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bar bossa vol.22

bar bossa


vol.22 - お客様:武藤サツキさん(スモール・サークル・オブ・フレンズ)
「食欲や元気無いとき聴いたら、この音おかずにご飯三杯いけます(サツキ調べ)」



いらっしゃいませ。bar bossaへようこそ。

月の後半はお客様をお迎えして「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という趣旨で選曲していただいてますが、今回は初めての女性で、「私がコンピCDを作るんだったらこうするかな」です。
ゲストはなんと、スモール・サークル・オブ・フレンズの武藤サツキさんです!(拍手)


林(以下H)「いらっしゃいませ。早速ですが、お飲み物は?」

サツキ(以下S)「ジンジャーエールをお願いします。」

H「お生まれは佐賀なんですよね。」

S「はいそうです。とても田舎です。今はありますけれど、以前は飛行場が無かったからきっと田舎の概念がついちゃったのでしょうか?もちろん、誇れり佐賀です!」

H「小さい頃のお話を教えてください。」

S「とにかく、父と母に影響されていた子供時代です。父はBarを経営しながらカメラマンをやっていて、お店は機材だらけでした。自宅には、カメラ、映画、音楽、車の雑誌が堆く積まれ、Barにジュークボックスがあったので裸の7インチが大量にあり、それらを毎日聴き、その雑誌を見(内容はちっとも理解していないのですが)、外を走る車の車種を当て、窓の外ばかり見ていました。夜はひとりですから、宵っぱりで深夜の映画ばかり観る。」

H「お父さんがBar経営でカメラマン・・・ なるほどそれはすごい家庭ですね。」

S「父から買ってもらうのは、ギターにアンプ、父の手作りバックロードホーンのスピーカー。人形なんて、ひな人形でさえ三段で終了しましたし、女の子なモノを買ってもらった記憶がちっともありません。」

H「結構自分の趣味を押し付けちゃうお父さんだったんですね。お母さんはどんな方なんでしょうか?」

S「母は藤間流の師匠で、家には着物が沢山あり、お稽古の日は着物を、普段は洋服を着ている母にとても憧れていました。でも、踊りは続かずにピアノを習っていました。お習字や絵など片っ端から一人で行って、『今日からココに行く』と大体事後報告。とんでもないですね、今思うと。ご飯も一人で作り、食べる。サバイバル能力には長けているでしょうね? だからたまの母料理は、どんなものでも最高のごちそうです。鍵っ子で、一人っ子。私の土台はきっとその頃作られたんだと思います。今も全く興味の方向は変わりませんから。」

H「一人でなんでも行動できる子供だったんですね。」

S「でも、今の自分を見ると、どう考えたって父母の二人から出来上がっている事が容易にわかります。それは見事なくらいです。」

H「音楽体験も教えてください。」

S「7インチのアナログは大半がイージーリスニングやjazz。
jazzと言ってもフュージョンやjazzからBossanovaへ移行しつつある時代。
jazzも12インチなんかがあって、昔のCTIシリーズ等がカット盤などであった頃。」

H「サツキさん、もう歌詞になっています! 最初に買ったCDは?」

S「最初に買った音は、CDではなくアナログ盤です。但し、何を買ったかちっとも覚えていません。近くの音楽ショップに毎日試聴に行っていました。相当迷惑だったと思います。子供だから、ヘッドフォンをしているので大きな声で歌っていることさえわからない。でも、そういう事はとても覚えています。」

H「結構、目立ってた女の子ですね。(笑)」

S「そこで知り合ったお姉さんがjazzのバンドをしていてライブというものに初めて行ったのもその時期です。小学生だったと思います。"Take 5"を延々、何十分もやっていたのを覚えています。(もちろん"Take 5"だったという事は後に分かるんですが)けっこう、子供ながらにショッキングでした。
だってあのフレーズが何度も出て来る。
ツチャツチャ、ツーチャーっていうアレ。
別にかっこいい訳でも、選んだ訳でもない音楽体験。
環境も、それは面白い頃でしたね・・・。
(そこまで話すと、コレ明日になってしまいますね)」

H「サツキさん、会話が歌になってしまっています。」

S「今やっている事もそうなんですが、知らない間に傍にあって、そうなってこうなった・・・・・・。早くも、〆っぽい話しですが、未だにそう思います。と林さんにお話ししていて思いますが、けっこうな不良ですね。まだこれ小学校5、6年くらいの話ですから。よく家の親が出してくれてたな? そこらへんは覚えていない? 都合がいいものです。」

H「福岡の話もお願いします。」

S「福岡には、洋服を買いに行っていました。高校生の時代そして、働くようになってからも休日はほぼ熊本と福岡にいた気がします。よく行っていた『Harrys』というインポートショップがレディスのお店を出店する際に、バイヤーとして誘われたのが福岡に行くきっかけです。バイヤーをしていた頃が、文化的にも鍛えられていた時期だったんじゃないでしょうか? 福岡時代は正に子供の頃にためてきたコトを、確かめていたように感じます。今になってそう解釈できるんですが、その頃はもう無茶苦茶です。時間が無い。脳が興奮している様子が、今思い出しても蘇るほどです。たぶんその時代が、音楽も、ファッションも、映画も本も絵や写真も。そして物廻り全て・・・。モノ、コトに一番お金を使っていた時期だと思います。」

H「楽しそうですね。」

S「その頃に、今の相方アズマリキさんにも出会いました。そして、今ココにいる事になるきっかけになった、United Future Organizationにも。アズマさんは面白かったですね。飄々とする様はまわりとは違って見えたし、興味深い人でした。彼と出会った事で、音楽へとさらに加速する事になります。」

H「福岡と東京の違いとかは?」

S「福岡東京は思えば、親戚が東京に数件あってよく行き来していましたし、今では住んでいるので、きっと縁があるんですね。福岡は、東京に対してきっとジェラシーがあると思いますから、独自の文化を育てようという機運がその頃からあったと思います。と言っても文化的な構図から見ると、断然熊本の方が魅力的でした・・・。熊本は『福岡なんて相手にしてません』風情でしたし。思えばその頃の熊本は狂っていましたね。ソレが面白くて仕方が無かった。でも、音楽は福岡の方がよかった。何故かは、今でもよくわからないけどDJをしたり音楽イベントをする上で、居心地が良かった。福岡の人たちは、もちろん都会のプライドもあるのでしょうが、それよりも知らない事への興味の方が上回っていた。何かをする度に、コミュニティが広がる感じでしょうか。その頃の福岡の人力(ヒトリョク)は凄かったと思います。」

H「熊本という存在も大きいんですね。東京進出のきっかけは?」

S「Small Circle of Friendsでデビューしても5年ほどは福岡を拠点に活動していましたが、移籍を機に東京へ来ました。それも、'来なきゃCD出さないよ'な感じだったので。本当に先にお話ししたように、結果として選んでいるんでしょうが、知らぬ間にそうなっちゃった・・・という。(なんだか、だんだん自分のついて反芻作業をしてるみたいな気持ちになってきました。)」

H「そして東京時代・・・」

S「Small Circle of Friendsは、今年で20年。『スモサの20』というタイトルで2013年を過ごしていますが、東京に来て15年になります。いつも自分達の事を『低空飛行で、日々を紡ぐ』みたいな風に表現していますが、正に知らぬ間に20年経っていたという感じでしょうか。アレです。ラッキー。そう、『ついて』いたんだと思います。2012年10月10日に10枚目のアルバムを発売した時は、なんだか面白いなと思いました。毎日をStudio75で過ごし、音や服を作る。『自分達の事は自分達でする』と思いインディを選び、レーベルを作り、さらに前に進む。メジャーだった頃に見えなかった事が沢山見えて見晴らしも良くなった分、動く能力や所謂リテラシーみたいなものが必要になる。インターネットやPCはほぼ触り倒して覚えているので、アレンジ能力はとても乏しいけれど、早くから認知して利用してきました。それは、私達とって大きなメリットだったと思います。と言っても、音楽にしてももちろんファッションにしても、様々なデバイスから発信するコトは重要だけど、バジェットのない私達は、意外に信用していない。そうゆう柔軟な塩梅は、いつの時代も必要だなと常に思っています。そんな事を思いつつの東京15年。」

H「これからの話をお願いします。」

S「その時代、時代に上手く付き合うのではなく、どれだけ俯瞰で見えているか? 手元だけではなくグルリと見渡せる場所に今いるのか? という事はいつも大事に思っています。そういう意味で、世界を見渡せるインターネットに対しては、レコード→ラジオ→テレビ→インターネットと変革して来た時代の真っただ中産業としてではなく、解釈を見誤らないようにしながら、いつも消費者として関わって行きたいとも考えています。」

H「なるほどです。」

S「『音楽を買う』から『音楽を無料』というのは、いかにも今の時代みたいだけれど、すでにラジオが登場した頃にそうだったんじゃないかなとも思います。これから先、もっときっと興味深い事がまだあるんじゃないかと、ある意味、その登場の方が待ちどおしい。」

H「サツキさん自身のこれからは?」

S「小学何年生だったか? 詩を書く授業のとき『歌を歌う人になりたい』と書いた事を覚えています。先生から読まされたので、はっきりと記憶に残っている。『あら?歌ってる』とある日思い出したんですね。それってけっこう吃驚なんですよね。しかも、けっこうな青春時代を送ってさらにその後のお話なんで・・・。人生って面白いとは聞いていたけれど、ホントに面白いなって。だから、夢みたいなコトは無いと言えば無いんです。というか、次は何がくるんだろう?の方が先ですから。何が来ても、何をやっていても不思議じゃない。今歌を生業にして、しかも10年前辞めたはずの洋服にまさか再び関わっている。いつからか、『大体そうなるよね』な予想は当たらないという事をうっすらと思い始めました。それから余計にそう感じるようになりました。と、言っている自分を数年後振り返ると「こんな事言ってるよ」と、笑うんでしょうが。」

H「なんかすごいお話を聞けちゃいましたが、選曲に行きましょうか。まず選曲のテーマは?」

S「はい。『食欲や元気無いとき聴いたら、この音おかずにご飯三杯いけます(サツキ調べ)』です。」

H「(サツキ調べ)にやられました。一曲目は?」

Ramsey Lewis featuring Earth, Wind & Fire - Sun Goddess



S「いつでも何処でもどんな場面でも、聴けばパッと元気。ありそうでなかなか無いそんな音・・・。ギターのカッティングとローズピアノのころころ具合、そしてコーラスであなたもご飯四杯!」

H「もう永遠の名曲ですよね。次は?」

Shuggie Otis - Inspiration Information



S「3月に来日し現役のギターは未だに光り続ける。ギターの素晴らしさも、そして声の持つ柔らかさ、フェティッシュ感満載な優しさも、甘く危険なご飯三杯!タイトルの素晴らしさにさらにおかわり♬」

H「女の子をキュンとさせる声ですよね。次は?」

TERRY CALLIER - ORDINARY JOE



S「ギタリストTerryは、67歳で2012年10月28日に天国へ行きました。正直亡くなった日にあんなに悲しくなるなんて思いもしなかった。もちろん大好きなミュージシャン。でもこんなに密かに心に深く落ちていたとは。聴く度に悲しいけれど、こんな心に落ちる音をもっと作りたいと思うからどんぶり三杯!」

H「東京のBGMと呼んでも良いような曲ですね。次は?」

Todd Rundgren - Hello, It's Me



S「"Dream Goes on Forever"も大好きだけれど、"Hello, It's Me"のソングライティングにはいつ聴いても心が躍る。appleユーザーでCMにも出ていた彼は、早くからネット配信をしている。エキセントリックなムードも実は演出だったとするとすごい!もう音だけじゃなくそんな才能にもごはんおかわり!!」

H「トッド・ラングレンって当時、こんな格好でTV出演してるんですね・・・ 次は?」

Eddie Harris - Space Commercial



S「才能とは、アイデアと閃きをも併せ持つ。焼き餅こんがり3個は焼くこの音。60年代からこんなインスピレーション溢れるセンスは、Varitoneでさらに光を放つ。というか、もともとのjazzマナーが素晴らしいんだから、あ~もうやんなっちゃうので四杯はいけるかも!」

H「『60年代からこんなインスピレーション溢れるセンス』ってホントそうですよね。もう勝手にひとりで進化してしまっています。次は?」

The Peddlers - On a clear day



S「ミュージカル『晴れた日に永遠が見える』の主題歌を、「Peddlersがオリジナルじゃないかしら」と思う程、素晴らしいカバーに。歌詞も音もこの素敵な曲は、Sarah VaughanやOscar Peterson、Barbra Streisandもカバー。晴れた日に聴きながらおにぎり持ってでかけよう。ぜったい気持ちよい日になるよ。」

H「サツキさんが選ぶ曲って全部ある種の不良が持つソフィストケイトされたセンスがありますね。次は?」

The Blackbyrds - Walking in Rhythm



S「選んだ10曲の中で、聴く度にきっと一番元気になる音(私が)。ドナルド・バードの生徒さんが彼のプロデュースで奏でる音は、ドナルド・バードのDNA満載。エレピやフルートの音でさらに『何かが起こっても大丈夫』な気持ちになれるって素晴らしい。最後の最後、フェードアウトする直前のキメにさらにもう一杯!リズムセクションの素晴らしいコト。ウォーキインリーズム♬」

H「今、気がついたのですが、『聴く度に元気になる』ってサツキさんのテーマ、切ないですね。確かに元気になれます(涙)。次は?」

She's Gotta Have It - Nola



S「映画『She's Gotta Have It』のサントラ、Bill Leeの曲。Spike Leeの映画は音像も含めどの映画も大好き。Lee親子、二人のセンスが生んだ素晴らしい曲と映像。コノ映画に出て来るピザで、三杯いけます!三角ピザはいつ観ても美味しそう。」

H「スパイク・リー、僕も好きです。やっぱりサツキさん、『頭が良くてクールな不良感』みたいな空気が好きなんですね。次は?」

Wichita Lineman - Glen Campbell



S「ホントは、Sounds Orchestralをと思ったけどYouTubeで見つからなかったので・・・やっぱりココはGlenさんで。大好きな曲アップ・アップ・アンド・アウェイのジミー・ウェブが作った曲。セルジオメンデスをはじめいろんな人にカバーされてる。カバーでも、三杯はいけます。はい。」

H「こういう希望が見えてくる曲調も好きなんですね。サツキさんの本質的なところがやっと見えて来ました。次は?」

A Charlie Brown Christmas - Christmas Time is Here Song



S「毎年クリスマスの時期になると必ず聴くこの曲。子供の頃からの親友Snoopy。正直コレは映像もセットでご飯三杯。でも映像を観なくてもこのシーンは何度も観たから聴くだけで思い出す。Vince Guaraldi Trioが奏でる音に子供達が歌う声。きっとずっと年を経ても聴き続けるだろうな。泣きながらおかわり!!」

H「うわ。最後これですか。僕もお店で夏でもいつでもかけてます。」


サツキさん、今回はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

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みなさん、先日の台風は大丈夫でしたか? 最近、日本列島では色んな災害が増えていますね。お気をつけ下さい。
それではまた、こちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林 伸次




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bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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