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bar bossa vol.12:bar bossa

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vol.12 - お客様:田仲昌之さん「21世紀以降の日本の音楽」


いらっしゃいませ。

月の後半はゲストを迎えて、「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という趣旨の選曲をしてもらいます。今回は音楽プロデューサーとして活躍している田仲昌之さんに登場してもらいます。

林(以下H)「いらっしゃいませ。あ、可愛い奥様もご一緒ですね。さっそくですがお飲み物はどうしましょうか?」

田仲(以下T)「また林くん、最初から何か言いそうな雰囲気ですね。僕が今まで一緒に来ていた女の子の話とかやめて下さいよ。」

H「田仲さんは開店当初から来てるから人生色々ですよね。あの、今の奥様が一番可愛いです。」

T「またビミョウなことを。ええと、カイピリーニャお願いします。」

H「かしこまりました。ええとでは早速なのですが、田仲さんの音楽体験なんかを。」

T「はい。6才上の従姉が隣の家に住んでいて彼女が聴いていた音楽にとても影響を受けました。自分が小学校高学年頃に彼女はユーミンとかサザンとかナイアガラなんかを良く聴いていて、自分も彼女の持ってるそれらのLPを一緒に聴かせてもらっていました。中学生になるとMTVの影響などで洋楽を聴くようになりました。当時好きだったのはホール&オーツとかワムとかデュラン・デュランとか(笑)。音楽好きの友達と盛り上がっていたのは輸入盤の12インチレコードを集めることでした。月イチくらいで小遣いを握りしめつつシングルとは違うリミックスやロングバージョンの音源を横浜元町にあったタワーレコードまで漁りに行ってました。何人かで分担してレコードを買ってそのレコードを廻し合ってカセットテープにダビングしオリジナルテープを作ってましたね。高校に入ったころ丁度日本のインディーズバンドが盛り上がり始めたころで地元近くのライヴハウスやインディーズを扱ってるレコード店に頻繁に通ってました。まさにバンドブーム夜明け前といった感じ。有名・無名問わずいろいろなジャンルのアーティストやレーベルが混在していて海外にも負けないほどとてもスリリングで面白いシーンでした。地元の友達とバンドを組んだのもその頃ですね。当時はボウイとかブルーハーツとかラフィンノーズなどのコピーバンドを演ってましたね(笑)。地元のホールを借りて楽器などを調達してチケットやチラシを作って配って、自分達でライヴの企画と制作と演奏と全てをやっていました。これは考えるといまの自分の仕事(イベント制作)の原点みたいなことだったと思います。高校の後半~20代前半のころは渋谷系とUKインディーズでしたね(笑)。割とどちらともアーティストというよりはレーベル基準で聴いてましたね。日本のレーベルだとクルーエルとかベリッシマとかエスカレーターとか。海外レーベルだとラフ・トレードとかクリエーションとかエルとか。JAZZを意識して聴き始めたのもこの辺りからですね。最初はトーキング・ラウドとかアシッド・ジャズから。踊る為のJAZZってコンセプトがとってもクールでカッコ良かった(笑)。ブルーノートやインパルスやプレスティッジの再発盤なんかも聴いていました。ちょうどハウスも入って来てクラブにも遊びに行き始めたころでした。このころの音楽シーンは、日本も海外も今よりもボーダレスだった気がしますね。全世界的に同じムーブメントの渦の中に居たような。クラブで掛かる音楽をキッカケとしてロックやジャズだけではなくボサノバやレゲエ・スカやエレクロ二カといった色々なジャンルの音楽にも触れるようになりました。」

H「なるほど。田仲さん、僕と同じ学年なので全く同じ体験をしてますね。ちょっと恥ずかしくて『(笑)』が多いのもすごくわかります。あの、たぶん何度も田仲さんは「音楽業界だけを仕事にしようかな。」と思ったことがあると思うのですが、やらなかった理由とかは?」

T「いまでも音楽だけでやっていけるならやりたですけどね(笑)。まあ冗談はともかく。アーティストは別ですが、自分の廻りは不思議と音楽だけにガッツリ関わってるっヒトって案外少なかったんですよ。それに違う目線や遊びの感覚を持っているヒトのほうがなんだか面白いことをやってるなあって感じもしていたんで、別に音楽業界のど真ん中に身を置いてなくてもいいのかもと(笑)。有難いことに違う仕事をやりながらも音楽の現場の端っこの方にずっと居させてもらってるんで今はその立ち位置でいいのかもなんて思っています。」

H「田仲さんの具体的な活動内容を教えてもらえますか?」

T「渋谷FMでは幼馴染の音楽ライターと一緒に約10年近くある番組の制作をやっていました。昔NHK-FMのサウンドストリートで佐野元春がDJをやっていた『元春レディオショー』のような番組を自分達で再現させたいみたいというのがコンセプトでした。丁度番組を始めたころに、今は吉祥寺でカフェをやっているmoiの岩間さんと出合いました。岩間さんはまだmoiを始める前でアメリカ現代文学を紹介する『アメリカンブックジャム』という雑誌の編集に関わっている時でした。ジャック・ケルアックをはじめとする『ビート・ジェネレーション』に互い興味を持っていたことをきっかけにその時代の東京のビートを残せるようなポエトリー・リーディングのCDを制作してみようということで、共同で『Travelin' Word』というCDを制作しリリースしました。現在はRONDADEというインディーズレーベルのスタッフをやっています。実は自分でも自分達のレーベルを的確に説明するのがとても難しくて。レーベルとしてはCDのリリース以外にもZINEの編集・出版やイベントのプランニング&制作など多岐に渡り活動させてもらっています。ちなみにこのblogのvol.6で松原繁久さんがご紹介してくださった the young group『14』はRONDADEからリリースしました。」

H「CDがなくなる話とか、世界の音楽コンテンツ状況はどうなっていくと思いますか?」

T「常に最新のコンテンツに更新されていくことは間違いないと思いますが、レコードやCDのような音楽を聴く為の環境にちゃんとフィットするコンテンツが完成しない限りは(完成しないかもしれませんが・・・)いまと同じような状況がずっと続くのではと思います。」

H「では今の日本の音楽状況についてはどう思いますか?」

T「日本の音楽業界に関して言えばここ15年くらい『いま売れる音楽』しか作ってこなかった。売り方も含めてこれで本当にいいのか?と言ったことは常に感じますね。実際に音楽を聴く若いリスナーをちゃんと育てられて無いのでは?という思いもある。シンプルに考えれば、例えば100年後に聴かれる音楽とまで行かなくても20年後も聴かれるような音楽であるか?ってことを意識してモノを創っていくことが重要なのかなと。まあこんなことは当たり前と言えば当たり前のことですが・・・」

H「なるほど。それでは選曲に移りましょうか。テーマは『21世紀以降の日本の音楽』で選んでもらっていますが。一曲目は?」

haruka nakamura - 音楽のある風景



T「この曲はJ-Waveの朝のある番組の中で、平日のほぼ同じ時間にコーナーのブリッジとしてオンエアーされていて、この曲がラジオから流れてくると不思議と朝から昼へと空気が切り替わる感覚になります。生活の中に音楽が当たり前に存在することがこんなにも幸せなことなんだと改めて気付かせてくれた1曲。」

H「ハルカナカムラさんのこの曲、素敵です。うちにも時々来店してくれています。さて次は?」


坂本 慎太郎 - まともがわからない



T「元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎の2枚目のソロシングル曲から。サウンドは80'sのAOR的なテイストで有りながらも、ACID感たっぷりの歌詞のひねくれ具合がとてもいいなあと。この曲を初めて聴いたときこれが現代のCITY POPなんだと感じました。」

H「ソロになってからすごく爽やかで良いですよね。僕も好きです。さて次は?」


Lakeと児玉奈央 - おはよう~india reprise



T「長久保寛之(gt) 伊賀航(b) 北山ゆう子(dr)といった腕利きセッションミュージシャンが中心となって結成されたLakeが、児玉奈央をヴォーカルにフィーチャーした楽曲です。楽器の音の鳴りや楽曲の隙間感にゾクゾクっと来る瞬間があって、自分にとっての好きなJAZZの定義ってそこなのかもって最近思いました。この曲はある意味JAZZでは無いのかもしれませんが、聴くたびにゾクゾクっと来てしまうので自分にとってはJAZZです(笑)。」

H「実は今回の田仲さんの選曲が一番知らないアーティストばかりだろうなあ。楽しみだなあと思っていたのですが、この人たちカッコイイですねえ。確かにJAZZです。次の曲はどうでしょうか?」


toe - Path



T「最近は日本だけでなくアジアや欧州でも絶大的な人気を誇るまでになったポストロックバンド。PVを観てもらえれば判る通りこのバンドの面白さはライヴにあります。フィジカルなバンドと言うのかな? まるでスポーツを観戦してる時に感じるような緊張感と高揚感がこのバンドのライヴにはあります。」

H「さすが詳しいですねえ。このバンドもカッコイイです。すいません、僕、不勉強で。観客が男性ばかりなのがすごく納得ですね。さて次は?」


dry river string - silent truth



T「up and comingというメロコアバンドのフロントマンだった干川弦が京都で結成したバンドがこのdry river stringです。アコースティックサウンドの中に背筋がピーンと伸びている姿勢の良さを持っているバンドと言った印象でしょうか?学生時代にUKインディーズのレコードをいろいろと探し廻って聴いてた頃、こんな空気感のバンドがとても好きだったことを思い出したりしました。」

H「おおお。これもカッコイイですね。音が日本人には聞こえないですね。これは僕もど真ん中です。さてさて次は?」


WUJA BIN BIN - SAFE DRIVING



T「WUJA BIN BINは13名の大所帯プログレッシブ吹奏楽バンド。一聴するとイージーリスニングなんですが、よーく聴きこむと多ジャンルの音楽のテイストが見え隠れしています。フランクザッパやジャコパスのビックバンドがモチーフだったりもするみたいですが、このミックスチャー感はまさに今の日本のサウンドそのものだったりするんだろなと。いま日本のバンドの中でいちばんライヴ観たいと思ってるバンドです。」

H「こんなバンドあるんですね。いやこの人たち、すごい世界ですね。確かにこの感じはいまの日本を感じます。さて次はどうでしょうか?」


LITTLE CREATURES - MOSQUITO CURTAIN



T「まあこの3人に関しては説明は不要かもしれませんが・・・マイペースな活動ではありますが今もなお進化をし続けているバンドです。個人的にはフリッパーズギターと彼等が居なかったら今の日本の音楽シーンはとてもツマラナイものになっていたのでは?と思っています。実は3人の演奏を初めて観たときにいつか彼等と一緒に何かがしたいと思ったことが音楽に関わる仕事を始めたきっかけでした。」

H「僕もこの3人を初めてイカ天で観たときはびっくりしました。その後、自分のお店に常連で来てくれるなんて想像も出来ませんでした。さて次は?」


acoustic dub messengers - kaeroukana



T「そのリトル・クリーチャーズが中心となって制作された『Sign Off from Amadeus』というアルバムからの楽曲。実はリリースが96年なのですが今回どうしても紹介したくてテーマとは外れてしまいましたが入れました。日本人の中にあるサウダージってどんな感じなんだろう?って考えたことがあった時、一番最初に思いついたのがこの曲でした。この曲は林くんにお店で何度かリクエストして掛けてもらったことがありますね?」

H「双子ちゃんが可愛いんですよね。昔はよくお店に来てくれてて、今でもたまに青山ですれ違ったりします。さて次は?」


青葉 市子 - 奇跡はいつでも



T「最近彼女のライヴを観ることがとても多いのですが、音楽のチカラって計り知れないなあっていつも思うんですよね。彼女の音楽を聴いているととても解放感を感じると同時に、身ぐるみ全て剥がされてしまったような恥ずかしさと後ろめたさも感じてしまう。自分にとっては彼女の音楽聴いたりライヴを観たりするのは実はちょっと勇気が必要なんです。」

H「田仲さんはそうとう昔からチェックしてましたよね。最近すごい人気ですよね。確かにすごく心が痛くなりますね。さてさて最後の曲ですが。」


GABBY & LOPEZ - Reflection



T「Natural Calamityの森俊二とTICAの石井マサユキによるギターデュオ。2人のギタリストが奏でるこの浮遊感がたまらなく好きです。脳内トリップ出来るチルアウトミュージック。思わずビーチに行きたくなります。」

H「田仲さん、好きそうですねえ。わかりますよ。この感じ。可愛い奥様と是非ビーチにお出かけ下さい。」




田仲さん、お忙しいところどうもありがとうございました。いつもお互い音楽の話はしなくてバカ話ばかりなので、うーん、さすがに田仲さん色々とチェックしてるんだなあと思いました。

田仲さんは @idyllic1970 というアカウントでツイートしています。RONDADEのHPはこちらです。
http://www.rondade.jp/

ご自分のレーベルを始めたいなあなんてお話も最近聞きました。すごく楽しみですね。

さて、もうあっという間に太陽の光が強くなってきて夏が近づいて来ましたね。夏休みの予定をそろそろ考えていることではないでしょうか。

それではまたこちらのお店で待っております。


bar bossa 林 伸次


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
 12:00~15:00 lunch time
 18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
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bar bossa vol.11:bar bossa

bar bossa


vol.11 - ドイツのリースリングとエレンコ・レーベル


いらっしゃいませ。

bar bossaへようこそ。

すっかり桜は散ってしまって、もう初夏の気配がしていますね。ゴールデンウィークの旅の計画なんかをしている頃ではないでしょうか。

さて、そんな明るい日差しが見え始めた季節にぴったりのワインを紹介します。


リースリング・トロッケン
リースリング・トロッケン


ドイツ、ナーエ地方のリースリング・トロッケンです。ドイツワインといえば、一昔前までは女子向けの甘ったるいワインという印象を持たれたものでしたが、最近のドイツワインは洗練されてとてもスタイリッシュな味わいのワインが増えています。そして、バール・ボッサでもこの春にそんなドイツワインを一押しします。
作り手はドイツ内外から高く評価されているアウグスト・アンホイザー家です。レモンなどの柑橘や白い花の香りがやさしく、爽やかな果実味とクリアーなミネラル、清涼感のある後口を特徴とするキレのある辛口白ワインです。


では、音楽の話に移りましょう。
今日はエレンコというインディーズ・レーベルを紹介します。このレーベルはジョアン・ジルベルトを世に出したアロイージオ・ジ・オリヴェイラが「所有する価値のあるレコード」というコンセプトで1963年に始めました。
しかし制作費はあまりなく、白のジャケットに写真を黒でのせるという単純なデザインになったそうなのですが、逆にこのデザインが斬新で、50年たった今でも全世界で「ボサノヴァと言えばエレンコのジャケットのデザイン」というイメージがあります。


Antonio Carlos Jobim / Antonio Carlos Jobim (ELENCO)
Antonio Carlos Jobim / Antonio Carlos Jobim (ELENCO)


エレンコはもちろんジャケットのデザインだけではありません。ボサノヴァ以前のブラジルの良質な音楽を紹介したり、面白いミュージシャン同士のライブアルバムを作ったり、新しい才能を発掘したりと様々な試みを続けました。

それでは僕が好きなエレンコの録音を5曲、紹介します。


Tom Jobim & Dorival Caymmi - Saudade da Bahia



これは当時もう大御所だったドリヴァル・カイーミが家族を連れて、アントニオ・カルロス・ジョビンの家に遊びに行って演奏をした、という設定の面白い録音です。曲はジョアン・ジルベルトも演奏したカイーミのボサノヴァ・スタンダードを二人で歌っています。


Vinicius : Formosa + Final



イパネマの娘をはじめ、多くのボサノヴァの歌詞を書いたヴィニシウス・ジ・モライスは元々は歌手というわけではなかったのですが、そんな彼を表に出して録音したのもエレンコ・レーベルの偉業です。これはスタジオ・ライブ録音です。熱い空気が伝わりますね。


Billy Blanco - Tchau mesmo



ビリー・ブランコはボサノヴァが始まる以前の1954年にアントニオ・カルロス・ジョビンと「リオ・デ・ジャネイロ交響曲」を共作した人なのですが、その後、華やかな活動はしていませんでした。そんな音楽家にこんなチャーミングな録音のチャンスをあたえるのもエレンコならではです。


A ESTRADA E O VIOLEIRO - SIDNEY MILLER & NARA LEÃO



エレンコはもちろん新しい才能も発掘しました。この曲はシジネイ・ミレールという当時の新進作曲家のアルバムからで、ナラ・レオンも参加しています。シジネイ・ミレールは日本ではあまり有名ではありませんが、当時のボサノヴァ界ではかなりの実力派だったようです。


Aloysio de Oliveira (Elenco)-O Máximo da Bossa-O Que é Bossa Nova Lado A



これはちょっと珍しい面白い録音です。レーベル・オーナーのアロイージオ・ジ・オリヴェイラが「ボサノヴァって何?」ということを語っているのですが、ずっとボサノヴァのビートが続いていてそこに色んな音をコラージュさせています。現代のリミックスという手法を先取りしていますね。


どうでしたか?
インディーズ・レーベルってメジャーにはない色んな魅力がありますよね。

それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林 伸次


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フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
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選曲CD、CDライナー執筆多数。
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bar bossa vol.10:bar bossa

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vol.10 - お客様:江利川侑介さん「ギタリスト大国ブラジル」


いらっしゃいませ。

月の後半はゲストを迎えて、「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という趣旨の選曲をしてもらいます。
今日は日本のレコード屋さんの良心ディスクユニオンでラテンブラジル音楽を担当している次の世代を支える若手ナンバーワンの江利川侑介さんに来ていただきました。

林(以下H)「いらっしゃいませ。今はお昼休みですか?」

江利川(以下E)「はい。ランチはいつもこの辺で、ロス・バルバドスさんに行ったり、ここでゆっくり本読んだりって感じなんです。あ、ラムカレーを大盛りでお願いします。」
H「かしこまりました。はい。ではサラダをどうぞ。ええと、早速ですが年齢とか小さい頃はどんな感じだったか教えていただけますか?」

E「いただきます。生まれは西東京の国分寺です。現在29歳です。実は小さい頃から感覚的にマイノリティで、あまりテレビに興味がなくて(笑)。小学校の頃はサッカーばかりしてました。下手だったんですけどね。でもサッカー始めたきっかけっていうのが、Jリーグの開幕戦でハットトリックを達成した鹿島アントラーズのジーコなんですよ。観衆の沸き上がる感じとか、ジーコの満面の笑顔に子供ながらに惹きつけられたんでしょうね。あのアレグリア感に(笑)。まさかそこからスタートしてこんな仕事をするとは・・・。それとボブ・マーリーは一番最初にミュージシャンとして意識した最初の存在です。車での旅行の道中、父が学生の頃に聴いていたモノを聴かされてたのがきっかけですね。」

H「お父さんがボブ・マーリーを聞いていたって、やっぱりお若いんですね。でも、どうしてこんなCDがなくなりそうな時代にCD屋さんで働こうと思ったのですか?」

E「吉祥寺の高校だったんですが都心生まれの奴らは高1の時点で今の僕よりイイ服着てて(笑)、当然音楽も洋楽から日本のインディーズまで色々知ってるんですよ。それが僕にとってはカッコいいことに映ったんですね。で当たり前のようになんとなくタワレコに行き始めた。高校のころは実家のケーブルテレビで音楽専門チャンネルを結構見てて。ナンバーガールとかゆらゆら帝国とか自分の好きなバンドを見つけてからは、彼らがオススメするアーティストを記憶して、ほぼライフワークのように毎週タワレコやユニオンに通ってましたね。買って全然聴いてないものもありますけど、パールジャムとか(笑)。
でまあ、そんな生活をずっとしてたものですから、ほとんど何も考えずに大学卒業してすぐにタワレコにアルバイトで入りました。まあ今も昔も目先の好奇心だけで行動してるんですけど(笑)、でもとにかく面白かったんですよ。特にワールドミュージックの担当になってからは、結構色々勉強しました。サンプルを片っ端から聴いたり、音楽史を学ぶために自腹で講座に通ったり。で、そのうち『日本で一番の店で働きたいな』と思い始めて。運良くディスクユニオンのラテンブラジル・フロアに入ることができました。」

H「なるほど。ただ好奇心のまかせるままに行動していると、今の仕事に辿り着いたってわけなんですね。面白いですねえ。周りの同い年の友人は江利川さんの仕事をどう考えていますか?」

E「『ブラジルとかラテンのレコードやCDを売ってるよー。』って言うと同年代の大半は『へー・・・』だけ。軽く流されますね(笑)。ブラジルとかレコードとか、普通の人にとって馴染みのない単語しかこの短い文章の中にないですからね。なんかいい自己紹介ないですか(笑)?」

H「いや。お友達が正しいと思いますよ(笑)。江利川さんはまだまだあと30年以上は音楽と付き合うことになると思うのですが、これからの世界の音楽産業、音楽状況はどういう風になると思いますか?」

E「国の事情によりけりでしょうけど、やっぱりブラジルの音楽産業は凄く興味がありますね。こんなマニアックなものよく作れるよなーって作品が凄く多いですよね、ブラジルって。最初は凄く不思議だったんですけど、色々知っていくうちに制度や伝統として音楽家がじっくりと活動できる体制が確立しているんだなってことがわかってきました。例えばカエターノのような大物ミュージシャンがサンバだったりブレーガといったブラジル固有の音楽を取り上げることで、焦点を当ててトレンド化していくような流れがまずは一つあります。そしてミュージシャンに対する公機関や企業からの補助金制度が充実していることも大きな要因でしょう。加えてとにかく今は景気が良い。ワールドカップとオリンピックの開催も控え、世界の中のブラジルという客観的な意識が高まれば、必然的に音楽を取り巻く環境も変わってくるでしょう。環境が変われば、当然音楽も変化する。去年出たアントニオ・ロウレイロの『ソー』はそういう変化を強く感じた一枚でした。
21世紀のトレンドを前提にこれからも発展していくブラジルが、音楽産業の今後を占ううえで一つの試金石になるんじゃないでしょうか。」

H「うーん。すごく前向きで真っ直ぐな希望を持ってるんですね。確かにブラジル音楽はこれからも何度も何度も世界の音楽を変革していくでしょうね。では江利川さん自身はこれからどういう風に動いていくつもりですか?」

E「やりたいことは無限にありますけど、ひとまず今年はブラジル音楽の社内レーベル発足と、南米へのレコード買い付け、昨年に引き続き物議をかもすような試聴会は何本かやりますよ(笑)。
10年後もできれば現場で働いていたいと思います。こんなに毎日知的好奇心を刺激される職場はそうないですよ(笑)。あとはお客さんが皆すごく面白い。物知りだし、皆さん凄く変わって・・・、いや、独自の価値観をお持ちなので、店頭に立ってる時が一番楽しいですね。ただ、1年くらい南米に住んでみたいなという思いもあります。」

H「まだレコードやCDを買ってる人って確かに・・・ 日本の音楽状況はどうなってほしいなあとかありますか?」

E「もっとたくさんの音楽に興味を持ってもらって、鑑賞してもらえたらいいとは思いますけど・・・、まあ現状難しいでしょうね。
現実的じゃないですけど、急速に移民が増えて混血が進めばとか、例えばですけど首都機能が九州に移転して東京一極集中が分散されれば面白くなるだろうなーとかは常日頃考えてますね。」

H「混血が進めばって... すごい発想ですね。確かにもう少し開かれると何かが変わりそうですが。では10曲に移りましょうか。テーマはどういうものですか?」

E「テーマは『ギタリスト大国ブラジル』です。家では比較的ブラジルのインストゥルメンタルを聴いていることが多いんですよ。特にブラジルはやはりギタリスト大国だなーと最近実感してます。1曲目はこれです。」

Chico Saraiva - De butuca na cozinha



E「僕の大好きなシコ・サライーヴァというギタリスト、ちょっと変わった曲を書くSSWです。こういうエルメートに通ずるような曲も書く一方で、ヴォーカル陣を迎えての歌ものアルバムも素晴らしいです。とりわけ作曲家としてのセンスが凄く好きですね。」

H「一曲目から江利川さんらしい感じですね。ブラジルからたまに出てくる変態作曲家タイプですね。次はどうでしょうか。」

Joana Duah, Edu Krieger, Sergio Krakowski - Descompassamba



E「このエドゥ・クリージェルというギタリストも素晴らしい曲を書くSSWです。マリア・ヒタが彼の楽曲を取り上げたことでも話題になりました。サンバやショーロでは7弦ギターがベースラインや対旋律を奏でたりしますけど、この曲でエドゥは8弦ギター弾いてますね。しかしこの3人、凄く難しいことをやってますけど、とても自然ですよね。こういうバランス感覚ってブラジル音楽の良さだと思います。」

H「ダニ・グルジェル周辺は面白いですよね。今、急いでPCの前でメモしている若者達が見えてきますね。それでは次は?」

Guinga - Cheio de Dedos



E「ブラジル音楽はこういう独特で美しいメロディやハーモニーの宝庫なんですよね。そういう意味でギンガはいつかきっちりプッシュしてみたいなと思ってたんですが、昨年元ラティーナ誌の花田さんのご紹介もあり濱瀬元彦さんという音楽家/音楽理論化の方に講演していただきました。場所は老舗ジャズ喫茶のいーぐるだったんですけど、大半を占めていたジャズのお客さんにも非常に好評でしたね。ちなみにギンガ、本業は歯医者さんです。バイタリティの塊って顔してますよね(笑)。」

H「ああ、ギンガも好きそうですよね。確かキップ・ハンラハンもギンガのこと好きなんですよね。どんどん行きましょうか」

Swami Jr - Virou Fumaca



E「バイタリティ顔といえばこの人、スヴァミ・ジュニオールもはずせません(笑)。様々なミュージシャンのサポートとしても有名で、ブラジル人だけではなくキューバ人ベテラン歌手のオマーラ・ポルトゥオンドのバンドでは個性派揃いのメンバーのなかバンマスを務めてました。彼の音楽も7弦ギター特有の響きが好きですね。」

H「バイタリティ顔といえばって、江利川さんもそういえば・・・いやいや。ブラジルってこういう伝統的なスタイルを大切にしつつ次へと向かうのが良いですよねえ。はい次は。」

Monica Salmaso & Paulo Bellinati - Canto de Iemanja



E「パウロ・ベリナッチというギタリストはクラシック方面からも非常に人気のギタリスト。このアルバムはバーデン・パウエル&ヴィニシウス・ヂ・モライスの『アフロ・サンバス』の楽曲をカバーした作品で、ヴォーカルは個人的には現在の実力No.1だと思うモニカ・サルマーゾです。」

H「えと、僕、このアルバム大好きなんです。握手して良いですか? あ、なんかホントにしてきた。男同士がキモイですね。いやあ、でも本当に良いですよね。もう何回聞いても泣きそうになるんですよね。あ、すいません。次は?」

Paulo Bellinati / Debussyan



E「このパウロ・ベリナッチの作品のなかでも、ボサノヴァ・ファンにオススメしたいのがGSP社からリリースされているガロート曲集ですね。ボサノヴァに限らずブラジルのギター・スタイルを大きく発展させたと言われるガロートですが、本人の録音は残念ながら現在廃盤なんですよ。コレはクラシック・ギターの会社からリリースされているので録音もすごくキレイです。」

H「すいません。もう一回握手して良いですか? あ、逃げてますね。僕もこれムチャクチャ好きなんですよ。」

Raphael Rabello - Modinha



E「ブラジル音楽史上最高のギタリストといってもいいハファエル・ハベーロも紹介しないわけにはいきません。若くして亡くなってしまったアーティストなんですけど、エリゼッチ・カルドーソとデュオ名義でアルバムを残すくらい、伴奏者の域を超えた存在としていまだに尊敬されているアーティストです。」

H「すごい人ですよね。輸血感染でHIVで亡くなったんですよね。」

Yamandu Costa - Samba pro Rapha



E「そのハファエルの現代版ともいえるのが、ヤマンドゥ・コスタですね。来日経験もあります。この曲は『ハファ(ハファエル・ハベーロ)に捧げたサンバ』という正になタイトル。いやーテレビのスタジオでこれですからね。もうかっこよすぎるでしょ(笑)。」

H「ブラジルってこういう男同士の愛みたいなのが良いんですよね。あ、だから逃げなくて良いですって。」

Andre Mehmari & Hamilton de Holanda - Sao Jorge



E「ちょっと変わったところでブラジル風マンドリン=バンドリンの名手、アミルトン・ヂ・オランダとピアニスト、アンドレ・メマーリのデュオ。曲はエルメートの曲です。この二人がエルメートとジスモンチの曲ばかりを演奏したCDがあるのですが、とてもブラジル音楽らしい作品なので是非聴いてほしいですね。なんていうか型からはみ出たまま躍動しているような感じですね。」

H「ブラジル風マンドリン=バンドリンという説明が、すごくレコード屋っぽいですね(笑)。こう考えるとエルメートとジスモンチってブラジルの弦楽器奏者にホント愛されてますよね。では、次が最後の曲ですね。」

Egberto Gismonti - Ciranda Nordestina



E「最後は今年も3/27に来日公演を行うジスモンチです。この曲を初めて聴いたとき凄く独特に聴こえたんですが、この奏法を知ってそりゃそうだよなあと(笑)。昔は普通のギターを使ってたらしいんですが、どんどん自分のために改造して、この映像では複弦4コース+4弦の計12弦ですか(笑)。ジスモンチの曲って誰が演奏しても濃厚にジスモンチというか、本当に作曲家としての個性が強烈な人ですよね。正に巨匠という言葉が相応しい天才です。」

H「ジスモンチはホント、ブラジルでありながら世界なんですよね。美しいですね。あ、カレー冷えちゃいますよ。早く食べないと仕事に戻れないですね。」




江利川侑介さん、今日はお忙しいところどうもありがとうございました。世界の音楽は江利川さんにまかせておけば問題なしですね。江利川さんは渋谷のディスクユニオンで働いています。「王子いますか?」と店頭で呼べば出てきますよ。

もうすっかり春ですね。休日の海に向かってのドライブはブラジルのギタリストの音楽をかけてみてはいかがでしょうか。
それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林 伸次


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
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bar bossa vol.9:bar bossa

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vol.9 - ヒヨコマメとほうれん草のベジ煮込みと現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集


いらっしゃいませ。

bar bossaへようこそ。
もうすっかり春ですね。お花見の計画をたてている頃ではないでしょうか。

bar bossaでは、ベジタリアン・メニューをいくつか用意しております。最近は「お肉はちょっと...」という方も多く、お野菜だけのメニューが喜ばれております。
今回ご紹介するのは、もともとはランチタイムのメニューとして用意したお食事ですが、「夜も食べたい」という方が多く、最近は夜も提供しております。


ヒヨコマメとほうれん草のベジ煮込み

ヒヨコマメとほうれん草のベジ煮込み


ひよこ豆とほうれん草の煮込みというスペイン料理があるのですが、それにスパイスを加え、カレー風にしてご飯の上にのせたものです。赤ワインを飲んで最後の〆にどうぞ。


では、音楽の話に移りますね。
お店で「小野リサをよく聴くんだけど、他に女性ヴォーカルのオススメありますか??」という質問をよく受けます。
前々回は1960年代当時の、前回は1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガーをご紹介したのですが、今回は最終回で「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」として5人紹介いたします。


1人目はホーザ・パッソスです。彼女は実は一度1978年にデビューしているのですが、その後出産してしばらくの間、子育てに専念して活動を休止します。そして80年代の終わりに再デビューして今はアメリカのレーベルからアルバムを出しているくらいの、世界で一番注目されているボサノヴァ・シンガーです。ちなみに彼女が演奏している時は観客席の中に(空想の)インド人の女の子が必ずいてくれて、じっと彼女の演奏を見守ってくれているらしいです。ヨー・ヨー・マとの素晴らしい演奏を聴いてください。


ホーザ・パッソス



2人目はアナ・カランです。彼女はアントニオ・カルロス・ジョビンに見出されて1987年にブラジルでデビューしました。その後、アメリカに渡り、ジャズファンに定評のあるチェスキー・レーベルから世界デビューを果たします。その後、インコグニートのブルーイがプロデュースしたアルバムで転機が来て、レッド・ホット・アンド・リオにも参加しています。現在は安定した実力のあるボサノヴァ歌手として世界中を魅了しています。


アナ・カラン



3人目はレイラ・ピニェイロです。彼女は1983年にMPB歌手としてデビューしました。例えばジョイスのような存在を想像していただければと思います。しかし、その後、ホベルト・メネスカルと出会い、1989年にブラジルで一番売れたボサノヴァ・アルバムと言われている「bencao, bossa nova」というアルバムを出してからは完全なボサノヴァ歌手として世界から注目されます。ちなみに最近はまたこんな動画のように、ギンガのようなマニアックなアーティストとの共演をする実力派の歌手という位置に戻りつつあります。


レイラ・ピニェイロ



4人目はイリアーニ・イリアスです。彼女はヴィニシウスとトッキーニョのバンドのピアニストとして活動を始めたのですが、1980年にパリでのツアー中にエディ・ゴメスに認められ渡米します。その後、ランディ・ブレッカーと結婚し、アメリカのジャズ界のピアニストとしてたくさんのアルバムを発表します。日本ではサントリーのCMのボサノヴァの曲を歌ったりしたので有名で、日本のボサノヴァ・ファン向けのCDも制作されています。ボサノヴァ歌手としてはもちろん、ジャズ・ピアニストとしても魅力たっぷりの人です。


イリアーニ・イリアス



最後はダニ・グルジェルを紹介します。彼女は上の4人と比べて若い世代です。なんと1985年生まれです。サンパウロのピアニストの母とサックス奏者の父との間に生まれ、写真家としても活動しているようです。このブログの第一回目でモニカ・サウマーゾという女性歌手を紹介したのは覚えていらっしゃいますでしょうか。音楽シーンとしては、あのサンパウロの新しいシーンと同じ場所で活躍しています。2008年にファースト・アルバムが発表されたばかりの、まだまだこれからが大注目の歌手です。是非、チェックしてみて下さい。


ダニ・グルジェル



いかがでしたでしょうか?
ちょっと駆け足で、ブラジルの女性ボサノヴァ歌手を紹介してみました。
今回紹介したような音源をお花見に持っていって、みんなで桜の木の下でスパークリングワインを飲みながらというのも素敵かもしれませんね。

それでは、また来月、こちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林 伸次


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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vol.8 - お客様:中村ムネユキさん「モテない男の10曲」


いらっしゃいませ。

月の後半はゲストを迎えて、「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という趣旨の選曲をしてもらいます。

今回は菊地成孔さんとのお仕事で知られる選曲家の中村ムネユキさんにおこしいただきました。


林(以下H)「いらっしゃいませ。今日はこんな西の田舎の渋谷までご足労、どうもありがとうございます。」

中村(以下N)「いやいや。僕はずっと下町育ちなんですけど。端的に言って西東京が肌に合わないんですよ。逃げ場がない感って言ってもわかりませんよねー(笑)・生活圏内に『明治通り』と『第一京浜』がないとどーもダメなんですよ。まぁこれは環七と環八を克服すれば良い話なんですが、あいつら懐が深いってか雄大すぎて・・・。うちから延々歩けばココBar Bossaまで来れるんですよ。下北沢とか代々木上原とか日野とか、もう精神的な不安がもの凄くて『果たしてオレ帰れんのか?』って今だに思うんですよー。」

H「そんな帰れないって... ええとではお飲み物はどうしましょうか?」

N「えと、今日はグラスワインは何が開いてるんですか?」

H「あ、これは読んでいる人にお伝えしたいのですが、中村さんのワインの知識の学習する時の早さ、正確さには本当にまいりました。ちょっと前に中村さんが『ワインを詳しく知りたい』というので、僕が『ジャズを知りたいならヨーロッパとかウエスト・コーストはとりあえず後回しにして、まずブルーノートの1500番台を聞くのが王道ですよね。ですからボルドー、ブルゴーニュをおさえた方が良いですよ』とお伝えしたら、あっという間にボルドー5大シャトーやブルゴーニュグランクリュを制覇して本当に詳しくなられたんですよね。」

N「いやいや。かなり散財してしまいましたが。あ、ではこのCh.フォンデュースをください。」

H「かしこまりました。では飲みながらで結構ですので音楽体験を教えてもらえますか?」

N「うちはレコードやらカセットやらCDやらのサンプル盤が送りつけられてきていたんですね。ガキの頃なんて暇なんで取りあえず片っ端から聴く訳ですよ。そんで何にでも耳を傾けることができる基礎が出来たって言うんですかね。で、幼稚園上がる前からヤハマ行かされて途中ピアノに転校して中学までやってました。当時はバブル末期~崩壊という世間で、ジュリアナ東京に一番興味があったんですね。お姉ちゃんのパンツとかではなく音楽にですよ。小学校から中学までジュリアナTokyoというコンピレーションが僕のバイブルでエイベックス最高ー!とか本気で思っていました。
中学の頃か高校の頃か、ソフトロック経由ではない形で何故か『A&M』レーベルが面白いことに気づいたんですよ。その中でもハーブ・アルパートにハマってしまいまして(爆笑)。一人で東京中のレコ屋探しまくって二日でコンプ出来ました。1枚100円とかなんで。一応、A&Mはアルパートのためのレーベルですからね。そこに惹かれたのかもしれません。A&Mはソフトロックとかそんなタルいのじゃなくて、オーセンティックなポップスとかフォークとかカントリーとかブラジルとか、後のCTIでのジャズも体系的に知る事が出来ました。牛心隊長(キャプテン・ビーフハート)とかもありますからね。米国のポップスがあそこに集約されているんですよ。西海岸発でアーティストのみらなず、バックのメンツとかプロデューサーとか暗記して、音楽が横につながって東海岸に行く楽しみってのはもうないですけれど、当時は楽しかったですよ。」

H「エイベックスからA&Mへというのが中村さんらしいですね。で、菊地成孔さんとの話を教えていただけますか?」

N「僕は先生とお呼びさせて頂いているのですが(笑)、2005年に私塾のペンギン音楽大学に入学したのがきっかけです。音楽の聴き方を変えたくて音楽理論をもう1回学びたいなと思ったのが動機です。
はじめは『何を聴いているの?』とか『最近面白い音楽って何?』みたいな雑談をしていただけなんですが、2006年にJ-Waveで『The Universe』という番組をやるので選曲の手伝いをしてくれない?というのがはじまりだと思います。その翌年からガレリアという東京ミッドタウンの空間選曲をご一緒させて頂いたり、オーチャードや他のライブの幕間に流す音楽の選曲やご自身のアルバムのカヴァー曲の選定をさせて頂いたりしています。
最近ではTBSラジオの『菊地成孔の粋な夜電波』で選曲補佐をしていますよ。寿司屋に例えて言うなら築地仲卸みたいなポジションですかね。職人が求める食材を提供する。それって簡単な様で簡単な事じゃあないんですけどね。職人が求めるものを探し、相手が何を求め、何を考え、をシミュレーションして厳選した食材を持って行き要望に応えていく。毎回毎回が試練の連続です。先生とはご一緒にお仕事させて頂いて8年にもなるんですが随分鍛えて頂きました。
まぁ先生には公私ともにお世話になりっぱなしなので、話は尽きないのですが、音楽以外で影響を受けたのだが、『食』に対する考え方ですね。特にワインに対する面白さを教えて頂いたのも先生でした。」

H「日本の音楽業界やアーティストについてどう思いますか?」

N「偉そうな事をいう訳ではないですけど、やっぱり国内の音楽家は凄い。演奏のスキルや作曲のセンスはもちろんですが、僕的には発想が面白いと思います。『ああこんな音の表現があるんだぁ』とか、『こんな音使いどっから発想が湧くんだろう?』とか、それを肌で感じ取れるところで日本にいて良かったなぁと思えます。洋楽ばっかり聴いていると見落としがちですけど、あらゆるジャンルに於いて日本は本当に凄いです。それに昨今元気がないとか言ってますけど、日本の音楽産業も凄いですよ、つまり、それを支える方達ですね。次から次へと面白い手法で世間でアジャストしていくし、多くの人に届けられる限りの努力がにじみ過ぎる程にじみ出ていますよね。でもコンテンツレベルではリードしているのは日本に違いないですけど、インフラレベルだと世界からだいぶ遅れていると思われます。理由の一つは言語の問題だと思います。」

H「なるほど。洋楽を聴いているだけではない中村さんらしいお言葉ですね。では中村さんは今後はどういう活動をしたいと思ってますか?」

N「これは先生の教えでもあるんですが、『まず自分がやるべき事をやり続ける。それからだ』っていうのがあるんですが、本人は忘れているかもしれませんけど(笑)たまたま選曲なんて人様の作品を預かっているポジションにいますが、これもまた、良く言われるんですけどDJやって身を立てたいなんて思わないですし。特段、アーチストになろうなんて思った事はないんですよ。それよりも、どんな形であれ前に出る人の後押しがしたいですね。機会さえあればバリバリ働きたいですよね。音楽産業における潤滑油になれれば・・・ローションじゃないですよ!!ちょ林さん!!人のお役に立てるのが自分の喜びなんつって歪んでますかね(涙)」

H「では選曲の方に行きましょうか。テーマはなんと『モテない男の10曲』ですね。ええと、色んな意味で期待できますが。一曲目は?」

Marcos Valle / Bicicleta



N「お洒落ボサノバの代名詞もしくはボサノバ入門編みたいなのに必ず出てくるマルコス・ヴァリですが、僕が一番好きなのは1983年のドリングバージャケのアルバムなんですね。うわーオマエ捻くれているなぁ~と怒号が飛んで来そうですが・・・まぁ本当なのだから仕方がない。多くの人にとってはサンパチ(Samba '68)とかベッド(Marcos Valle 1970)とかが、何か俱楽部系でモテル要素満載なんでしょうけど、僕はダントツで1983です。で、この時期にシングルオンリーでリリースされていた『Bicicleta』という曲がもう好きで好きで。ヴァリの中で最も好きな1曲と言えばコレに尽きる訳です。最近はこのPVが見れるんでもう感涙ちゅうか何ちゅうか。Bicicletaって自転車って意味ですよね?今の自転車ブームを先駆けている事も言わずもがな特記事項ですが、ボサノバを代表するシンガーソングライターがここまで体を張っている事実そしてトラックが全曲最高という。
で、このPVですがイミフ感(意味不明感)にグッと来ます。オープニングは19世紀後半を想起させる自転車が誕生して嬉しいなぁ~ 楽しいなぁ~ ヴァリもバッチリキメキメというシーンから、いきなり現代のリオの海岸に舞台は変わり、赤いヘッドバンドを装着し短パンのヴァリが登場してノリノリでサイクリングしている、というクールな映像です。彼のキャリアの中で最も輝いた瞬間だったのではないでしょうか?」

H「笑えますよね、これ... では2曲目は?」

Chico Feitosa / Fim de noite



N「ボサノバで一番好きなシンガーは誰か?って言われたらジョアン・ジルベルトと正直にお答えしたいのですが、残念ながら僕はシコ・フェイトゥーザです。残存する彼の写真を見ると当時で一番クールな奴だったってことはあまり指摘されませんよね?このFormaからリリースされたアルバムは、確かアレンジがリンフォルド・ガヤだったと記憶していますが、彼の低音が効いていてドス黒くて暗くて、それでいて弦のアレンジがリオのダークな夜を想起させられます。数年前にCD化された時は本当に嬉しかったなぁ。あれれれ?ダメですか?こんなマニアックなの好きだからモテないんですかね?」

H「うーん、確かに女の子が自分の部屋に来てこれかけてもモテないかも... えと3曲目は?」

Frank Zappa / Lumpy Gravy



N「数多あるマイルス・デイヴィスの作品中ベストは?なんて愚問が、ザッパにも当てはまります。つまり全作品全部重要ということです。あえて中でもザッパのソロ作『Lumpy Gravy』を取り上げましょう。この作品のいきさつは面白いんですが、『詳しくはWebで』調べて頂くとして(笑)。このアルバムには後の活動が全て集約されています。音楽活動だけではなく、音楽ビジネスに対する考えとか、聞き所満載ですよ。ストラヴィンスキーが本当に好きなんだなぁとか。ようこんなコラージュに仕立て上げたなぁとか。
音楽は好きだけど、今ひとつ見た目がちょっと・・・って人には『フランク・ザッパ自伝』をお読み頂いて興味を持って頂ければなんて思います。政治のこと、音楽のこと、そして家族のことについて語っているのですが、僕の心を撃った言葉は『配偶者と友人関係を結べないのであれば一緒に生活したところであまり面白くない。友情は非常に大切な要素だ。友情のない結婚なんて、考えただえでぞっとする』という事をザッパが言っているんですね。結婚なんてしたことない・・・ってか出来るかわかりませんが(笑)、そうありたいなぁと思いますよ。音楽を音楽から読み取るのも面白さの一つですが、外見で判断しないでサブ情報からも楽しめる事は音楽の魅力の一つですよね。」

H「なるほど、熱いお気持ち伝わりましたよ。ではドンドン行きましょう。4曲目は?」

The Rite of Spring - Dance of the Young Girls (Pierre Boulez conduct)



N「ザッパつながりで、ストラヴィンスキーをここらでどうでしょうか?ダメですか?いやいやがんばりましょうよ。クラシック聴きながらワイン呑むなんてデカダンすぎますかね?
クラシックというか現代音楽の範疇なのかギリギリなんですけど、ストラヴィンスキーが大好きなんですね。特にこの『春祭』は一番好きです。昨年は『春の祭典100周年』ということだったのですが、何にも盛り上がらなくて個人的には残念です。数えた事ないですが、春祭だけでCD40枚くらいあります。数ある春祭の中では特にブーレーズ盤は一番好き。その中からダンサンブルな『乙女達の踊り』です。学術系女子にこの曲でアプローチできませんかね?一緒に踊りませんかね?一応バレエのための音楽なんですが。ダメですか?ああそうですか。別にいいですよ・・・」

H「確かに春祭では女の子にはモテないかも... では5曲目は?」

Francisco Mignone / Sinfonia Tropical



N「これもマニアックだなんて思われたら心外ですけど、ブラジルでは音楽教育をうけた人なら誰もが知っている人ですよね。日本で言えば、瀧廉太郎とか?違うか。ヴィラ・ロボスと同時期に活躍した作曲家兼ピアニストです。ロボスは、海外で特にパリとアメリカで絶大な人気を誇っていた様なんですが、ブラジル国内ではミニョーネの方が人気がありました。この曲は後期の作品なのですが、『トロピカル交響曲』ってネーミングでバッチですよ!しかも無茶苦茶かっこいいし!えぇ?ダメ?モテないすか?」

H「モテないですねえ、こういうのでは... 元気を出して6曲目は?」

Linda Ronstadt / What's New



N「くっそぉー!モテない曲が続いている様なので!じゃじゃじゃ!これならどうですか?超ど定番スタンダード『What' New』ですよ!
リンダ・ロンシュタットがジャズに大挑戦!した俗なアルバムですが、アレンジがネルソン・リドルですね。散々メンズを取っ替え引っ替えしたロンシュタットが、こう未練タラタラに唄われると、グッと来るものがあります。新しい恋をしよう!そしてまた男を不幸にしてやろう!みたいな?違いますかね。元はフランク・シナトラが歌ってた方が有名ですが、男視点から女性視点に歌詞が一部切り替わっています。え?どんな歌詞かって、僕の超訳で申し訳ないんですが、こんな歌詞です。

What's new
久しぶりね
How is the world treating you
最近うまくいってる?
You haven't changed a bit
あなた全然変わらないね
Handsome as ever I must admit
相変わらずかっこいいんだもん、本当なんだから
What's new
久しぶりね
How did that romance come through
彼女とは続いてるの?
We haven't met since then
私たちあれから会ってなかったけど
Gee but it's nice to see you again
ほんっとまた会えるなんて嬉しいわ
What's new
久しぶりね
Probably I'm boring you
つまんないこと聞いちゃった
But seeing you is grand
でもね、会えて嬉しかった
And you were sweet to offer your hand
手を差し伸べてくれるしね
I understand
わかっているから
Adieu
じゃ、またね
Pardon my asking what's new
ついあれこれ聞いちゃった
Of course you couldn't know
うん。わかってくれないかもしれないけど
I haven't changed I still love you so
今も変わらずあなたが好きなの

H「このシリーズ、初めての翻訳ですね。あの、大丈夫です。こういうtoo much感って好きな女の子はいますよ。たまに。 では次の曲は?」

Steve Coleman and Metrics / Laxed & Warped



N「僕の中で昨年 80、90年代リヴァイバルが来ていてっても渋谷系じゃなくて当時のセンタージャズですが、スティーブ・コールマンです。すっかり忘れ去られてしまいましたがコンスタントに作品をリリースし続けています。どうしてDJはこの辺のジャズを取り上げたりしないんだろう。全アルバムがむちゃくちゃ超クールなのに!サン・ラばかり取り上げて、まぁ変態の一言で片付けられたりするんですかね?不思議。そんなコールマンは当時からヒップホップが好きで早い段階でジャズとヒップホップを結びつけていたんですが、これが奇跡のマリアージュを見せています。ま、コールマンに再度こんなプロジェクトをやってもらいたいですね。」

H「また微妙な発言をしていますが... でも中村さんがこの辺りをおす気持ち伝わってきますよ。 次の曲は?」

松下誠 / Lazy Night



N「好きなもの続きで良いのか、それが僕なのかもしれませんが・・・。やっぱり外せないSteely Danです。Steely Danフォロワーってたくさんいるんですが、上手く翻訳して独自の音に昇華している人ってなかなかいないんですね。でも、松下誠さんの1stアルバムの『Lazy Night』は凄い。『Glamour Profession』を下敷きにしつつもJ-AORとしては別格のクオリティです。長らく入手困難でしたが昨年タワーレコードが再発してくれたので簡単に入手できるようになりました。AORって女性はどうなんでしょうか?あまり好きじゃないのかなぁ。80年代のキラキラ感がダメって人たまにいますよね。ダメって事はないと思うんですけどね。たくさん良いポップスがあるのになぁ。あんまりジャンルとか年代毎に区切って聴いたりしないで分け隔てなく楽しんだらよいのにっていつも思います。」

H「おっと、やっとモテそうな曲ですね。やれば出来るじゃないですか。ホントは女の子といる時はこういうのかけてるのがバレますね。 次は9曲目ですね。」

Peter Skellern / Too much I'm in Love



N「英国にピーター・スケラーンってシンガソングライターがいまして、ちょっと変わった事をしている人なんですよ。英国では結構有名だと思うんですけど、この人の全作品は再発して欲しいんですが今だにされてなくて残念です(笑)。ガーシュウィンとかポーターとかノスタルジックなポピュラーソングをカヴァーするという活動で知られた人ですね。自作曲もいずれも佳作で推奨できる音楽です。のんびり白ワインなんかひっかけながら聴きたい音楽です。」

H「これもモテそうじゃないですか。中村さんモテないんじゃなくて、選びすぎです!最後の曲は?」

Charles Mingus / Freedom



N「すっかり今回はジャズコンテンツの一つだってこと忘れてました(笑)。不思議なんですが、ジャズとブラジル音楽の親和性ばかり取り上げるんですかね?
なので配慮してミンガスを最後に締めたいと思います。これを発見したのはドキュメンタリー映画『ミンガス1968』です。そこに差し込まれていたメッセージ性の強い曲なんですね。ちょうどミンガスが社会運動とかにも積極的に参加していたりして、その経緯で書かれた曲だと思います。
音楽でモテるだのモテないだのミンガスに殴られてしまいそうなので反省しています。今日は本当にすみません。お邪魔しました。」


中村ムネユキ
1979年4月10日、東京都出身。選曲家、企画家、餃子愛好家。音楽家 菊地成孔に音楽理論を師事。専属の選曲家としてラジオ番組、DJ、カヴァー曲の選定などに携わっている。ラジオ番組ではJ-wave「The Universe」(06-07) やTBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」(11-)などのレギュラー番組で構成作家、選曲補佐として、またTokyoミッドタウン内ショッピングモール「ガレリア」の館内BGM選曲を菊地成孔と共に担当した(08-09)。カバー曲提案作品では 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール『記憶喪失学』(08)、『New York Hell Sonic Ballet』(09)、naomi & goro & 菊地成孔『calendula』(11) 等がある。自身の選曲作品としてはハダメス・ニャタリ『私の友達アントニオ・カルロス・ジョビン』(07)を発表している。Twitterのアカウントは @nakmune。




今回は中村さん、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

中村さんのこれからの音楽業界での活躍に期待しますね。彼がどうやって日本の音楽を変えるか楽しみです。

もうそろそろ春の香りがあたりには漂い始めましたね。花粉症の人は「困った」なんて思っているのでしょうか。
それでは、また来月、こちらのお店でお待ちしております。


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著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
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vol.7 - スパイス・ラムと1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集


いらっしゃいませ。

bar bossaにようこそ。
先月の関東周辺の雪はすごかったですね。みなさん大丈夫でしたか?
まだまだ寒いですが、ゆっくりと春に近づいていますね。

bar bossaは基本的にはワインのお店なのですが、ボサノヴァのお店なのでラムもたくさん置いています。
そこで今日ご紹介したいのはスパイスのたくさん入ったラムです。
自由が丘のレピス・エピスというスパイス専門店で調合しているラム専用のスパイスをバカルディに漬け込みました。北欧の人たちは冬になるとこのラムをホットで飲むそうです。


スパイス・ラム

スパイス・ラム


お味のほうはかなり「外国の味」がしますので、舌が「お子様」な方は苦手かもしれませんが、ハーブ&スパイス大好きという方にはオススメです。是非。


さて、音楽の話に移りますね。
お店でよく「小野リサをよく聴くんだけど、他に女性ヴォーカルのオススメありますか?」という質問をよく受けます。
そこで前回は1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガーをオススメしたのですが、今回は「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」として5人を紹介します。


1人目はマリア・クレウーザです。彼女は「イパネマの娘」の作詞家として有名なヴィニシウス・ジ・モライスに見出されて歌手デビューしました。バイーアというブラジルの北の方の暑い地域出身の女性でご覧のようにかなり「色っぽいイメージ」がいっぱいの人です。日本でも70年代当時によく紹介されたので、日本のボサノヴァ好きのオジサマなんかには今でも人気があります。ボサノヴァやジャズが好きなオジサマに今度「マリア・クレウーザって良いですね。」と言ってみてはどうでしょうか。


マリア・クレウーザ



2人目はエリス・レジーナです。彼女は60年代から活躍していますが、やはり70年代に絶頂期を迎えたのではないでしょうか。1969年にヨーロッパを回り、その後、1974年に当時アメリカで大成功していたアントニオ・カルロス・ジョビンとの共演アルバムを出しました。この曲はそのアルバムの録音風景です。今でも世界中の女性ヴォーカルが「いつかエリスみたいに歌の中でかっこよく笑えたら」と思っています。エリスはその後1982年に36歳の若さでコカイン中毒で亡くなりました。


エリス・レジーナ



3人目はガル・コスタに登場してもらいましょう。彼女はカエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル達とトロピカリズモというムーブメントのプリンセス的存在としてデビューします。前回紹介したワンダ・サーが好きで、すごくシャイな女の子だったそうです。その後はブラジルを代表する女王様的な存在になっています。僕は実は以前働いていたブラジルレストランで接客をしたことがあるのですが、すごい存在感かつすごく女性的な魅力のある人でした。これもジョビンとの共演を聞いてもらいましょう。


ガル・コスタ



4人目はジョイスです。彼女はブラジルの典型的な上流のインテリというイメージがあります。英語もペラペラですし(ブラジル人で英語ペラペラの人は少ない)デビュー当時は新聞記者をやっていたそうです。アナとクララという二人の娘さんがいて、その二人とも歌手としてデビューしています。仕事が出来て子供も育ててさらに女性らしさをいつもキープしているという完璧なところが日本人女性から絶大な人気を得ている理由でしょうか。この動画は娘のアナとクララも登場する珍しいものですね。


ジョイス



最後はミウーシャです。ミウーシャはシコ・ブアルキというブラジルでカエターノと人気を二分するシンガー・ソング・ライターのお姉さんです。シコはジョビンと共作をしているほどの親密さで、かつミウーシャの夫はジョアン・ジルベルトなので、自然とミウーシャもボサノヴァ歌手としてデビューすることになりました。この曲もジョビンとの共演ですね。それと前回にお話したのですが、ベベウ・ジルベルトはアストラッド・ジルベルトではなくこのミウーシャとジョアン・ジルベルトの間の子供です。


ミウーシャ



みなさん、今回はどうでしたか? 70年~80年代はファッションやメイクを見るのも楽しいですよね。

さて、今年のヴァレンタインデーの予定は決まりましたか?
bar bossaの当日はやっぱりさすがに恋人達で賑わいます。みなさんチョコを机の上に置いてたりするので「あ、開けて食べても良いですよ」と僕は毎回言うことにしています。もちろんチョコは女の子が選んでいるので「私、これ食べたかったんだー」と言って結構盛り上がりますよ。

それではまたこちらのお店でお待ちしております。


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1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
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vol.6 - お客様:松原繁久さん「冬の朝に聴きたい音楽」


いらっしゃいませ。

月の後半はゲストを迎えて、「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という趣旨の選曲をしてもらいます。

今回は現在京都にお住まいの松原繁久さんにいらっしゃっていただきました。

林(以下H)「いらっしゃいませ。あれ、今日は奥様と。新婚ほやほやなんですよね。」

松原(以下M)「ええ。僕は東京には92年から丸9年間過ごしたんですけど、妻は関西の人間なので今回は東京の僕の好きなお店を紹介して回ろうかなと思って。」

H「素敵ですね。あ、奥様。初めまして。なんだか『松原さんって中学高校とずっと友達だったかもしれない人』って勝手に僕が思ってまして。今日はこんなお願いをしてしまいました。さて、お飲物はどうしましょうか?」

M「ヴァージンモヒートをお願い致します。飲めない自分が初めて林さんに作って頂いた想い出の一杯です。」

H「ちなみにこの『ヴァージンなんとか』ってノン・アルコール・カクテルのことなんです。色んな事情でアルコールが飲めないことってあると思うのですが、オレンジジュースとかコーラって頼むよりもこう注文した方がスマートですよね。さて、松原さんといえばもうすごいレコード・コレクターとして有名なのですが、どんな音楽体験をしてきたか教えてもらえますか?」

M「あの、中、高、大学生と周りに音楽好きがいなかったので、ひたすら一人で集めました。だいたい学生の頃なんて知識もないので、好きなミュージシャンが音楽雑誌で薦めるレコードをただひたすら。キース・リチャーズ、清志郎と仲井戸麗市、ポール・ウェラー、小西康陽・・」

H「え、結構ロックなんですね。僕はてっきり高校生の頃からジャズ喫茶に行って西海岸とかを聞いてたんだと思ってました。」

M「そんなことないです。音楽に関心を持ったのは寺尾聰や稲垣潤一等の日本のAORからですね。彼らのバックの井上鑑や林立夫、山木秀夫等からユーミン、はっぴいえんど周辺、山下達郎とかを聞いて。京都で大学生になってからストーンズを皮切りに英米のロックとブルースを集め出しました。今でも一番好きなのはジミ・ヘンドリックスです。」

H「え、ジミヘンが一番なんですか...」

M「大学生の時に『POP INZ』で、小西康陽さんが200枚のレコードを紹介してて。ロック、ジャズ、サントラ、歌謡曲、ブラジルとか。これが自分の音楽人生の決定的指針となりました。それからは、ありとあらゆる音楽ジャンルに手を出しています。その次のビックバンは『ムジカ・ロコムンド』との出会いです。この本をきっかけにディモンシュの堀内さんや小山さん、ケペル木村さん達に色々なレコードを教えて頂いて、さらに今まで聴いていた以外のジャンルの音楽にも興味が湧きました。」

H「あの、そこまでお好きなのに音楽の仕事をしようとは思わなかったんですか?」

M「レコード会社に入社したかったんですけど、募集が限られていて。レコード会社を関係会社に持つ会社に入ろうと考えて某電機メーカーに入社したのですが、レコード会社の方に行くには辞めてから行くとの話を聞いて、止めました。」

H「なるほど。じゃあ今の音楽状況で何か思うことってありますか?」

M「レコード会社やメディアが持っているべき、アーチストを売り出す情熱が失われていると感じる事が多いです。ただ昔も今も、自分が本当に好きなミュージシャンには時間がかかっても、かならずたどり着くものだという盲信のもとにレコード探しをしていますので、音楽を聴く事が、生きていると同じ意味を持つ人間がいるという情熱を音楽業界全体に感じて欲しいです。」

H「ホントそうですね。さて選曲に移りましょうか。」

M「はい。『冬の朝に聴きたい音楽』がテーマです。布団から起き上がるのが厳しい冬。まだ冷え切った部屋の空気の中で、ボリュームを絞って夜が明け始めた東の空を眺めながら、ぼんやりと聴きたい音楽を選びました。」

リチャード・ナット「Bish's Hideaway」



M「自分にとってハワイとは長い事片岡義男が描いたハワイであり、久保田真琴が奏でたハワイであり、要するに架空の都市としてのハワイでした。昨年初めてハワイを訪れて、初めてギャビーやテンダー・リーフが頭でなく身体で理解出来たような気がしました。リチャード・ナットのこのアルバムはハワイという範疇ではくくれない、人生に1度会えるかどうかの1枚です。」

H「なるほど。自分の中で架空の都市として描いていた世界が現実として繋がる瞬間ですよね。わかります。次は?」

ニック・ドレイク「river man」



M「冬と聞いて思い浮かぶミュージシャンと言えば、チェット・ベイカーとニック・ドレイク。ニック・ドレイクを聴くと思い出すのが村上春樹の『1973年のピンボール』に出てくるピンボールマシンを揃えた冷凍倉庫の描写。形あるものはいつか消えてしまうけれど、いつまでも消えないものがあると信じさせてくれるアーティストです。」

H「冬。ニックドレイク。ピンボールマシンの冷凍倉庫。もう説明いらないですね。わかる人だけついてきてもらいましょう。次は?」

三輪二郎「家出っ娘」



M「2年前、梅田タワーに置いてあったインディー系の音楽雑誌に載っていた彼の風貌に惹かれました。豊田道倫がプロデュースした2nd『レモンサワー』は日本のSSW(シンガー・ソング・ライター)名盤。ギターの鳴りが半端ないです。どの歌から見えてくる景色も心揺さぶらせてくれます。」

H「すいません。勉強不足で全然知らないアーティストです。なんかすごく衝撃的な歌ですね。」

オクノ修「自転車にのって」



M「京都でコーヒーと云えば、イノダか六曜社というのは、昔も今も変わってない気がします。地下店のマスターの修さんが歌う人だと教えてもらったのはディモンシュの堀内さんでした。京都に住むと自転車が便利だと感じる毎日。修さんのこの曲は勝手に京都のイメージソングと解釈しています。」

H「そんな方がいるんですね。京都らしい喫茶店文化を感じる素敵な曲ですね。」

the young group「14」



M「昔、ロカリテというカフェが北堀江にあった頃、店でよく流れていて知ったアルバム。もっと彼らを知ろうとネットで検索した時に、吉祥寺のカフェmoiの岩間さんが彼らの事を書かれたブログを見つけました。音楽について書かれた文章で一番感動した内容の一つでした。音楽の出会い以上に感動する出会いでした。」

H「あの、このバンドの2人と僕すごく仲良くて、ヴォーカルの木之下くんはうちの店の前でtrefleっていうお花屋さんやってるってご存知ですか?」

M「いえ。今初めて知りました。」

H「2人は下北沢のデルモニコスっていうバーのカウンターで出会って『ムースヒル(伊藤ゴローのソロプロジェクト)最高だよね』って意気投合してバンド始めたんです。ちなみに松原さんの永遠のアイドルが彼らの曲を歌うっていう話もあったみたいですよ。次は?」

塚本功と石井マサユキ「what's going on」



M「渋谷系と呼ばれる音楽が街を席巻していた時代の終わり頃にthe changというバンドが素晴らしいアルバムを残していました。何故売れなかったのか理解出来ない程素敵なバンドでした。今でもTICAやgabby&lopezで心奮わせるギターを弾く石井マサユキさんと、日本で一番カッコいいギターを弾く塚本功さん。素晴らしい。」

H「石井マサユキさんカッコイイですよね。でもこんなの知りませんでした。確かに素晴らしいですね。次は?」

スライ&ザ・フアミリー・ストーン「IN TIME」



M「スライの「Flesh」は今迄に一番聴きまくったブラックミュージック。『Stand』や『暴動』も素晴らしいけれど、このアルバムでスライが辿りついた音に一番心揺さぶられます。40年も前の音の筈なのに全く古びない音楽。ディアンジェロ辺りがスライの後を継ぐ音楽を作って欲しいと願っています。」

H「スライ、絶対にお好きなんだろうなって思ってました。やあでもこの曲ですか。これ見て心の中で松原さんに握手した男子、多そうですね。次は?」

マイケル・フランクス「When The Cookie Jar Is Empty」



M「マイケル・フランクスで一番『冬』を感じるアルバムが『Burchfield Nines』。個人的には彼のアルバムの中で一番好きです。数年前から、大晦日に実家で聴く最後の音楽はこのアルバムかポール・サイモンの『恋人と別れる50の方法』となっています。どちらもいいアルバムです。」

H「AORは何か一曲来るだろうとは思ってたのですが、なるほどこれですか。松原さんって独特の黒っぽい感覚がお好きなんですね。やっぱりこの企画面白いですね。次は?」

ともさかりえ「木蓮のクリーム」



M「90年代のアイドルポップスの名盤『むらさき』。古内東子や鈴木祥子、具島直子等に交じって椎名林檎の2曲が出色。椎名林檎の歌謡曲作家としての素晴らしさを感じます。ともさかりえの歌がまた最高。ブックオフで500円で見つけたら買う価値あります。」

H「今ちょっとくらくらしてます。高校で同じクラスだったら『松原、オマエ10曲のうちの1曲がこれかよ』って僕が言って『林、オマエこれがわかんないとダメだよ。センスないよ』って言い合ってそうですね。えと、次は?」

ホドリゴ・ホドリゲス「Cry me a river」



M「ヴォーカル物の中で自分が一番好きなアルバムがホドリゴの『fake standards』。古今東西のスタンダードナンバーを歌ったアルバムの中でも、最高のカバー集だと思います。特に好きなのが『cry me a river』。ジュリー・ロンドンが有名ですが、個人的にこの曲の最高のカバーだと。」

H「あれ、これ奥様も好きなアルバムですよね。2人で冬の日曜日の朝に布団を出ないでこれを聴くって素敵そうですね。『どっちが先に布団から出てコーヒーを淹れるかジャンケンしよう』とか言って。新婚良いなあ。」

M「林さん、飛ばしすぎです。」




松原さん、お忙しい時期にどうもありがとうございました。松原さんは「ヘッドホン美女部」とか関西方面のカフェ情報とか、独特の視点のツイッターをされています。チェックしてみてはいかがでしょうか。
@matu_freedom

あっという間にお正月気分もなくなり、2月のヴァレンタインデーの話題なんかが始まりだしましたね。月日が流れるのってどんどん早くなっているような気がします。

それではまたこちらのお店でお待ちしております。


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
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vol.5 - ゲヴェルツトラミネールと1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集


いらっしゃいませ。

bar bossaへようこそ。
今日は新年第一回目ということもあり、ちょっと華やかなイメージのワインをオススメいたします。

アルザス地方のゲヴェルツトラミネールというワインです。


ゲヴェルツトラミネール


ゲヴェルツトラミネール


あ、今、ヨーロッパの歴史にも詳しく言語にも精通しているインテリの方は「あれ?」って気がつきましたよね。そうですね。アルザス地方はドイツの領土だったこともあるので、ドイツワインによく使われる品種を使っています。このゲヴェルツトラミネールという言葉はブドウの品種の名前なのですが、元々ドイツ語の名前をフランス語読みしているというわけなんですね。

さて、ゲヴェルツトラミネールの品種の特徴はバラやライチの香りがするというものです。「ブドウなのにバラやライチの香り?」と疑われるかもしれませんね。本当なんです。是非、一度試しに飲みに来てくださいね。


それでは音楽の話に移ります。
お店でよく受ける質問の一つに「小野リサをよく聞くんだけど、他に女性ヴォーカルのオススメありますか?」という質問です。
もちろん、オススメの女性ヴォーカル、たくさんいますよ。これは結構たくさんいるので3回に分けて紹介しますね。
では1回目は「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」です。


1人目はもちろんナラ・レオンでしょう。彼女の家は裕福で彼女の大きなマンションに集まった若い音楽家達がボサノヴァを支えたと言われています。ボサノヴァ用語で言うところの「ボサノヴァのゆりかご、ナラ・レオンのアパート」ですね。では、そんな彼女の曲を聞いてみましょう。曲は「マリア・ジョアンナ」という可愛いナラらしい曲です。画像が彼女の60年代から80年代のファッションやスタイルが楽しめる動画になってます。


Nara Leão "Maria Joana"



2人目はみなさんご存知のアストラッド・ジルベルトです。ジョアン・ジルベルトの最初の奥様ですね。実はよく間違われるのですが、ジョアンの娘のベベウ・ジルベルトはアストラッドの娘ではありません。ジョアンがアストラッドと離婚して2番目に結婚したミウーシャの娘です。では、アストラッドの代表曲、「おいしい水」を珍しい動画のヴァージョンで聞いてください。

Astrud Gilberto "Agua de Beber"



3人目はシルヴィア・テリスです。彼女はボサノヴァ前夜から活躍していた本格的シンガーです。ちょうどボサノヴァの時代がやってきて、彼女は上手く時代の波に乗れたんですね。でも彼女はアメリカ・デビューをはたした後、1966年に33才の若さで突然交通事故死します。曲はボサノヴァ・スタンダード「もし遅かったらごめんね」。1960年当時のブラジルのテレビ番組の映像です。

Sylvia Telles "Se é Tarde, Me Perdoa"



4人目はワンダ・サーです。彼女は金髪で海が似合ってハスキー・ヴォイスでとボサノヴァのイメージそのもののシンガーです。ワンダはいわゆるクラスで一番人気の女の子的存在で、メネスカルやデオダート、テノーリオといった当時一番の若手達を従えたアルバムを出してその後アメリカに渡りました。動画はそのアルバムからたっぷり聞けるのを選んでみました。このワンダの真似してギターを引きずって砂浜を歩く女の子が今でも世界中にいます。

Wanda Sa "E Vem O Sol - Encontro - So Me Fez Bem - Mar Azul - Tamben Quem Mandou"



5人目はドリス・モンテイロを紹介します。ドリスもシルヴィア同様にボサノヴァ誕生前夜からブラジル芸能界で活躍していた女性ヴォーカルです。シルヴィアと違うところはドリスは完全にボサノヴァの波には乗ってしまわずにその時期にあわせてスタイルを上手く変えていきます。ですのでシルヴィアのような悲劇にもあわず70年~80年代以降も現役で可愛いアルバムをたくさん発表しています。曲は「ムダンド・ジ・コンヴェルサ」をお聞き下さい。

Doris Monteiro "Mudando de Conversa"



さて、新年が始まりましたね。
今年の目標は決めましたか?
「今年こそダイエットだったんだけどもうダメ」なんて方もいるのではないでしょうか。
あせらずゆっくりと。ちょっと立ち止まりたい時はワインでも飲みながらボサノヴァでも聞いてください。

それではまたこちらのお店でお待ちしております。


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vol.4 - お客様:柳樂光隆さん


いらっしゃいませ。

bar bossaへようこそ。

月の2回目はゲストを迎えて「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」という選曲をしてもらいます。

今日はジャズ評論家の柳樂光隆(なぎら みつたか)さんです。


林(以下H)「いらっしゃいませ。」

柳樂(以下N)「こんばんは。」

H「ではとりあえずお飲物はどうしましょうか。」

N「いつも通り、白ワインをグラスで。あと、ピクルスも下さい。」

H「はい。かしこまりました。でしたら南仏のしっかりしたシャルドネにしますね。あ、そうだ。先日一緒にいらっしゃってた女性が来てましたよ。髪の毛が長い子じゃなくて、メガネのあの子でもなくて、あのボーイッシュな感じの子です。なんか柳樂さんと連絡が取れなくなったって泣いてましたよ。」

N「またそんな。公の場所でそういう冗談はやめて下さい。」

H「すいません(笑)。ところで柳樂さんはジャズ評論家がメインですが、レコード屋さんでも働いてますよね。でも確か東京学芸大学を出てて教員免許も持っているとか。どうしてそんな人生を踏み外してしまったんですか?」

N「レコード屋っていう場所がとにかく好きだったので、もし教師やるとしても、その前に好きな仕事でも一回やってみた方が経験にもなるかなと思って。結局、ずっとレコ屋で働いてます。向いてるかどうか判らないままですけど。」

H「うちのカウンターでサニーデイの方と会って『ファンです』って言ってたのが印象的なんですけど、でも基本はジャズなんですよね。」

N「ええ。ジャズを聴くきっかけは大学の学園祭でドラマーの広瀬潤次さんのライブを見て、ジャズってのは凄い音楽だと思って。で、すぐに当時の彼女(ジャズ研)が教えてくれた近所のジャズ喫茶に行って『ドラムが凄いジャズを聴かせてくれ』って店主に言ったら、山下洋輔と森山威男のアルバムを聴かされて、それで完全に虜に。」

H「ジャズ喫茶。柳樂さんってそうですよね。大御所の評論家とかとも親しいじゃないですか。あれ、不思議なんですけど。」

N「おじさん好きなんでしょうね。基本的に自分より詳しい人の話を聞きたいんで、この人に話を聞いてみたいって思ったら会いに行くんです。刺激もあるんですよね。世代間の認識のズレとかも面白いですしね。知識や経験は伊達じゃないですよ。同世代とつるんでいても得られないことは多いと思います。」

H「具体的にはどんな大御所と?」

N「ケペル木村さんはケペルさんのお店に会いに行って。今では国立のジャズバーNO TRUNKSでイベントも一緒にやっています。中山康樹さんは中山さんのイベントの時に話しかけました。その場で後藤雅洋さんや村井康司さんを紹介していただいて、お二人の音楽評論サイトに加入してしまっています。あとジャズ喫茶四谷いーぐるとか、荻窪ベルベットサンでもイベントをしています。瀬川昌久さんは、僕が雑誌に瀬川さんが監修のCDのレビューを書いたら、読んでくれてて、僕に連絡をくれたんです。バド・パウエルとかと同世代な方のリアルタイムの話とか聞けますからね。高橋健太郎さんはツイッターでなんかのきっかけで話しかけました。でも、未だに僕はただの健太郎ファンですよ。」

H「あの、これ読んでる方でわかんない人は全くわかんない名前ばかりだと思いますが、『俺、タモリとたけしとさんまと友達』って言ってるような感じです。」

N「どの人がタモリですか?(笑) あの、クラブカルチャー以前以後で、ジャズの聴き方とか、ジャズって言う音楽がどういうものであるかのイメージが大きく変わったと思うんです。大きな変化だったので、その分、前後には溝があります。僕は変わる前と変わった後と両方を繋ぎたいんですね。クラブカルチャーってジャズの新たな側面にも光を当てて新しい聴き手を生み出したとは思うんですけど、その一方でそれ以前からあったジャズを遠ざけてしまった。僕は両立出来ないかなと思ってるんです。そういう意味でも、今後も年上の方と一緒に色々やって行きたいなと思っていますし、そろそろ同世代とも何かやりたいよなとは思ってます。あとは、クラブ側の方とも。まぁ、その辺は追々。」

H「なるほど。では曲に行きましょうか。」

N「はい。テーマは『歌にねじ伏せられるために聴くジャズボーカル』です。今回はbar bossaでかからないような類いのうるさい歌モノのジャズ選んでみました。僕はジャズに関しては、凄い演奏にねじ伏せられたいみたいな気持ちがかなりあります。そういう基準でマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンを聴くことが多いんですが、そんな基準で普段よく聴いてる歌モノを選びました。実際は20曲くらいすぐに浮かんだので、減らすのが大変でした。ちなみにボサノヴァよりも酒がすすむと思います。」


H「では1曲目は?」

1.Irene Datcher - Attica Blues (Archie Shepp / Attica Blue Big Band)



N「リーダーはArchie Sheppと言うサックス奏者です。ファンクっぽいバンドをバックにIrene Datcherが声を振り絞りながら歌います。ジャズと言うとノイズ交じりの熱い即興演奏の魅力もあるのですが、それと同じ熱気の歌が共存した例はありそうで意外と少ないんですね。これはその素晴らしい例の一つだと思います。ジャズってノイズが大事ですから。」

H「菊地成孔のDCPRGが好きって言っていたし、ファンキーなの好きなんですね。でも『ジャズってノイズが大事』、痺れるフレーズですねえ。では2曲目は?」

2.Dee Dee Bridgewater - Afro Blue (Red Earth)



N「僕が一番好きなボーカリストです。大好きな曲は沢山ありますが、アフリカ録音のこれを選びました。ディーディーは僕がジャズボーカルに求めるものを全て持っている気がします。こういうアフリカのリズムにもいとも簡単に、しかも超楽しそうにノッてしまうリズム感は別格ですね。そして、何を歌っても、スタイリッシュにまとめてしまうセンスも好きですね。ディーディーだけで10曲選べるくらいファンです。」

H「ディーディー・ブリッジウォーター、かっこいいですよね。こういうのかけると女の子にもてそうです。では3曲目は?」

3.Marlena Shaw - Woman Of The Ghetto (Live At Montreux)



N「ソウル寄りのジャズボーカリストではこの方ですね。これはモントルーのライブで、オープニングの観客を煽るパフォーマンスから最高ですね。ここではこれぞ黒人シンガーって感じですが、洗練されたメロウなアルバムとかも作ってて、何でも出来る人なんだと思います。歌で起伏をつけて、10分間全く飽きさせない構成力も素晴らしいです。」

H「あ、なるほど。すごく有名なアルバムを丁寧に聞き込んで『自分だけの1曲』を見つけてくる柳樂さんのスタイルがわかってきました。では4曲目は?」

4.Nina Simone - Vous Etes Seuls Mais Je Desire Etre Avec Vous (Fodder On My Wings)



N「これはニーナ・シモンの重くて深くて淀んだ声がひたすら同じフレーズを繰り返すだけの呪術的な曲で、初めて聴いた時から虜になってしまって、彼女の曲では一番好きな曲です。じわじわと高揚してくるんですよね。ヤバイ音楽を聴いてるなって言う感じがたまらないです。ジャズボーカルで『声』と言えばこの人かなという気がします。あるジャズ喫茶の店主が『ジャズ喫茶やるならニーナ・シモンの似合う店にしたかった』と言っててひどく共感したことがあります。」

H「ほんと黒いの好きなんですね。ニーナ・シモンもこんな黒い曲を... 柳樂さんのイメージが変わって来ました... では5曲目は?」

5.Gregory Porter - 1960 What? (Wisdom)



N「今、世界で最も注目されているジャズボーカリストの一人です。グラミーにも二年連続でノミネートされています。こういういかにも黒人って感じの声と歌唱を聴かせる人が今の時代に出て来たことは驚きでした。これも1970年代かと錯覚してしまうような曲です。『ヘイ!』ってひとこと言うだけで、ワクワクさせられるシンガーと言うのも、久しぶりではないでしょうか。」

H「一時期、ずっとツイートしてましたよね。ちなみに柳樂さんのアカウントは @Elis_ragiNa です。さて6曲目は?」

6.Dee Alexander - Funkier Than A Mosquito's Tweeter (Corey Wilkes「Drop It」)



N「こちらは今一番好きなボーカリストのディー・アレキサンダー。この人も時代錯誤系と言えるかもしれませんね。これはコーニー・ウィルクスと言うトランペッターによるニーナ・シモンの佳曲のカヴァーにゲストボーカルで参加した音源。ここではザラッとした質感の声とソリッドな表現が印象的ですが、おおらかで包容力のあるやさしい歌唱も絶品。一度、生で体感してみたいなとずっと思っています。」

H「あ、そうそう。柳樂さんって前曲といい、こんな感じの新しいアーティストの時代錯誤系(笑)が専門なんだって思ってました。イメージ通りになってきました。では7曲目いきましょうか。」

7.Betty Carter - Sounds (Movin' On) Pt.1 (The American with)



N「例えば、ハードバップやビバップでの演奏者の丁々発止のやり取りや、とめどなく音が溢れ出る即興演奏の魅力をそのまま歌でやってくれているような歌手がベティ・カーターです。『あー、俺、今ジャズ聴いてるわー』ってのを、最も強く感じさせてくれる歌の一つ。延々と即興でスキャットしっぱなし、延々とスウィングしっぱなし。ベティの歌にあわせてバックの演奏が刻々と変わっていくのを意識しながら聴いてみて欲しい一曲。」

H「この曲、かっこいいですね。さすがレコード屋出身ですね。有名なアーティストだしこのジャケ見たことあるけど、こんな曲は知らないなあってのが多いですねえ。8曲目は?」

8.Alberta Hunter - I've Got a Mind to Ramble (Amtrak Blues)



N「82歳にしてジャズボーカリストとして復帰したシンガー、アルバータ・ハンター。1920年代に活躍していた筋金入りのオールドスタイルの婆さんの歌は味わいなんて言葉では到底言い表せない魅力があります。僕はジャズ喫茶で出会って、すぐに虜になりました。何人かの友人にCDをプレゼントしたこともあるくらい好きです。その生涯は本にもなっているので、ご興味のある方はどうぞ。」

H「なるほど。こういう感じがお好きなんですね。やっぱりこの企画良いですねえ。柳樂さん温かい人なんですね。もしかして良い人なんですか?では9曲目を。」

9.Milton Nascimento - San Vicente (Miltons)



N「ミルトン・ナシメントはジャズの人ではないんですが、このアルバムは僕にとっては最高のジャズアルバムです。この曲はミルトンとハービー・ハンコックのピアノとのデュオなんですが、ハンコックが凄すぎて、ジャズの耳でしか聴けません。ここでのハンコックのピアノにはジャズミュージシャンの凄さが凝縮されていると思います。後半のピアノソロに圧倒されてください。そしてこのパフォーマンスを引き出すのはミルトンの声にしか出来なかったことかなと。」

H「これはハンコックですよね。確かにあの当時アメリカジャズサイドとしてはミルトンの音楽に驚いて触発されてこの素晴らしい演奏が出てきたんでしょうね。では最後の曲は?」

10.Ella Fitzgerald - One note Samba



N「ボサノバを一曲。僕の大好きなエラ・フィッツジェラルドの超絶スキャットを。もう笑っちゃうしかないです。力技でねじ伏せられる。でも、エラって何やってもかわいらしいんですよね、声がそもそもかわいらしいし、そしてお茶目。めちゃくちゃ凄いことをやっているんだけど、全てジョイ(joy)に持っていっちゃうっていうか、全てエンターテイメントにしちゃう最高のパフォーマーですね。」

H「エラのボサノバってブラジルサイドには評判悪いんですけど、良いですよね。でもこんなの知りませんでした・・・ では今日はありがとうござ・・・ あれ、まだあるんですか?」

11.Sarah Vaughan - Copacabana (Copacabana)



N「もう一発ボサノヴァを。ジャズ史上最高のボーカリストの一人、サラのブラジル音楽集から。僕はサラのドラ声で歌われるスロウナンバーが好きなんですが、何を歌ってもジャンル関係なくサラ・ボーンの音楽になっちゃうところが魅力ですかね。ここでもサウダージは吹っ飛んで、ジャズとブルースが聴こえちゃう。ジャズを歌うって究極はこういうことなのかもって思ったりします。」

H「サラ・ボサも良いですよね。結構ブラジルサウンドにしているのに何故かこうなっちゃうんですよね。あれ、また何か出してきてますね。」

ボーナストラック
12.Dinah Washington - All Of Me (真夏の夜のジャズ)



N「ダイナ・ワシントンは素晴らしいブルースを歌うジャズシンガーです。彼女の歌も素晴らしいのですが、ここでは映画『真夏の夜のジャズ』の中の映像を見てもらいたいです。特に観客。オシャレな観客が、ダイナの歌にあわせて、身体を揺らしたり、踊ったり、恋人が顔を寄せ合ったり、あまりに素敵な光景にうらやましいやら、喜ばしいやら。ジャズで踊る。その最も美しい瞬間の記録なのかなと。」

H「あらら、2回目からこんなボーナストラックなんて例外を・・・確かにオシャレなんですよねえ。柳樂さんも是非、こんな瞬間を日本で作ってみてください。」




柳樂さん、お忙しい時期にどうもありがとうございました。

ちなみに柳樂さん、ジャズの原稿依頼はお気軽に、だそうです。Elis.ragiNa@gmail.com
こちらの音楽サイトcom-postに参加されています。 http://com-post.jp/

もう今年も終わりですね。
みなさんはどんな年でしたか?
しばらくは日本は大変な時期が続きそうですが、そんな時に楽しめる音楽があると良いですね。
そういう音楽をこちらで紹介したいと思っております。

それでは、また来年こちらのお店でお会いしましょう。
良いお年をお迎え下さい。


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1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
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著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
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vol.3 - モンドールとクリスマス・ソングのボサノヴァ


いらっしゃいませ。

bar bossaへようこそ。

今日は季節のチーズをオススメしようと思います。

モンドールです。


モンドール


モンドール


フランスとスイスの国境付近のジュラ地方でつくられるチーズですが、冬の間だけにしか生産、販売されないチーズのため、このチーズが街の店頭に並び始めると、フランス人は「あ、もう冬なんだな」と感じるそうです。

モンドールは写真のような丸い木箱に入っていまして、中にエピセアという木の樹皮が敷き詰めてあり、その樹皮の香りがチーズに移り、独特の味わいがします。

bar bossaでは、もうトロトロに熟成した状態のものをスプーンですくってお出ししております。
冬のヨーロッパの味を是非お試しください。


それでは音楽のお話に移りますね。

やっぱりこの時期はクリスマスの音楽ですよね。
お店を始めてから16年間、毎年のように「クリスマス・ソングのボサノヴァってあるんですか?」と質問されます。
最初に言ってしまうと、そんなに数はありません。
理由はやっぱりブラジルは南半球だから、クリスマスの時期は夏真っ盛りだからでしょうか。


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©Edmilson Oliveira da Silva

でも、さすがにカトリックの国なのでクリスマスは盛大に祝うようですので、いくつかクリスマスの有名な曲は存在します。

ここでちょっと話はずれるのですが、僕がブラジルに滞在していたとき(2ヶ月間リオに滞在していました)、高校でフランス語の教師をやっているという女の子のお家にお邪魔して、設計会社で働いている女の子の友達を呼んでもらって3人でお茶を飲んだことがあります(ちなみに彼女のお気に入りのCDはシャーデーとケニーG)。そこで「日本人はやっぱりみんな仏教徒なの?」と質問されたので、「一応そういうことになっているけど、お葬式とかの形式だけで、みんながそんなに信じているというわけではないよ」と説明すると「じゃあ、ブラジルのキリスト教と同じような感じね」と言われてびっくりしました。それがブラジル全土の感じなのか、それともお洒落な彼女達の感じなのかはわかりません。

音楽の話に戻ります。

ブラジルでは誰でも知っているクリスマス民謡で、「ボルボレッタ(蝶)」という曲があります。
マリーザ・モンチが歌っているヴァージョンが日本でも有名なので、知っている方も多いかもしれませんね。
ここではナナ・ヴァスコンセロスがパーカッションで参加しています。

marisa monte "borboleta"



「今日はクリスマスの夜です。私は小さくて魅惑的なちょうちょ。私を待ってる誰かを探して、花々を飛び回る」という歌詞です。なんだか南米の夏のクリスマスって感じの曲ですよね。

そして忘れてはならないのがジョアン・ジルベルトの1961年のサードアルバムに収録された「プレゼンチ・ジ・ナタウ(クリスマスのプレゼント)」です。

Joao Gilberto "Presente de natal"



「サンタのおじいさんが素敵なプレゼントをくれたよ。きれいな包装紙に包まれた愛しい君だったんだよ」という歌詞です。こういう歌詞やクリスマスの恋愛事情って世界中どこまで行っても同じなんですね。


「ボサノヴァのクリスマスのCDをプレゼントにしたいから、何かオススメを教えてください」ということも毎年のように聞かれます。
いわゆる完全なボサノヴァではないのですが、このアルバムはオススメですよ。CDだと、パッケージがとても可愛くてプレゼントにも最適です。

Vince Guaraldi Trio - "Christmas Is Coming ("A Charlie Brown Christmas")"



ヴィンス・ガラルディはジャズ・ピアニストでボサノヴァの良いアルバムもたくさん出しているのですが、スヌーピーのアニメのサントラをずっと担当していたことでも有名です。スヌーピーのサントラは、ボサノヴァも入っていて素敵ですよ。是非。

それでは、最後は彼らの演奏で終わりましょう。
ナオミ&ゴローです。
実はギターの伊藤ゴローさんとは、bar bossa開店前から親しくしていただいています。
確かお正月だったのですが、ゴローさんに「開店楽しみだね」と言われながら、bar bossaの天井の白いペンキを塗るのを手伝ってもらったことを思い出します。

naomi & goro "Winter Wonderland"



今年は22日から24日までが3連休になっていますね。
今からパーティの準備や、恋人とのデートの場所探しなんかでワクワクドキドキな時間をお過ごしなのではないでしょうか。
ちなみにbar bossaは本来は祝日はお休みなのですが、12月24日はクリスマスイブなのでさすがに営業いたします。
リアル店の方にも是非お越しください。

それではまた次回、こちらのお店でお待ちしております。
素敵なクリスマスを。


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選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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