940年代後半に誕生した極上のモダン・キューバ歌謡音楽 "フィーリン"。その立役者であるホセ・アントニオ・メンデスの残したサウンドは、時間も空間も超えた"洗練"という言葉がぴったりな響きでした。蒸し暑いハバナの夜、青白い電球の下、港町のホテルを舞台にした大人の恋の駆け引きの行方は・・・・なんて古き良きハリウッド映画のような風景に一瞬にして染め上げるトロバドールの恋のうたは、禁欲的ともいえるアギーレさんの音楽にどこか漂う無垢でロマンティックな感覚にもつながっていると思えてなりません。




M10:「Alesund / Sun Kil Moon
Admiral Fell Promises


Admiral Fell Promises / Sun Kil Moon

リリース:2010年7月28日
Art Union Records
製品番号:ARTB-005

アギーレさんが来日された時、東京では車で移動する機会が多く個人的に自分が日常的に聞いている音源を車の中でかけていたのですが、その中でも「これは誰? 素晴らしいですね」という反応があったのがこの曲でした。所謂ポスト・ロック~スロウ・コアと呼ばれるジャンルで紹介される事が多いサンフランシスコのRed House Paintersというバンドの中心人物マーク・コズレックによるソロユニット。音と音の隙間、弦の響き、その一音に宿る静寂の美しさを描いたような弾き語りは、アギーレさんにはジョージ・ウィンストンなどの作品のリリースで知られる「Windam Hill Records」の音源に聞こえたようです。そういった意味でも"すべての美しい音楽が宇宙を超えて繋がっている"bar buenos airesの選曲ポリシーにも共鳴した曲と言えます。




M11:「Cancion / Ceci Elias & Pablo Gimenez」
美しき音楽のある風景~素晴らしきメランコリーのアルゼンチン


美しき音楽のある風景~素晴らしきメランコリーのアルゼンチン / V.A

リリース:2010年5月9日
Apres-midi Records
製品番号:RCIP-0140

ブエノスアイレス在住のセシ・エリアスによる浮遊感あふれる一曲。bar buenos airesの物語にはいくつもの偶然(必然?)や奇跡的な巡りあわせがあったのですが、彼女とのめぐり逢いもまさにそれを象徴するものでした。もともと吉本さんが何気なくマイ・スペースで発見し、その音楽にいたく感激したことからネット経由での交流がスタート。私がブエノスアイレスを訪れることが決まった時も、「だったら家に遊びに来れば?」という感じで気さくに家にも招いてくれた彼女。カルロス・アギーレの大ファンでもあったことから、一緒にアギーレさんのライヴにも行ったのでした。その会場で出会った方から「彼女はブエノスアイレスで最も有名なモダン・ダンサーのひとりなのよ。知らなかったの?」と言われてびっくり。ミュージシャンだとばかり思っていた彼女は実は著名な舞踏家だったのです。彼女の音楽が想起させるシネマティックな感覚は、専業音楽家ではない彼女の自由で軽やかな感性から生まれていたのかもしれません

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


【吉本 宏】
SUBURBIA〜Café Après-midiプロダクツでの執筆や、usen for Café Après-midiの選曲、MUZAKや澤野工房、セレスト、Spice of Life、disques dessineeのCDのライナー・ノーツなどを手がける音楽文筆家。2010年より山本勇樹氏、河野洋志氏と共にbar buenos airesを主宰。2007年には、アントニオ・カルロス・ジョビンの生誕80周年を機にリオデジャネイロを訪れ、映画「This is BOSSA NOVA」のパンフレットのためのカルロス・リラへのインタヴューなどを行う。2009年には、イタリアの才能あるシンガー・ソングライター、ジョルジオ・トゥマの国内盤、2010年には、カルロス・アギーレの初めての国内盤のライナー・ノーツを手がけ、彼らの瑞々しい音楽の魅力を紹介した。


【山本勇樹】
HMV渋谷店のワールド/ジャズ・バイヤーを歴任後、現在はHMV本社でワールド/ジャズを担当。『From Melancholy Garden』、『The Sunshine』、『Sunny Side Lovers』といった良質な音楽をあつめたCDの選曲を手がけ、2010年より音楽文筆家、吉本宏氏、河野洋志氏と共にbar buenos airesを主宰。HMVが季刊で制作するフリー・ペーパー「Quiet Corner」の発行人でもある


【河野洋志】
心のアーティストはアレックス・チルトン、ポール・ウェスターバーグ、ジョナサン・リッチマン。2010年"静かなる音楽ムーヴメント"の発信源でもある。HMV渋谷店伝説のコーナー「山ブラ+素晴らしきメランコリーの世界」をスタートさせ、カルロス・アギーレに会うためにアルゼンチンへと旅立ち、国内リリースと初来日を実現させた立役者。


「Bar Buenos Aires -Dedicated To Carlos Aguirre / V.A」
Bar Buenos Aires -Dedicated To Carlos Aguirre


Bar Buenos Aires -Dedicated To Carlos Aguirre / V.A

リリース:2011年11月10日
Rip Curl Recordings / Inpartmaint inc.
製品番号:RCIP-0165

















bar buenos aires OFFICIAL SITE


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

2月中旬には待望の、カルロス・アギーレ最新作『オリジャニア』が発売予定とのこと!
どのような音世界が繰り広げられているのか非常に楽しみです。

また、bar buenos aires選曲会は隔月の第2水曜日、SARAVAH東京で開催中。
静かなる音楽が誘う、幻想的な音空間を体感してみては?

bar buenos aires vol.17

<日時>
2012/3/14(水)
20:00~23:00

<場所>
サラヴァ東京
〒150-0046 東京都渋谷区松濤1丁目29-1 渋谷クロスロードビル B1

<料金>
レギュラー・チャージ:1000円

<選曲>
選曲:吉本宏、山本勇樹、河野洋志

アーカイブ