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bar bossa vol.54

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vol.54 - お客様:庄野雄治さん(aalto cofee)


【テーマ:14ℊをはじめようと思ったときこんな店にしようと思った曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回は徳島のaalto cofee(アアルトコーヒー)の庄野雄治さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですが、お飲物はどうしましょうか?


庄野;日本のビールを。小瓶で。褐色のボトルがいいな。


林;なるほど。庄野さんってバーではそういう注文をするんですね。うちは日本のビールはCOEDOというものを扱ってまして、じゃあCOEDOの白にしますね。さて、庄野さんはお生まれは僕と同じなんですよね。


庄野;1969年7月7日徳島市生まれです。


林;あ、僕8月7日だから1ヶ月違いですね。小さい頃の音楽のことを教えてもらえますか。


庄野;小学1年生でオルガン教室に行って、1年でやめました。はじめて買ったシングルは「哀・戦士」アルバムは『A LONG VACATION』ですね。


林;お、ロンバケ! 他には。


庄野;叔母が音楽好きでとにかくビートルズをよく聴かされたのですが、ちっとも良さがわからず今に至ります。ビートルズとストーンズを通らないで音楽を聴いてきました。


林;また庄野さんらしいというか... 中学以降はどうでしょうか?


庄野;中学校で佐野元春と甲斐バンドに嵌りました。NHKのラジオ番組サウンドストリートの影響かしら。高校のときにバンドを。ルースターズ、エコーズ、ロケッツのカバーでボウイが全盛のときにひかれました。宝島やビックリハウスを読む田舎ではイケていると思っている自意識過剰な友人の少ない学生でした。そのわりにどうしてバンドなんてやれてたのかは謎です。


林;僕もバンドやってたんで、たぶんすれ違ってたんでしょうね。さて高校卒業後は?


庄野;名古屋の大学に行き軽音サークルに行ったのですがあまりの体育会系な感じに1日でやめ、後ろの席になった男前のサッカー少年をだましバンドを組みました。DOLLのバンドメンバー募集で知り合ったギターとドラムと4人でなぜか名古屋のクアトロでライブやってました。なぜかボーカルギター。詩と曲を作っていたという理由とまったく楽器の才能がなかったためです。


林;庄野さん、僕も全く同じです。楽器の才能がなくて詩と曲を作るとそうなりますよね。その後は?


庄野;大学を卒業後徳島の旅行会社に就職しました。小中の同級生と再会し、ふたりで宅録をはじめる。DAVID MARKというグループ、なぜか2014年に自主でCDを作りました。これは恵文社などで販売していただいています。


林;徳島で勤めながら自主制作CDですか。珍しいパターンですね。で、お店はどういうきっかけで始めたんですか?


庄野;36歳のときに妻と娘(生まれたばかり)のときに開業しました。10年以上自分には合わない会社員という組織にいたのが嫌で(子供と同じ理由です)30 歳を越えた手になんの職もない男が出来ることを考えて、なんとなくできそうだと思いはじめました。はじめた瞬間大間違いだと気付きましたが。10坪の小さな借りた店舗。日銭がほしいので11席の小さな喫茶も併設しました。

自家焙煎と言う文字はNG、なに屋かわからない変な店でした。一円でも赤字になったらやめてやろうとはじめたら10年間僅かですが右肩上がりでなんとかなってます。詳しい話は近刊「誰もいない場所を探している」で(笑)。


林;あ、庄野さんの「誰もいない場所を探している」を読めば詳しくわかるんですね。お店をやりたいという人、是非、チェックしてみて下さい。さて、これみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


庄野;コーヒーも本も同じだと思うのですが(その3つにしか興味がないので)必要な人に届けるのではなく、必要だと気付いてない人に届けるということに重点を置けばどうにでもなると思っています。


林;え? どういうことですか?


庄野;要はマニアの話など聞かずにセブンイレブンのコーヒーを飲み始めた人、西野カナを聴いている人、ライトノベルズを読んでいる人、可能性のある人たちを否定したり馬鹿にしたりする人たちがカッコ悪いんだっていう感じになれば未来は明るいと思います。

ジャンルを殺すのはいつの時代もジャンルの信望者ですから。レコード、デジタル、ライブ。結局美しいメロディー、揺れるベースライン、痺れるギターリフ、踊るドラムは誰かの耳に心に残ると思います。残れば誰かに伝えるでしょう。音楽の未来はずっと一緒。小林秀雄のいう通り「人類のなかに進化なんてない、ただ変化しているだけだ」音楽もそうだと思っています。


林;なるほど。庄野さんの哲学がわかりました。さて、これからはどうされるご予定ですか?


庄野;とりあえず徳島っていう地方都市で革命を起こします。同志がひとりいます。3人目のメンバーにどうですか。


林;僕ですか? 何かありましたら声をかけてください。他には?


庄野;文は書きます。芥川賞とると言っちゃったので。って1編たりとも小説書いたことないですが。でもなんだかとれそうな気がしています(笑)。

コーヒーはずっと焙煎します。それが私の背骨で唯一人に認めてもらえたものなので。欲してくださる人が一人もいなくなるまでは焙煎し続けます。


林;芥川賞とる宣言の後に、焙煎は続けるって良いですねえ。期待しております。では、みんなが待っている選曲に移りますが、テーマは何でしょうか?


庄野;「14ℊをはじめようと思ったときこんな店にしようと思った曲」です。真面目な話、地方都市で足りないのは文化だと思っています。アウトバウンドの小林君に内装什器のデレクションをしてもらえる話になって、すごい店にしなければとガチガチのカッコいい店にしなければいけないと思ったのだけれど、東京のように文化があって細分化した場所でいきていくような店ではダメだなあと思い、雑多なものを受け入れた上でなにかしらわからぬ品のある店にしたいと思いました。

それを言葉にするとうまく伝わらないので施工業者さんをはじめかかわる人に音楽を聴いてもらいました。こんな感じの場所を作りたいんだって。

性急で切なくてカッコよくて揺れて美しい場所。そんな10曲です。


林;音楽を施工業者の人たちに聴かせたんですね。それは期待します。


01. Luna - California (All the Way)

庄野;私の半分はルーリードで出来ている。そしてここにも同じ人がいた。はじめてギャラクシー500を聴いたときに自分がいたと思った。そしてLUNAを聴いたときに歓喜の声を上げながら泣いた。セカンドのこの曲を聴いたとき私は救われた。


林;おお、庄野さん、こういう趣味なんですね。カッコいいですね。期待がふくらんできました!


02. ニーネ タイ料理

庄野;最初渋谷のタワーレコードでファーストアルバムを買った。ボーナストラックで入っていた小沢健二の恋しくてのカバーに震えた。そうか音楽は自由でいいんだ。って音楽以外もそうかも。好きなものを好きっていいんだって教えてもらった。タイ料理タイ料理って。


林;庄野さんの選曲、もしかして全部知らないアーティストかもって気がしてきました。曲もですが、歌詞もすごく良いですね。


03. Gil Scott Heron - Me and the Devil

庄野;元祖ラッパーでおなじみの(そうなのか)ギル。なんだかね、歳をとってもカッコいいって。しかも昔のことをやるのではなくしっかりその時代の空気を感じ、どう考えてもその時代の最先端の若者の200倍はカッコいい。カッコいいっていうのはこういうことなんだと教えてもらった。


林;ギル・スコットヘロン! 進化し続けますよね。こうありたいものです。


04. Pavement - Elevate Me Later

庄野;なんだろう言葉っていうのかな。永遠のマスターピース。ビートルズやストーンズ聴いてるヒマがあるのならペイブメント聴けよ。技術よりもセンス。センスを具現化するための技術。技術というものの多様性を知った曲。


林;なるほど、ペイブメントの「センスを具現化するための技術」。庄野さんらしい言葉です。


05. Pedro Luis e A Parede.flv - Moto Boy

庄野;林さんの店だしブラジルも1曲くらいはと思い選んだ曲。彼らのレコードを2枚持っている。ブラジル人らしい。そして彼らを聴いてヒップホップはやめようと思った。持って生まれたものが違いすぎる。だからなに?じゃない。そういうことだよ。


林;確かにブラジル人のこういうセンスを耳にすると、「持って生まれたものが違いすぎる」っていう感想を持ってしまいますね。確かに。


06. BOaT - ネガティブコンディション

庄野;ナショナリズムがないでおなじみの私があえて言う。日本のバンドで一番素晴らしい。そして一番素晴らしいアルバムに入っている曲。音楽は楽しいほうがいい。


林;庄野さん、本当にいろんな音楽をチェックしているんですね。施工業者の方たち、楽しんだろうなあって思います。


07: 前奏曲 作品28の15「雨だれ」 ショパン

庄野;どんな音楽を聴くときも歌詞カードを見ないし解説も読まない。だから何を言ってるかわからないし、例えばこの曲がどんなに優れているかなど全く知らない。クラシックなどつまらぬものだと思っている、ショパンだってフーンって思う曲が殆どだ。だけど気付くと別れの曲とこの曲を聴く自分がいる。そしてホルヘ・ボレットの演奏が好きだ。彼がどんな人かは知らないけれど。


林;また庄野さんらしいコメントを。


08: NUMBER GIRL - OMOIDE IN MY HEAD - last live

庄野;CD版ではダメだ。ライブのピッチじゃなければ。はやいJAM。でもJAMにはやい曲はない。ならばこの曲は私の理想の曲ではないか。3コードさえあれば世界を変えることが出来る。そう信じていたころに聴いていれば世界を変えることが出来たかもしれない。


林;「はやいJAM。でもJAMにはやい曲はない。ならばこの曲は私の理想の曲ではないか」に心を奪われました。


09: Belle & Sebastian Little Lou, Ugly Jack, Prophet John

庄野;美しいメロディーと美しい声。それがここにある。


林;「私の半分はルーリードでできている」という言葉がよくわかる選曲です。


10: the MODERN LOVERS "Government Center" 1972

庄野;モダーンラバーズってバンド名をつけられるジョナサン・リッチマン。これ以上かっこいいクレジットってあるのかなあ。ロックンロールはどこまでいっても彼らには敵わないよ。だってジョナサンリッチマン&モダンラバーズだもん。


林;あ、そう言われてみれば、modern loversの意味、考えたことがなかったです。そうかあ。そしてこれを最後の曲にする庄野さん。これはみんな徳島に行って、この曲たちをイメージした14ℊに行かなきゃですね。僕も行きましたが、すごく良いお店ですよ。あと、お店に出ている庄野さんの奥さまが綺麗です。

庄野さん、お忙しいところ、どうもありがとうございました。
これを読んでくれている方、是非、徳島のaalto coffeeと14ℊに行ってみて下さい。


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■タイトル:『誰もいない場所を探している』
■著者:庄野 雄治
■発売日:2015年10月27日
■出版社: mille books
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凡人には凡人の生き方がある。一流でも二流でも三流でもない、普通の人が地方でお店を続けていくために本当に必要なこと。コーヒー業界が冬の時代に、何の経験もないまま徳島でコーヒー屋を始めたアアルトコーヒー・庄野雄治。夢も希望もなかった男が、楽しく幸せに暮らしていくために実践した37のアイデア。地方でお店を始めたい普通の人、必読の1冊です!『飲食業の経験もなく、ましてお金も人脈も才能もない私でも、何とかフリーランスで十年生き延びることができた。もがき苦しんで、いっぱい間違い失敗してきたからこそわかったことがたくさんある。生まれてこの方、世界と折り合いをつけることができず、日々格闘している私のような人間でも何とかやっていけるんだよ、と伝えたい。
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今年は暖冬ということでしたが、やっと本格的に寒くなってきましたね。音楽を愛するお店、世界にはまだまだたくさんありますね。それではまたこちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林伸次


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bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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