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bar bossa vol.61

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vol.61 - お客様:町田洋子さん(ワインバー・マチルダ)


【テーマ:20年聴き続け今でも店でかけたい曲10選】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月のお客さまは初台のワインバー・マチルダの町田洋子さんです。


林;いらっしゃいませ。早速ですがお飲物はどうされますか?


町田;ロゼワインのペティアンをお願いします。


林;さすが、カッコいい注文ですね。それではフランツソーモンのロゼ・ペティアンをお出ししますね。


町田;お願いします。


林;さて、プロフィール的なものを教えていただけますか?


町田;町田洋子です。1975年生まれ、生まれも育ちも群馬県です。会社員の父と専業主婦の母、3つ上の兄の4人家族で外飼いの柴犬がいました。


林;お兄さんがいるんですね。なんとなくわかります。小さい頃の音楽環境とかは?


町田;両親が音楽を好んで聴いているという環境ではありませんでしたし、遊びはもっぱら野外。いわゆる おてんばな女の子です。幼少期、自宅にオルガンがあったので見よう見まねで「ねこふんじゃった」を弾くくらいでしたが、兄の影響で5才からエレクトーンを習い始めました。土曜日の午後、先生が自宅に来てレッスンしてくれるのですが、レッスンが嫌で嫌で。特にソルフェージュが苦手でした。音符をドレミに発音変換が出来なかったんです。小学校6年生まで習っていたのですが、最終的に家に帰らなくなりました(笑)携帯電話のない時代で本当に良かった。


林;この「鍵盤ものを習う」のって日本中であったようですが、それぞれのリアクションが違って面白いですね。


町田;聞く音楽はテレビから流れる邦楽が中心でした。アイドル全盛期だったのですが、男性アイドルより女性アイドルが好きだったようで、低学年の頃は松田聖子や中森明菜など「8時だョ!全員集合」に出てくるアイドルが好きでした。それが、3年生のクリスマスに父からカセットテープウォークマンをプレゼントされたのをキッカケに、私の音楽に対する執着心が芽生え始めます。当時まだ目新しかったポータブルプレイヤーで、ずーっと音楽を聴いていました。友達と遊ぶ時にも持ち歩いていたので、今思うと変な子供だったと思います。お気に入りだったのが少女隊の「Bye-Byeガール」って曲なんですけど、曲調がね、モータウンっぽいですよ。今まで聴いてた曲と全然違ってなんか新しくてねぇ、ちょっと踊りだしたくなっちゃうような。ハンドクラップとかホーンセクションとか入ってて、純粋にカッコイイ!と思ってヘビロテしてました。今でも脳内再生させてるくらいです。


林;おおっと、良いですねえ。


町田;その次に入れ込んだのはレベッカでした。1985年に4thアルバム 『MAYBE TOMORROW』が発売になって、完璧に魂まで持って行かれるくらいに夢中になりました。これが自分で初めて買ったCDです。確か最初にカセットで買って、その後CDを買い直したんじゃなかったっけな。ちなみにこの頃から音の位相を意識していたのと、CDのクレジットに興味があってレコーディングエンジニアとか、録音スタジオなどすべてチェックしていました。


林;レベッカ登場。あれ? でも小学生ですよね。マセてますねえ。中学にいくとどうなりましたか?


町田;中学生になると吹奏楽部に入部して打楽器をやっていました。小学校の時に見た「ポニーテールは振り向かない」というドラマの影響でドラムに興味を持ったんです。ドラムを叩きたいが為に入部しました。聴いていた音楽は引き続き女性J-POPで、レベッカ、PRINCESS PRINCESS、渡辺美里、Dreams come true、松任谷由実なんかを聴いていました。


林;あ、もうとにかく音楽中心なんですね。


町田;高校に入学してからはいろんなジャンルの音楽に触れるようになります。事の成り行きで、学校終わりに毎日JAZZ喫茶(夜はJAZZ BARになる)に通うようになりました。そこで初めてJAZZに触れ合う訳ですが、誰の曲かとは全然分かっていませんでした。ただ、「あ、このアルバムいつもかかってるけどマスターのお気に入りなのかな?」とか「あのお客さんが来るとトランペットの曲をかけるな?」とか、その程度の認識でした。それがジョン・コルトレーンとマイルス・デイビスだと分かったのは随分先の事でした。


林;カッコいい...


町田;部活には入らなかったのですが、ドラムは引き続き叩いていました。同級生とガールズバンドのコピーをしたり、学校の先生とブルースをやったり、あとは、ドラムは需要があるので、友達のバンドサポートとして、ライブハウスに出演していたりしました。


林;なるほど。ドラムたたける可愛い女子って重宝されそうですね。


町田;愛読書はドラムマガジン。この雑誌で楽器メーカー主催のサマー・ドラムスクールというのがあるのを知ります。4泊5日の合宿で、現役のプロドラマーが講師で教えてくれる、というとっても魅力的なものでした。両親に行きたい旨を相談したところ反対されたので、アルバイトをしてお金を貯めて高校2年生の時に参加しましたが、16歳の私には衝撃的でした。今なら分かる、凄腕ドラマーが講師に来ているというのに、当時はそんな事全然知らずに参加してしまいました。なにせリムショットもゴーストノートも知りませんでしたから。帰省し、すぐに買ったアルバムはジェームス・ブラウンと、山下達郎さんのライブアルバム『JOY』とT-SQUAREでした。


林;おお、すごく正しいですね。高校2年生ですよね。カッコいい...


町田;野外フェスといえばJAZZフェスで、駒ヶ根JAZZフェスティバルに行ったり、海外のJAZZフェスを深夜放送で熱心にリサーチしていました。当時お気に入りだったのはThe Rippingtons、パット・メセニー、マッコイ・タイナートリオ、ブレッカー・ブラザーズ、はにわオールスターズ、T-SQUARE。
チック・コリアに関しては 「トリオよりもエレクトリックバンドの方が好きなんだよね」などと吐かす生意気っぷり。誰か私を殴ってください。こうしてフュージョン女子高生に仕上がっていきました。ドラマーの青山純さんに憧れて、夢はスタジオミュージシャンでしたが「これ無理だわ~」となったのは高校3年生でした。


林;うわ、これは高校卒業後の展開が気になります。


町田;高校卒業後、東京の短大に進学して一人暮らしを始めました。東京最高でしたね。ライブもすぐに行けるしお芝居も沢山やっている。アルバイトでおこずかいを稼いでそういう娯楽を積極的に楽しんでいました。六本木PIT-INにはよく行きましたね。


林;90年代前半ですから東京が一番面白い頃ですよね。わかります。


町田;短大を卒業したら地元に戻って銀行員になる事を条件での上京でしたが、OLになるのが嫌で嫌で。第2次イヤイヤ期です。


林;(笑)


町田;就職せずに東京に居残りフリーターの時期が2年ありました。その間、ドラム合宿で知り合った人たちが続々とプロになっていきまして。友人がデビュー当初の平井堅さんのサポートミュージシャンをしていたので見に行ったり、打ち上げに参加してたりしてたんです。その延長線でレコード会社の人との接点が増えていきました。ほぼ毎晩、音楽関係者と新宿三丁目のBARに行く事になりまして、ガッツで朝まで飲んでいたら、レコード会社に拾って貰える事になりした。ちなみにこの頃BARで流れてたお気に入りは、キャロル・キング、カーラ・ボノフ、ドナルド・フェイゲン、クルセイダース、Billy mannなどです。現在MACHILDAでの選曲に大きく関わる時期です。


林;なるほど、新宿三丁目で飲んでたんですね。音楽も渋いはずです。レコード会社のことをもう少し詳しく教えてください。


町田;レコード会社での担当部署は新人発掘部で、オーディションやライブハウスで発掘した新人アーティストの育成がメインです。レコーディング音源を作ってプレゼンして、メジャーレーベルと契約をするところまでの仕事はとてもやりがいのあるものでした。大変な事も沢山ありましたが、冒険のチャンスを与えられた場所だったなと思います。その後、他のレコード会社に移ってプロモーターをやっていました。担当媒体はラジオ局で、新譜の宣伝をしていました。


林;すごくやりがいのある仕事ですね。さて、その後はもちろんお店へと向かうわけですが、そのあたりの経緯を教えてください。


町田;今はワインバーを生業としていますが、初めて独立した時は洋菓子店だったんです。レコード会社で働くうちに、私も物を作る仕事がしたいと強く思うようになって、当時個人的にケーキを作っていたのですが、それが知り合いの飲食店の人の目に止まって、その店にケーキを卸すようになりました。お酒のアテになるケーキとして評判を上げていくにつれ、洋菓子を本職にしようかという気持ちが大きくなってきました。
ただ、ひとつ問題があって、私は皮膚が弱くって手荒れトラブルが悩みの種だったんです。雇われの飲食店ではこの手じゃやっていけなそうなので、やるなら独立、という構図がすぐに思い浮かびました。


林;そこで独立を思いつく... 毎回、発想や展開がすごいんですね。


町田;いきなり独立するのも無謀なので2年後の独立を目標に掲げ、ケーキカフェでバイトを始めました。私、たぶん物件運が良いんだと思うんですけど、28歳の終わりにスルッと物件が見つかったんです。小田急線参宮橋駅徒歩2分。商店街沿い9坪10万円。


林;安い!


町田;ただし、とても古くて5年間限定の契約物件だったんです。そのかわりに家賃も破格。5年後店を続けたければ引越しをすればいい。新しい仕事をしたくなるかもしれない。という可能性もあるので契約することにしました。5年という条件も後押しさせるものでした。3年か5年続けるかで世間からの評価がかなり違います。次のステップに移る時重要になると思いました。それとどうしても20代で独立しておきたかった。当時女性での飲食店開業はまだ珍しく、しかも20代であればそれだけで何かしらの取材が来る、と踏みました。


林;すごい...


町田;おかげ様で、店の取材と個人の取材は半々くらいでありまして、この先自営業として生き延びさせるノリシロを作る事が出来たと思っています。若かったからこそ出来たこと、若いが為に足りなかったこと、どちらもありましたが、がむしゃらにしがみついてやるしかありませんでした。余裕なんて全然なかったな。経営者というものがこんなにも孤独なものなのかと愕然としました。そうこうしているうちに5年の終わりが見えてきまして、店を続けない決断をしました。経緯はいろいろあるのですが、もっといろんな人と関わりながら仕事がしたいようになったんです。


林;店って閉めた直後は「もうしたくない」って思うようですね。離婚後と似ているというか...


町田;それで、料理研究家とかフードスタイリストのような仕事をしていこうと東横線学芸大学駅に引っ越して小さな2階建の一軒家を借りました。そこの1階をアトリエとして撮影に使ったり、同時にケーキや料理の教室を始めました。ここでコケるんです。フリーランス向いてなかった!次に繋げる営業力が圧倒的に足りなかったんです。1年経って経営の見通しが立たず、精神的にも追い込まれていき、人生で一番辛い時期に陥りました。


林;フリーランスって営業努力が大きそうですね。


町田;そんな時に現在のMACHILDA物件の話が持ち掛けられます。ここから、ただただ流れに乗るだけの生き方になります。


林;(笑)


町田;一人で焼き菓子屋を営んでいた知人が妊娠しまして、産休期間の2年間、お菓子屋をやらないか?と誘われたんです。正直、お菓子からは暫く離れたかったし、お店は2度とやりたくない、という気持ちがありました。だけど、逆にお店ならできるという気持ちもあったりして。とにかく稼がないとご飯も食べられないし住まいも失う事になるので話を進める事にしました。初台駅から徒歩1分。人通りの少ない緑道沿いの3坪物件はちょっと特殊なんですが、酒場なら成り立つ物件だな。と密かに思っていました。焼菓子屋の彼女も店舗撤退する方向に話も変わったので、契約期限なく居抜き物件を借りられる事になったんです。やっぱり物件運は強いと思います(笑)


林;物件の運って本当に全てですよね。


町田;小さい物件なので、専門店が良いと選んだのがヴァンナチュールです。当時飲んでいて好きでしたし、周りの店舗と業態も被らないし、リサーチの結果、飲み屋難民の働き盛りの30代が多く存在する事が分かったので、そういう地元の人が入りやすい雰囲気の店にしようとおもいました。雑誌にも食べログにも乗らないようなお店がいいな、と。


林;良いですねえ。


町田;的が当たったのか、オープンしてすぐにお客様に恵まれました。オープン1ヶ月後には雑誌の取材依頼が来て、焦りました。「ちゃんとやらなくっちゃ」と覚悟を決めて本腰を入れたのはそこからですね。オープンして3ヶ月経つ頃に萎えていたメンタル面も健康を取り戻していました。


林;これ、お店をやりたいという方や飲食業界の人もたくさん読んでくれているのでもう少し詳しくお店の方針なんかを教えていただけますか?


町田;営業スタイルは人それぞれだとは思いますが、私はお客様とは一定の距離を保って接するように心がけています。基本的に定休日にお客さんと飲みに行ったり、お店主催の花見をやったりしないタイプですね。最近少しずつその仕切りを外してみたりもしてますが。


林;それって大切ですよね。


町田;そしてその日の出来事を翌日に引きずらないように気をつけています。あとはお客さんの秘密は守る。とか。「最近Aさん来てる?」なんて聞かれて、たとえ入れ違いだったとしても「はい、たまに」などとはぐらかしたりします。私もそうですが、バーテンと美容師さんにしか話せない事とかもあったりしますからね。仕事でも友達でもない誰かに話してガス抜きしたいとか。


林;大切ですよね。ところで女性一人でさらに町田さん可愛いし、男性のお客さまから色々と面倒くさいことってないですか? 


町田;何言ってるんですか!バーテンたるもの口説かれなくでどうするんですか(笑)お客さんはオフでお酒を飲んでいる。私はオンで仕事中。そりゃ素敵に見えてなくちゃ困ります。これがバーテンマジックです。でその代わり、外であったら2割減になってしまうんですよね。マイナス採点されがちな職種だなあ。と思ったりします。


林;(笑)


町田;オープン当初は「仕事終わりに飲みにいこうよ」なんて誘われたれしましたが「この後片付けがあるから2時に待ち合わせになっちゃうんだけどいい?」と聞くと、100%回避できましたよ。休みに飲みに行った事もあるんですが、その後店で、「俺の女節」を発揮してしまう方もいらして、二人きりの飲みは難しいな。と思いました。でもこういうの、女性に限らず男性バーテンにもあるんじゃないですか?ねぇ、林さん。


林;あの、僕は妻と娘がおりますので。エヘン(咳)。お店はずっと続けられますか?


町田;お店を続けるのは・・・、極論ですが辞めなければ続きます。辞めたらそこでお店は終了なんですよね。もう本当にいろんな都合がありますけど、辞めない。それにつきます。これが難しいんですけどね。


林;わかります。他に何かこの業界を目指している人たちにアドバイスはありますか?


町田;お酒を扱う仕事をカウンターでやるにはなんというかそれなりの覚悟がいります。目には見えませんが、酔ったお客さんのエネルギーというのはハイパワーですので、真っ向から食らっちゃうと、店主が滅びます。滅びる人を何人も見てきました。ただ、ワインを飲まれる方は温厚な方が多くて、変なトラブルが起こる事もほとんどないので、それに関してはワインを選んで本当に良かったとおもっています。


林;あ、僕も全く同じでワインを選んで良かったってよく思います。でも、町田さんいつも楽しそうですよね。


町田;お客さんに「こういうお店、楽そうでいいな。いつかお店やりたいな。」と思ってもらう事が出来たらラッキーとおもっています。そんなに楽じゃないんですけどね、楽そうに演出できてるのかなって。


林;ほんと、そんなに楽じゃないですけどね(笑)


町田;カウンターメインでの飲食店の仕事はお客さんとの心の距離が近いのが魅力的ですね。そして、毎日が違う夜なので飽きません。色んな職種の方がいらっしゃるので、困っている事も大抵は解決しますし楽しいですよ、うん。楽しい。嫌な事もあるけど、そういう事は翌日に持ち越さずに忘れましょう。


林;ほんとにそうです!(笑) さて、これみんなに聞いているのですが、これから音楽はどうなっていくと思いますか?


町田;スマホで育った世代って実は結構音楽を聴いてるんじゃないかな?って思ってるんです。MACHILDAに来店する若い世代の方は入店する瞬間までイヤホンをして何かしら聴いている人が多いんですよね。そして楽曲入手方法は配信で、オーディオ機材が自宅にないようなんです。ただ、音楽を聴いている割に、酒場で好きなアーティストについて語り合うシーンはあまり見た事がありません。


林;あ、そういえばそうですね。


町田;スマホ 対 自分、のような1対1の音楽ではなく、スピーカーから流れる音楽に関心を持って共有出来る日が来るといいな、というのは私の願いです。彼らがオーディオや真空管アンプなどの良質な音に触れる場が増えて、それをカッコイイ!と思えたら、そういう流行りがくるんじゃないかな、とも思っています。で、それを仕掛ける大人もそろそろ出てきてますよね?


林;僕もそこに可能性は感じています。さて、これからはどういう風にされるご予定でしょうか?


町田;MACHILDAはオープンして今年で7年目になりますが、今の店をでできる限り続けてみたいと思っています。長く続けるとなにが起こるのか、どんな心境の変化があるのかを知らないので経験してみたいですね。それと、目の前が青い海!なグッドロケーションでB&Bを経営するのが夢です。一階はテナントにして飲食店を入れたいですね。


林;青い海の前にビルを所有している独身男性はMACHILDAに急げ、ですね。さて、そろそろみんなが待っている選曲に移りたいのですが、テーマをまず教えていただけますか?


町田;はい。「20年聴き続け今でも店でかけたい曲10選」です。


林;おお、良いですねえ。楽しみです。


01. Brecker Brothers / Some Skunk Funk

町田;スタンダードジャズよりもこういったファンク寄りなものが好きなんです。初めて聴いた時は、まあ、ぶっ飛びましたね。スピード感とトリッキーな展開に夢中になった女子高生。1993年の来日ライブにはもちろん行きました。


林;カッコいいですねえ。町田さんそうとうヤンチャなのがお好きそうですね。え、93年のライブに行ってるんですか。すごい・・・。


02. Stevie Wonder / It's You feat. Dionne Warwick

町田;非常に申し上げにくいのですが、高校に入るまで、スティービー・ワンダーは亡くなっている方だと思っていました。だって名曲を作る人は皆、額縁に写真を入れられて音楽室に飾られているじゃないですか。こんな偉大音楽家が生きているなんて奇跡のように素晴らしい!It's Youはこの世で一番好きな曲です。二人の歌声はもちろん、ピアノから始まるイントロも、優しく響くホーンも、ハーモニカもすべてが愛おしい。「この曲が世界で一番好きなんだ」なんて言う人がいたら恋に落ちますね。


林;良い曲ですよねえ。僕はちょうど懐かしいなあって感じです。MACHILDAに行って、「この曲が世界で一番好き」という男性が続出しそうですが...


03. Crusaders / Scratch

町田;このアルバムを買った時、なんだか大人の階段を登ったような気がしました。オルガンの音色っていうのはなんでこうも隙間を魅力的に演出するんでしょう。主旋律のサックスよりも、オルガンばかり聴いてしまいます。LIVEならではのグルーヴも一流。


林;すごい渋い曲ですね。やっぱりドラムをやってたからこういう「ためとか隙間のある曲」がグッとくるのでしょうか。


04. Karla Bonoff / The Water Is Wide

町田;名曲は結婚式で流しにくい歌詞。の法則ですね。今は無き新宿3丁目のBAR MARTHAで夜明けが近くなるとよく流れていました。外の景色も明かりも届かない小さな店でこの曲が流れると、決まって「ああ。外は雪、って感じがする」と言う女性がいて、それがとても大人っぽくて憧れでした。なので、この曲を聴くとついつい、「外は雪」と思ってしまいます。


林;おお、そう言われてみれば確かに「外は雪」な感じですね。こういう音楽って「誰かとの会話やその時の状況の思い出」が心のどこかにしっかりと植えつけられますね。


05. Al Kooper / Jolie

町田;イントロのスネアの入りからして相当カッコイイ!こちらも3丁目仕入れ。血管から流れ込むような幸福な音色ですよね。無駄に酔って無駄に惚れそうです。1990年代後半の酒場では聞かない日はなかった。というほどみんな大好きJolie。


林;確かに90年代後半の酒場では定番でしたね。良い曲ですよねえ。無駄に惚れそうに乾杯です。


06. Chicago / Saturday in the Park

町田;ピアノで始まる曲がとにかく好きです。さらにホーンセクションが入っていれば大好物。MACHILDAは土曜日だけ15時オープンなので昼酒ができるのですが、この曲がかかると爽快。


林;MACHILDAさん、土曜日は15時オープンですよね。みなさん、是非! でも選曲が10歳くらい年上男性と付き合ってたとしか思えない、妙な「オジサン心」をくすぐりますね。


07: Donald Fagen / I.G.Y

町田;アルバム『The Night Fly』は、音質のバランスの良さからレコーディングやPAのエンジニアがシステムチェックに使っているというのは有名な話ですが、レコード会社時代、プレゼンライブの会場で朝イチにこの曲がかかるので、聞いたら自然と気合が入る一曲です。位相好きにはたまらないですね。


林;なるほど。これ、そういう風に使われるんですね。知りませんでした。


08: 古内東子 / Strength

町田;1995年発売。日本のアーティストでこんな豪華なスタジオミュージシャンでレコーディングできる人がいたのか、と感動を覚えたアルバム。ブレッカー・ブラザーズやデヴィット・サンボーン、ボブ・ジェームス、オマー・ハキムなど、憧れのミュージシャンが勢ぞろいで、嬉しいやら悔しいやら。コーラスアレンジも秀逸。


林;え、これってそんなすごいメンツなんですね。この時期ってそういうことが可能な頃だったんですね。すごい・・・。


09: 山下達郎 / Magic ways

町田;達郎さんは私のライフワークにすることにしました。今までもこれからもずっと聴き続けるであろうアーティスト。ここ数年、店を休んででもコンサートに行っています。基本的に音楽はレコーディング音源で聴くのが一番好きなのですが、達郎さんのコンサートは自分へのご褒美です。店で流れると私の機嫌が良くなるので、度々流れるのは気のせいではありません。


林;なるほど。この流れならもちろん山下達郎ですよね。「好き」って言い続けると、いつか誰かがMACHILDAに連れてきてくれるかもですよ。


10: Four Freshmen

町田;自分の好きな4声のコーラスの歴史を探っていったらたどり着きました。フォーフレッシュメンスタイル。と呼ばれるコーラススタイルの原型だったんですね。選曲の7,8,9のアーティスト音源でも多用されています。1950年代にこれをサラッとやってのけちゃった訳ですから、革命ですよね。最高です。


林;なるほど。このスタイルが後のコーラススタイルを作り出したわけですね。こういうの最後に持ってくるのが粋ですねえ。さすがです。


町田さん、お忙しいところどうもありがとうございました。なんだかすごい人生ですね。これを読んで女性たちが「私も町田さんみたいになろう」って思ってくれると良いですね。

みなさん、MACHILDAさんも良いお店ですので是非行ってみてくださいね。


MACHILDA HP

MACHILDA twitter


やっと9月ですね。まだまだ暑い日々が続きますが、良い音楽を聴いて乗り越えたいところですね。それではまたこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
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「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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