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インタビュー / INTERVIEWの最近のブログ記事

スリー・ブラインド・マイス 復刻

沸騰していた1970年代の日本のジャズ。その頃スタートしたthree blind mice(スリー・ブラインド・マイス)という日本のジャズ専門インディー・レーベルの存在は、今も語り継がれ、そのリリース・タイトルは長く楽しまれています。峰厚介や福村博、土岐英史といった、当時はまだあまり知られていなかった新進気鋭の若手ミュージシャンを積極的に取り上げて、デビュー作、リーダー作を発表させるそのスタイルは、前例がないものでした。1983年に幕を下ろすまでの間にリリースしたタイトル数は約150。前述したとおり、若手・新人の他に、ベテランや地方のミュージシャン、シンガーの作品、そしてなんと、予算のかかるビッグバンド作品までリリースしているという怪物レーベルです。

長い間、廃盤状態が続いていたので、CDでthree blind miceの作品を聴くのは難しい状況でしたが、この度、6月から12月にかけて毎月6、7タイトルずつTHINK! RECORDSより再発されることになりました。番組「PICK UP」で毎月ご紹介しているのでご存じの方も多いでしょう。毎月ご紹介するほど大切で、ぜひ一度はそのタイトルの幾つかを聴いていただきたいレーベルなのです。モダンジャズの必聴盤としてはもちろん、ジャズDJのプレイリストでも頻繁に目にするタイトルがいっぱいあります。

今回の再発企画の中心人物、ディスクユニオン / THINK!レコードの塙耕記さんと、高円寺にあるレコード店「universounds」の主宰者でDJでもある尾川雄介さんに、three blind miceについてあれやこれやとお話を伺いました。彼らは、発表以来話題となったジャズ本『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』の著者でもあります。

ジャズ愛、音楽愛がひしひしと伝わる彼らの話しぶりは、とても熱い!


尾川雄介(universounds)×塙耕記(disk union / THINK!) インタビュー
~スリー・ブラインド・マイス復刻に寄せて~

■今回のスリー・ブラインド・マイスCD再発に至った経緯を教えて下さい。

[塙耕記] 2009年8月に『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』という本を尾川さんと一緒に出しているんですけども、その前、2005年くらいから、日本のジャズをCD化するという作業をずっと続けていまして、かなりのライブラリーになっています。その中でもTBM(スリー・ブラインド・マイス)というのは手をつけていなかったレーベルなんですね。2006年にソニーさんが一度、20タイトルぐらい紙ジャケで再発していますし、TBMってオリ ジナル盤に拘らなければ意外とレコードは手に入りやすくて結構音は聴ける環境にあったんですよ。なので、私達が関わって再発することはないかなと思っていました。ところが、廃盤になっているそのソニーさんの再発CDも中古市場で高い値段が付いている状況でして、それだけ需要があるのであればお役に立てるかなということで、今回の再発を練ってみました。


『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』
和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s


■どういう方が買われているのでしょうか?

[塙耕記] 尾川さんにもご協力いただいて48タイトルをピックアップしたのですが、今回の再発シリーズを聴いていただきたいなと想定したメイン世代は30-40代なんですね。というのは、団塊世代の方は当時聴いていたり持っていたりして既にご存知の方が多いだろうと考えたのと、レコードではなくCDを買うのは30-40代の方が多いので、基本となるタイトルはもちろん入れつつも、そこにターゲットを絞ったセレクトを実際にしています。ですが蓋を開けてみると、団塊世代のお客様、ディスクユニオンに普段からいらっしゃるお客様のニーズにもど真ん中だったようで、正直言って予想を超えた反響でした。6月と7月に再発したタイトルで言うと『鈴木勲 / ブルー・シティ』『ヤマ&ジローズ・ウェイヴ / ガール・トーク』というド定番が特によく売れています。『鈴木勲 / ブルー・シティ』は2006年のソニーさんの時に再発されているので、今回は外していいかなと考えていたんですが予想を超えて需要があるようです。ある方から言われて初めて認識したのですが、『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』が出て以降、そのあたりの需要がだいぶ変化しているようですね。2006年のソニーさんの再発の時にはこの本がまだ出ていなかったので、それ以降の状況は変わっているようです。


『鈴木勲 / ブルー・シティ』
鈴木勲 / ブルー・シティ


『ヤマ&ジローズ・ウェイヴ / ガール・トーク』
ヤマ&ジローズ・ウェイヴ / ガール・トーク


■タイトルを選ぶにあたって、塙さんと尾川さんの好みが違うところもあると思いますが、その辺はいかがですか?

[尾川雄介] 塙さんはモダンジャズからのアプローチとしての日本人ジャズ。僕はレアグルーヴ、DJ文化からのアプローチとしての日本人ジャズ。その両サイドからみた日本人ジャズに「和ジャズ」があった、という感じです。


■JJazz.Netにもその両サイドからの方が集まっています。

[尾川雄介] 『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』が出てから、モダンジャズ視点から和ジャズに興味を持った方がそこにレアグルーブ的価値があることがわかって興味を持ち始め、逆にレアグルーブ視点で和ジャズに興味を持った方がモダンジャズ的価値に興味を持ち始めたという面白い現象が起こっています。


■素晴らしいことですね。別の視点から評価されているものに興味を持って受け入れていく。

[尾川雄介] 「和ジャズ」という土台が固まってきたという印象はありますね。


■そういう状況のもとでのTBM再発なんですね。

[塙耕記&尾川雄介] ありがたいことに、そういうことです。


■TBMというレーベルを知らない人たちに向けてお知らせすると、どういう説明になりますか?

[尾川雄介] 設立が1970年です。絶対的なことは、ジャズ専門レーベルだということですね。日本でジャズ専門レーベルって大手レーベルの傘下にはあるのですが、独立系レーベルでここまで多くのタイトル(約150タイトル)を発表しているのはスリー・ブラインド・マイスだけですね。もう圧倒的です。

[塙耕記] 音楽的なポリシーで一番近いのは、ビクターの「日本のジャズシリーズ」ですね。1968から1969年にスタートしているんですけども、オリジナリティのある若手を起用した、そしてアーティスト主導でオリジナル曲をたくさん収録したというのが似ている点ですね。

[尾川雄介] 若手にアルバムを作る機会を与えるというのは、当時ではすごく珍しかったでしょうね。さっき言いましたように、基本的にレーベルは大手なのであまり冒険はしないですよね。

[塙耕記] だいたいレーベルの始まりが、新人のデビュー・アルバムですからね!


■皆さんご存知、テナーサックスの峰厚介さんのデビュー・アルバム『峰厚介 / ミネ』がTBMの1番です。

[塙耕記] ありえないじゃないですか!?

[尾川雄介] ありえないですね。

[塙耕記] 3番は『植松孝夫 / デビュー』ですからね。

[尾川雄介] その名の通り、植松さんのデビューですからね。

[塙耕記] ありえないですよ!他で実績を出している若手を起用するとかなら分かるんですけど、デビュー作品ですからね。これでもう、TBMの凄さがわかると思うんですよ。

[尾川雄介] スリー・ブラインド・マイスって、ここでデビューしたミュージシャンが多くて、峰さん、植松さんもそうだし、水橋孝さんとか土岐英史さん、トロンボーンの福村博さんもスリー・ブラインド・マイスでファーストアルバムですからね。


『峰厚介 / ミネ』
峰厚介 / ミネ


『植松孝夫 / デビュー』
植松孝夫 / デビュー


■当時のTBM作品の反響ってどうだったんでしょうね。何かその辺りについて聞いたことはありますか?

[塙耕記] すごく売れたっていう話は聞いていませんが、音質に拘った作品というのは最初から打ち出していたので、一定の評価をするオーディオファン、根強いファンはいたらしいです。『山本剛 / ミスティー』は大ヒットですね。


『山本剛 / ミスティー』(10月再発予定)
山本剛 / ミスティー


■今回の48タイトル再発のセレクション・ポイントを教えて下さい。

[塙耕記] レーベルとして発売する立場として一番取り入れたかったのは、30-40代の人をターゲットにしたいというのがありました。なので、まずは尾川さんにDJ視点でセレクトして頂きました。それでモダンジャズで外せないものだとか、どうしてもリリースしなくてはいけないものだとかを織り交ぜました。あと、シリーズになるとリリースする順番は適当っていうわけには行かないのでかなり考えましたね。


■例えば、8月に発売の7タイトルは全て高柳昌行さんの作品でまとめられていますね。

[塙耕記] 当時の発売の順番通りですとバラバラですもんね。ボーカルものだったりモダンジャズ視点のもの、DJ視点のものをバランスよく並べました。

[尾川雄介] あとは、ちょっとイヤらしい話ではあるんですけど、僕と塙さんは中古レコード販売にも携わっているので、「今、中古で出るとすぐに売れるタイトル」だとか「中古で最近見かけないタイトル」だとか「実は内容がいいけど中古であまり見かけないタイトル」っていうのをさり気なく滑りこませてあります。


■8月発売の第3期のタイトルは、高柳さん関連のタイトルでまとめられていてシリーズの中でも目を引きますね。TBMでの高柳さん作品にはどういう印象をお持ちですか?

[塙耕記] 高柳さんというとフリージャズのイメージが強くて、フリージャズを聴かない人は敬遠しちゃうんですけど、実はTBMでの高柳さんの作品の中でどフリーなのは『高柳昌行とニューディレクション・ユニット / メルス・ニュー・ジャズ・フェスティバル '80』だけなんですよ。まあ、アルバムの中に1曲だけ入っていたりもするんですけど、あとの他の作品は、これが高柳さんなの??っていう音なんですよ。『高柳昌行セカンド・コンセプト / クール・ジョジョ+4』なんてコニッツ、トリスターノの世界でクール・ジャズですよ。僕はね、このアルバムはレコード屋さんで自分が思っているより安い値段で出ていると毎回買うんですよ。

[一同] 笑

[塙耕記] 6枚持っていますよ!

[一同] 笑


『高柳昌行とニューディレクション・ユニット / メルス・ニュー・ジャズ・フェスティバル '80』
高柳昌行とニューディレクション・ユニット / メルス・ニュー・ジャズ・フェスティバル '80


『高柳昌行セカンド・コンセプト / クール・ジョジョ+4』
高柳昌行セカンド・コンセプト / クール・ジョジョ+4


■そういうのありますよね!救出ですよね。すごくわかります。

[尾川雄介] ほっとけないという。笑

[塙耕記] 本当に好きなんですよ。


■僕もこのアルバムは超好きです。

[塙耕記] 尾川さんのDJ視点からは語り草がいっぱい出てきますよね。

[尾川雄介] 僕もね、塙さんと同じですね。一般的にはフリージャズにカテゴライズされる高柳さんが、DJ視点で言うところのいわゆるスピリチュアルジャズに分類できそうなことをやっていたというね。例えば『高柳昌行とニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ / フリー・フォーム組曲』とか、ティー&カンパニーの全作品とか。この魅力っていうのは高柳さんしか出せなかったと思うんです。それがスリー・ブラインド・マイスにこれだけの数が残されているというのは驚きですね。


『高柳昌行とニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ / フリー・フォーム組曲』
高柳昌行とニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ / フリー・フォーム組曲


■その他、意外なところではボーカル作品が多いですね。歌はもちろんですが、バックの演奏も素晴らしいです。7月発売の第2期のシリーズに入っていて、JJazz.Net番組「PICK UP」の7月分で皆さんにご紹介した『森山浩二、山本剛 / スマイル』が大好きです。

[一同] いいですよね~

[塙耕記] これと『森山浩二、山本剛 / ナイト・アンド・デイ』も第5期として10月に発売します。音もほんとに良いのでオススメです。軽妙洒脱な歌い方が好きになっちゃって、森山浩二は他にもビクターとかに録音があるんですが、全部CD化したいっていう気持ちになって、まあ、これで達成できるんですけど。笑

[一同] 笑


『森山浩二、山本剛 / スマイル』
森山浩二、山本剛 / スマイル


『森山浩二、山本剛 / ナイト・アンド・デイ』(10月再発予定)
森山浩二、山本剛 / ナイト・アンド・デイ


■思ったことをやっていますね。笑

[塙耕記] そうそうそう。笑 あとボーカル作品で注目は、TBMに1作品だけ残した笠井紀美子さん。『笠井紀美子、峰厚介 / イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー』。

[尾川雄介] これがね~、素晴らしい!

[塙耕記] 峰厚介さんと一緒にね。すごくいいんですよ。


『笠井紀美子、峰厚介 / イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー』
笠井紀美子、峰厚介 / イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー


■DJにとって笠井紀美子さんで有名な作品は『Butterfly』ですよね。
[尾川雄介] そうなんですけれども、ぜんぜん違う感じで素晴らしいですね~。


■尾川さん、唸っていますね。笑

[尾川雄介] 笑 この作品は個人的なTBM体験で一番強烈なものなんです。90年代半ばに、夜中にテレビを見ていたら古いドキュメンタリータッチのドラマがやっていてですね、そこに役者として笠井紀美子さんが出演していたんですよ。で、椅子に座ってタバコを吸いながら歌うんですよ、アカペラで。それがもう衝撃的にかっこよくて。その時には歌っていたその曲がなんという曲だかはわからなかったんですけど、後年、スリー・ブラインド・マイスで峰さんと共演しているこのアルバム『イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー』を買ったらその曲が入っていたんです(しみじみ)。後にそのドラマのことも調べたら、1971年に作られた「さすらい」というロードムービーでした。



■えーっ、たまたま見ていて、衝撃的な曲に出会ったんですね!

[尾川雄介] 本当にたまたまで!

[塙耕記] そのドラマのDVDとかないの?

[尾川雄介] ないんですが、NHKのオンデマンドで見れるんですよ。(現在は視聴できないようです)笠井紀美子さんが出演しているドラマだから、映画「ヘアピン・サーカス」かと思ってDVDを買って見てもその曲は入っていないし、一体何なんだろうと思っていたら、NHKで昔に放送したドラマだったんですよ。


■すごくドラマチックな出会いで忘れられないですね。

[尾川雄介] ほんと、忘れられないです。

[塙耕記] しかもこの曲は、プーさん(菊地雅章)の曲ですけど、笠井紀美子さんが歌詞を乗せているんですよね。

[尾川雄介] そうそうそう、笠井さんが英語の歌詞をつけて歌っているんです。

[塙耕記] こちら(笠井紀美子さんのボーカルバージョン)よりもプーさんの演奏を知っていたので、この曲を初めて聴いたときはなんでボーカルなの?とびっくりしましたね。なので、この曲に関しては、僕にとっても引っかかるものがあったんですよね。

[尾川雄介] もう絶唱ですね。素晴らしい。演奏も歌も。ちょっと普通じゃ聴けないようなものですね。


■そんなに熱く言われると楽しみだな~!このアルバムはいつ発売を予定しているんですか?

[塙耕記] 9月発売の第4期のシリーズです。


■もうすぐだ!楽しみだよ~

[尾川雄介&塙耕記] 笑


■塙さんの個人的なTBM体験を教えて下さい。オススメは?

[塙耕記] これ、オススメがありすぎるな~ 笑

[尾川雄介] うまいな~ 笑


■笑 じゃあ2枚でも3枚でもOKですよ。

[塙耕記] さっき言いましたけど、『高柳昌行セカンド・コンセプト / クール・ジョジョ+4』なんて、レコード6枚も買うほど好きなんですね。


■笑 それはなんでそこまで好きなんですか?

[塙耕記] 僕ね、リー・コニッツとかレニー・トリスターノとかあの辺のクールなタイム感がものすごく好きで、、、

[尾川雄介] なんだけど、高柳さんがやると、、、、

[塙耕記] そう、微妙なテンポのズレ方があって。

[尾川雄介] わかる!

[塙耕記] 独特なんですよ。癖になるというか。例えば、セロニアス・モンクが好きになっちゃうようなもんですよ。あれも独特で、好きな人はすごく好きじゃないですか。その要素もあって大好きですね。


■なるほど。

[塙耕記] あとは、この再発をやって好きになったのが『三木敏悟、高橋達也と東京ユニオン / 北欧組曲』。

[尾川雄介] あ゛ーー

[塙耕記] 実を言うと、本当に申し訳ないんですけど、この作品を聴いたのは結構遅くて。。。中古レコード屋でこのアルバムが100円とか300円とかでいつもあるんで全然聴く気がしなくて(苦笑)。それだけ当時売れているということなんですけどね。


『三木敏悟、高橋達也と東京ユニオン / 北欧組曲』
三木敏悟、高橋達也と東京ユニオン / 北欧組曲


■売れていたのでいっぱい発売されたということですよね。

[尾川雄介] その通りです。

[塙耕記] そういうこともあって、この作品を聞いたのは結構遅いんです。『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』を書くちょっと前ぐらいかな。

[尾川雄介] わかる。中古市場でよく目にするものってついつい後回しにしちゃうんですよね。


■いつでも聴けるや、みたいな感覚ですよね。

[塙耕記] こちらのね、悪い癖なんですよ。それで聴いてみたらもう、絶品なんですよね(しみじみ)。

[尾川雄介] いいですよね~(しみじみ)。

[塙耕記] エネルギッシュな部分があって。そしてミッキー吉野さんがキーボードで参加していて、彼と三木敏悟さんがバークリー帰りでね。TBMのすごいところは、ここでも当時有名でない人を起用しているんですよね。

[尾川雄介] 三木敏悟さんが作曲で、高橋達也と東京ユニオンが演奏、そこにキーボードでミッキー吉野さんが入るって、普通に考えたら訳分かんない組み合わせですよ。

[塙耕記] まだまだ知られていなくて、これを機会に聴いていただけると人気が出るんじゃないでしょうか。本当に再評価だと思いますよ、この作品は。あとは当たり前に知られている作品もきちんと出します。レアグルーブとして和ジャズとして超有名な『中村照夫 / ユニコーン』とか『鈴木勲 / オランウータン』とか。

[尾川雄介] スリー・ブラインド・マイス云々以前にね。

[塙耕記] あとは、『日野元彦カルテット+1 / 流氷』。好きだな。


『中村照夫 / ユニコーン』
中村照夫	/ ユニコーン


『鈴木勲 / オランウータン』
鈴木勲 / オランウータン


『日野元彦カルテット+1 / 流氷』(12月再発予定)
日野元彦カルテット+1 / 流氷


■どういったところが好きですか?

[塙耕記] それは、尾川さんが『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』で熱く語ってくれています。あとは初CD化の作品も多いですね。『ジミー・ヨーコ&シン / 清少納言』とか。

[尾川雄介] これは聴いたらびっくりしますよ。めちゃくちゃかっこいいですよ(小声)。


『ジミー・ヨーコ&シン / 清少納言』(12月再発予定)
ジミー・ヨーコ&シン / 清少納言


■なんで小声なんですか。笑

[塙耕記] 尾川さん、この作品については?

[尾川雄介] え、これは僕がセレクトしたんでしたっけ?

[塙耕記] いや、僕が入れたんだけどね(笑)。

[尾川雄介] 第1回日本ジャズ・グランプリで最優秀グループになった3人組で、ジャズと民謡とロックを混ぜたような音楽ですね。


■日本の民謡ですか?

[尾川雄介] そうです。ソーラン節とか。これがね、今聴くと刺激的なんですよ。


■DJとかが反応しそうなサウンドですか?

[尾川雄介] DDJ XXXLのミックス・シリーズ『Nippon Breaks & Beats』に収録されていて、「あれは誰の曲だ?」って話題になったんですが、皆んな分からなくて。で、スリー・ブラインド・マイスの『清少納言』に入っているとわかった時は驚きでしたね。それ以来、ちょっとまた人気が出た感じの作品です。


■それが初CD化なんですね。

[塙耕記] 初CD化です!あとは、ジャズの作品として『峰厚介 / ミネ』はものすごく完成度が高いと思います。


■いやー、すごいですよね。演奏が素晴らしい!番組「PICK UP」の6月分で皆さんにご紹介しました。

[塙耕記] ね!あと、音色がいい。もうなんかね、しびれるんですよ。

[尾川雄介] ほんと、素晴らしい。

[塙耕記] あと、『水橋孝カルテット+2 / 男が女を愛する時』も完成度が高くて、これからもっと人気が出ると思います。

[尾川雄介] この作品は、ここ最近、中古市場で売りに出されるとこっそりとすぐに無くなるタイプの品ですね。

[塙耕記] 今回の再発で知られると、中古市場での動きも変わると思います。

[尾川雄介] 変わりそうですね。もんのすごく内容がいいんですよ。

[塙耕記] 僕は哀愁系が好きなんです。さっきの『三木敏悟、高橋達也と東京ユニオン / 北欧組曲』もそういう曲が入っているんですけど、『水橋孝カルテット+2 / 男が女を愛する時』の1曲目もすっごい素晴らしい。あと2曲目の「So What」。15分間やってるんですけど。

[尾川雄介] このベースが、すごい!


『水橋孝カルテット+2 / 男が女を愛する時』
水橋孝カルテット+2 / 男が女を愛する時


■また唸ってますね~。

[塙耕記] だからアルバム全体としてオススメしたいのは、『高柳昌行セカンド・コンセプト / クール・ジョジョ+4』、『峰厚介 / ミネ』、『水橋孝カルテット+2 / 男が女を愛する時』の3枚だな。とにかく『高柳昌行セカンド・コンセプト / クール・ジョジョ+4』大好き!

[一同] 爆笑


■6枚持ってるんですもんね!

[塙耕記] 売りませんよ!笑


■よくわかりました。笑 あとは、ビッグバンドのことについて。原信夫さんがTBMに作品を残しているというのは意外ですよね。

[塙耕記] そう。TBMに作品があることを知らない人は多いですね。今回再発する『原信夫とシャープス&フラッツ / 活火山』って何?って皆んなに言われますね。

[尾川雄介] 素晴らしいアルバムですね~。シャープス&フラッツがアグレッシブなことをやってやがてフュージョン期に入っていくんですけど、そのちょっと後に完全に成熟したタイミングがあるんですね。いわゆるビッグバンドのダイナミズムも楽しめるし、モダンジャズとしてもジャズロックとしても非常に優れた魅力を備えていて、ものすごく聴きごたえのある音楽を演奏していた時期。その頃の作品です。

[塙耕記] 普通は、マイナーレーベルでビッグバンドの録音なんてないんですよ。予算がすごくかかるので。ところがTBMには原信夫やジョージ川口だったりビッグバンドの録音が結構あるというのが大きなポイントですね。あとは、この作品の編曲家に注目ですね。当時の新進気鋭のアレンジャー「しかたたかし」が担当しているのですが、それが素晴らしいんですよ。


『原信夫とシャープス&フラッツ / 活火山』
原信夫とシャープス&フラッツ / 活火山


■ここでも、新進気鋭ですか。ビッグバンドはアレンジャーの仕事に注目してみるという楽しみ方もありますね。

[塙耕記] あとは、鈴木勲さんと山本剛さんの作品ですね。このお二人の作品は当時全部ヒットしていますから。鈴木さんの作品は、今回の再発シリーズでは8月の高柳昌行特集以外全てに入れています。

[尾川雄介] レアグルーブの方で鈴木勲さんというと、サンプリングネタにもなっている『BLOW UP』というイメージがありますけど、今回再発する『鈴木勲 / あこの夢』に収録されている「Feel Like Makin' Love」が素晴らしいんですよ。すーごくハートフルな、ベースがほんっとに良く歌っているバージョンです。今、人気がすごくありますね。


『鈴木勲 / あこの夢』(10月再発予定)
鈴木勲 / あこの夢


■話は尽きないですね!

[尾川雄介] こうやってレコードを持ってきていたら、いつまででも話せますね。笑 実際に聴いてみたりして。


■よくわかりました。笑 今回の再発ならでは、というような企画はあるんでしょうか?

[塙耕記] 6~7タイトルずつ、毎月7回にわたって合計48タイトルを発売するという風に、現在のところは予定しています。反響がすごく良かったら、追加があるかもしれません。それで、毎月の再発からいずれかのタイトルを購入すると、毎回デザインの違うステッカーが付きます。これはどのお店で購入しても付きます。(なくなり次第終了) それと、ディスクユニオンで購入するとですね、その月に再発されたCDすべてがピッタリと収まるCDボックスがもらえます。


特典ステッカー(サンプル)
第3期特典ステッカー 第4期特典ステッカー


特典ボックス(サンプル)
特典ボックス 特典ボックス


■そのボックスはどれか一枚を購入するともらえるんですか?

[塙耕記] いいえ。その月に再発されたCDをまとめて購入するともらえます。例えば、8月でいうと、高柳昌行さんの7タイトルをディスクユニオンでまとめて購入するともらえるというわけです。


■このボックスが、くすぐってきますね。笑

[塙耕記] 実はこれも毎回デザインを変えます。


■こだわりますね~

[塙耕記] あと、ジャケットも紙ジャケットで、紙質なども可能な限りオリジナル盤を再現しています。


■ライナーノーツも当時の再現ですか?

[塙耕記] オリジナル盤の仕様を再現しています。ジャケットとライナーノーツのサイズ比は少し違うんですが、CDのジャケットに挿入できてなおかつ読みやすい大きさにして再現しています。中に入るギリギリの大きさというものにミリ単位でこだわっています!


■おお、すごーい!冊子みたいになっているんですよね。

[塙耕記] さらにこのライナーノーツの紙質から印刷の雰囲気まで、ぜーんぶ、再現しています。


■こりゃ、すごいこだわりですね!

[塙耕記] それで音質はBlu-spec CDですから満足していただけると思いますよ!しかもBlu-spec CDのロゴを帯に載せなければいけないんですけど、普通はそのロゴは青いものなんですけど、今回はソニーさんに無理を聞いていただいて、スリー・ブラインド・マイスのデザインにマッチするようにモノクロにしてあります。


■そういうことって大切ですよね。そこが青かったら画竜点睛を欠くというか。

[尾川雄介] 僕はTHINK!レコードの人間ではないのですが、出来れば今回の再発はまとめて買っていただきたいですね。さっき言いましたように、和ジャズを軸にしてモダンジャズファンとレアグルーブファンが互いの評価している音楽に興味を持ち始めて、新たな発見を楽しんでいます。そういうことってちょっと踏み込んでみないと起こらないと思うんですよね。そんな中で、今回の再発は両方の側面をうまく混ぜ込んでまとめてありますので、できれば6枚7枚をまとめて買ってみていっぺんに聴くと新たな発見があると思います。

[塙耕記] スリー・ブラインド・マイスのタイトルをこれだけ大掛かりに再発することは初めてのことなんですよ。最初で最後のCD化じゃないかと思うタイトルが混ざっています。当時の日本人のジャズ史、約10年ほどを捉える機会だと思います。

[尾川雄介] モダンジャズがあって、フリージャズがあって、ジャズロック的なものがあってビッグバンドもあって歌ものもあって。本当にある意味、70年代の日本のジャズの縮図と言っても過言ではないですね。

[塙耕記] 自分も全部欲しいです。日本のジャズがつかめるようになっていますから、そういうライブラリに適してると思います。


[Interview:樋口亨]




尾川雄介(universounds)×塙耕記(diskunion) インタビュー

尾川雄介(写真右)
「中古レコード店universoundsの主宰者。再発シリーズ「Deep Jazz Reality」の監修をはじめ、DJ、ライターなど幅広く活動している」
http://www.universounds.net/


塙耕記(写真左)
(株)ディスクユニオン勤務。ジャズ統括責任者およびTHINK! RECORDSディレクター。廃盤売買で暗躍(笑)する傍ら、BLUE NOTEのアナログ盤や和ジャズの復刻シリーズなどを監修する。著書に"和ジャズ・ディスク・ガイド"がある。

THE BRAND NEW HEAVIES インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

今年はACID JAZZ RECORDSの25周年。
それに合わせたかのようにインコグニートのブルーイが初のソロ作を出し、6/19には、omarが新作を発表、
そして同じくアシッド・ジャズ黎明期からシーンを支えたTHE BRAND NEW HEAVIESも、
5月に黄金期のヴォーカリスト、エンディア・ダベンポートを迎えた約7年振りとなる新作『Forward』をリリース!

そんなTHE BRAND NEW HEAVIESが先日来日。
DJ KAWASAKIさんの番組「WHISKY MODE」の為、短い滞在期間にも関わらず、
ウイスキー好きのサイモン(g)とアンドリュー(b)が快く取材を受けてくれました。

次回の「WHISKY MODE」(6/19-7/17)で生声はお届けするとして、
彼らとの貴重なインタビューをご紹介します。

[JJazz.Net 岡村誠樹]


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【THE BRAND NEW HEAVIESインタビュー】

■Q. 日本は久しぶりですか?また日本で楽しみにしている事は何ですか?

[アンドリュー]
2011年11月のBillboard Liveで来たのが最後です。だからすごく久々ではないですね。フライトが非常に長くて日本に到着するまで時間がかかるけれども本当に日本は大好きで、デザインやお客さんのエネルギーが最高にいいので毎回楽しみにしています。

[サイモン]
日本と僕らのバンドの間には 確実に恋愛関係みたいなものがあって毎回楽しみにしています。そしてお店の名前がおかしい(笑)。すごい不思議な名前のお店とかがあって、それがいつも笑わせてくれる。あと、夜が明るい。渋谷とか昼間みたいなのでいつも驚きです。




■Q. 2013年はACID JAZZ RECORDSの25周年。TBNHが当時から意識していた事とは?

[サイモン]
特に最初からゴールを作っていたわけではなく、こんなふうにやろうとしていた意図はなかった。
本当に好きな音楽をただ演奏していただけで、近所に小さいクラブがあって、そこがファンクミュージックをたくさんかけていて、今はわりとよくどこでも聴くけど、当時ファンキーな音楽をかけてるクラブは非常に珍しかった。

それは当時レア・グルーヴって言われていた音楽なんだけれども、その音がすごく好きで、それを「皆でやろうぜ」って言って、ただやってきただけ。

その当時から今も変わらず「やりたいこと」、「やるべきこと」をやって進んできただけで、アメリカの音楽の影響を受けながら、僕らは音楽という名前の海みたいな広いところに、ポツンと一滴おちたような存在だと思っています。一歩一歩進んできたから30年間近くもやってこれたんだと思う。

[アンドリュー]
そう。僕らは本当に好きな事をやろうよ、と言ってやってきただけで、レコード会社との契約を狙っていたわけではない。もともと彫刻家やアーティストになりたかったし。

例えば短編のフィルムを撮ったり、映像作家になりたいと考えていたので、音楽をやろうと思っていなかったんだ。でも、計画せずともここまで来れた事は非常にラッキーだと思っています。




Q. あの当時と決定的に違うのはインターネットの存在。TBNHにとってインターネットの存在は大きいですか?またメリットを感じていますか?

[サイモン]
まず最初にこの質問してくれてありがとう。これまでに、「25年前と今ではどういう風に音楽業界は変わりましたか?」って質問がやたらとくるんだけど、そう言っても「インターネット」としか言い様がないから、そこをすっとばして「インターネットがあることについてどう思う?」と質問してくれたことに感謝します。

とにかく革命だと思うし、素晴らしいことだと思う。誰でもチャンスがあって自分の作った音楽を、より広くの人達に配信できて、人の心を動かせることが出来るというのは本当に素晴らしいことだと思う。

でも逆に言うとロック・スターがいないよね。それが良い悪いじゃなくて、いわゆるスターと言われるアーティストの寿命がすごく短くなったよね。

[アンドリュー]
そう、スターの寿命が短いぶん、しょっちゅう出さないと困る(笑)。僕らも年に1枚くらいのペースでアルバムを出して行かないといけないかもしれない。とにかく速くて情報量がものすごく多いから。でも良い悪いは別として、音楽は重音符が鳴っているだけのものだからね。

メリットは"あまりお金がかからない"という事。すべてがデジタルになることによって、以前だったらレコード会社のヘルプがなければアルバムが作れないという事があったけれど、今はプロモーションやアルバム制作に実際お金がなくても、レコード会社がいなくても、作品が作れるという意味では非常に大きなメリットだね。




Q. スタジオ・アルバムとしては7年振りとなる新作『Forward』をリリースされましたが、コンセプトやテーマについて教えて下さい。

[アンドリュー]
とにかく早く終わらせたかった(笑)。この前のリリースが2006年で、そこから7年経ってるし。ただ、音楽的にどうこうしようっていうのはなくて、TBNHらしい音というのは既に出来上がっていて、ドラムがたくさん入っていて、ベースがあって・・・。アガるようなバイブスを持った、いわゆるTBNHサウンドがあるからそれらをとにかくまとめて、"アルバムとして終わらせる"ということに、とにかくフォーカスしました。

[サイモン]
そしてしばらくの間、スタッフを全員入れ替えてたんだ。ビジネスサイドのトラブルがいくつかあって、前の前のマネージャーらにはひどく傷つけられた。
そういうことにメンバーがフォーカスしなければいけない状況があって、しばらく音楽のほうに集中できなかったんだ。
やっと(ダメなマネーシャーがやめたところに)今のマネージャーが見つかって、音楽に集中しようよ、というところでアルバム制作が始まったんだよ。

[アンドリュー]
アルバムの制作を始めてから全ての曲ができたわけではなくて、ものによっては10年前に作って寝かせてあった曲をもう一度引っ張りだして作り直したものもあるので、ここ10年くらいから遡って、これまでの日記(経験)をひとつひとつまとめていったようなアルバムだと思うよ。

[サイモン]
レヴューとかを見ると「最高傑作」と言われているみたいで、それは嬉しいけれど僕らにとってはそういう感じでもなく一つ一つの事にベストを尽くしていったんだ。

[アンドリュー]
インプロヴィゼーションがライブでも多いから、1回ギグをやることで新しい曲がどんどん出来ていくから、素材としてはもう5,000曲くらいあるんじゃないかな。
だからコンセプチュアルというよりは、「とにかくまとめよう」、「早く終わらせよう」、というのが今回の作品かな。




Q. 最後に今後の予定、そして(予定されている新作)『Heavy Rhyme Experience vol.2』についても教えて下さい。

[サイモン]
とりあえずこのアルバムのプロモーションとツアーを、戻ってからもやると思います。ツアーも既に1年先まで決まっているわけじゃないから、何か予定がきたり、ギグがくればツアーをやっていく予定です。

『Heavy Rhyme Experience vol.2』の話も確かにあるんだけど、ビジネス方面だとか、色んなアーティストが関わるから契約が大変なんだよね・・・。

でも、ヒップホップとライブミュージックを融合させたのは僕らが最初と言えると思うので、それ以前にも何人かのアーティストはいたけれど、いわゆるラッパーの人たちと生音を合わせたのは僕らが初だから、それに関しては胸を張ってもいいんじゃないかな。

『Heavy Rhyme Experience vol.2』のアイデアはいくつかあるけれど、アメリカでしかできないとずっと思っているというのはひとつある。ニューヨークに行って一週間くらいでババっと、やれたらいいんだけど、それまでの準備がとても大変なんだよね。

アイデアでいうと、この前アメリカでレコード屋に行った時、そこで流していたビデオをみたら日本のラッパーがMCバトルをやってて、あ、別にアメリカ人じゃなくてもいいんだ。と思って。
ラッパーってどこにでもいるし、ヨーロッパ・バージョンやドイツ・バージョン、そしてアジアバージョンの作品も作れるかもしれないね、という話はしていたんだよね。

[アンドリュー]
ひとつやらなきゃいけないのは純粋な(完璧な)ファンクのアルバムを作りたい。僕らが本当に好きな曲だけを、誰のこととかも考えずに、こうやったら売れるとか商業的なことも一切考えずに、ボーカルも入れずに楽器だけでやりたいよね。って話をしていたんだ。

よくサウンド・チェックやリハの時に、ただ楽器をかき鳴らして音を作るんだけど、ああいうジャム・セッションみたいのを一度ちゃんと録ってアルバムにしてみようか?というアイデアはある。

もしそれを録ったらインストゥルメンタルのバージョンを一枚作って、そこに日本人とか他の国のラップを絡ませてダブル・アルバムにしちゃったら面白いかもね。


ありがとうございました。




【The Brand New Heavies feat N'Dea Davenport - Sunlight (official video)】

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『Forward / THE BRAND NEW HEAVIES』

Forward


Forward / THE BRAND NEW HEAVIES

リリース:2013年5月8日
P-VINE
製品番号:PCD93686

黄金期のヴォーカリスト、エンディア・ダベンポートを迎え、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズが新作アルバムを完成! ロンドン発、アシッド・ジャズの先駆者にして90 年代のアメリカのR&B シーンでも世界的ヒットを飛ばしたザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ。「ネヴァー・ストップ」、「ドリーム・オン・ドリーマー」、「ユー・アー・ザ・ユニバース」など黄金時代の名曲を思い起こさずに入られない内容の新作アルバムが遂に完成!あのエンディア・ダベンポートもヴォーカルに復帰し、"あの頃感"満載の1 枚に!当時聴いていたリスナーには期待を裏切らない作品であり、当時を知らない若いリスナーには新鮮に響く素晴らしい作品が誕生!!あらためて音楽の素晴らしさ、楽しさを教えてくれる1 枚です!!


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【THE BRAND NEW HEAVIES】

ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズは過去20 年間に渡ってジャズ、ファンク、ソウルのような様々な音楽をブレンドし、世界中のダンス・ミュージックシーンに多大な影響を与えてきた。結成当時からメンバーは変わらない。ヤン・キンケード、(ドラム/ キーボード)、サイモン・バーソロミュー(ギター)、アンドリュー・レヴィ(ベース)の3 人からなる。彼らの音楽はシーン自体に影響を与え、「アシッド・ジャズ」と呼ばれるようになった。バンド名ははソウルのゴッドファザーにして「ミニスター・オブ・ニュー・スーパー・ヘヴィー・ファンク」ことジェイムス・ブラウンへのオマージュである。1988 年に「Got To Give」でCooltempo というレーベルからデビュー。まだアシッド・ジャズレーベルと契約を結んで『ブラン・ニュー・ヘヴィーズ』をリリースする前だった。その後アメリカ人のシンガー、エンディア・ダベンポートと出会う。ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートはエンディアにソロアルバムの契約を提示したが、彼女はこのオファーを断り、ブラン・ニュー・ヘヴィーズと繋がった。これが彼らの黄金時代の始まりである。デビュー・アルバムは、エンディアのヴォーカルを追加して1992 年に全世界で再発された。「ネヴァー・ストップ」、「ステイ・ディス・ウェイ」、「ドリーム・カム・トゥルー」など大ヒット曲が収録されていた。その後、ヒップホップのラッパーを迎えた『ヘヴィー・ライム・エクスペリエンス:ヴォリューム1』、をリリース。94 年のアルバム『ブラザー・シスター』の後、エンディアはバンドを離脱。97 年にはアルバム『シェルター』を発表。ライブ盤、リミックス盤など多くのアルバムをリリース。そして2013 年に満を持してエンディア・ダベンポートを再び迎え入れ新作アルバム『フォワード』をリリース!


レーベルサイト(P-VINE)


THE BRAND NEW HEAVIES Official Site

ものんくる(角田隆太&吉田沙良) インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

2011年1月に活動を開始したばかりの新人ながら、ビッグバンドスタイルのジャズと日本語ポップスをブレンドした他にはないサウンドで、耳の早いリスナーの注目を既に集めていたグループ、ものんくる。
メンバー全員がほぼ20代という新世代グループが、5月22日に実質上のファースト・フル・アルバム『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』をリリースしました。
プロデューサーは、鬼才、菊地成孔。
氏曰く、「ギル・エヴァンスのビッグバンドやカーラ・ブレイのオーケストラ、チャーリー・ヘイデンのリベレイション・ミュージック・オーケストラなどを思い起こさせる、完成度の高いモダンアレンジ・サウンドで、全曲のクオリティが高い」というお墨付きです。
めくるめくビッグバンド・アレンジの中でも映える歌声で、物語のような日本語の歌詞を絶妙な温度で聴かせてくれます。
一聴して、洗練された新しいアコースティック・ポップ・ミュージックという印象を受けるのですが、これからお届けするインタビューでは、それだけではない、想像できなかったルーツやメッセージを発見することができました。

グループの中心人物のお二人、作詞作曲編曲・ベースを担当している角田隆太さんとボーカルの吉田沙良さんにお話を伺いました。


ものんくる『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』
飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち

■タイトル:『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』
■アーティスト:ものんくる
■発売日:2013年5月22日
■レーベル:Airplane label
■カタログ番号:AP1049
■価格:2,625円(税込)
■アルバム詳細:http://airplanelabel.shop-pro.jp/?pid=57523301


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ものんくる(角田隆太&吉田沙良) インタビュー

■お二人の出会いを教えて下さい。

[角田隆太] 他の人のバンドのメンバーとして集められた際に出会いました。

[吉田沙良] 私はまだ大学生の頃でした。

[角田隆太] 僕は大学を卒業して1年目でしたね。


■その後、どうして一緒にバンドをやることになったのですか?

[角田隆太] 楽しかったんですよね。

[吉田沙良] ちょうど、私がメインのCDを作ってみないかという提案を大学から頂いて。でも、一緒に録りたいメンバーがいないなーと思っていて。その頃さっきの他の人のバンドで角田さんたちと一緒にライブする機会があって、この人達となら一緒にやりたいなと思いました。それで、私から声をかけたのが始まりです。角田さんがすごく素敵なオリジナル曲を書くので、それを録音したところから、ものんくるが始まりました。


■それは何年前ですか?

[角田隆太] 2年前ですね。2011年1月に結成してその年に最初のミニアルバムを(SG Worksより)リリースしました。


■何度も質問されているかもしれませんが、「ものんくる」という言葉に何か意味はあるのですか?

[角田隆太] 伊丹十三さんが監修していた「ものんくる」という雑誌があるという話を聞いて、その響きが気に入って頂いちゃいました。なので、それ自体に特に意味は無いんです。


■ものんくるの音楽は、モダンなビッグバンド・アレンジと日本語の歌詞による日本の歌の世界観がミックスした、新しいアコースティック・ポップ・ミュージックという風によく言われていると思うんですが、結成当初からそのようなスタイルだったんですか?

[角田隆太] 最初は管楽器が2人しかいなかったのでビッグバンドではなかったですけど、サウンドはそれほど変わっていないですね。


■ものんくるサウンドの源を少し知りたいなと思うのですが、音楽にハマったきっかけは何ですか?

[角田隆太] 一番最初にすごくいいなと思ったのは、aikoでしたね。友達の家にあった『桜の木の下』というアルバムを聴いて、音楽スゲーと思いましたね。その時は小学生だったので具体的に何がいいかはわからなかったんですけど、音楽を聴いていて幸せになったという経験が初めてでした。


■その時は何か楽器は演奏していたんですか?

[角田隆太] やってなかったです。


■じゃあ、普通に聞いていて衝撃を受けたんですね。

[角田隆太] それからずっとこのアルバムだけを聴いていました。


■楽器を始めたのはいつですか?

[角田隆太] 中学生の時に友達とかもやり始めたし、クラシックギターを習いました。それで中学3年生の時に友だちにバンドに誘われたんですが、ギターが既にいたのでベースをやることになりました。よくある展開ですね(笑)。


■そのバンドは何を演奏していたんですか?

[角田隆太] オリジナルのメロディック・ハードコアです。


■メロコアだ!オリジナルで(笑)。全くそんな片鱗を感じさせないんですけど(笑)。

[角田隆太] あ、そうですかね(笑)。


■僕の中で、ものんくるのサウンドからどんどん離れていっています(笑)。aikoの方がまだ近い。

[角田隆太] 確かに(笑)。


■しばらくバンドは続くんですか?

[角田隆太] 大学2年生までメロコアやってましたね。で、大学1年生の時に、また友達に誘われてビッグバンドサークルに入るんですよ。


■メロコアをやっていた人がビッグバンドサークルに入るんだ!何で(笑)?

[角田隆太] その友だちが好きだったんで(笑)。仲良くなりたかったんですよね。


■あるある。

[角田隆太] ありますよね(笑)?


■じゃあ、大学でビッグバンドに入ってアップライトベースを始めたんですね。それまでは全くジャズは聴いていないですよね?

[角田隆太] 聴いていなかったですね。


■そこから聴き始めて、4年後に卒業してすぐに、ものんくるがあるんでしょ?何か早いね(笑)!

[角田隆太&吉田沙良] 笑

[角田隆太] 僕としてはメロコアやっているのとあんまり変わらない気持ちでやっているんですけどね。


■まじで!?例えばどの点ですか?

[角田隆太] ボーカルが声を張って、、、

[吉田沙良] エモさです。(笑)


■あー!なるほどね~!確かにボーカルがピークでは声を張ってるのが聴けますね。ものんくるの曲は1曲の中にピークが2回3回と来るアレンジですよね。それはメロコアから影響を受けているんですか(笑)?

[角田隆太] あ、そうですね。メロコアは1曲の間ずっと張っていますからね。それが(ものんくるでは)ちょっと凹んだりして繰り返すみたいな(笑)。


■沙良さんの音楽にハマったきっかけはいかがですか?

[吉田沙良] 物心ついた時からずっと、歌を歌いたい子で、歌手になるのが最初から夢でした。ちっちゃい時から歌うのが好きでしたね。


■その頃特に好きだった曲などありますか??

[吉田沙良] 3歳とか4歳だったので全然覚えていないんです。物心ついたのが小学校3年生の時だったので、それまではポワポワ生きていました(笑)。物心ついてからは、お姉ちゃんが聴いていた音楽を一緒に聴いてますます歌うことが好きになったんですけど、特に誰かみたいになりたいというのはなかったです。お姉ちゃんの影響で宇多田ヒカルとかミスチルとかを聴いていました。


■小学校3年生でその頃かぁ。僕は成人していましたよ(笑)。渋谷系とかサバービアとかは知ってる?

[吉田沙良] さ・ばー・び・あ??


■笑

[角田隆太] わかんないですね。


■で、沙良さんもバンドを始めるんですか?

[吉田沙良] バンドは全然やったことがなくて、ものんくるが初めてです。それまでは、とにかく歌うことが好きだったので、中学校で合唱部に入ってコンクールに出たり、部活でミュージカルに出たりしていました。


■その影響は、ものんくるのドラマチックな歌から感じますね。

[吉田沙良] どうやったらプロになれるのかをずっと考えた結果、クラシックを高校で学ぼうと思って桐朋学園で声楽を習いました。でもその頃からクラシックが好きじゃなかったんで、、、


■笑

[吉田沙良] 基礎を習うために入ったので好きではなくって。隠れて自分で曲を作ってピアノで弾き語りをしたりしてポップスをやっていました。それで、クラシックはもういいだろうと思って、やったことのない音楽をやってみたいなと思って洗足学園音楽大学のジャズ科に入学しました。


■なるほど。

[吉田沙良] そこで初めてジャズを聞いてかっこいいな~、と思いました。ジャズってバンドを組まなくてもその辺にいる人たちでセッションしてライブしてってできるし。そんなことをしていたら角田さんと出会いました。


■じゃあ、学外の活動で出会ったんですね。ふたりともジャズとは大学で出会うんですね。ジャズは好きですか?

[吉田沙良] 高校生の時に自分で曲を作ってライブをしていたんですけど、自分の曲が好きじゃなかったんですよ(笑)。でもライブをしたいし歌いたいから作ってやってたんですけど、ジャズと出会って、こんなにいい曲がすでにあるじゃないかと。その曲達を自分なりに吸収してライブでやっていいんだ、という環境に初めて出会ってすごく楽しくなりました。


■そりゃもう、もってこいだよね。

[吉田沙良] (笑)。ジャズっていうツールが面白いなあと思って。

[角田隆太] ジャズは人間的な音楽という気がしますね。他の音楽だったら前もって準備してちょっとかっこつけたりできるけど、ジャズはそういうことは一切できないし、人間的な駆け引きで成立していくような感じのところが面白いですね。


■好きなジャズミュージシャンはいますか?

[吉田沙良] わたしは、、、、誰だっけ?


■笑

[角田隆太] グレッチェン・パーラト(笑)。

[吉田沙良] (笑)。あと、、、、

[角田隆太] カーメン・マクレエ(笑)。

[吉田沙良] そう、カーメン・マクレエ(笑)。全部忘れる(笑)。


■角田さんはいかがでしょう?

[角田隆太] ハービー・ハンコックです。


■ちょっと意外ですね。

[角田隆太] ブチ切れちゃうところが好きですね(笑)。


■なんだ、角田さん、そういう所あるんですね(笑)。

[角田隆太] そうですね(笑)。


■わかりました。ものんくるの聴き方がちょっと変わります(笑)。

[角田隆太&吉田沙良] 笑

[レーベル担当者A氏」僕もちょっとわかった(笑)。やっぱエモいんですね。

[角田隆太] そうなんです。


■はみだしたり、過激な方面に行くエネルギーに魅了されるんですね。

[角田隆太] そうなんです。


■それで沙良さんは声を張らされてるんだ(笑)。

[角田隆太&吉田沙良] 笑


■沙良さん、ものんくるの歌は大変ですか?

[吉田沙良] 大変とは思ったことはないですけど、今回のアルバムが出来上がるまでは、曲をちゃんと飲み込めたと思ったことは一回もなくて、ライブでも毎回チャレンジという気持ちでずっとやっていました。


■そうですよね。かなり難しいメロディーもありますもんね。

[吉田沙良] でも、私もいろいろな音楽を通ってきたけど、ものんくるの音楽が一番しっくり来ているので、難しいというのが全然嫌ではないですね。


■アルバムのことについて聞かせてください。このタイトル『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』というのは何か意味があるのですか?

[角田隆太] これは、プロデューサーの菊地(成孔)さんがつけました。


■あ、じゃあ質問してもわからないですね。

[角田隆太] わかりません(笑)。


■これはものんくるのことなのかな?

[レーベル担当者A氏」ものんくるのことです。


■飛ぶものたち、は何なんだろう?

[レーベル担当者A氏」菊地さんのメルマガに、ものんくるにはフラミンゴのような飛翔力があって、吉田さんの事は手足が長くてベリーショートなので、美しい鳥のようだと書いてありました。そのイメージじゃないかなと思いますね。


■なるほど。ライブで要確認ですね(笑)。はじめてレコーディングにプロデューサーを迎えての作業はいかがでしたか?

[角田隆太] 菊地さんは基本的に勝手にやっていいよという感じだったので自分たちで進めていって、行き詰まったときに天の声を頂くという感じでした。


■角田さんが作曲して沙良さんに歌詞とメロディーを渡す際には、かなりのディレクションがあるのですか?

[吉田沙良] 歌い方のディレクションはないです。

[角田隆太] (エアーギターをしながら)まず僕が自分で歌って、それを聴いてもらう感じです。


■あ、ギターで。ものんくるの曲をギターで弾き語るんですか?

[角田隆太] ま、できてないんですけど(笑)。間違えたとか言いながら(笑)。

[吉田沙良] それを聴いて、その場で歌ってみる感じです。


■作詞も角田さんですが、歌の世界観を共有したりするんですか?

[吉田沙良] 歌ってくれている時に聴いて理解します。私が気になったところは質問するという感じです。

[角田隆太] 本当に話したいことは話すけど、全体として話すことはないですね。


■作詞のインスピレーションは何ですか?実体験ですか?

[角田隆太] 実体験ではないです。イメージですね。


■好きな本はなんですか?本は読むほうですか?

[角田隆太] 本は読みますね。今読んでいるのはヘンリー・ソローの『森の生活』です。


■どういう内容なんですか?

[角田隆太] 南北戦争が終わった頃に森で生活した話が綴られています。面白いですよ。


■自然についての話が出てきたというわけではないですが、歌詞を聴いていると、人知の及ばないものに対する畏怖だったり、あはれとか無常だったりという言葉が浮かんできました。「消えていく」という言葉が度々出てくるように思います。

[角田隆太] 小説を読むとしたら泉鏡花とかなので、そういう所はあるかもしれませんね。


■歌詞を聴いていて質問したくなったのですが、今の世の中についてどう思いますか?

[角田隆太] このアルバムを作っていた時期は、原発がかなりやばそうだな、っていう時期でした。収録曲のうち「春を夢見る」以外は全部 3.11の後に作ったものです。そういう意味でかなり 3.11が影響していると思います。今は一時期よりもましになったのかもしれないですけど、ネズミがかじって電源が落ちるとか、いつどうなっちゃうかわからないところがあって、どうしようかなといつも思っています。


■いつどうなるかわからない、というようなところは音楽から感じます。沙良さんはいかがですか?

[吉田沙良] 全く同じ気持ちです。


■むかついていますか(笑)?

[吉田沙良] むかついてはいないですけど、言葉で言うのは難しいですね。思うものはたくさんあります。むかつくというより悲しい。


■長いスパンで物事を考えることを忘れている、というところに僕はむかついています。このアルバムには、長いスパンで考えることが大事というメッセージも含まれている気がして個人的には嬉しかったです。

[角田隆太] そこはすごくありますね。人間の命のサイクルを超えたスパン。


■歌について、歌うことについてどう思われますか?

[角田隆太] インストで重要なことも伝えられるなと思うんですけど、歌にしか伝えられないこともやっぱりあって。特に3.11後に発信するっていう時に、インストをやっているだけではいけないような気もするというか。ちゃんと言葉にして人に伝わる形にして勝負をしたいなと思いました。


■3.11はこのアルバムにかなり大きな影響を与えているんですね。

[角田隆太] めっちゃそうですね。


■沙良さんはいかがですか?

[吉田沙良] 私は楽器になりたいと思っていて。歌詞のない楽器が羨ましいな、とずっと思っていて。なので、ものんくるの歌詞に出会うまでは、歌で歌詞を伝えるということにあんまり気を使っていなかったというか考えてこなかったというか。ものんくるの歌詞を見て、「あぁ、歌わなきゃいけないな」って思いました。


■ものんくるは歌があってこそ、と思います。では最後に、夢や目標を教えて下さい。

[吉田沙良] 私は、NHKのEテレで、ものんくるの曲とかが流れるようになりたいです。

[角田隆太&吉田沙良] ものんくるとしての目標は、普通すぎて申し訳ありませんが、ツアーで全国に演奏しに行きたいなと思っています。


[Interview:樋口亨]




『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』発売記念ライブ

6月2日(日)@モーション・ブルー・ヨコハマ

開場16:00 開演17:30 & 19:30
詳細


6月13日(木)@青山CAY

Open 18:00 ~ 菊地成孔 DJ / Start 20:00 ~ ものんくるライブ
詳細




ものんくる
ものんくる

運命の年である2011年1月に角田と吉田を中心に結成。
早くも同年10月にはSG Worksよりファーストミニアルバムをリリース。
翌年1月に行われたmotion bulue yokohamaでの単独ライブは、結成1周年にして400名余を導引した伝説のライブとなった。
Airplane Labelから実質上のデビュー・フルアルバムである本作のリリースが決定後、その年の12月に菊地のイベント「モダンジャズ・ディスコティーク」並びにTBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」出演~紹介されるや否や大きな反響を呼ぶ。

ものんくるオフィシャルサイトhttp://mononcle.aikotoba.jp/
吉田沙良オフィシャルサイト:http://sarayoshidavocal.wix.com/otameshi

Jukka Eskola Orquesta Bossa interview:インタビュー / INTERVIEW

ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットのリーダー、
ユッカ・エスコラによるボサノヴァ・プロジェクト(=Jukka Eskola Orquesta Bossa)が始動。

このプロジェクトと同名の新作は「夜ジャズ.Net」でお馴染み、
DJの須永辰緒さんが共同プロデューサーとして名を連ねる他、Jill-Decoy associationのchihiRoさんも参加。
まさに日本とフィンランドの懸け橋となる、注目のボサノヴァ・プロジェクトです。

そんなユッカ・エスコラのインタビューをご紹介。
質問は須永辰緒さんです。


→Jukka Eskola Orquesta Bossa特集。
「夜ジャズ.Net」(2013.5/15-6/19 OA)


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【Jukka Eskola インタビュー】

■Q. 今回のボサノヴァプロジェクトに関して。

私は古いボサノヴァ・アルバム(主に60'Sおよび同時期にリンクしたアメリカのジャズミュージシャン残したヴィンテージ音源)をずっと愛聴しています。私の演奏するトランペットでのプレイは主にジャズやジャズサンバに影響されていますがブラジル音楽に関してはエキスパートではありませんでした。

このプロジェクトは実際異なるプロジェクトから始まりました。弦楽重奏を含むビッグバンドとのコンサートをヘルシンキのコンサート用にアレンジを加えリハーサルなどをしていたのですがこの編成で得た体験はジャズの熱気よりももっとクール(*ジャズでいうところの"クール"よりも"穏やかな"といった語感)というなイメージが湧いてきたのです。そうしてその体験をボサノヴァ・プロジェクトに向けて動かしたらどうなるか?というアイディアが浮かんできたのです。

私が中心となる2管楽器+リズムセクション(ドラム、ベースおよびギター)を加え伝統的なボサノヴァを実践しつつも少しポップ•フィールドにタッチしながらアレンジをしました。フィンランドの伝説的アレンジャーであるルシ・ランペラ氏も共感してくれて共同作業も行いました。また私たちはブラジル音楽の要が歌であるということを理解していたのでマナーに沿った沢山の歌もののトラックを用意したり有意義な創作活動が出来たのです。それが非常に刺激的になり、さらには一歩進めてプロジェクトをレコーディングすることを思いついたのです。彼は直ちにプロデューサーとしてプロジェクトに参加して欲しいと考えドラマー/プロデューサーである元T.F.C.Q.のメンバー、テッポ・マキネンに連絡を取った所、彼も無類のボサノヴァ・ファンであることからスムーズにプロジェクトのスタートを切る事ができました。さらには以前から日本で親交の深い友人であるDJ須永辰緒氏と連絡を取り、アイディアを出し合いまずは日本でのリリースという形の構想も出来上がりました。

アルバム用に7曲の新しいオリジナルのジャズ・サンバを作曲アレンジ、さらには私たちが愛聴しているお馴染みの3曲のカバーを加え構成されています。「フロム・ザ・ホット・アフタヌーン」はミルトン・ナシメントによるクラシックス。私はポール・デスモンドのCTIからリリースされたアルバムのバージョンが好きで、フェイバリット・ソングの一曲でもあります。

さらに私はボーカリストを日本でのアルバム・バージョンに起用したい考えを持っていました。日本での録音は私と須永辰緒氏で行いました。結果的にそれは非常に素晴らしく、2人の異なるボーカリストはアルバム上で重要な役割を担っています。「ウィーン」はフィンランドのシンガーソング・ライターの曲です。オリジナルは勿論フィンランド語ですが、私はその歌唱、アレンジが非常に好きでずっとその新バージョンを作りたかった。この日本語で歌われるそれはパーフェクトでchihiRoの歌声は素晴らしく、成果は予想を上回る完成度になっています。もう1曲はA.Cジョビン作によるスタンダード「喧嘩にさようなら」こちらは日本盤のボーナス・トラックとして制作しました。ケイスィー・コスタの歌唱はワールドワイドの観点から見ても高い水準を誇っています。本当に素晴らしい才能です。




Q. パーソネルについて。

録音メンバーは主に北欧でトップのボサノヴァ/ジャズミュージシャン達で構成されています。Jaska Lukkarinen(d)はいま北欧で最も忙しいジャズ・ドラマーでしょう。またさらに、完璧なブラジル音楽を習得しているドラマーのひとりでもあります。Ville Herrala(b)も北欧で精力的に活動するコントラバス奏者です。彼は絶対音感の持ち主でメンバーの信頼も厚く高い技術を備えています。Peter Engberg(g)は、ジャズとボサノヴァ共に高い演奏技術でマスターする、おそらく欧州No.1のアコースティック・ギター・プレーヤーです。アコースティック・ギターの役割が非常なブラジル音楽を習得する為にブラジルに何度も渡り音楽院などで研鑽を積みました。私の幾つものユニットでのメンバーでもあり旧友のPetri Puolitaivalはアルト・サックス、バス・フルート、アルト・フルートおよびフルートをプレイします。フルートはブラジル音楽にとっても重要なセクションなので彼の参加も必然でした。

アルバムには弦楽四重奏としてプロトン・ストリングス・カルテットにも参加してもらいました。それらがこのアルバムユニークな個性とし、さらにはオーセンティックなボサノヴァをリ・ロードする作業のうえでストリングはこのアルバムサウンドにとって不可欠な要素でもあります。

そして重要なのはアルバムの共同プロデューサー、テッポ・マキネンの存在です。彼はフィンランド史上、不出世の偉大なドラマーであるだけでなく作曲やアレンジ、PCによるプログラミング技術他の非常に多くの才能を持ち数々のユニットでセールス面でも大ヒットを記録し、フィンランドで史上最も才能のある音楽家のうちの1人とも言われています。欧州を飛び出し、アメリカやアジアなどでもその活動は広く知られていることでしょう。テッポはこのアルバムではパーカッションおよびピアノ(!)を演奏しています。




Q. 日本のファンへのメッセージ

私は日本のファンは世界一だと思っています。それはT.F.C.Q.での幾度かの来日や自己ユニットでも来日で接した音楽ファンの関心の高さ、マナーなども含め音楽に対する情熱によるヴァイヴを感じているです。日本はジャズのパラダイスだ、と形容するジャズミュージシャンも少なくありません。そういった日本のリスナーが私の新プロジェクト「Jukka Eskola Orquesta Bossa」を幅広く聞いてくれることを期待しています。さらにはこのオーケストラで日本でのライブをお見せできたらいいなと思っています。See you soon!


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『Jukka Eskola Orquesta Bossa / Jukka Eskola Orquesta Bossa』

Jukka Eskola Orquesta Bossa


Jukka Eskola Orquesta Bossa

リリース:2013年5月15日
Zounds!
製品番号:ZS003

ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットのリーダー奏者ユッカ・エスコラ、テッポ・マキネン。日本からはDJ須永辰緒が共同プロデューサーとして名を連ねる、日本=フィンランドの友好の架け橋『Jukka Eskola Orquesta Bossa』が完成。世界に先駆けてまずは日本だけのリリースが決定。ほぼインストゥルメンタルでジャズとブラジル音楽へのオマージュを綴ったジャズサンバ集ながら、2曲だけ収録のボーカル・トラックには日本からchihiRo(ジルデコイ・アソシエーション)、何もかもが規格外の超新星ボサノバ・シンガー、ケイシー ・コスタが参加。ギター、パーカッションを加えたセクステット編成にヘルシンキの弦楽4重奏楽団も加わった10人編成。湖の国フィンランドから清冽で凛とした壮大なスケールの・ボサノヴァアルバムが登場した


【Jukka Eskola(ユッカ・エスコラ)】

ジャズトランペット奏者/アレンジャー/プロデューサー。
1978年生まれ。フィンランドを飛び出しコンテンポラリージャズ・シーンで最も成功したプロジェクト、ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットのリーダー。その成功を経てソロ活動や数々のプロジェクトなどにより欧州を代表するトランぺット奏者の一人としてシーンを牽引し続けている。フィンランドのヘルシンキに所在する名門シベリウス音楽院でジャズを専攻し以降キャリアは15年に及ぶ。ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテット、リッキーティック・ビッグバンド、ジミ・テナー・バンド、ジョー・スタンス、ニュー・スピリット・オブ・ヘルシンキなどでもアンサンブルの中心として活躍。2007年に北欧の権威あるジャズ・アワード、ポリ・ジャズ・フェスティバルでは「ベスト•アーティスト・オブ•イヤー」に選出される。2010年のリリース「ランペラ=エスコラ」では9重奏楽団の共同リーダーとして作品を発表し大いに注目が集まり世界中のジャズ・ファンからの注目を浴びた。自身及びバンドメンバーとしての作品に加えて、スタジオ・ミュージシャンとしてほぼ200枚以上のアルバムにも参加。さらには多くの国際的なフェスティヴァルにも数多く招かれ、マリア・シュナイダー、ジミー・スミス、デービッド・リーブマン、トニー・アレン、パティ・オースティン、ピーター・アースキンなど、と共演。さらに現在はフィンランドを代表するジャズイベントのオウル・ジャズ・フェスティバル用の芸術監督として辣腕を奮っている。


[Jazz Today] 寺尾紗穂 ロングインタビュー(聞き手:ジョー長岡):インタビュー / INTERVIEW

女性シンガーソングライターの寺尾紗穂のインタビューをお届けする。
聞き手は、JJazz.Net番組ナビゲーターでシンガーソングライターのジョー長岡。

事のきっかけは、ジョーさんがシンガーソングライターとして尊敬している寺尾さんのワンマンライブを企画したことだった。
寺尾さんのソロ弾き語りを収録し、番組で紹介したいと思っていた僕にとってもまたとない機会だった。

寺尾さんとジョーさんの間には、不思議な繋がりがある。
ライブの開催日、「12月16日」をめぐる繋がりだ。
詳しくは、以下のリンクをたどって欲しい。

http://d.hatena.ne.jp/onbinpa/20121130/1354288320

紆余曲折ありながらも、事は実現する。
ライブの模様は、2013年1月9日から約1ヶ月間掲載の番組「Jazz Today」で聴ける。
幸いにも「骨壷」も紹介することができた。

色々なタイミングが咬み合って実現した公演と、番組とインタビュー。
寺尾紗穂の音楽のバックグラウンドも感じてください。


[Text:樋口亨]



寺尾紗穂 ロングインタビュー(聞き手:ジョー長岡)


寺尾紗穂1 © Fuminari Yoshitsugu


~はじめに~

[ジョー長岡(以下J)] ソノリウムでのライブは2回目になるんですね。

[寺尾紗穂(以下S)] そうです。

[J] どういう場所ですか。「拍手が大きく聞こえる」という話をライブ中にされていました。

[S] そうですね。すごく気持ちよく演奏できる場所です。

[J] リハーサルでPAがまだ入ってない時、ピアノの響きが凄かった。天井から音の粒が降ってくるような。

[S] 人が入ってないと特に。

[J] 寺尾さんのライブ前の表情を初めて見たのですが、全く緊張しないというようなお話をしていましたね。ライブにはどういう気持ちで臨んでいますか。心がけていることなどあれば。

[S] 歌詞が飛んでしまうことがあるんで、歌詞のことを考えています。頭の中で再現している。

[J] ピアノの譜面立てに置いてるノートは?

[S] あれはね、この曲はちょっと見ないと駄目だなっていうのがあれば置いておくのと、あとは曲順なんです。曲順と、ここでどんなこと話そうかっていうメモ。曲順書いとかないと、次は...といって1分くらい止まっちゃったりする。

[J] そうか。じゃあ基本は、歌詞は見ていないんですね。

[S] 見ていないです。

[J] 僕はてっきり、寺尾さんは歌詞を見ながら歌う人なんだなと、ずっと思っていました。

[S] みんなそう思っていると思います。

[J] 歌詞がどうしても出てこない時は、どうしていますか。

[S] 出てこない時、あんまり止まっちゃう時は最初からやり直したりとか。子供を産んでから練習量がどうしても減ってしまって、それをイメージトレーニングで補っています。そのやり方がよくわかんなかった頃、練習量が減って不安だけが増していった頃が、ミスが多かったですね。

[J] イメージトレーニングっていうのはどんな風に。

[S] 自転車に乗りながら、とか。

[J] 曲順はいつ決めますか。

[S] だいたい当日かな。早いときは前日。

[J] 曲順を決める上で、大事にしていることはありますか。

[S] 会場に入ってみて感じることとか、そこに来るまでにあった出来事とか、そういうことで決めることがありますね。共演者の方のお話にちなんで、自分の準備していた曲を変えることもあります。

[J] 弾き語りだと、それが可能ですよね。

[S] そうですね、一人だと。



寺尾紗穂2 © Fuminari Yoshitsugu


~子供の頃~

[J] 今回のライブでは、寺尾さんの歌や音楽のルーツの話がいくつか聞けました。それにまつわる曲の披露もあって、とてもラジオ的な時間だったと思います。更に深くお聞きしたい。寺尾さん、子供の時はどんな感じでしたか。自己分析すると。

[S] そうですね、なんだろう、周りとはズレていた気がします。幼稚園の頃かな、ジェニーちゃん人形で遊ぶことが流行ってましたけど、私は興味なくって、木登りとかのほうが、よかったです。

[J] 木登り(笑)。男の子と遊ぶ方が多い感じかな。

[S] 小学校に入るとそうでしたね、サッカーとか。でも、ドッチボールは嫌いでした。ドッチボールが流行ってた頃は、ひとり教室に残って金魚を眺めたりしていました。

[J] ドッチボール、どうして嫌いだったんですか。

[S] なんでだろう... あの、追いつめられる感じ、嫌いだった。当たると痛いし(笑)。屋上で相撲するのが流行ってた時期があって、その相撲には参加してた。

[J] 相撲ですか...(笑) そういう女の子いたなぁ。

[S] あと、理科の解剖がすごく嫌で。フナだったと思うんですけど。殺すのはいいけど、その後、それを捨てるというのがどうしても納得がいかなくて。例えば家庭科で魚料理に生かすとかしてくれればよかったのに。

[J] 給食で出す、とかね。

[S] そう。殺して捨ててしまうということが、絶対受け入れられなくて、「私はやりません」と泣いて、教室に残ってました。

[J] いつの話ですか。

[S] 小学校5年生の時かな。

[J] 他にも、許せなかったことありますか。

[S] 許せなかったこと...衝撃的だったことは、小学校4年生だったかな、母親から聞いたんですが、関東大震災の時に朝鮮人が沢山殺されたという話を聞いた。なんでそんな理不尽な、訳のわからないことが過去に起きているんだろう、とショックでした。休み時間に当時一番仲の良い友達呼び出して、こんなことが起きてるんだよと、言ったりして。それはそれで終わるんですけど、その時に抱いた違和感、何故そんなことが起きてるんだろうと、それは後になって、戦争のこととかと繋がっていくんですけど。その時が、歴史に対する興味というかその核になる部分、その種が撒かれた時だったかな。

[J] その頃の許せなかったことって、その人の他者や世界に対する認識と深く繋がっていると思う。嫌なものは嫌っていう、もう理屈ではない感覚ですよね。

[S] うん。あと、幼稚園の頃からの友達で、小学校も一緒だった子で朝鮮人の子がいたんですね。その子は結構我儘な感じの子で周りから好かれていなかったんですが、小学生になって名前のことで、クラスでからかわれていました。私すっかり忘れていたんですけど、当時許せなくて、先生に告げ口したらしいんですよ。名前のことでからかわれてるって。そういう、おかしいでしょってことに小さい頃から敏感だった気がします。後々になって、高校生の時かな、その子から急に、私と話がしたいと電話がかかってきた。小学校の途中で転校して以来会ってなかったんですけど、中学に入って名前を変えた話などを打ち明けてくれました。

[J] ピアノはいつから始めましたか。

[S] 幼稚園の時にヤマハの音楽教室に通い始めて、教室ではピアノも習ったけど、歌中心だったかな。その後、個人の先生に移りました。その先生がとてもやさしくて、それがピアノを長く続けられた理由かなと。最初厳しいと、嫌になっちゃうから。

[J] よく聞く話なんですど、個人の先生との相性ひとつで、ピアノが嫌いになったり、音楽そのものから離れてしまう人というのがいます。馬鹿みたいな話。

[S] 本当にもったいない。うちにも、好き嫌いがはっきりしている長女がいて、よさそうな先生がいるから、少し前にピアノを習わせに行ったんですけど、あの先生嫌だと言って、今は行ってないです。

[J] 僕も寺尾さんと同じ道程を辿ってて、幼稚園の時ヤマハ、その後個人のピアノの先生に付きましたけど、本当に先生に恵まれたと思っているんです。今自分が音楽を続けていることにとても大きく関係している。

[S] そうですよね。ジョーさんは全体的に、先生に恵まれましたか。

[J] 僕ですか。僕は、いいのと悪いのとありましたね(笑)。さっきの許せない話だと、小学校4年生の時の担任とは、クラスのある制度を巡って対立しました。僕は絶対におかしいと思ったので、それを先生に言ったら、逆に目を付けられた。転校してすぐのことで、校内で完全に孤立したことがあります。けど5年生になると、野生児みたいな若い男の先生が担任になって、学校行くのが俄然面白くなった。波がありましたね。

[S] 私も思い出した(笑)! 家庭科の先生でね、調理実習でサンドイッチとか作ると、ある生徒に向かって、あなたは太ってるからちょっとでいいわね、みたいな物言いをする先生がいた。その発言はおかしいでしょと、そう思った子何人かと当時の担任の先生に告げ口して、謝ってもらいました。担任の先生が間に入って、頑張ってくれた。

[J] よかったですね。僕はその小4の担任とは、結局和解しなかった。

[S] 担任の先生、重要ですよね。面白いです、先生の話(笑)。小学校の音楽の先生がとてもよくて、教科書をほとんど使わない、先生がいいと思った合唱曲を、授業でたくさん使う先生だった。合唱が好きだった私に、「杉並ぞうれっしゃ合唱団」を勧めてくれたりしました。当時歌うのが好きだった4、5人が、それに参加して公会堂で歌ったりしてました。歌うことは本当に好きだった。

[J] 話がさらに遡りますけど、幼い頃のテープが残っていると、聞きました(笑)。

[S] それは母が録音していたんですけど、3歳くらいの頃、勝手に歌を作って歌ってるんです。

[J] ひとりで?

[S] そう、ひとりで。

[J] それ保存しといてくださいね。いつか聞いてみたい。

[S] どこいったかな...(笑)

[J] ライブでは、合唱から独唱にいたるきっかけになる曲を披露しました。「Caro Mio Ben」。とても好評でした。

[S] ありがとうございます。

[J] クラッシックや合唱の世界から、ポピュラーミュージックへの道程をお聞きしたいです。お父様がSugar Babeの元ベーシスト、寺尾次郎さん。お父様の影響は何かありましたか。

[S] どうなんだろうな...。私、小学生の頃からドリカムが好きで、ワンダーランドにも何度か行ってるんですよ。そういうものも並行して聞いていたわけです、すごく狭い世界でしたけど。中学に入ってからはミュージカル部に入って、自分で作曲もしていたんで、うーん...。

[J] お父様が、SugarBabeの二代目のベーシストだと知るのは、いつでしたか。

[S] 楽器をやってたんだよって話を聞いたのは 5、6歳だったかな。家に次郎人形という、ファンの人が作った人形があったんですよ、ベースを肩から提げてる(笑)。それで、父が楽器を弾く人だということは、幼い時から知っていました。だけど実際、楽器は見たことないし、父とは小学校に入る頃には別居していました。父との一番最初の思い出は、字幕で使うタイプライターを触らせてもらったことかな(寺尾次郎さんは、フランス映画の字幕翻訳家でもある)。

[J] 所謂タイプライターですね、ワープロの前の。

[S] そうです。ただ家には、父が参加したサンプル盤がありました。竹内まりやさんとか、大貫妙子さんの作品。きっちりと揃っていたわけではなく、ぽつぽつとあって、そういうのは聞いていました、中学の頃です。竹内さんのはよく聞いてましたね、不倫の曲が多かった。

[J] 寺尾さんは、弾き語りのピアニストとして、とても個性的なピアノを弾く人だと、僕は思ってるんです。そのスタイルは独自に作っていったものですか。

[S] ジャズの要素が入ってるのは、大学に入ってジャズ研にトライしたことが関係していると思う。結局挫折したんですが。ただ、それだけかっていうとそうでもなくて。中学の時にミュージカルでの作曲をやってた時から、ジャズっぽい曲っていうのがあった。その時は、「ジャズ」という意識はないんですけど、見に来ていただいた先輩から「寺尾さんってジャズのコード鳴ってるけど、勉強してるの?」って聞かれて初めて、あっこれそうなんだって。つまり耳から入ってる映画音楽などが、自然に曲の中に出てきてる感じだと思うんです。だから、ちゃんと勉強してないんです(笑)。

[J] 挫折って...どんな風に挫折したんですか。

[S] ジャズ研ってなると、ひとりで完結することがあまりなくて、基本的に皆でセッションなんです。セッションになると、ピアニストは左手をほとんど抜かなきゃならない。それが全然できなくて。つまり、ピアノを弾くとなると、左手がベースの役割をするってのが、私の中で固定化されてました。そこのビートを自分で感じないと、弾けなかったんです、ピアノが。どうしても、ベースと重なるところを弾いてしまう。

[J] クラッシック出身の人の癖かもしれない。

[S] うん。

[J] でも弾き語りで演奏する上では、大事な部分かと。

[S] そこがないと成立しない。

[J] 寺尾さんの弾くベースラインが、とても個性的だなと思っていました、なるほど。

[S] セッションはしたいんだけど、できない... それで、ジャズは無理だなぁ、と。



寺尾紗穂3 © Fuminari Yoshitsugu


~ソングライティング~

[J] ライブ中のいろんなお話の中で僕にとって一番衝撃だったのが、一年間普通に生活していると、10曲くらいは自然に曲ができると言ってたことです(笑)。

[S] (笑)

[J] 曲作りについて聞きたいんですが、どんな風に作曲してますか。

[S] 降りてきたものを、キャッチして、まとめる。それだけです。ずっとやり方は変わってません。

[J] どんな時に降りてきますか。

[S] バラバラですけど、自転車に乗ってる時、お風呂に入ってる時、子供たちと遊んでいる時とか。あ、きたきた、みたいな。

[J] 音楽に向き合っていない時、ですよね。

[S] 詩が先にある時は、ピアノの前に座って、待つ感じになりますけど。それ以外はピアの前ではないですね。

[J] 降りてくると、どうします?

[S] とりあえずコードを書き取って、詩を書いて。忘れそうな時は、メロディの音譜を書いて。録音できそうな時はICレコーダーで。

[J] ライブでは、去年できた未発表の曲を何曲か聞けました。どれも素晴らしかった。

[S] ありがとうございます。ジョーさんは、どれが一番好きですか。

[J] 「愛よ届け」かな。歌詞が好きです。曲の一部が降りてきて、すぐにまとまりますか。

[S] 割とすぐですね。時間がかかるものは、それ以上進まないことが多い。

[J] 寺尾さんが、ソングライターとして大事にしていること、もし言葉にできるなら教えてほしい。

[S] 私の中からはどうしても、軽いものってのが出てこない。どうしても、どこか重苦しいもの、深いもの、鋭いもの、そこの世界に触れた時に、自分の創造の原動力が動き始める。だから軽い詩、楽しい詩をもらって、作れって言われれば、作れるのかもしれないけど、自分の中から自然に出てくるものとしては、軽やかなものは出てこない。

[J] 本当は、軽やかなものも作りたいという欲が、逆に寺尾さんの中にあるのかな。

[S] アルバムのバランスっていうのを、いつも気にはしているんです。最近、津守美世ちゃんが詩を書かなくなってしまったので(津守さんは彫刻家でもある。)、これからは誰か他の人の詩で、バランスを取っていくのかもしれない。

[J] 抽象的な質問かもしれませんが、あえて。寺尾さんにとって、いい曲、いい歌ってどういうものですか。

[S] ベースとメロディだけで、充分に成立するもの。それがいい曲だと思います。

[J] 去年の青山でのライブで、共演した「ふちがみとふなと」さんのことを、寺尾さんが紹介していた言葉ですね。

[S] そう。あれがすべてだと思う。つまり、それで成立するっていうのは、曲の足腰が強いってこと。

[J] 寺尾さんのピアノの、ベースの印象が強いこととも繋がる。

[S] うん。それに加えることとして、コード感はやっぱり大事かな。どれだけ綺麗な衣装を着せてあげられるか。

[J] 歌詞に関しては、どうですか。

[S] そうですね。人が共感できる歌詞というのが、一般的にはいい歌詞なのかなとは思うんです。でも。共感できなくても、そこに現れているものに大きく揺さぶられる、揺さぶることができたら、別の意味でいい歌詞と言えるのかもしれない。そこに表出してくる強さとか、怖さも含めて。

[J] 共感できるまでに、時間がかかるものってありますよ。

[S] 受け入れるまでに、ね。



寺尾紗穂4 © Fuminari Yoshitsugu


~青い夜のさよなら~

[J] 昨年 6月に「青い夜のさよなら」をリリースされました。寺尾さんにとって、いろんな意味で挑戦的な作品だったと思うのですが、リリースから半年経って、どんな反響があって、今どんなことを思っていますか。

[S] この時期なんで、Twitterなどで 2012年のベストアルバムに挙げてくださる人がいます。これまでの作品と比べて、より広く届いたんじゃないかと思います。思ってた以上にコラボが作品を面白くしてくれた感じがあります。反響という意味では、前は掲示板に長い感想を書いてくれる人がいたんですが、今は皆Twitterじゃないですか。文章が短くなってそれは寂しいかな(笑)。HPのリニューアルを予定してるんですが、掲示板は残そうかなと思ってるんです、時代遅れなのかなと思いつつ。

[J] 僕の勝手な印象ですが、「青い夜のさよなら」は、最初エキセントリックな感触がありました。半年聞いてると、これはこういう作品として、しっくり僕の中で落ち着いてます。それと、今回のライブではっきりしたんだけど、寺尾さんにとっての「弾き語り」が、あのアルバムの存在で、一段と際立った気がする。

[S] うん。

[J] ライブで、アルバムの曲「追想」「ロバと少年」「富士山」「時よ止まれ」をやりました。弾き語りで聞くと、やっぱり印象が全然違う。寺尾さん独特のタイム感、グルーヴ、淡い色合いなどが、はっきりと出てくる。リスナーとしては、そこはすごく面白いところです。

[S] なるほど、そうですね。ジョーさんが、今回はピアノオンリーで、と言わなかったら前回同様、後半はドラムを入れようかと思ってたんですよ。だからいい機会をもらったな、と。


『青い夜のさよなら』寺尾紗穂
青い夜のさよなら

■タイトル:『青い夜のさよなら』
■アーティスト:寺尾紗穂
■発売日:2012年6月6日
■レーベル:ミディ
■価格:3,150円(税込)


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寺尾紗穂5 © Fuminari Yoshitsugu


~さいごに~

[J] いつも 5~6年先のことを考えていると、ライブの中で語っていました。5~6年前を振り返って、自分が思ってたような自分になっていますか。

[S] うん、そうですね。

[J] 今から 5~6年先のことは、どんな風に思っていますか。

[S] 多分いい感じになってるんじゃないですかね(笑)。ここ 1~2年、人との出会いに本当に恵まれていて。長くタッグを組めそうな人と出会えてる。人脈ってどんどん増えるだけじゃないですか。そういうものを大切にしていくと、幸せに歌い続けていけるんじゃないかなと思います。

[J] 今回の番組を聞いてくれている方々にメッセージを。

[S] ジャズを聴いてる方にとって、私はどうなんだろう...ジャズ挫折者だし(笑)。

[J] JJazz.Net は、どんどんその枠を広げて、ジャズだけにこだわってないですし。僕は寺尾さんの歌詞を是非味わって聞いてほしいな。

[S] うん。それと、ライブになかなかな来れない、地方の方に聞いてほしい。

[J] 2013年はどんな年にしたいですか。

[S] 以前からやってはいましたが、ようやく去年あたりから、地方からライブの依頼が多数来るようになってきたので、いろんな所に行きたいです。2月は仙台に行きます。そういう意味で届き始めたのかな、と。

[J] ご活躍を心から願っています。今日はありがとうございました。

[S] ありがとうございました。

(2012年12月28日 下高井戸ポエムにて)




寺尾紗穂
寺尾紗穂
11月7日生れ 酉年 東京出身
大学時代に結成したバンドThousands Birdies' Legsでボーカル、作詞作曲を務める傍ら、弾き語りの活動を始める。
2007年ピアノ弾き語りによるメジャーデビューアルバム「御身」が各方面で話題 になり,坂本龍一や大貫妙子らからも賛辞が寄せられる。
大林信彦監督作品「転校生 さよならあなた」の主題歌を担当した他、 CM、エッセイの分野でも活躍中。


ジョー長岡
ジョー長岡
演劇や舞踏の活動を経て、2000年より独自の歌世界を構築。シンガーソングライター。世界中の音楽と日本語の心地よい融合、力強く可愛らしい音楽をめざす。JJazz.Netでは「温故知新」「Jazz Today」でナビゲーターを務める。

Ryoma Takemasa selection - "After Hours Music ~ landing in autumn morning":インタビュー / INTERVIEW

JJazz.Netの番組「WHISKY MODE」のナビゲーター、DJ KAWASAKIさんをはじめ多くのDJやダンサーから尊敬され人気を集めているDJ、Theo Parrish(セオ・パリッシュ。そういえば11月に来日ツアーがありますね!)。
アイソレーター(低音/中音/高音をブーストしたりカットしたりする機材)を駆使したソウルフルでグルーヴたっぷりなプレイに、僕も何度となく朝までヘロヘロにされました。

そんなDJ's DJとも言える彼が認めた日本人プロデューサー / DJが、Ryoma Takemasaです。

Ryoma Takemasaは、10年間のアメリカ生活の影響のもとに、ヒップホップDJとしてキャリアをスタートさせています。(余談ですが、「夜ジャズ.Net」の須永辰緒さんもヒップホップをメインに回されていた時期もありましたね)
その後徐々に、テクノやハウスへと移行し、国内外のレーベルから作品を発表して、世界中のトップDJ(ローラン・ガル二エやジェームス・ホルデン、オスンラデなど)から評価を集めています。

10月17日に満を持して発表したデビューアルバム『Catalyst』では、タイトル曲で、前述のセオ・パリッシュの代表曲「You Forgot」を大胆に使用し、ソウルフルに仕上げています。
デモバージョンを気に入ったセオが自曲の使用を許可したというのは、ある種、事件ですね!

そんな今話題熱々のRyoma Takemasaに、「クラブ遊び明けの朝、秋の高い空のもとで聴きたい曲」を選んでいただきました。
彼のコメント付きです!

まさにタイトル通り、クラブ遊び後の着地や、週末の朝に聴いたら気持ちの良いセレクション!!

[Text:樋口亨]


After Hours Music ~ landing in autumn morning - クラブ遊び明けの朝、秋の高い空のもとで聴きたい曲


Radiohead 「Bullet Proof I Wish I Was」

この曲は毎年秋になると好んで聴く曲で、トム・ヨークの声がものすごくあったかく、頭の中に情景が浮かびあがります。「I Come With The Rain」という映画で挿入歌としても使われていて、色気があっていいですね。少し肌寒い朝、太陽があがりそうなピンク色の空の下でこの曲を聴ければ僕は幸せものです。そこで眠い目をこすりながらも微糖のコーヒーを飲んで、友達と音楽の話をするというのが理想ですね。


O.C. 「Born 2 Live」

もちろんO.Cのライミングも良いんですけど、このトラックはとにかくドラムがかっこいい。この時期のヒップホップはインストでも十分かっこいいですよね。PVで鳥が空をすごく気持ち良さそうに飛んでいるんですけど、あの空は絶対に秋だと僕は勝手に思ってます。クラブ帰りにこのトラックが聞こえてきたら、とりあえず家には帰れませんね。O.C最高です。


Black Sheep「Without A Doubt」

このトラックは正直何回聴いたか分かりません。キャッチーなフックが大好きなんです。あとスネア。このスネアのリバーブ感は秋の高い空にピッタリです。ただ気持ちの良いトラックなのでこれを聴いたらすぐに寝ちゃいますね。ヒップホップDJしている時によく使っていて、レコードでも2枚持ってました。2枚使いはできませんでしたが。


Sigur Ros「Nothing Song」

クラブ遊びが終わって気持ちの良い朝、秋らしい高い空の下で自分がどの曲を聴くか選べるとしたら、結局はこの曲です。トム・クルーズ主演の映画「Vanilla Sky」でも使われている曲なんですが、流れているシチュエーションが最高で、あのような所で聴けるなら僕もビルから飛び降りちゃいます(笑)この曲が流れるだけで周りが澄んだ空気になるでしょう。透明感があって落ち着けるとても素晴らしい曲です。


Ryoma Takemasa「Catalyst (Autumn Evening Mix)」

恐縮ながら、これだけのラインナップの中で最後に選ばせて頂いたのは、10月17日にリリースした僕のアルバム『Catalyst』の表題曲です。一応ミックス名は日本語直訳で秋の夕方ミックスになっていますが、クラブ明けの朝でも十分いけます。最初のブレイクがあけて青いパッドが入ってくるところは、踊り疲れたあなたの体を癒してくれるでしょう。そして一緒に「ユ~フォガット♪」と口ずさみましょう(笑)さらに楽しくなるはずです。



『Catalyst』Ryoma Takemasa
Catalyst

■タイトル:『Catalyst』
■アーティスト:Ryoma Takemasa
■発売日:2012年10月17日
■レーベル:UNKNOWN season
■カタログ番号:USCD-1001
■価格:2,100円(税込)

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Ryoma Takemasa
Ryoma Takemasa

10年間アメリカで生活した後、2004年に日本に帰国。A Tribe Called Quest、O.C.、Nas、Jeru The Damaja、Black Moonなどに影響を受け、ヒップホップDJとしてキャリアをスタートする。DJを続けていく中で徐々にテクノやハウスにシフトし始め、2007年にPaul MacのレーベルStimulus RecordsからデビューEP「Koroon」をリリース。2008年末には自身のレーベルApostropheから「The Overhousen Manifesto」をアナログカットし、国内外のDJによってプレイされる。2009年には西麻布のサウンドバー+にてKihira Naokiと共に「KAFKA」でレジデントを務める。2011年に国内注目レーベル「UNKNOWN season」から積極的にリリースし始め、その中でもDeepn`(Gonno Remix)と(The Backwoods Remix)はLaurent Garnier、James Holdenなど有名DJがプレイし国内外で好評を得ている。2011年の年末にリリースされたオリジナル楽曲のDual House Groove 6はWhatpeopleplay総合Chartで6位を獲得した。
http://soundcloud.com/ryoma-takemasa

坪口昌恭(東京ザヴィヌルバッハ) インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

東京ザヴィヌルバッハの新作が届いた。
『AFRODITA』と名付けられたその作品は、主宰の坪口昌恭が一人で作り上げたという。
そして、今回のメイン楽器として取り上げられたのは、シンセサイザーではなくエレクトリック・ピアノだ。

2年前に発表したアルバム『Abyssinian』が、ソロ・アコースティック・ピアノ作品なので、『AFRODITA』はある意味、その延長線上に存在すると考えていいのだろう。

とは言え、坪口昌恭ではなく東京ザヴィヌルバッハ名義なので、サウンドの違いは大きい。
東京ザヴィヌルバッハの代名詞、自動変奏シーケンスソフト「M」が繰り出すアフロポリリズムとエレクトロニック・サウンドが満載だ。

アフリカ的なリズムのホットさとエレクトリック・ピアノのクールさが融合して、東京というアーバン・イメージを思い起こさせる不思議な一枚。
さらには、表現が悪いかもしれないが、デパートやエレベーターで流れていても違和感がないほど聴きざわりが爽やかなのだ。
ここに坪口昌恭のちょっとした悪意というか、シニカルなユーモアも感じたのは僕だけではないだろう。


坪口昌恭(東京ザヴィヌルバッハ) インタビュー

■今回発表した『AFRODITA』は坪口さんのソロですね。前作『Sweet Metallic』はバンドでの作品でした。また、今作ではローズ(エレクトリック・ピアノ)をメインに演奏していますが、少し前に出たソロアルバム『Abyssinian』ではアコースティック・ピアノをメインに演奏していました。これら、相反するイメージが連なった経緯を教えて下さい。

[坪口昌恭] これまでを遡ってみると、自宅で作りこんだタイプの作品の次はスタジオでの作品、バンドの次はソロ、という風に交互になっていますね。だから、大雑把に言うと「反動」というものはあると思うんですよ。あとは、『Abyssinian』で共演者がいない状態、ただ一人でピアノに取り組んだのですが、東京ザヴィヌルバッハも一人でやってみるとどうなのかなと、同時期に思ったんですよ。それで、実際にライブをやってみたら感触がすごく良くて。レーベル担当者もすごく気に入ってくれたので『AFRODITA』が実現しました。


■シンセではなくローズ(エレクトリック・ピアノ)がメインになったのは?

[坪口昌恭] 『Abyssinian』でピアノに向き合った結果、正しく良い姿勢で集中して演奏するパワーがいいなと思いました。シンセだとこっちも弾いてあっちも弾いてという風に、パワーが拡散してしまいます。それと、ローズをメインにして、シンセなどオケ(バックの演奏)をコンピュータに仕込んでおくと、ライブツアーがやりやすいということもありますね。現地でローズだけを用意すればいいですから。

Rhodes(ローズ)@坪口スタジオ
ローズ


自動変奏シーケンスソフト「M」
自動変奏シーケンスソフト「M」


■東京ザヴィヌルバッハの形態が、バンドだったりソロだったりと色々と変わっているということもあって、今一度「東京ザヴィヌルバッハ」というプロジェクト名について振り返ってみたいと思います。「東京」+「ザヴィヌル」+「バッハ」=「東京ザヴィヌルバッハ」でいいですか?

[坪口昌恭] そのとおりです。このプロジェクトの立ち上げの時に、菊地(成孔)さんもDCPRGの立ち上げの時で、一緒にミーティングすることが多くて、バンド名をどうするかということも話していたんです。僕は坪口だから、「tzboguchi」ってちょっとふざけて表記しているんですけど、そこから「TZ-1」のような記号みたいな名前がいいんじゃないかと菊地さんからのアイデアがあったんですよ。僕はもうちょっと色彩的な名前が欲しくて「tzboguchi」の宛字を考えていたら、「t」は「東京」、「z」は「ザヴィヌル」だよねって大笑いになって。要するに当て字で考えていったんです。「東京」は「東京で発信している」という意味がもちろんあります。「ザヴィヌル」は「ジョー・ザヴィヌル」です。その頃は、エレクトリック・マイルス再評価をやりたいよねというムードだったので、エレクトリック・マイルスの影の立役者はジョー・ザヴィヌルでしょ、みんな忘れてるけど彼がいたから「ビッチェズ・ブリュー」もできたんだという話になって。彼もキーボーディストだしね。「バッハ」は、ヨハン・セバスチャン・バッハではなくて、「スイッチト・オン・バッハ(Switched-On Bach)」というバッハをムーグ(シンセ)で演奏したアルバムの語呂だったりその音楽から来ています。「東京/ザヴィヌル/バッハ」、「スイッチト/オン/バッハ」ね。伝統と電子というイメージもね。

Switched-On Bach(スイッチト・オン・バッハ)
Switched-On Bach


■あー!そういうことだったんですか!「バッハ」だけ音楽からはわからないなと思っていました。

[坪口昌恭] たしかにそうだね。


■坪口さんにとって、ジョー・ザヴィヌルというのはどういう存在ですか?

[坪口昌恭] エレクトリック・ピアノに関して影響を受けたのは、ハービー・ハンコックのほうが強いんですよ。ザヴィヌルに関しては、シンセの方ですね。多くのキーボーディストがシンセというと、ピアノの代わり、ストリングスの代わり、ブラスの代わりとか、何かの代わりという風にイメージがあるものとして演奏するんですけど、ジョー・ザヴィヌルはシンセの良さを使って演奏しているんですね。シンセの出音をうまく使って演奏している。鍵盤から指を離すとすぐに音が消えたりだとか、そういった問題とも言える部分、表現力が乏しい部分をうまく使って演奏しているんですよ。そういうところにすごく共感しますね。「スイッチト・オン・バッハ」の音楽のイメージもすごく似ているんですよ。バッハってチェンバロとかオルガンとかしかない頃の音楽ですよね。ピアノがなくて音の強弱がない頃の音楽。強弱とかそういう表現を付けずに演奏して感動させる音楽。余計なExpressionがなくて感動させる音楽に共感しちゃいますね。


■他に共感できるものはありますか?

[坪口昌恭] 音楽で言うと、ビバップもそのひとつかもしれないですね。ビバップも感情表現ではなくて、定めたルールの中でいかに自由自在に演奏できるかっていう、違った意味でのゲームミュージック的なところというか、ロゴスっぽい、言語っぽいところがありますよね。


■音楽以外にも何かあるんですか?

[坪口昌恭] 影響という意味では絵画もありますね。東京ザヴィヌルバッハの前作『Sweet Metallic』のライナーノーツにも書いたんですけど、ウェザー・リポートの音楽性とセザンヌの絵には共通点があるんですよ。ウェザー・リポートには誰もソロをしていないけど全員がソロをしているというコンセプトがあった。誰かがソロをしていて他がバックということではなくて、シンセがソロを弾いているんだけども同時に(ウェイン)ショーターが印象的なリフを吹いていて、ドラムが大暴れしているとか。皆んなが「同列」に演奏しているんですね。で、セザンヌは何をしたかって言うと、例えば前にリンゴ、後ろに布とかが置いてある絵では、リンゴも布も同列に描かれているんですよ。リンゴを目立たせるために布を目立たせないということではないんですよ。どっちも目立っていたり、ラフだったり。それで、バランスを取るためにリンゴが置いてある机が歪んでたりとか。ウェザー・リポートと同じなんですよ。僕の解釈ですけどね。『AFRODITA』もローズが主役だけども、ドラムやベースもこだわって作っているわけですよ。同列にあるんですよ。


■最近、音楽で気になるものはありますか?

[坪口昌恭] やっぱりフライング・ロータスはすごいなと思いますね。サウンドはもちろんですけど、音符にしてみても裏コードに行っていたり、おいしい音を使っているんですよ。何というかな、ジョン・コルトレーンの甥っていうのもあるのかもしれないけど、天性のものがあるんでしょうね。考えて作っているんじゃないと思うんだけど、おいしい所に閃いちゃっているんですよね。レディオヘッドやビョークもそうですけど、微妙にタブーを犯しているんだけど、それがセンスがいいというかね。多少ぶつかりがあるもので、全体的にはポップに聞こえるものが好きですね。


■アルバムタイトルの『AFRODITA』はどこから来たんですか?

[坪口昌恭] 見るからにあると言えるし、潜在的にあるとも言える、アフリカの土着音楽の要素をタイトルに入れられないかなと考えていました。そんな時にギリシャ語で美の女神を意味する「aphrodita」って言葉に出会って、これはアフロって読めるねということで造語にしようと。

『AFRODITA』トラックリスト
『AFRODITA』トラックリスト


[レーベル担当者A氏] ちなみにですね、最初に候補としてあったのが『エレクトリック・マサイ』だったんですよ。

[一同] 爆笑

[坪口昌恭] 俺は「昌恭(まさやす)」なんでね。

[一同] 爆笑

[レーベル担当者A氏] 即却下ですよ(笑)

[坪口昌恭] マサが一人でやってるみたいな。マサ・ワンみたいな。

[レーベル担当者A氏] ああっ!!『エレクトリック・マサイチ』だった!

[一同] 爆笑


■ふざけ過ぎてる(爆笑)

[坪口昌恭] いや、マジメだったんだけどなぁ(笑)

[レーベル担当者A氏] ずっとそれを押してるんですよ。

[坪口昌恭] もうこれしかないって(笑)

[レーベル担当者A氏] 即却下(笑)あんまりだ。

[坪口昌恭] それを言ったら、東京ザヴィヌルバッハの名前を決める時、最初に菊地さんに提案したのが「ウニウニイヌイヌ」だったんだよ。

[一同] 爆笑

[坪口昌恭] 「ウニウニ」って録音して逆回転再生すると「イヌイヌ」って聞こえるんですよ。「uniuni」、「inuinu」ね。これが面白くて、バンドのコンセプトを表してるよって言ったら、「ぜっったいダメだ!」って。


■菊地さんに言われて(笑)

[一同] 爆笑


■東京ザヴィヌルバッハの音楽を表すキーワードの一つと言える「ポリリズム」ですが、わかりやすく説明していただけますか?

[坪口昌恭] ポリリズムは、「ポリ=複数」のリズム、ビートですね。ポリリズムは、プログレッシブ・ロックやショパン、ドビュッシーの音楽などにも存在するように、色々と種類があるんですが、僕がメインに置いているのは、アフリカのポリリズムなんですよ。グルーヴ・ミュージックとしての(1)だまし絵的なポリリズムに興味があるんですね。1拍の長さが一定で、4拍子→5拍子→7拍子→2拍子などという様に進んでいく変拍子タイプではないんですよ。アフリカタイプのポリリズムは、基本的には4拍子というか2拍子になっていて、その中身が5になっていたりというか。一番象徴的なのは、「キリマンジャロ」という言葉。日本語での発音がリズムになるとしたら「キリマンジャロ」は「キリ・マン・ジャロ」で3拍子ですよね。ところが、アフリカの発音では「キリマ・ンジャロ」で2拍子なんですよ。これがポリリズムなんですよ。根本的な要素としては、一つのフレーズがどっちにも取れるということなんです。なので、僕が興味のあるポリリズムは演奏が難しくてすごいというよりも、絡みが面白いという方向ですね。

(1)参考イメージ → M.C.Escher「Encounter 1944」


■他に面白い絡みの例はありますか?

[坪口昌恭] 大儀見(元)さんに教わったんですけど、「豆腐屋と相撲取り、銭湯のストライキ」というフレーズがあって、これは「とうふやと・すもうとり・せんとうの・すとらいき」っていう、それぞれが5文字(5連符)で構成されている4拍子、4分の4拍子なんですよ。それで今度は、「と」という文字に注目すると、「と」は4文字おきに5回出てくるんですよ。これは、4分の5拍子なんですね。この2つを行ったり来たりするアイデアを取り入れているのは、『AFRODITA』の5曲目「Tribal Junction」です。

ポリリズム


■それでスピード感が変わって聞こえるんですね。

[坪口昌恭] そうそう。そうやって遊んでるんですよ(笑)『AFRODITA』は「5」のアイデアが多いですね。


■面白いけど、テキストで説明するのは難しいですね。

[坪口昌恭] そうですね。わかんないままがいいんです。(笑)


[Interview:樋口亨]


東京ザヴィヌルバッハ『AFRODITA』発売記念ライブ

10月17日にアルバム『AFRODITA』をリリースした東京ザヴィヌルバッハの発売記念ライブ!
アルバムは坪口昌恭の完全ソロで作られましたが、この日は期待の若手ジャズマンたちとタッグを組んで、一夜限りのスペシャルなライブをお届けします。
ゲストには、9月にミックスアルバムを二枚同時にリリースした人気DJの大塚広子が登場!

<日時>
11月28日(水)
開場19:30 開演20:00

<会場>
新宿ピットイン

<料金>
3,000円(1ドリンク付き)

<出演>
東京ザヴィヌルバッハ
坪口昌恭 (key, effect, laptop)
類家心平 (tp, effect)
宮嶋洋輔 (gt)
織原良次 (b)
石若駿 (dr)

ゲスト 大塚広子 (DJ)


坪口昌恭
坪口昌恭

1964年福井県生まれ、大阪育ち。福井大学工学部卒業後1987年に上京。
ジャズとエレクトロニクスを共存させ、伝統と先鋭の境界線で独自のキャラクターを放つ。
主宰するエレクトロ・ジャズユニット『東京ザヴィヌルバッハ』(2012年8月にNY公演)、 キューバ勢ジャズメンとのNY録音作、ピアノトリオRemix、 ソロピアノ「Abyssinian...Solo Piano」等自己名義のアルバムを13枚発表。
2008年上妻宏光(三味線)のアルバムをプロデュース。2011年ハリウッド映画「Lily」の音楽担当。
近年はソロピアノや小編成でのセッションも活発化。
『菊地成孔Dub Septet』『DCPRG』『HOT HOUSE』の鍵盤奏者としても、 フジロックフェスティバルやBlueNote各店に出演するなど活躍中。音楽誌での連載や執筆多数。
尚美学園大学/同大学院ジャズ&コンテンポラリー分野准教授。


『AFRODITA』東京ザヴィヌルバッハ
AFRODITA

■タイトル:『AFRODITA』
■アーティスト:東京ザヴィヌルバッハ
■発売日:2012年10月17日
■レーベル:Airplane label
■カタログ番号:AP1048
■価格:2,300円(税込)

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akiko インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

今年5月に開催したイベントにも出演頂いた、JJazz.Netではお馴染みのジャズ・ボーカリスト、akiko。

8月29日には、スカフレイムスの大川毅氏をプロデューサーに招いた新作『黒い瞳 / Dark Eyes』をリリース。

ニューオリンズ録音第2弾ということで、前作の延長線上なものかと思いきや、そこは大川さん!
彼女らしさがちゃんとありつつも、新たな一面を掘り起こす(!!)
飾り気のない歌声とビンテージ感あふれるサウンドは、時間や場所も超越した、独特の世界観を醸し出しております。

現在このアルバムを引っさげてツアー中。これは観ないと!

そんなakikoさんに新作についてお伺いしました。


[JJazz.Net 岡村誠樹]


akiko インタビュー

akiko_A400.jpg

■ スカフレイムスの大川毅さんをプロデューサーに迎えた新作。お願いしようと思われた理由は?

このところセルフプロデュースが続いていたので、久しぶりに歌うことだけに集中したいなという思いがありました。大川毅さんはSPでDJをするほど音にこだわりを持った人。彼の音楽センスと耳を、とても信頼しています。




■ 今回のアルバムのテーマについて、また意識された事教えて下さい。

大川さんがプロデューサーとして言っていたことは「飾らない、素の歌」で、「暗いアルバム」ということも言っていました。なぜ「暗い」のかというと、傷ついた人の心を救うのは頑張ろうとか前向きなメッセージよりも、ただ悲しみに寄り添い、共鳴する歌であるから、というようなことも言っていました。

私はとにかく、歌にどれだけの「気」を込められるかということに集中しました。あきらめず、すべてに全力投球。集中力の限界に挑むこと。歌の力を信じること。




■ 今作でも日本語詞で何曲か歌われています。敢えてとりあげている理由とは?

デビューしてからずっと日本語で歌う事に抵抗があって、自信もなかったのですが、前作『Swingy Swingy』から意欲的に取り組んでいます。特にここ数年、日本語の響きや世界観を伝えたいと思うようになりました。日本語で歌う事はやはり、日本人の音楽のアイデンティティーだと思うからです。

江利チエミさんや美空ひばりさんの説得力のある日本語のように、まだうまく使いこなせないし美しく発音することも難しいですが、自己流でもいいので、とにかくやってみようと思って始めました。今後ももっと勉強していきたいです。




■ 南米の香りや昭和の雰囲気も感じさせるアルバムの世界観。akikoさんの新たな一面をみた気がしましたが、ご自身でも新たな発見ありましたか?

日本語の歌詞は私ではなく大川さんが書きました。言い回しや使っている言葉が少し古めかしい雰囲気ですよね。選曲にしてもアルバム全体の雰囲気にしても、私1人で作ったらこういうアルバムは出来なかったと思います。かといって出来上がった作品は「自分じゃないみたい!」というわけではなく、ちゃんと「自分らしい」歌になっているから不思議。




■ ビートルズカバー~スウィング・ジャズの世界。題材はそれぞれでもakikoさんらしさはちゃんと感じる。akikoさんが常に意識していることがあれば教えて下さい。

あまり意識してないかな。直感的に感じることかも。例えばすごく素敵な服があって、ブランドのルックブックに載っているようにそのまま着るのは無理でも、コーディネイトやアレンジを変えて着こなせると思えば、自分なりに楽しむし、どう頑張ってもうまく着こなせる自信がなければ着ない。自分の着たい服のイメージが具体的ではっきりしていれば、探すより作ったほうが早いこともある。そんな感じかな。




■ 新作を引っさげてのツアーが始まっています。どのような内容か教えて下さい。

最新作『黒い瞳 / Dark Eyes』からはもちろん、新旧アルバムから秋にピッタリのジャズナンバーを選りすぐってお届けします。特にビルボードライブ大阪/東京はチャイチーシスターズも一緒なので、前作『Swingy Swingy』からもやる予定です。




■ 今後の活動や取り組んでみたいことについて教えてください。

秋には自分でデザインした帽子や服がそれぞれ、override、ADIEU TRISTESSEといったブランドとのコラボレーションアイテムとして発売予定です。

ファッションだけではなく、今年から他アーティストのプロデュース業も始めたので、来年以降も少しずつ取り組んでいければと思っています。




■ 最後に、以前出演頂いたJJazz.Netのイベント「TOUCH OF JAZZ」の時にお聴きするのを忘れていたので教えて下さい。akikoさんが「TOUCH OF JAZZ=ジャズに触れた」作品とは?

10代の頃、遊びに行っていたロカビリーナイトでかかる『Just A Gigolo』が入っているこのレコードが欲しくて、新宿のVYNIL(レコード屋)に買いに行きました。ルイ・プリマを「ジャズの人」という認識で聴いていたわけではないですが、彼らから学んだジャズのスタンダードナンバーはたくさんあります。映画(『HEY BOY, HEY GIRL』)も何度も見ました。だから私にとってのジャズは難しい顔をして聴くものではなく、あくまでもダンスミュージックであるのだと思います。


【Just A Gigolo / Louis Prima AL『Wildest』収録】




『Wildest / Louis Prima』

Wildest


Wildest / Louis Prima

Blue Note Records
製品番号:38696





















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『黒い瞳 / Dark Eyes / akiko』

黒い瞳 / Dark Eyes


黒い瞳 / Dark Eyes / akiko

リリース:2012年8月29日
ユニバーサル ミュージック
製品番号:POCS-1065

プロデューサーは、「ダウン・ビート・ルーラー」を主催するジャパニーズ・スカ・シーンの草分け的存在スカ・フレイムスの大川毅氏。バンドは、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのスーザフォン奏者カーク・ジョセフなど、ニューオリンズ在住の地元ミュージシャン。前作に引き続き、チャイチーシスターズも2曲でコーラス参加。「Dark Eyes(黒い瞳)」、「Bei Mir Bist DU Shoen(素敵なあなた)」など、懐かしのスタンダード・ナンバーが満載。前作とはひと味違う、日本語での歌唱も聴きドコロ! 






【 akiko 】http://akiko-jazz.com/

2001年、ユニバーサル ミュージック グループ傘下の名門ジャズ・レーベル、ヴァーヴ・レコードより初の日本人女性シンガーとして契約。フランスの名プロデューサー、アンリ・ルノーのプロデュースのもとパリにてレコーディング。同年6月、アルバム『ガール・トーク』で華々しくデビューを果たす。その後もジャズというジャンルに捕われず、アルバム毎に違ったスタイルを次々と提案していく様が注目を集める。過去作品ではプロデューサーとして、 Swing Out Sister(UK)、須永辰緒、小西康陽(ex:Pizzicato Five)、福富幸宏、ブッゲ・ヴェッセルトフト(JAZZLAND)等を迎えている。レコーディングもパリ、ロンドン、ニューヨーク、リオデジャネイロ、オスロと世界各地に渡り、アート・リンゼイ、re:jazz、吉澤はじめ、Studio Apartment、quasimode等、コラボレーションや客演も多い。2009年には、10代の頃から通っていたロック・イベント「ロンドン・ナイト」へのトリビュートとして、大貫憲章をスーパーバイザーに迎え、兼ねてからの念願だったロック・アルバム『HIT PARADE-LONDON NIGHTトリビュート-』を発表。また、ソングライティングやアレンジ、ジャケットのアートディレクションに至るまで、セルフ・プロデュースもこなす。テーマ毎に自身が選曲したコンピレイションCDも数枚発表し、毎回好評を博している。その音楽のみならず、ライフスタイルやファッションなど、発信する全てに注目を集めるヴォーカリストのひとり。




【黒い瞳/Dark Eyes Release Tour】

akiko_event600.jpg

■9/27(木)福岡
日航ホテル福岡 1Fメインバー「夜間飛行]

akiko(vo) 柴田敏孝(pf)
・SHOW TIME 20:00~20:40 /21:20~22:00 /22:40~23:20
・ミュージックチャージ ¥1,800-
・ご予約・お問い合わせ TEL 092-482-1168


■9/29(土)下関
BILLIE

akiko(vo) 柴田敏孝(pf) Yuki(b) 白石次郎(g)
・開場 17:30 開演 19:00
・料金 LIVE:\6,000 LIVE+DINNER:\7,50
・ご予約・お問い合わせ Jazz Club BILLIE
TEL:(083)263-6555  info@billie.jp


■10/23(火)大阪
Billboard Live Osaka

akiko(vo) 柴田敏孝(p) 島田剛(b) 安藤正則(ds)
Chai-Chii Sister 紗理(vo) 優日(vo)
・1st 開場 17:30 開演 18:30 / 2nd 開場 20:30 開演 21:30
・予約受付開始 BBL会員:8/17(金) 一般:8/24(金)
・料金 "サービス¥6,900 / カジュアル¥5,400 (カジュアルのみ1DRINK付)
・ご予約・お問い合わせ 06-6342-7722
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8230&shop=2


■10/25(木)東京
Billboard Live Tokyo

akiko(vo) 柴田敏孝(p) 島田剛(b) 安藤正則(ds)
Chai-Chii Sister 紗理(vo) 優日(vo)
・1st 開場 17:30 開演 18:30 / 2nd 開場 20:45 開演 21:30
・予約受付開始 BBL会員:8/17(金) 一般:8/24(金)
・料金 "サービス¥6,800 / カジュアル¥4,800 (カジュアルのみ1DRINK付)
・ご予約・お問い合わせ 03-3405-1133
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8229&shop=1


■10/26(金)名古屋
NAGOYA Blue Note

akiko(vo) 柴田敏孝(p) 島田剛(b) 安藤正則(ds)
・1st 開場 17:30 開演 18:30 / 2nd 開場 20:30 開演 21:15
・予約受付開始 9月4日一般予約受付開始(メンバーズ先行は8月28日11:00~)
・ミュージックチャージ ¥6,800
・ご予約・お問い合わせ 052-961-6311
http://www.nagoya-bluenote.com/schedule/201210.html#1026


■10/27(土)金沢
もっきりや

akiko(vo) 柴田敏孝(pf)
・open:19:00 / start:19:30
・ミュージックチャージ 前売り¥4,500- / 当日¥5,000-
・ご予約・お問い合わせ
もっきりや Phone & fax 076-231-0096 mokkiriya@spacelan.ne.jp


■10/28(日)富山
総曲輪かふぇ 橙

akiko(vo)柴田敏孝(p)
・1st 開場 17:00 開演 17:30 / 2nd 開場 19:30 開演 20:00(完全入替性)
・Ticket 一般 ¥4,500(各セット)(当日¥500増 / 税込 / 入場時1drink¥500別途)
・一般発売日 9/7(金)
・チケットプレイガイド 総曲輪かふぇ 橙 / ローソンチケット / チケットぴあ /
オレンジ・ヴォイス・ファクトリー www.oravo.net〔実施の4営業日前で終了/10月23日(火)〕
・お問い合わせ 株式会社オレンジ・ヴォイス・ファクトリー 076-411-6121 info@oravo.net


■11/1(木)高松
SPEAK LOW

akiko(vo) 泉川貴広(p) 笹井克彦(b) Gulliver柳 (ds)
・ open 19:00 / start 19:30
・前売り¥4,500- / 当日¥5,000- (別途1drink¥500-)
・お問い合わせ SPEAL LOW : 087-837-0777(定休日 : 水曜日)
香川県高松市塩上町3丁目20-11Field of Soul 1F


■11/2(金)岡山
城下公会堂

akiko(vo) 泉川貴広(p) 笹井克彦(b) Gulliver柳 (ds)
・ open 19:30 / start 20:00
・前売り¥4,500- / 当日¥5,000- (別途1drink¥500-)
・チケット取扱店 城下公会堂
・TEL予約・問合せ 086-234-5260 (城下公会堂) / メール予約 info@saudade-ent.com


■11/3(土)広島
SPEAK LOW

akiko(vo) 泉川貴広(p) 笹井克彦(b) Gulliver柳 (ds)
・ open 18:00 / start 19:00
・ミュージックチャージ¥6,500-
・ご予約、お問合せ SPEAK LOW TEL082-545-3960 / インターネット予約はこちらから


黒い瞳/Dark Eyes Release Tour詳細

田中邦和 & 林正樹 インタビュー ~『田中邦和 & 林正樹 / Double Torus』:インタビュー / INTERVIEW

『ダブル・トーラス』

 
メガネのような、ドーナツが2つくっついたような形。(こちらを参考
そしてそれは、9月12日に発売される、サキソフォニスト・田中邦和と、ピアニスト・林正樹によるデュオのアルバムタイトルでもある。
 
2012年1月に門仲天井ホールで公開録音されたこの作品には、時には緊密に、時には緩やかに対話する二人の様子が収められている。
バッハやエリントン、パーカー、モンクなどの楽曲の世界を、自在に伸び縮みさせて表現している。
 

二人に、アルバムについてなど、ほぼ同じ質問をメールで投げかけてみました。

 

田中邦和 & 林正樹

 

田中邦和 & 林正樹 インタビュー

 

田中邦和

■選曲はどういうふうに決まっていきましたか? 

共演するようになって、デュオを重ねていくうちにお互いに出し合った曲です。結果的に、曲の構造やサウンドの響きを細部まで大事にする曲がそろった感があります。唯一オリジナルの「ダブルトーラス」は、リハーサルの直前に林君が「この二人でやる、あたかも即興でやったかのような曲」を思いつき、さっと書き上げてくれたものです。
 
 

■音楽以外では、お二人でどのような話をされますか? 

あまり意識しないのでよくわからないところです。先日二人で短いツアーをしたのですが、ほぼ現地集合、現地解散、移動もばらばらだったという、さりげない感じでした。あ、でも仲悪いわけではないと思いますよ。
 
 

■自分の楽器と相手の楽器の魅力をそれぞれ教えて下さい。 

サックスは音が自在にまげられるというか、音色も含めてそういった自由さがあります。ピアノは、オーケストラですよね。ただし、林君がギタリストでもドラマーでも本質は変わらないと思います。楽器よりヒトありきです。林君のピアノは他の人と違うのです。解像度がダントツで、独創的なアイデアの宝庫です。
 
 

■アルバム収録曲の中から、相手のベストプレイを教えて下さい。

あの日の記録ですから、一曲にしぼるのは難しいですが、好きなのは「item6」でしょうか。いろんなシーンの変化が見事です。
 
 
 

林正樹

■二人で演奏するようになった経緯、このアルバムを録音するようになった経緯は? 

この二人は一緒に演奏したら絶対にいいはず!と、2007年の冬に、プロデューサーの徳永氏が共演の機会を設けてくれたんです。案の定、その予感は的中し、その後、都内を中心に定期的に二人でライブを行う様になりました。共演を重ねる度、この2人でしか表現できないJAZZの形がより鮮明になり、今が記録に残す良い時期なのではないかと。僕らの産みの親である徳永氏プロデュースの下、今回のレコーディングが実現しました。何を隠そう徳永氏は、現在大学で数学を教えている准教授でありながら、邦和さんとは大学時代の同級生でもある方なのです。門仲天井ホールでの公開レコーディングは、それならではの程よい緊張感があり、よりいい演奏に繋がったのではないかと思ってます。
 
 

■音楽以外では、お二人でどのような話をされますか? 

眼鏡の話しや、美味しいものの話しでしょうか。二人の共通点の一つに眼鏡へのこだわりがあって、それは今回のアルバムタイトル「ダブルトーラス」に隠された意味の一つにもなっています。でも話はやはり音楽の話が中心ですよ。
 
 

■自分の楽器と相手の楽器の魅力をそれぞれ教えて下さい。 

ピアノの出方次第で、ハーモニー、リズムの土台をしっかりと構築する状態、或はそれを敢えて壊して不安定にするスリリングな状態まで、かなり振れ幅を持って自由にコントロールできるところが、このようなデュオ編成におけるピアノの魅力だと思います。サックスが単音を歌い上げる表現力は、ピアノがどう頑張ってもできない表現ばかりでジェラシーですね。特に邦和さんの人柄から醸し出される、甘く暖かい低音の音色が好きです。
 
 

■アルバム収録曲の中から、相手のベストプレイを教えて下さい。 

敢えて一つというなら「Morning Glory」でしょうか。この曲と「Silence」は僕が邦和さんとのDUOを形に残すなら絶対に収録したいなと思っていました。古き良き時代のジャズをバックボーンに持ちながらも新しい世界に向かって行く邦和さんの大きく暖かな心を感じます。
 
[Interview:樋口亨]
 
 
 
Double Torus
 
■タイトル:『Double Torus』
■アーティスト:田中邦和 & 林正樹
■レーベル:AIRPLANE LABEL
■型番:APX1009
■発売日:2012年9月12日
■価格:2,625円(税込)
 

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田中邦和 & 林正樹

田中邦和(右) & 林正樹(左)

 

田中邦和  http://www.kuni-kuni.net/

1966年生まれ。
大学在学中にジャズ研究会に所属、以後サックスを独学にて習得する。
卒業後5年間の会社員生活を送るが、そののちミュージシャンへと転身。現在に至る。
甘く豊かなサウンドと、ジャズからポップス、クラブミュージックまでの幅広いジャンルで培ったスタイルが持ち味である。
現在は沖祐市(東京スカパラダイスオーケストラのキーボーディスト)とのバンド「sembello」(映画「新・仁義無き戦い~謀殺」サウンドトラック。オリジナルアルバム「sembellogy」。スタンダード・ムード音楽バンド「ブラックベルベッツ」、バリトンサックス11人によるアンサンブル「東京中低域」、「梵鉾」で活動の他、ライブ、コンサート、レコーディングなど精力的におこなっている。
これまでの共演者は、林田健司、ボズ・スキャッグス、Losalios、ラブサイケデリコ、クラムボン、森雪之丞、堂島孝平、(以上ポップス)、山下洋輔、森山威男、クリヤマコト、ジョージ・ガゾーン、エリック・アレキサンダー、エイブラハム・バートン(以上ジャズ)、fantastic plastic machine、ジョー・クラウゼル、coldfeet、( 以上DJ、club music)、等多数。
 
 

林正樹  http://www.c-a-s-net.co.jp/masaki/

1978年東京生まれ。
5才よりピアノを始め、中学入学後ポピュラー音楽に目覚め、独学で音楽理論の勉強を始める。
その後、佐藤允彦、大徳俊幸、国府弘子らに師事し、ピアノ、作曲、編曲などを学ぶ。
97年12月に、民謡歌手の伊藤多喜雄のバンドで南米ツアー、国内ツアーに参加し、プロ活動を始める。
現在は自作曲を中心に演奏するソロピアノでの活動や、自己のカルテット「STEWMAHN」、さがゆきとの「KOKOPELLI」の他に「West/Rock/Woods」「Salle Gaveau」「菊地成孔&ペペ・トルメントアスカラール」「クアトロシエントス」ピアノトリオ「宴」「エリック宮城 EM Band」「SPICK & SPIN」「Archaic」など多数のバンドに在籍中。
2008年にオリジナル曲を集めたピアノソロアルバム『Flight for the 21st』を発売。
2009年NHK「ドキュメント20min」のテーマ音楽を担当。
2011年3月に「林正樹STEWMAHN」の1stアルバム『Crossmodal』をリリース。

 

芳垣安洋 インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

ROVOや第一期DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENなどフェスを賑わすバンドや、UAや原田郁子といった個性的なシンガーのバックバンドでも引っ張りだこのドラマー、芳垣安洋。

彼は、それら以外にも、自身で幾つかのバンドを率いて活発に活動している。

例えば、ヴィンセント・アトミクス、エマージェンシー、パーカッションアンサンブルのオルケスタ・ナッジナッジ、そして、今一番熱い活動を見せている「オルケスタ・リブレ」。

「オルケスタ・リブレ」始動のきっかけが、ピットインでのライブということもあって、番組「PIT INN」にゲストとして芳垣さんをお迎えしました。

芳垣さんの音楽ルーツやスタンダードについて、音質へのこだわりなどなど、番組でご紹介しきれないほどの内容でしたので、ここでご紹介します。

お楽しみあれ!

 

芳垣安洋 インタビュー(with 鈴木寛路 [PIT INN]、樋口亨 [JJazz.Net])

 

オルケスタ・リブレ

Orquesta Libre(オルケスタ・リブレ)


ジャズも含め、自分が洋楽の虜になった、そのルーツにある曲がスタンダード

鈴木:芳垣さんに初めてピットインにご出演いただいたのは、ピットインが前の場所にあった頃の、梅津和時さんの3デイズにアルタード・ステイツとして呼ばれたというのでしたよね。

芳垣:そうですね。まだその頃はみんな関西在住でした。

鈴木:芳垣さんはご自身のバンドも含め、非常に沢山のバンドで演奏されていますが、今日ご紹介するオルケスタ・リブレの他に、パーカッションアンサンブルのオルケスタ・ナッジナッジ、ヴィンセント・アトミクス、エマージェンシー。そして、芳垣さんのバンドというわけではないですけども、ROVOでの活動も盛んですね。あとは、ピットインでも毎年6月に4デイズをやっていただいて。オルケスタ・リブレの始まりもその4デイズからですよね。

芳垣:そうですね。去年の4デイズがきっかけでできたバンドですね。

鈴木:それ以前もリブレっぽいことってあったじゃないですか。たとえばホーン・セクション・バンドのようなものだったり。

芳垣:そうですね。僕がトロンボーンの青木タイセイに声をかけて始めた彼のブラスバンドもちょっと似たとこがありますね。そのバンドは彼のリーダーシップに委ねています。他には、ピアニストの田中信正と一緒に、管楽器を何人か入れてっていうセッションを、ここしばらくは年に1、2回やったりしていますね。

樋口:4デイズがオルケスタ・リブレのきっかけというのは、4デイズのうちの1日がリブレと同じ編成だったということですか?

芳垣:そうですね。今のメンバー全員が揃っていたんですよ。

鈴木:ただ、「オルケスタ・リブレ」という名前にはしていませんでしたよね?

芳垣:その時はねぇ、、、、いや、最終的にしたんだよ。

樋口:じゃあもう、その時のバンドのアルバムが今回発売されたという感じなんですね。

芳垣:ただその時は、今ほど密にライブを続けるっていうつもりではなくて。やってみて非常に楽しかったので、というところから続いていますね。あと、その時の映像とか音源を見たコペンハーゲン・ジャズフェスティバルのオーガナイザーが、今年の夏に出演しないかと誘ってくれたんですよ。それで、行きたいな、というところから、バンドを継続する、アルバムを作る、っていう流れになりましたね。

鈴木:今回の作品は、3枚同時発売ですね。

樋口:7月4日にレーベルのイーストワークスから発売された、柳原陽一郎さんと、おおはた雄一さんの歌が入ったボーカルアルバム2枚組の『うたのかたち~UTA NO KA・TA・TI』。そして、インストの『Can't Help Falling In Love~好きにならずにいられない』ですね。

鈴木:選曲とかが、いわゆるもう昔からの芳垣さんぽくて。芳垣さんは「plays standard」っていうの結構やるんですけど、そのスタンダードが芳垣さん流で。ジャズ・スタンダードだけっていうわけでは全くなくて、ジャンルを超えて芳垣さんが好きなスタンダード。今回の作品も選曲が実に芳垣さんっぽいなーという。

芳垣:(笑)

鈴木:いい意味でね。いつもいい曲を選曲して。独特のアレンジで。青木タイセイさんと鈴木正人さんのアレンジがこれまた良くて。どの曲も本当に素晴らしいんですよね。

樋口:ジミヘンとか入ってますよね

鈴木:やってますよねえ。まったくジミヘンじゃないような(笑)

芳垣:(笑)しばらくなんだっけこの曲って感じですよね。

樋口:ジャズスタンダードだけじゃなくて、ポップスやもロックといった馴染みのある曲が結構並んでますね。

芳垣:そうですね。僕が洋楽を聴き始めた当初に、好きだった曲なんですよ。

樋口:そうなんですね!

芳垣:だから本当に、さっき鈴木さんがおっしゃってくれたように、僕流のスタンダードというか。ジャズも含め、自分が洋楽の虜になった、そのルーツにある曲っていうのをやりたいなという気持ちで集めた曲ですね。

 


日本語でちゃんと詞を作れる男の歌い手、というのがひとつのキーワード

鈴木:あと、『うたのかたち~UTA NO KA・TA・TI』で柳原陽一郎さんが歌っている方の盤でちょっと感じたことは、芳垣さんってよく高良久美子さんとかと一緒にミュージカルの音楽もやられているじゃないですか。その影響をすごい感じました。

芳垣:それはありますね。

鈴木:ミュージカルのような、いろいろな風景が浮かんでくるような感じがしますね。

芳垣:3年前になるのかな。宮本亜門さんが演出された「三文オペラ」というベルトルト・ブレヒトの作品で音楽を演奏することになって。その音楽をクルト・ワイルという方が作っているんですが、彼の作品はジャズのスタンダードになっている曲も何曲かあるんですけど、「三文オペラ」での音楽はそういうものだけじゃなくて、本当にいろんなかたちの面白い曲があるんですよ。実際に演奏することによってその魅力に取り憑かれましたね。で、アルバムに入っている「ジゴロのバラード」という曲は、普段あんまりいろんな人が演る曲じゃないんですけど、ちょっと本当に独特な、不思議な魅力をもった曲で、柳原陽一郎にはピッタリじゃないかなぁと。

鈴木:ピッタリですよね。

芳垣:ちょっと訳詞しない?みたいなところから持ちかけて。

鈴木:訳詞もいいですよね。本当にどの曲も、訳詞も素晴らしくて。楽しいです。

樋口:聴いて内容が入ってきますね。

芳垣:どうせなら日本語でやりたいな、っていうのがあって。なので、日本語で詞をつくる力がちゃんとある歌い手に歌って欲しいって思いました。で、僕の場合はしかも、男の歌い手が非常に好きなので。

鈴木:確かに多いですね。

樋口:それは何故なんですか?

芳垣:何故ですかね。ひとつは多分、すごくやっぱりロックという存在はあるような気がしますね。60年代後半、70年代前半のバンド全盛時代の音楽に僕自身が惹きこまれた。みんな男じゃないですか、あの当時の歌い手は。

鈴木:確かに。

芳垣:ビートルズだって、ストーンズだってそうでしょ。ツェッペリンにしたって、、、みんな男じゃないですか。

樋口:そうですね。

芳垣:なんですかね。やっぱり歌と一緒にやるなら男がいい。で、日本語で詞をつくることがちゃんと出来る人。こんなこと言っちゃったらあれなんですけど、今のポップスによくあるような、私小説的な、なんか、自分はこうだ、自分はこうだ、っていうのが多いじゃないですか。そうじゃない意味での、本当に詞をちゃんと作れる人。で、男の歌っていうのが、まあひとつのキーワードだったんですね。ふたり(柳原陽一郎とおおはた雄一)を選んだ。

鈴木:ほんと絶妙なチョイスですよね。また2枚組のそれぞれの色が違うわけですよ。

樋口:カラーが出ていますね。バックのメンバーはみんな同じですもんね。

芳垣:もしかしたら1枚のアルバムに入れられるかな、とも思ったんですけど、やっぱりそれしないほうが。昔みたいにレコードだったら、裏表でかけ換えられるから、いいんですけど、CDはそういうわけにはいかないじゃないですか。

樋口:そうですね。

芳垣:やっぱりこれは分けないとダメだなあって。

 


音が馴染んでいる感じとか空気感とか、ちょっとした距離感を感じ取れるレコーディング方法

鈴木:インスト・アルバムの『Can't Help Falling In Love~好きにならずにいられない』ですが、タイトル曲の「Can't Help Falling In Love」はプレスリーのヒット曲ですね。後半に向けてどんどん盛り上がっていくアレンジですが、芳垣さんは結構こういうアレンジが好きですね。

芳垣:そうですね。静かに始まって、、

鈴木:ヴィンセント・アトミクスの頃からもう。(笑) これはサンタナに繋がるんじゃないか、みたいなね。(笑) 静かに始まって、、、最後ぐぉあーーーーって(笑)盛り上がるところがね。

芳垣:ルーツがそういうところですからね。

鈴木:これがまた、かっこいいんすよ。はまるんです。

芳垣:これはねえ、レディオヘッドのスタジオライブ・レコーディングの番組を見てるときに、6/8拍子でだんだん盛り上がっていくような曲があって、それを聴いているうちにプレスリーの曲をこんな風にアレンジできるんじゃないか、って思ったんですよ。具体的には、ハチロクというよりも、もうちょっと大きな3拍子から段々段々盛り上がっていって、(リズムが)細かくなっていってさらに盛り上がってくみたいにしたいなと。で、(青木)タイセイに相談してアレンジしてもらったんですけど、最初の僕のイメージと違ったので、何回かやりとりをしながら作っていきました。ちょっとずつライブでやってみてテコ入れをしながら作った曲ですね。

鈴木:今回の作品の録音方法が、マルチトラックでそれぞれの楽器を録って、それぞれを調整するというやり方ではないんですよね。

芳垣:マルチはマルチなんですよ。でも、例えば、ドラムはドラムの部屋に入って、ベースはベースの部屋に入ってというふうに、お互いの音が被らないようにして録って、ちょっと間違えたところは後で直せるよ、みたいな今の録り方ではないんです。今回は、マイクはもちろんそれぞれ皆のところに立ててあるんですけど、全員が同じ部屋に入ってステージのように並んで録っています。

樋口:ということは、お互いの音がひとつのマイクに被って入ってしまうんですね。

芳垣:被りまくっていますから、失敗するとそのテイクはおじゃん、という感じです。

鈴木:ああ、、、、

芳垣:しかも全員ヘッドフォンをせずに、、、

樋口:ええーーー!!

芳垣:モニターも出さずに、生音で(それぞれの楽器の)バランスを取りながら録音したんですよ。歌い手が入った時も同じで。

鈴木:ええーーー!!

芳垣:さすがにその歌い手がむこう向いて歌うと声が聞こえないので、バンドと真向かいに向かい合ってこっち向いて歌ってもらって。結果として、ボーカルマイクは楽器とは反対側向いてるんで、歌の人の被りは少ないんですけど。そういう状態で録りました。

樋口:おもしろいですね!

鈴木:あのまとまり感、一体感、っていうのはそこですかね?

芳垣:音が馴染んでいる感じとか空気感とか、ちょっとした距離感っていうのは、たぶんそういうレコーディングだったからだと思います。実はね、僕の学生時代からの知り合いが兵庫県の西宮北口でやってるジャズ喫茶があって、そこにパラゴン(JBLのスピーカー)が置いてあるんですよ。このアルバムを持っていって、そこで結構大きい音量でかけて聴いたんですけど、すっごい立体的に聞こえて。皆の座っている位置、ドラムがどこにいるとか、歌がどこにいるとかっていう立ち位置がすごい分かるんですよ。

樋口:聴いてみたい!


芳垣:昔のジャズのアルバムもそうじゃないですか。位置関係がよくわかる。なんかこう、前後ろの感じがすごくよくわかるじゃないですか。そういうのって、それぞれを別々に録って、例えばドラムは左から右へハイハットから始まってバーっと並べちゃって、ピアノも同じように低い音から高い音へ左から右にステレオで全部広げちゃうというような今の普通のレコーディング方法じゃなくて、同じ部屋で録ったりだとか、音が馴染むようなレコーディング方法の方が、逆によくわかるのかな、って感じがしますよね。例えばドラムは塊でこっち側にいて、ピアノここにいて・・・サックスが真ん中にいて、歌はここから拾うとか、その定位がちゃんと分かるような。あと、不思議な事に、モノラルのレコーディングも、距離感がわかったりするじゃないですか。左右とか無いはずなのになんでこんなわかるんだろうって。

鈴木:モノラルの話が出たんで、ビートルズのボックスの話をしたいんですけど。僕は、ステレオのボックスセットを買ったわけですよ。普通のファンだから。(笑)芳垣さんはモノのボックスを買ったわけですよ。で、その話をしてたら、芳垣さんが「モノ・ボックス聴いたことある?いいってもんじゃないよ、半端ないよ。」って言うんですよ。で、僕のステレオ・ボックスをお貸しして、モノ・ボックスをお借りして聴いたんですよ。そしたらもー、びっくりしましたね!音が全然いいし、バランスも違うし、ちょっとね、衝撃でしたね。

芳垣:あれはびっくりしましたね。ステレオじゃないのに余計に定位がわかるっていうか。スピード感とかね、すごくあるし。

鈴木:芳垣さんとのこのビートルズ・ボックスの件があったから、今回のアルバムの録り方だとかが面白いなと思ったんですよ。何でもかんでも最新のやり方でやればいいというわけではないなと。音の良さ、いい意味の良さ、っていうのは音楽の良さにプラスになることだから、やっぱり皆んな、もう一回真剣に色々考えなきゃいけないんじゃないのかなーって思いますよね。

芳垣:そうですね。あとね、時々行く札幌のジャズ喫茶で(オルケスタ・リブレの)アルバムをかけてもらったんですよ。そうするとね、音がちょっとぼやける。そのジャズ喫茶はいつもレコードをかけるんです。だから、アンプとかいろんなもののチューニングがレコード用になってるんですよ。そうするとCDの音がやっぱりちょっとぼやける。

樋口:面白いですね~。

芳垣:だから、レコードはレコードでやっぱり違う音なんだなって。あのパンチ力はレコードだからであって。その時に、アメリカのウエストコーストでやってたチャーリー・ヘイデンのカルテットのアルバムがレコードでかかってたんですよ。そしたら、ビリー・ヒギンズのシンバル・レガートとかが、すっごいもうゴーーって押してくるんですよ。チャーリーヘイデンの音も。

樋口:飛び出てきこえるみたいな。


芳垣:うわー、このシステムで聴いたらきっといいだろうなって、(オルケスタ・リブレ)のアルバムをかけてもらったら、皆の音がすっごくよく聞こえてくるんですよ。ただ、あのパンチがちょっと無い感じで。レコードはレコードでやっぱりひとつの音があるんだなっていうのをすごく思いましたね。だから、そういう所で聴いてくれる人に、アナログ盤を出したいんですよね。

鈴木:ヨーロッパの人ってたまにアナログ盤作って持ってきますよね。

芳垣:そうですね。ヨーロッパってもう、配信のシステムがすごく盛んになってきてるんで、配信で出しておいて、特別なものはレコードを作る。っていう感覚になってる。

樋口:個人的にはそれは嬉しいなあ。

芳垣:でね、面白いのは、結構ちゃんとしたプレス工場っていうのが各国にあるんですよ。デンマークにプレス工場がひとつあるんだけど、そこはちょっと高いので、安く作るにはハンブルグの工場にするとか。

樋口:なるほど。

芳垣:そのハンブルグだったり、どこそこのプレスは、こういう特色があるとか値段はいくらだとか、そういう事を作ってる人はみんな知っているんですよ。今回の音はこんな感じだからここでプレスしようっていうふうに作っているみたいですよ。

樋口:クラブ系もそんな感じで、ジャズもあるんですね。

芳垣:重量盤はここだったらいくらでプレスしてくれるとか。なんかそんな話ばっかりミュージシャンがしてるんですよ。

 

ヨーロッパでの評判は、本当に良かった

樋口:オルケスタ・リブレはヨーロッパにも行ったんですもんね。

芳垣:そうなんですよ。そういうふうにレコードとかも作っているデンマークのレーベルの連中が、コペンハーゲン・ジャズフェスティバルのオーガナイザーと知り合いで、出演することになりました。コペンハーゲン・ジャズフェスティバルっていうのは、日本の色んなジャズフェスを、たぶん10倍くらい大きくしたようなものです。

鈴木:結構でかいっですね。

芳垣:もう街中どこでもやってるんですよ。

樋口:何日くらいやってるんですか?

芳垣:えっとねえ、だいたい2週間。

鈴木:すごい規模だなあ。

芳垣:で、せっかく行くんだから、頑張って他の土地でもやってこようと思って、ロンドンのジャズクラブと、パッサウっていう南バイエルンでオーストリアとの国境の近くにある世界遺産みたいな街、あとスイス各所などで演奏しました。

樋口:メンバー全員で行かれたんですよね?

芳垣:全員でいきました。

鈴木:すごいですね(笑)

樋口:リアクションはどうでしたか?

芳垣:評判は本当に良かったですね。お客さんがほんとすごく盛り上がってくれて。

鈴木:それはやっぱり、向こうでお客さんがアンテナを伸ばして、来てくれたっていうことですよね。そういうのって一番難しいじゃないですか。例えばヨーロッパからいいバンドが来ても、日本の人にそれを知らせるのは難しいし。知らないバンドを聴いてもらうっていうのは本当に難しいですよね。そんな中で来てくれたっていうのは、やっぱり素晴らしいことですね。

樋口:ピットインでは、10月29日にライブがありますね。

鈴木:これは、いわゆる、インストのオルケスタ・リブレでの出演です。


芳垣:6月から7月まで、ボーカリスト(柳原陽一郎、おおはた雄一)やピアニストのスガダイロー、タップダンサーといったゲストをいれたバンドという形で駆け抜けてきたので、10月29日は、ヨーロッパでやってきたのと同じような感じで、バンドだけでみっちりとやります。ヨーロッパで新たにやった曲なんかもあるし、歌の人と一緒にやってた曲とか、ダイローを入れてやったエリントンなんかも、バンドだけでやれるようにアレンジしてみたりとか考えています。

鈴木:なるほど、それは面白いですね!

芳垣:ゲストを向け入れての活動も、交互にというか並行してやっていきたいなと思っています。あとは、音楽が中心なんだけど、ちょっと違う分野の人とコラボレーションするっていうっていうような事も、今年は試してみたいなあと思っています。

鈴木:本当にいい意味で、すごいスピードでいろんなことが今動いてる感じがしますね。

芳垣:大変ではあるんですけど、やりがいがすごいあるというか。

鈴木:何か色々できそうなバンドメンバーなんでしょうね。

芳垣:メンバーは本当に面白い人達が集まっています。自分で言うのもなんなんですけど、メンバーを選ぶ目は持ってるなと。(笑)

 


芳垣安洋
芳垣安洋
1959年生まれ。関西のジャズエリアでキャリアをスタートさせ、モダン・チョキチョキズ、ベツニ・ナンモ・クレズマー・オーケストラ、渋さ知らズなどに参加後上京。山下洋輔、坂田明、梅津和時、巻上公一、菊地成孔、オオヤユウスケ、高田漣、小島真由実、浜田真理子、カヒミ・カリィ、UA、原田郁子、Jhon Zorn、Bill Laswellなど様々なミュージシャンと共演。現在、ROVO、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ、南博GO THERE、アルタード・ステイツや自己のバンドVincent Atmicus、Emergency!、Orquesta Nudge!Nudge!等のライブ活動の他、蜷川幸雄や文学座などの演劇や、映画の音楽制作も手掛ける。メールスジャズフェスを始めとする欧米のジャズや現代音楽のフェスティバルへの出演や、来日するミュージシャンとの共演も多く、海外ではインプロヴァイザーとしての評価も高い。レーベル「Glamorous」を主宰する。

芳垣安洋 オフィシャル・サイト

うたのかたち ~UTA NO KA・TA・TI

■タイトル:『うたのかたち ~UTA NO KA・TA・TI』
■アーティスト:Orquesta Libre
■レーベル:GLAMOROUS RECORDS / ewe
■型番:EWGL13
■発売日:2012年7月4日
■価格:3,000円(税込)

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Can't Help Falling In Love~好きにならずにいられない

■タイトル:『Can't Help Falling In Love~好きにならずにいられない』
■アーティスト:Orquesta Libre
■レーベル:GLAMOROUS RECORDS / ewe
■型番:EWGL15
■発売日:2012年7月4日
■価格:2,500円(税込)

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オルケスタ・リブレ ライブ情報
■10/29(月)@PIT INN
昨年末のレコーディングから始まった柳原陽一郎、おおはた雄一らのシンガーとの共同作業、スガダイローやタップダンサーとのコラボレーションでのエリントンサウンドの再構築、などなど様々な試みを一挙に演じた初夏のPit Innでの3daysに始まり、ヨーロッパツアー、フジロックフェス、と結構な勢いで突っ走ってきたオルケスタ・リブレの上半期も一段落という感じです。ヨーロッパツアーの報告も兼ねて、バンドが深化してきたさまを皆さんに見てもらいたい、と気合いを入れてお届けするリブレの素顔です。晩秋のミニツアーへの助走でもあります。乞うご期待ですぞ!!!
芳垣 安洋

■11/26(月)@桜座 (山梨・甲府)

■11/27(火)@TOKUZO (愛知・名古屋)

■11/28(水)@深川江戸資料館 小劇場 (東京・深川)


芳垣安洋 注目ライブ情報
■10/6 (土)@横濱 JAZZ PROMENADE 2012
芳垣安洋 「Duke Elington, Sound of Love」

 

<Orquesta Libre LIVE @ PIT INN>

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