他の媒体でのオススメ盤を紹介するときにも実はE.S.T.の作品を挙げることが多いのですが、いつも2006年作品の『Tuesday Wonderlnd』を紹介してるので、今回は同じくらい好きなこの2003年作品の『Seven Days of Falling』にしました。
先進的なアプローチ、多彩な曲調、緊張感溢れる3人のインタープレイと非のつけようのない内容で、しかも全ての曲がメロディックで1曲1曲の個性が際立った均整の取れたアルバムです。まさに傑作。
Title : 『Seven Days of Falling』
Artist : Esbjorn Svensson Trio
LABEL : ACT
発売年 : 2003年
【SONG LIST】
01.Ballad For The Unborn
02.Seven Days Of Falling
03.Mingle In The Mincing-Machine
04.Evening In Atlantis
05.Did They Ever Tell Cousteau?
06.Believe, Beleft, Below
07.Elevation Of Love
08.In My Garage
09.Why She Couldn't Come
10.O.D.R.I.P
現代のジャズトランペッターの作品、特にウィントン・マルサリス以降の創造的なトランペッターの作品は音楽的にも素晴らしいのだが、非常に技巧的でリラックスして聴くことの対象にあるものが多いと感じます。しかし技術的にも音楽的にも成熟したNicholas Paytonが、一切テクニックをひけらかさずに非常にリラックスした雰囲気で録音した『Into The Blue』ほど純粋に「音楽」を楽しめるトランペッターのアルバムはなかなかないと思います。
4. Chinatown
Jerry Goldsmith作曲の、ピアノの弦のサウンドから始まる特徴的なバラード曲。もともと映画音楽で原曲もトランペットで吹かれている曲の様ですが、ここではNicholas Paytonが彼なりのメロディーの吹き方でストーリーを語ってくれます。
5. The Crimson Touch
Paytonのトランペットとピアノのユニゾンが特徴的な、いかにも現代のブラックミュージックテイストの曲です。このPaytonのトランペットソロも圧巻なので聴いていただきたいです。おそらくバンドでの録音後にPayton自らシンセサイザーで重ねている様子です。トランペットソロ後のトランペットとピアノのユニゾン(シャウトコーラス)も見事に作曲されていて、美しい作品です。
6. The Backward Step
トランペットがメロディーを奏でて始まりますが、この曲は現在でもPaytonの重要なライブ・レパートリーで、ライブによっては歌詞がついて歌われているバージョンもあります。ちなみに今のライブではPayton自らがピアノ(ローズ)を弾き、同時にトランペットを吹いている場合が多いです。僕もこの曲をなんども生で聞きましたが、毎回驚愕のプレイを目の当たりにしました。
9. Fleur De Lis
ニューオリンズ・テイストのグルーブから始まる曲。やはりPaytonは自身のルーツを非常に大事にしていますね。メロディーもトランペットとローズ・ピアノのハーモニーがとっても美しく響きます。Kevin Haysはローズのビブラートを非常に心地よく設定していて、魅力的なサウンドを引き立てています。
10. The Charleston Hop (The Blue Steps)
このアルバム唯一のラテン調の曲。テーマが終わった後のKevin Haysのソロの入り方がしびれます。注目してみてください。そしてここにきてPaytonも熱量のあるトランペット・ソロをようやく聞かせてくれるという構成。このソロは相変わらず圧巻の技術とスタミナを惜しみなく店、それでなおかつ音楽としての魅力を損なわない素晴らしいソロを展開してくれています。
いかがでしたでしたか?
また次のDisc Reviewでお会いするのを楽しみにしております。
文:曽根麻央 Mao Soné
Recommend Disc
Title : 『Into The Blue』
Artist : Nicholas Payton
LABEL : Nonesuch
NO : 7559-79942-4
発売年 : 2008年
【SONG LIST】
01. Drucilla
02. Let It Ride
03. Triptych
04. Chinatown
05. The Crimson Touch
06. The Backward Step
07. Nida
08. Blue
09. Fleur De Lis
10. The Charleston Hop (The Blue Steps)