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JJazz.Net Blog Title

2020年5月アーカイブ

My First Jazz Vol.26-須田晶子:My First Jazz

Title : 『Together Again』
Artist : Tony Bennett & Bill Evans

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「印象に残る作品がありすぎて一枚に絞るのは難しいのですねっ!沢山の女性ボーカリストのアルバムを聴いていた時期の後、チェット・ベイカーに出会って、男性のボーカリストに魅力を感じていた時期に出会った作品です。

Jazzの歴史から見たら、これは最近の作品ではあるかもしれませんが、この2人のアルバムはもしかしたらDuoの原点なんじゃないかなと感じます。こんなにもお互いが無理なく絶妙なバランスで交わっている、特にバラードの曲などでは正確なテンポが無いにもかかわらず(Rubato)、同じ足並みで一つの絵や物語を描いてゆくような2人の音楽表現は、言葉にならないほどです。それらの音は彼らの曲に対しての壮大な愛が、美しさとともに伝わってきます。

『The Tony Bennet Bill Evans』というアルバムもあり、2人の素晴らしさを引き立たせ合う音がたっぷり堪能できると思います。」

須田晶子

須田晶子 Official


【Bill Evans & Tony Bennett - Together Again】





My First Jazz

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Title : 『Together Again』
Artist : Tony Bennett & Bill Evans
LABEL : DRG Records ‎
発売年 : 1977年



Piano - Bill Evans
Vocals - Tony Bennett
Recorded at Columbia Studios, San Francisco, California, September 27-30, 1976.


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【SONG LIST】
01. The Bad And The Beautiful
02. Lucky To Be Me
03. Make Someone Happy
04. You're Nearer
05. A Child Is Born
06. The Two Lonely People
07. You Don't Know What Love Is
08. Maybe September
09. Lonely Girl
10. You Must Believe In Spring

曽根麻央 Monthly Disc Review2020.5:Monthly Disc Review

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Title : 『Color Of Soil』
Artist : タイガー大越

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。自粛生活も二ヶ月目に突入し、生活スタイルもガラッと変わったでしょう。大変お疲れ様です。

僕はこの生活によって自分の今までの生活に不必要な部分を見直したり、また新たな価値観も得たりして、しかし、その中でも変わらずに素晴らしいと信じ、自分に多大な影響を与え続けている思想や音楽もあることに気づきます。その一つに、考え方や人生の歩み方までも大尊敬する僕の先生・Tiger Okoshiの「Color Of Soil」(1998 JVC)があります。


このアルバムと僕の出会いは、タイガー先生と僕の出会いに遡ります。2008年の3月、まだ高校1年生だった僕は、当時のクラシック・トランペットの先生、杉木峯夫先生の勧めで、来日していたTiger Okoshiの日本トランペット協会主催のマスタークラスを受講することになりました。

タイガー先生のマスタークラスでは今まで体験したことがないユニークなアプローチで、目から鱗でした。すぐさまファンになったのを覚えています。その会場でこのCDを買い、何回もリピートして聴きました。そして、自分のトランペット・プレイやアレンジ、アルバムの構成などで最も大きな影響を与えた一枚となりました。
しかも、トランペットのテクニックは圧倒的で、金管奏者は必聴のアルバムだと確信しています。



Tiger Okoshi - trumpet & flugelhorn
Kenny Barron - piano
Hank Roberts - cello
Jay Anderson - bass
Mino Cinelu - percussion

ドラムがおらず、Mino Cineluのパーカッションが全体のカラーを司っているのが特徴のグループです。




1. Color Of Soil

 Kenny Barronを除いた4人のコードレスの演奏。28小節の3拍子のスウィングの曲、とてもリリカルなメロディーが特徴です。Tiger Okoshiの特徴的な輝かしい音色と立体的な歌い方、圧倒的なトランペット・テクニックで、あっという間に彼の世界観に引き込まれます。Tiger Okoshiの特徴にテンポを縦横無尽に行ったり来たりする吹き方をするのですが、この曲ではまさにそんなソロを聞くことができます。


2. Wings, We All Have
ここでKenny Barronが登場します。この曲でもTiger Okoshiのトランペット・アプローチは他の奏者とは一線を置くものとなっています。Tiger OkoshiとチェリストHank Robertsとのトレードのインプロを聞くことができる上、このアップテンポの上で聴けるKenny BarronとMino Cineluのデュオも緊張感があり最高に盛り上がります。



3. Kagome, Kagome
Tiger Okoshiが今もレパートリーとして演奏する曲の一つで、僕自身、ワシントンDCのブルースアレーで共演した時や、去年7月の中国ツアーで一緒に演奏する機会を得た曲です。日本の民謡「かごめかごめ」をアレンジしたもので、日本のスケールとスパニッシュな雰囲気が入り混じる独特なカラーをアルバムに添えています。


 恐らくここまでの3曲でTiger Okoshiがトランペットを使って空気に色を塗ることの出来る、類を見ないアーティストだということがお分かりいただけると思います。バークリー音楽大学でのタイガー先生のレッスンやアンサンブルでは、彼の練習方法や音楽の組み立て方などを間近に見ることができて、本当に勉強になりました。バンドに参加させていただいた時にも、リハーサル後には何回も何回もスコアの書き直しが送られてきて、練り上げていくスタイルは、見て勉強させていただきました。


4. Tone Of Your Voice
 この曲は僕の記憶が正しければ、Tiger Okoshiが阪神淡路大震災を経験したために書いた曲だとリハーサルの時に聞いたことがあります。アルバムではKenny Barronとのデュオ演奏です。


5. Grandma's Eyes
 このアルバムではDominant 7 (b9)のコードが多用された曲やアレンジが見受けられるが、これもそんな一曲です。このコードは Tiger Okoshiのサウンドには欠かせないコードの一つで、このアルバム全体のカラーの一つでもあります。


6. Tales Of 5 Peasants
 ベーシストJay Andersonのメロディーから始まるラテン調の曲。この曲ではHank Robertsはお休み、Tiger Okoshiのワンホーンとなっています。ドラムがいないこの作品では、アルバムを通してMino Cineluのパーカッションが色彩を統一していますが、ここではその彼のソロも聞くことができます。


7. Bootsman's Little House
 数あるタイガー先生の曲の中でも僕の大好きな曲の一つです。去年の中国ツアーではオープニング曲として演奏しました。今のライブで演奏されるバージョンではアレンジが拡張され、長尺のコンポジションへと変貌を遂げましたが、このアルバムのバージョンはとてもシンプル。しかも歌いやすいメロディーが頭の中でなり続けると思います。


8. World To Me
 Tiger Okoshiの美しいトランペットの音が活きるバラード調の曲。Tiger Okoshiはシンプルにメロディーを吹き、ソロで他のメンバーをフューチャーしています。


9. A Night In Tunisia
 アルバム唯一のジャズ・スタンダード曲で、1曲目同様にKenny Barron以外のメンバーで、コードレスで演奏されています。


 アルバムを通して、トランペットの音色が活き活きとしていて、トランペットという楽器の良さを聞くことができます。トランペット奏者の多くが、ヘビー・ウェイトのダークなトランペットを求め、ジャズではそちらが主流になっていく中で、明るい音色がいかにトランペットらしい音楽を奏でることができるか証明しています。

演奏されるフレーズ一つ一つが立体的で、他に類を見ません。まるで筆の先に絵の具をつけて、根元からドバッと描いた様な勢いのある音や、ブラシの先で描いた細い線、薄めた絵の具で塗られた淡い色のように、様々なトランペットの表現を聞くことができる一枚です。Tiger Okoshiが トランペットで空間というキャンバスに描く世界観をぜひ一度体感してください!

最後になりますが今月のJJazz.Netの「PICK UP」で僕の新譜も紹介されているので、ぜひ聞いてください。
「PICK UP - MAY」
【放送期間2020.5/6-2020.6/3】

ではまた来月!

文:曽根麻央 Mao Soné


Recommend Disc

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Title : 『Color Of Soil』
Artist : タイガー大越
LABEL : JVC
NO : JVC-2071-2
発売年 : 1998年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】
01.Color Of Soil
02.Wings, We All Have
03.Kagome, Kagome
04.Tone Of Your Voice
05.Grandma's Eyes
06.Tales Of 5 Peasants
07.Bootsman's Little House
08.World To Me
09.A Night In Tunisia




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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