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bar bossa vol.12

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vol.12 - お客様:田仲昌之さん「21世紀以降の日本の音楽」


いらっしゃいませ。

月の後半はゲストを迎えて、「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という趣旨の選曲をしてもらいます。今回は音楽プロデューサーとして活躍している田仲昌之さんに登場してもらいます。

林(以下H)「いらっしゃいませ。あ、可愛い奥様もご一緒ですね。さっそくですがお飲み物はどうしましょうか?」

田仲(以下T)「また林くん、最初から何か言いそうな雰囲気ですね。僕が今まで一緒に来ていた女の子の話とかやめて下さいよ。」

H「田仲さんは開店当初から来てるから人生色々ですよね。あの、今の奥様が一番可愛いです。」

T「またビミョウなことを。ええと、カイピリーニャお願いします。」

H「かしこまりました。ええとでは早速なのですが、田仲さんの音楽体験なんかを。」

T「はい。6才上の従姉が隣の家に住んでいて彼女が聴いていた音楽にとても影響を受けました。自分が小学校高学年頃に彼女はユーミンとかサザンとかナイアガラなんかを良く聴いていて、自分も彼女の持ってるそれらのLPを一緒に聴かせてもらっていました。中学生になるとMTVの影響などで洋楽を聴くようになりました。当時好きだったのはホール&オーツとかワムとかデュラン・デュランとか(笑)。音楽好きの友達と盛り上がっていたのは輸入盤の12インチレコードを集めることでした。月イチくらいで小遣いを握りしめつつシングルとは違うリミックスやロングバージョンの音源を横浜元町にあったタワーレコードまで漁りに行ってました。何人かで分担してレコードを買ってそのレコードを廻し合ってカセットテープにダビングしオリジナルテープを作ってましたね。高校に入ったころ丁度日本のインディーズバンドが盛り上がり始めたころで地元近くのライヴハウスやインディーズを扱ってるレコード店に頻繁に通ってました。まさにバンドブーム夜明け前といった感じ。有名・無名問わずいろいろなジャンルのアーティストやレーベルが混在していて海外にも負けないほどとてもスリリングで面白いシーンでした。地元の友達とバンドを組んだのもその頃ですね。当時はボウイとかブルーハーツとかラフィンノーズなどのコピーバンドを演ってましたね(笑)。地元のホールを借りて楽器などを調達してチケットやチラシを作って配って、自分達でライヴの企画と制作と演奏と全てをやっていました。これは考えるといまの自分の仕事(イベント制作)の原点みたいなことだったと思います。高校の後半~20代前半のころは渋谷系とUKインディーズでしたね(笑)。割とどちらともアーティストというよりはレーベル基準で聴いてましたね。日本のレーベルだとクルーエルとかベリッシマとかエスカレーターとか。海外レーベルだとラフ・トレードとかクリエーションとかエルとか。JAZZを意識して聴き始めたのもこの辺りからですね。最初はトーキング・ラウドとかアシッド・ジャズから。踊る為のJAZZってコンセプトがとってもクールでカッコ良かった(笑)。ブルーノートやインパルスやプレスティッジの再発盤なんかも聴いていました。ちょうどハウスも入って来てクラブにも遊びに行き始めたころでした。このころの音楽シーンは、日本も海外も今よりもボーダレスだった気がしますね。全世界的に同じムーブメントの渦の中に居たような。クラブで掛かる音楽をキッカケとしてロックやジャズだけではなくボサノバやレゲエ・スカやエレクロ二カといった色々なジャンルの音楽にも触れるようになりました。」

H「なるほど。田仲さん、僕と同じ学年なので全く同じ体験をしてますね。ちょっと恥ずかしくて『(笑)』が多いのもすごくわかります。あの、たぶん何度も田仲さんは「音楽業界だけを仕事にしようかな。」と思ったことがあると思うのですが、やらなかった理由とかは?」

T「いまでも音楽だけでやっていけるならやりたですけどね(笑)。まあ冗談はともかく。アーティストは別ですが、自分の廻りは不思議と音楽だけにガッツリ関わってるっヒトって案外少なかったんですよ。それに違う目線や遊びの感覚を持っているヒトのほうがなんだか面白いことをやってるなあって感じもしていたんで、別に音楽業界のど真ん中に身を置いてなくてもいいのかもと(笑)。有難いことに違う仕事をやりながらも音楽の現場の端っこの方にずっと居させてもらってるんで今はその立ち位置でいいのかもなんて思っています。」

H「田仲さんの具体的な活動内容を教えてもらえますか?」

T「渋谷FMでは幼馴染の音楽ライターと一緒に約10年近くある番組の制作をやっていました。昔NHK-FMのサウンドストリートで佐野元春がDJをやっていた『元春レディオショー』のような番組を自分達で再現させたいみたいというのがコンセプトでした。丁度番組を始めたころに、今は吉祥寺でカフェをやっているmoiの岩間さんと出合いました。岩間さんはまだmoiを始める前でアメリカ現代文学を紹介する『アメリカンブックジャム』という雑誌の編集に関わっている時でした。ジャック・ケルアックをはじめとする『ビート・ジェネレーション』に互い興味を持っていたことをきっかけにその時代の東京のビートを残せるようなポエトリー・リーディングのCDを制作してみようということで、共同で『Travelin' Word』というCDを制作しリリースしました。現在はRONDADEというインディーズレーベルのスタッフをやっています。実は自分でも自分達のレーベルを的確に説明するのがとても難しくて。レーベルとしてはCDのリリース以外にもZINEの編集・出版やイベントのプランニング&制作など多岐に渡り活動させてもらっています。ちなみにこのblogのvol.6で松原繁久さんがご紹介してくださった the young group『14』はRONDADEからリリースしました。」

H「CDがなくなる話とか、世界の音楽コンテンツ状況はどうなっていくと思いますか?」

T「常に最新のコンテンツに更新されていくことは間違いないと思いますが、レコードやCDのような音楽を聴く為の環境にちゃんとフィットするコンテンツが完成しない限りは(完成しないかもしれませんが・・・)いまと同じような状況がずっと続くのではと思います。」

H「では今の日本の音楽状況についてはどう思いますか?」

T「日本の音楽業界に関して言えばここ15年くらい『いま売れる音楽』しか作ってこなかった。売り方も含めてこれで本当にいいのか?と言ったことは常に感じますね。実際に音楽を聴く若いリスナーをちゃんと育てられて無いのでは?という思いもある。シンプルに考えれば、例えば100年後に聴かれる音楽とまで行かなくても20年後も聴かれるような音楽であるか?ってことを意識してモノを創っていくことが重要なのかなと。まあこんなことは当たり前と言えば当たり前のことですが・・・」

H「なるほど。それでは選曲に移りましょうか。テーマは『21世紀以降の日本の音楽』で選んでもらっていますが。一曲目は?」

haruka nakamura - 音楽のある風景



T「この曲はJ-Waveの朝のある番組の中で、平日のほぼ同じ時間にコーナーのブリッジとしてオンエアーされていて、この曲がラジオから流れてくると不思議と朝から昼へと空気が切り替わる感覚になります。生活の中に音楽が当たり前に存在することがこんなにも幸せなことなんだと改めて気付かせてくれた1曲。」

H「ハルカナカムラさんのこの曲、素敵です。うちにも時々来店してくれています。さて次は?」


坂本 慎太郎 - まともがわからない



T「元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎の2枚目のソロシングル曲から。サウンドは80'sのAOR的なテイストで有りながらも、ACID感たっぷりの歌詞のひねくれ具合がとてもいいなあと。この曲を初めて聴いたときこれが現代のCITY POPなんだと感じました。」

H「ソロになってからすごく爽やかで良いですよね。僕も好きです。さて次は?」


Lakeと児玉奈央 - おはよう~india reprise



T「長久保寛之(gt) 伊賀航(b) 北山ゆう子(dr)といった腕利きセッションミュージシャンが中心となって結成されたLakeが、児玉奈央をヴォーカルにフィーチャーした楽曲です。楽器の音の鳴りや楽曲の隙間感にゾクゾクっと来る瞬間があって、自分にとっての好きなJAZZの定義ってそこなのかもって最近思いました。この曲はある意味JAZZでは無いのかもしれませんが、聴くたびにゾクゾクっと来てしまうので自分にとってはJAZZです(笑)。」

H「実は今回の田仲さんの選曲が一番知らないアーティストばかりだろうなあ。楽しみだなあと思っていたのですが、この人たちカッコイイですねえ。確かにJAZZです。次の曲はどうでしょうか?」


toe - Path



T「最近は日本だけでなくアジアや欧州でも絶大的な人気を誇るまでになったポストロックバンド。PVを観てもらえれば判る通りこのバンドの面白さはライヴにあります。フィジカルなバンドと言うのかな? まるでスポーツを観戦してる時に感じるような緊張感と高揚感がこのバンドのライヴにはあります。」

H「さすが詳しいですねえ。このバンドもカッコイイです。すいません、僕、不勉強で。観客が男性ばかりなのがすごく納得ですね。さて次は?」


dry river string - silent truth



T「up and comingというメロコアバンドのフロントマンだった干川弦が京都で結成したバンドがこのdry river stringです。アコースティックサウンドの中に背筋がピーンと伸びている姿勢の良さを持っているバンドと言った印象でしょうか?学生時代にUKインディーズのレコードをいろいろと探し廻って聴いてた頃、こんな空気感のバンドがとても好きだったことを思い出したりしました。」

H「おおお。これもカッコイイですね。音が日本人には聞こえないですね。これは僕もど真ん中です。さてさて次は?」


WUJA BIN BIN - SAFE DRIVING



T「WUJA BIN BINは13名の大所帯プログレッシブ吹奏楽バンド。一聴するとイージーリスニングなんですが、よーく聴きこむと多ジャンルの音楽のテイストが見え隠れしています。フランクザッパやジャコパスのビックバンドがモチーフだったりもするみたいですが、このミックスチャー感はまさに今の日本のサウンドそのものだったりするんだろなと。いま日本のバンドの中でいちばんライヴ観たいと思ってるバンドです。」

H「こんなバンドあるんですね。いやこの人たち、すごい世界ですね。確かにこの感じはいまの日本を感じます。さて次はどうでしょうか?」


LITTLE CREATURES - MOSQUITO CURTAIN



T「まあこの3人に関しては説明は不要かもしれませんが・・・マイペースな活動ではありますが今もなお進化をし続けているバンドです。個人的にはフリッパーズギターと彼等が居なかったら今の日本の音楽シーンはとてもツマラナイものになっていたのでは?と思っています。実は3人の演奏を初めて観たときにいつか彼等と一緒に何かがしたいと思ったことが音楽に関わる仕事を始めたきっかけでした。」

H「僕もこの3人を初めてイカ天で観たときはびっくりしました。その後、自分のお店に常連で来てくれるなんて想像も出来ませんでした。さて次は?」


acoustic dub messengers - kaeroukana



T「そのリトル・クリーチャーズが中心となって制作された『Sign Off from Amadeus』というアルバムからの楽曲。実はリリースが96年なのですが今回どうしても紹介したくてテーマとは外れてしまいましたが入れました。日本人の中にあるサウダージってどんな感じなんだろう?って考えたことがあった時、一番最初に思いついたのがこの曲でした。この曲は林くんにお店で何度かリクエストして掛けてもらったことがありますね?」

H「双子ちゃんが可愛いんですよね。昔はよくお店に来てくれてて、今でもたまに青山ですれ違ったりします。さて次は?」


青葉 市子 - 奇跡はいつでも



T「最近彼女のライヴを観ることがとても多いのですが、音楽のチカラって計り知れないなあっていつも思うんですよね。彼女の音楽を聴いているととても解放感を感じると同時に、身ぐるみ全て剥がされてしまったような恥ずかしさと後ろめたさも感じてしまう。自分にとっては彼女の音楽聴いたりライヴを観たりするのは実はちょっと勇気が必要なんです。」

H「田仲さんはそうとう昔からチェックしてましたよね。最近すごい人気ですよね。確かにすごく心が痛くなりますね。さてさて最後の曲ですが。」


GABBY & LOPEZ - Reflection



T「Natural Calamityの森俊二とTICAの石井マサユキによるギターデュオ。2人のギタリストが奏でるこの浮遊感がたまらなく好きです。脳内トリップ出来るチルアウトミュージック。思わずビーチに行きたくなります。」

H「田仲さん、好きそうですねえ。わかりますよ。この感じ。可愛い奥様と是非ビーチにお出かけ下さい。」




田仲さん、お忙しいところどうもありがとうございました。いつもお互い音楽の話はしなくてバカ話ばかりなので、うーん、さすがに田仲さん色々とチェックしてるんだなあと思いました。

田仲さんは @idyllic1970 というアカウントでツイートしています。RONDADEのHPはこちらです。
http://www.rondade.jp/

ご自分のレーベルを始めたいなあなんてお話も最近聞きました。すごく楽しみですね。

さて、もうあっという間に太陽の光が強くなってきて夏が近づいて来ましたね。夏休みの予定をそろそろ考えていることではないでしょうか。

それではまたこちらのお店で待っております。


bar bossa 林 伸次


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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