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vol.17 - 畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー


いらっしゃいませ。bar bossaへようこそ。

夏がやってきましたね。今年の夏の予定は決まりましたか? 円の相場が気になりますね。海外にしようか、それとも国内にしようか悩んでいるのではないでしょうか。

前々回は、雨と休日の寺田さんが作った雨をテーマにしたコンピレーションCDを紹介しましたが、実はもう一枚、雨をテーマにした素敵なCDがこの夏に発売されました。

畠山美由紀さんの『rain falls』です。

このアルバムはNHK大河「八重の桜」の音楽や、ジェーン・バーキンのワールド・ツアーの音楽監督として活躍中の中島ノブユキがプロデュースをしています。

このアルバムが素晴らしいんですよ。ボサノヴァが好きな方は『エリス&トム』というアルバムをご存知かと思います。60年代後半のヨーロッパツアーを大成功させた後、着実にキャリアをステップアップしつつあった歌姫エリス・レジーナ。アメリカでシナトラとの共演後、CTIレーベル3部作でアメリカでの地位を確立した直後のアントニオ・カルロス・ジョビン。その二人の共演アルバムです。

すごい二人の出会いなのですが、なかなかリラックスした演奏が魅力的です。

Elis Regina & Tom Jobim - Aguas de Março



そして今回ご紹介する畠山美由紀のアルバムは、この『エリス&トム』に似ています。もちろんエリスは畠山美由紀で、ジョビンは中島ノブユキです。二人の状況もちょっとかぶります。畠山美由紀は震災後の気仙沼のことを歌ったアルバムを出して、新たな表現に挑戦した後ですし、中島ノブユキもちょうど次の世界に飛び出し始めたところです。

中島ノブユキさんに、このアルバムについてインタビューしました。


林(以下H)「このアルバムは雨にまつわる曲集ということですが、選曲は誰がしたんですか?」

中島(以下N)「僕と美由紀ちゃんとレコード会社の人とアクちゃん(畠山美由紀のマネージャーの芥川さん)の4人で。打ち合わせ結構やりましたよ。単にその場で『良いね、良いね』で盛り上がるのではなく、一度アイディアを持ち帰って、全体のイメージを全員で共有した。それがすごく重要でしたね。制作時間がすごく長くかかったんです。1年くらい前からじゃないかな。これが良かったんじゃないかな。」

H「今回、中島さんの曲にかしぶち哲郎さんの歌詞がついてますね。」

N「『夏の懺悔』という僕の曲に対して、かしぶち哲朗さんに歌詞を書いていただいてるんですけど。かしぶちさんにお願いしようかと考えた理由が二つあるんです。まず一つ目の理由は、かしぶちさんの『リラのホテル』というアルバムがあって、僕はそのアルバムの大ファンなんですね。そのアルバムでのかしぶちさんの歌詞の言語感覚が好きで、サラっとした感じなんだけど陰影があって、無理に深みをもたせようとしている感じではなくて、でも光を放っているという印象があって。素敵だなと思ってた。もう一つの理由は、僕の『カンチェラーレ』というアルバムでかしぶちさんの『春の庭』という本来は歌詞がある曲をピアノソロでカヴァーしているんです。それを反転させたという意味があるんですね。元々、自分がピアノソロで書いていた曲に歌詞がつくとしたら、その反転の構造の鏡のような存在のかしぶちさんに歌詞を書いてもらったら自分としては最高だなと思って。ダメもとでお願いしたら、快く引き受けて下さったんです。」

H「自分のインスト曲に歌詞がつくってどういう気持ちですか?」

N「埋められてなかった溝にスポっと言葉がはまった感じですかね。」

H「以前、リトルクリーチャーズの鈴木正人さんに『ずっと洋楽を聴いてきた人間として日本語の歌ものとしてまとめるのって結構難しい』という話を聞いたのですが、どう思いますか?」

N「今回イメージしたのは、自分が作る曲としてはAメロがあってBメロがあってサビみたいなポップス的な構造を否定しないで作ろうと思った。美由紀ちゃんも洋楽志向だし、洋楽の曲を作ってくるのもわかってたので、プロデューサーとして自分が提供する曲は聴きなじみの良い構造の曲を書こうと思った。そうするとアルバムとして色んなところに光があたる多角的な内容になるかなと思った。」

H「ジェーン・バーキンと畠山美由紀の違いは?」

N「ジェーンの中に日本的なところがすごくあるし、美由紀ちゃんの中に日本的なものを逸脱した部分が少なからずあるということかな。」

H「中島さんにとって『印象的な雨の風景』って?」

N「(すごく長い間悩んで)雨・・・ 雨の風景・・・ 雨の風景で思い出されるのって雨が上がった後の風景じゃないですか?」


中島ノブユキさん、お忙しいところありがとうございました。

本当にこのアルバム、良いんですよ。是非、聴いてみてください。

畠山美由紀 / 夜と雨のワルツ



ところで、僕が以前に中島ノブユキを10時間インタビューしたのですが、その一部がフリーペーパー「NO LONGER HUMAN」となって、日本全国で入手できます。

NO LONGER HUMAN

「NO LONGER HUMAN」設置場所です。
BEAMS RECORDS(原宿)、TOKYO CULTUART by BEAMS(原宿)、TIME CAFE(渋谷)、フクモリ(馬喰町)、イズマイ(馬喰町)、OnEdrop cafe(小伝馬町)、NEWPORT(代々木八幡)、bar bossa(渋谷)、bar music(渋谷)、バー道(湯島)、B&B(下北沢)、SUNNY BOY BOOKS(学芸大学)サウダージな夜(岡山)、パークカフェ(京都)、ハンモックカフェ(姫路)、Cafe Dufi(名古屋)、greenpoint books & things


梅雨も終わり雨が上がりましたね。
それではまたこちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林 伸次




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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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