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2015年5月アーカイブ

JAZZ in NEW YORK#5 - Japanese Jazz Musicians in New York:JAZZ in NEW YORK


ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


5回目となる今週はニューヨークで活動する日本人ジャズミュージシャンについて。
改めて沢山の日本人がニューヨークで活躍しているんだと気付かされます。
遠い異国での生活や仕事。悩みはつきものですよね。
そういう時にアドバイスしてくれる先輩達、頼もしいかぎりです。

さて、いよいよ来週6/5(金)は最終回。
そしてその日の夜に渋谷JZ Bratにて中原さんの凱旋ライブがあります。


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■Japanese Jazz Musicians in New York


アルバムを制作して改めて、「日本人、仕事できる!」と思った。ニューヨークで制作したものの、Mix/Mastering、ジャケットの撮影、衣装、メイク、デザイン、結果的に全部日本人にお願いした。

早い段階からCD制作について相談させていただいていたのは、ギタリストの高免信喜さん。いつも丁寧にアドバイスをくださった。Blue Note NY、Iridium Jazz Club等でも演奏され、ジャズフェスやご自身のツアーで頻繁に世界中を回られている。CDもコンスタントに制作され、昨年12月にリリースされた5枚目のソロギターのアルバムも、高い評価を得られている。先日の高免さんとのDuoでのライブ、リハーサルなしで私のちょっと複雑な曲を完璧に弾いてくださった。

というわけで、NYでご活躍の日本人ミュージシャンはたくさんいらっしゃいますが、僭越ながら何名かご紹介させていただきます!


ジャズシーンで最も活躍されている方のお一人は、先日の記事でも書かせていただいたベースの中村恭士さん。あらゆるバンドのサイドマンとして、まさに引っ張りだこ。Clarence Penn、Myron Walden、Rudy Royston、Joe Lovano、Dave Liebman...。Mark Whitfield-Extendedでは、私のバークリーの最初のアンサンブルの先生でもあったMark Whitfield (gtr)、Mark Whitfield Jr.(dr)、Davis Whitfield(piano)というWhitfieldファミリーの中でベースを弾かれている。Jazz at Lincoln Centerで開催された、2014 NEA Jazz Masters Awards Ceremony & ConcertにもJoe Lovano(sax)やKris Bowers(piano)等と共に出演されていた。一緒に演奏していただきたくてご連絡しても、必ず既に予定が埋まっている方。


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[中村恭士(bass)_Christian Sands(piano)]


ピアニスト早間美紀さん。先日5月7日に、Smoke Jazz and Supper Clubに、Mimi Jones(bass)のバンドでの演奏を聴きに行った。お二人が一緒に演奏されているのを観るのは、2004年のNHK セッション 505で早間美紀さんトリオ w/Mimi Jones (aka Miriam Sullivan), Kim Thompsonを聴いて以来。その年、CDショップで、美紀さんのDebut Album "Vibrant"のジャケットが目に入って試聴した。あまりのかっこよさに、生で聴きたい!と思った。(ニューヨークで活動されてるのかぁと思った記憶がある 。)その後すぐ日本ツアーに来られ、希望がかなった。2006年に発売された太田剣さんの1st Album "Swingroove"でピアノを弾かれているのも美紀さん。力強く、美しく、かっこよく。私の目標。96年横浜プロムナードコンペティションで早間美紀トリオで優勝されている。NYでのご活躍は、Biographyをご覧頂いた方が早そう。グラミー賞ノミネートボーカリストNnenna Freelonとも演奏されていて、私が在学中にお二人でバークリーに演奏にいらしたことがある。嬉しくてはしゃいでしまった。


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[早間美紀(piano)]


日本で初めてお話をして以来、来日の際メールをくださり、お会いするといつも優しく接していただいた。NYに来てからは特にとってもお世話になっている。何か悩み事があるときになぜかタイミングよくご連絡をくださったりして、ずっとくよくよ考えていたことについて瞬時にアドバイスをくださる。演奏もお人柄も、大ファン。私が今ここにいるきっかけにもなった方です。


オルガニスト敦賀明子さん。2012年にBrooklynのJazz 966で、Lou Donaldson Quartetで演奏されたときに初めてお会いした。お客さんはほとんど地元の方で、私はちょっと場違いっぽかった。休憩中に明子さんにご挨拶すると、"遠いのにありがとう"と関西弁で気さくに話してくださった。帰りには、"気をつけて帰ってね"と。それ以来、GarageやShowmansのライブ、昨年のCD "Commencement"のリリースショー等を聴きに伺っている。


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[敦賀明子(organ)]


(ジャズ)オルガニスト、本当に尊敬する。左手で安定してウォーキングしたりベースラインをキープしたりしながら右手でインプロヴィゼーションをするのってかなり難しい。それをもちろんなんなくされてしまう明子さん、演奏の盛り上げ方も、すごい。 羨望。昨年末、落ち込んでいて、明子さんの演奏を聴きたくなりGarageに行った。そのとき新年のハウスパーティーにお誘いいただいた。パーティーに参加されていた、ご活躍中の先輩女性ミュージシャンの方々は、まさに人生の師匠でした。


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[Me&Akikoさん]


海野雅威さん。日本でご存じない方はいらっしゃらないはず。私がジャズを聴き始めた頃にはまだ日本にいらっしゃった。NYでは、Jimmy Cobb(dr)トリオでVillage Vanguardに出演、Winard Harper(dr)グループでもご活躍。Junior Mance(piano)のレギュラーのギグの代わりも務められていた。Arturo's でほぼ毎週弾いていらっしゃり、度々聴きに行った。トリオもソロも素晴らしくてうっとりしてしまう。NYに来た年に、レッスンを受けさせていただいた、尊敬するピアニスト。


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[海野雅威(piano)]




ここで、共演させていただいた日本人ミュージシャンと、その時のお話を!
2013年8月には、ベーシスト北川潔さんに私のライブで演奏していただけました。


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[北川潔(bass)]


ご紹介するまでもなく、Kenny Barronのバンドのレギュラーベーシストとしてもご活躍の大ベテランで恐れ多い方。リハの後、オリジナル曲をナイスだと言ってくださり、ライブも楽しく演奏できたとおっしゃっていただいて、とても感激でした。その時のSaxは、ニューヨークでは知らない人はいない、Tivon Pennicott。この夏に1ヶ月半だけ借りていたBrooklynのリハーサルスタジオで、意気込んで練習した。"Jay Street"は、そのスタジオで作った曲。スタジオから徒歩11分(猛暑で大変だった)の最寄り駅の名前です。24時間利用できるとのことで、気合いを入れてスタジオに近いところへ短期移住したのですが、そこで大騒動。この時から私の引越地獄は始まりました。その話は長くなるのでやめておきます。


9、11月には、イタリア出身の女性シンガーのライブで、ベーシスト脇義典さんと共演させていただくこともできました。Comping(伴奏)の仕方のアドバイスをくださったり、シンガーのために楽譜を作ってあげられたり、優しい方です。


2013年秋から半年間ほど毎週行われていた、シンガー霧生ナブ子さんがホストを務められたVocal Jam Sessionで演奏させていただいたおかげで、日本人の素晴らしいシンガーの方ともたくさんお近づきになれた。古賀マリさん、平麻美子さん、あかある 星野らぶれ~すさん、山田あけみさん、ERIKAさん、いとうゆうこさん... 新しいアルバムをリリースされたばかりの方や、近日中に発売される方ばかり。 2013年の冬はありえない程厳しく、雪もたびたび降り、キーボードをかついでの往復の移動(うち徒歩40分ほど)は本当につらくていつも半泣きだったものの、ここでの演奏はとてもよい経験になった。シンガーの皆様には個人的にもすごくお世話になったり、励ましていただいたりしている。


あるギタリストのバンドでのライブ。着いてみたら、ハウスドラムのBass Drumのペダルが壊れていることが発覚。とりあえず、手ぶらで来ているであろうドラマーに電話した。「えぇ!?」って。当たり前の反応だ。ラッキーなことに、近くに住んでいらっしゃったドラマー山田かおりさん(ある素敵なシンガーのライブで1曲ご一緒させていただいた)と連絡がとれ、たまたまご在宅で、ご自身のペダルを届けに駆けつけてくださった。かおりさんは引越問題のときも親身に相談に乗ってくださり、まさに救世主です。


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[Me&mikiさん&kaoriさん]


Duoの演奏でも、バークリーからの友人を中心に、たくさんのミュージシャンとご一緒している。ボストンで、何度かHal Crookの個人レッスンを受け("How to Improvise"、"How to Comp"の著者として有名だと思う)、彼のアドバイスですぐ実行したのはDuoで練習をすること。演奏相手として何名か学生の名前をリストアップしてくださった。そのうちのお一人、金澤悠人さんほか、ギタリストのお友達とは特に、NYでよく共演させていただいている。

同時期にバークリーにいた方々、みんなものすごくがんばっています。

ご紹介しきれないけど、たくさんの尊敬するミュージシャンと一緒に演奏する機会をいただいていて、本当に嬉しい。まだまだご一緒したい方がいっぱい。


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[百々徹(piano)]


演奏もそのユーモアもとっても大好きなピアニスト百々徹さん、脇義典さん、平麻美子さん、高免信喜さんが主催される、日本人ジャズミュージシャンの新年会、通称「どどわき新年会」というものが存在する。居酒屋に数十名集まるその会に、昨年から2回参加させていただいて、新年早々とっても楽しい気分になります。


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[新年会(photo by Mamiko san)]


さて、最後にあとお二方、触れずにはいられない、日本人ミュージシャンで超活躍されているピアニスト/キーボーディストをご紹介します。(結果的に、鍵盤奏者をたくさんご紹介することになってしまいました!)

BIGYUKIとして知られているYuki Hiranoさん。完全にローカルのミュージシャンと同化している感じ。 ボストン時代に噂に聞いていた"デカユキ"さんの存在。ニューヨークで私がレストランで演奏していたときに初めて会った。その時はその方がデカユキさんとは知らず、後から、今会ったのはもしや??と思い返した。そのときは、「僕ジャズじゃないんよ〜」と半分酔っぱらいながら言っていた。初めて聴いたのは、Winter Jazz FestでのMarcus Strickland(sax)のグループMarcus Strickland's Twi-Lifeのキーボーディストとしての演奏。初対面のときと演奏中のかっこよさとのギャップ。ジャズではないけど、ジャズミュージシャンともよく演奏され、ジャズクラブでの演奏も多い。


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[BIGYUKI(Keyboard)]


Revive Musicの主催したBlue Noteでの彼のグループでのライブも満員。ギターRandy RunyonとドラムDaru Jones。ベーシストなしで、彼が左手でベースを弾く。彼の曲はとてもかっこ良くインパクトがあり、耳に残る。キーボードやシンセで様々な音を使いこなして弾く姿には、同じ鍵盤奏者としてとても憧れる。彼のライブは、NYで聴いて最も楽しかったものの一つ。
そんなBIGYUKIさんがよく出演しているRockwood Music Hallで、7月に私のNYでのCDリリースショーをすることが決まった。嬉しい!


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[BIGYUKI(Keyboard)]


私がアルバムをレコーディングした。Riro Muzikは、Beyoncéのツアーで活躍されているキーボーディスト/ピアニスト辻利恵さんと、ベーシストでありエンジニアでもある旦那さんのRozhanが一緒に立ち上げられたスタジオ。(利恵さんご自身もインタビューで語られています。) 下見に行ったときも、たまたまツアーの合間で利恵さんがNYに戻られていて、その素敵なお人柄で和ませてくださった。初めての本格的な自分自身のレコーディング。わからないことしかなかったが、Rozhanのサポーティブな姿勢で、ここでのレコーディングを決めた。BIGYUKIさんのライブでたまたま彼に初めて会って(利恵さんにはボストンでお会いしたことがあって旦那さんのお話も聞いていたけど、実際に会ったことがなかった)、そのときにスタジオを立ち上げたことや、今度Steinwayのピアノが来るという話を聞いて、今度詳しく聞かせて、と話していた。まさかその7ヶ月後に本当にそこでレコーディングすることになるとは。


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

JAZZ in NEW YORK#4 - Musician Friends in New York:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


4回目となる今週はバンドメンバーの探し方について。
世界で一番ジャズミュージシャンが多い街、NYならではのエピソード満載です。

中原さんがレコーディングメンバーとどうやって出会ったのか?
タイミングや人柄も重要かと思いますが、何よりもこの人とやりたい!という想いを感じます。

こういう出会いがあって生まれた彼女のファーストアルバム『A Ray of Light』は、5月23日リリースです。


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■Musician Friends in New York


NYで、バンドメンバーはどうやって見つけるの?と聞かれることが多いので、ご紹介したいと思います!まずはレコーディングメンバー。皆Blue Note、Jazz Standard、Dizzy's、Smoke、Smallsなど一流のジャズクラブや国内外のジャズフェスティバルで演奏する大活躍中のミュージシャンです。


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[Leon(bass)]


最初に出会ったのはベースのLeon Boykins。先週の記事でもご紹介したのですが、シンガーAllan Harrisのバンド、またそのサイドマン3人で結成したトリオ、"King Pony"や、自己のトリオ、その他サイドマンとして忙しく活動している。

日本でもそうだと思うけど、ジャズミュージシャンの中で「ベーシスト」は特に忙しい。NYに来て最初の頃は、知り合いもほとんどいないし、ベーシストを見つけるのに本当に苦労した。次のライブで弾いてくれる人がどうしても見つからなかったとき、QueensにあるBlackbirdというお店のジャムセッションに行ってみた。(ほぼ毎週日曜日にセッションがあり、家から徒歩30分くらいだったけど一度も行ったことがなかった。) そこにたまたま来ていたSax Playerと仲良くなり、ベーシストを探していることを伝えたら、早速数日後に紹介してくれたのがLeonだった。忙しい彼。リハーサルの時間がないとのことで、いきなり本番で共演することに。彼のmyspace(だったと思う)の音源だけが頼り。そのときはギターとベースとのトリオ。ドラムなしのトリオが初めてということもあり、不安だった。けど当日、直前にLeonと軽く打ち合わせして、不安が飛んだ。めちゃくちゃ初見が強い。お店が暗い中、楽譜に書き込んだエンディングのアレンジを、本番も忘れることなくばっちり弾いてくれた。そして、なんという安定感。ベース一つでしっかり支えてくれた。彼のWalkingはとっても合わせやすかった。この人ともっと演奏したい!と思った。次回のライブもその場でお願いしたし、その後、ライブをブッキングするときは、まず彼の予定を聞いて日程を調整することも多くなった。彼の作る曲も好きで、私のライブでも演奏させてもらった。

Leonは一見クールだけど、とっても心が優しい。いつもさりげなくアドバイスをくれる。わからないことを度々彼に相談した。誰もはっきり教えてくれなくて悩んでいた「演奏してくれたメンバーにギャラをいくら払うのが適当なのか」という疑問とか、レコーディングのことや、英語のことなど。今年から、高校でフルタイムで教え始めたそう。面倒見のいい彼、ユーモアのセンスで人気者でもあるし、いい先生になりそう。


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[Peter(drum)]


ドラムのPeter Kronreifは、Leonが出演していたライブで共演していたドラマー。二人は長い付き合いだそう。彼もLe Boeuf Brothers、Nuf Saidなど色んなバンドを掛け持ちし、日に2つ3つライブがあることも稀ではない。ジャズ、ファンク、ロックなんでもできる。オーストリア出身で、ヨーロッパへもよく演奏しに行っている。そんなPeterも、もっとも信頼しているバンドメンバーの一人。Leonと同様、彼の初見の強さにはびっくりした。拍子が変わり、キックも多い私の曲「Composition 1...」と「E-Funk」をリハの1回目でほとんど完璧に演奏した。本番で、彼と一緒に演奏するのがすごく楽しい!と感じた。久しぶりのライブでも、彼は私の曲を忘れることなく、バンドを支えてくれ、演奏中の私の判断にちゃんと着いて来てくれる。ヨーロッパツアーで帰って来た日、空港から直接私のライブに駆けつけてくれたときもそうだった。体力もすごい。そして自分の判断基準も持ち、いい加減な人が多い中で、彼はちゃんとしている。性格もいい。彼自身のバンドのライブで、作曲とアレンジの才能にもびっくりさせられた。


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[Chad(sax)]


サックスのChad Lefkowitz-Brown。Clarence Penn(drums)、グラミーを受賞したArturo O'Farrill's Afro Latin Jazz Orchestra等で活躍する他、Taylor Swiftのバックバンドのメンバーとしても演奏、TVにも出演する。アメリカ中、世界中で毎日のように演奏している。彼は今25歳。おそるべし。彼とは、友達とのセッションで出会った。リハーサルスタジオを借りているドラマーが、Chadに声をかけた。(ジャズクラブで行われているセッションに行くのではなく、友達同士でスタジオや誰かのアパート(音を出しても大丈夫なところ)でセッションをするのもすごくいい。待ち時間もなく、時間いっぱい、やりたい曲を演奏できる。) Chadは、ちゃんと約束を守る。「Sounds greatだったよ、また演奏しようよ」と言うのはミュージシャンの間では社交辞令みたいなものだけど、Chadはすごく忙しいにもかかわらず、ちゃんと実現することができた。すごく性格がよくて明るくて、レコーディングのときも励ましてくれた。程よくレイドバックもしている。ある土曜日、地下鉄の不通や遅延で仕事に遅れそうになっていたとき、乗り換えの駅でChadに偶然会い、数駅一緒に電車に乗って話していたら、彼のリラックスした空気にとりこまれ、自然とあせりが消えていた。
ところで、ニューヨークのSubwayの運行状況はひどいものがあり(特に週末)、それにやられたエピソードもたくさんある。


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[Jeff(guitar)]


レコーディングには参加していないけど、私のバンドにとって重要な、ギタリストのJeff Miles。NYに来て数ヶ月後に聴きに行った、バークリーからのドラマーの友達のライブでフロントを務めていたのが彼。 2008年Gibson Montreux Jazz Guitar Competitionで優勝する実力の持ち主だけど、技術の高さだけではなく、弾いている姿が観客を惹きつける。私はそのとき、彼の演奏はなぜかセクシーだと感じた。もちろんセクシーな服を着ていたわけでもないし、本人はセクシーさをアピールしようとしてはいない。話してみたら、そんな性格ではないことがすぐわかる。ミュージシャンにはステージ上でのセクシーさが必要だな!と思った。

私の曲はJeffに合っていると思い、ぜひ弾いてもらいたくて、最初のTomi JazzのライブでJeffにお願いした。声をかけてくれてありがとう!と、とっても優しいメールで返事をくれた。リハーサルに来てくれたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。そのときベースもドラムも日本人。日本人のクオーターであるという彼は、なじんでいるようでもあったし浮いているようでもあった。それ以来何度も一緒に演奏している。彼はI love teachingと自ら言う程教えるので忙しいけど、ある日、急遽連絡が来たライブ演奏の依頼で、Jeffにすぐ声をかけたところ、「Brooklynの下の方で夜まで教えてるから、終わったらタクシーで駆けつけるよ」と言ってくれた。そのギグは彼の行ったことがなかったジャズクラブだったけど、場所はHarlem。タクシーを使ったらギャラがほとんどなくなると予想できたのに、「I don't mind.」と。結局タクシーを使っても開始時間に間に合わないことがわかったので、そのときは一緒に演奏しなかったけど、声をかけるといつも、「I'm down.」と快く受けてくれる。男女問わず、私のライブを観てJeffのファンになる人は多い。私を差し置いて。Jeff自身のバンドより、私のバンドでの彼の方が格好良さが引き立つと勝手に思っています。


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[Me & Taylor]


ピアニスト、Taylor Eigsti。ボストンで1年目の夏、Studio Apartmentに一人で住んでいた時、くらーい部屋の中で音楽を聴いていたときに初めて名前を知った。その後まもなくScullers Jazz Clubに彼の演奏を聴きに行った。CDで聴いて圧倒された彼のテクニックの凄さを目の当たりにした。ただそのときは、Becca Stevens(vo)がたくさんフィーチャーされていて、もっと彼の演奏が聴きたいなと思った。

NYに来てすぐ相談に乗ってくれた友達が、彼からプライベートレッスンを受けられるかも、と教えてくれたので、早速連絡してみた。お返事来ないかなと思ったけど、すぐに快諾のお返事をくれた。今思えば彼のいつもの明るい話し方が想像できるような文章だった。時間がとれるのは3ヶ月先だった。そこまで予定が埋まっていて、でもちゃんとその遠い日にレッスンの予定を入れてくれるってすごいな、と思った。彼はレッスンでデモンストレーションを沢山してくれ、教え方は優しく、先生としても素晴らしかった。次回のレッスンではオリジナルを持って来て、とのことで、「E-Funk」「Composition 1...」を持参した。その場で楽譜を見て、この部分がすごく好き、などと言ってくれながら笑顔で演奏してくれるTaylor。彼が弾くととてもきらきらしてかっこいい曲に聴こえた。その際にもらったアドバイスを取り入れてアレンジし直したものが、アルバムに収録されています。まさにSpecial thanks to Taylorです。TaylorがNYでライブをするときは大体聴きに行っている。最も尊敬する、憧れのピアニストの一人。




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[Me & E.J.]


2012年12月Metropolitan Roomでのライブの話。 ある世界的ジャズドラマーをスペシャルゲストとしてブッキングしていたところ、直前でキャンセルされてしまった。私の尊敬するピアニストも、同じドラマーから同じ目にあっていたし、彼だけでなくニューヨークのミュージシャンは、迷いなくこういうことをするようだ。宣伝用のフライヤーやポストカードも全部作ってすでに出来上がっていた状態。途方にくれてしまったが、代わりのドラマーを見つけなければいけない。数日間途方にくれた後のある日の深夜1時。Zinc Barで憧れのドラマー、E.J. Stricklandがバンドメンバーとして演奏していることを知り、家を出る。着くといつも入り口で案内をしているAnselがいた。あまり話したことはなかったが、その時間バーのカウンターには、お客さんは私を含めて4人くらいで、自然に彼と会話が始まった。E.J.に、自分のライブで演奏してもらえるか聞きたい、と事情を話した。演奏の終わったミュージシャンに話しかけるのは、そんなに勇気を出さなくてもできるけど、さすがに、ほとんど面識のない方にライブで一緒に演奏してください、とお願いするのは少し緊張した。運良くE.J.と挨拶するチャンスが来たとき、先ほどのAnselが、私が話すより先に、彼女がライブで演奏してもらいたいんだって、と切り出してくれた。そしてE.J.。すぐ自分のスケジュールをチェックして、「Yeah, I'm free.」と。私の演奏を聴いたことがないにもかかわらず、その場で承諾してくれた。嬉しくて、普段はほとんどお酒に酔わないのに、ふらっとしてカウンターの高い椅子から落ちそうになった。大丈夫か?と慌てて手を差し伸べてくれたE.J.。そして迎えたライブは、大成功。火曜日の深夜11:30スタート。誰が来るか、と思っていた。当日は前の出演者の影響で、さらに押して0時近くに始まったにもかかわらず、会社員の方々も含むほとんどの方が最後まで聴いてくださった。一生懸命お友達に声をかけて連れて来てくださった方、NYで初めての大きなライブにお花を持って駆けつけてくれたお友達、1回のリハで完璧に演奏してくれたE.J.、素晴らしい演奏をしてくれたバンドメンバー、皆に感謝の気持ちでいっぱいの夜だった。


アルバム収録曲"Days"は、このライブに向けて前月の11月に作曲したものの、結局そのときは完成せず、レコーディングまで演奏されなかった曲です。


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次回は、NYで活躍されている日本人ミュージシャンについてご紹介します!


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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JAZZ in NEW YORK#3 - Jazz clubs, events, and musicians in New York:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


3回目となる今週はニューヨークのジャズクラブやイベント、そしてミュージシャンについて。

中原さん本当に沢山のジャズスポットに足を運ばれています!
ガイド本だと、ハコの特徴や雰囲気が伝わりづらいですが、その辺りのニュアンスなんかもよく分かります。

NYのリアルなジャズ情報を知ることが出来るという意味でも、今回のコラムは保存版といえます。


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■Jazz clubs, events, and musicians in New York


新しくできたお友達に、おすすめのジャズクラブは?と聞かれたら、いつも答えているのがJazz Standard。 大ベテランばかりではなく、今注目されているようなアーティストも出演していて、CDリリースライブも多く、新鮮な音楽も聴ける。お料理も美味しいし、席から演奏者が見えないということもほとんどなく(ステージを横から見る席でないかぎり)、音楽を気分よく聴きやすい環境だと思う。初めて行ったとき、チキンウィングのあまりの美味しさに衝撃を受けた。Warm Barbecue Potato Chipsも最高。


ライブで印象に残っているのは、Benny Green Trio。彼のピアノの演奏は、内容が素晴らしいのはもちろんのこと、椅子から腰を浮かせたり踊っているような感じで動いたり、体全体で表現されるので、観ていてとても引き込まれたし、楽しい気分になれた。びっくりしたのは、終わった後Bennyにご挨拶に行ったとき、彼が逆に私に、「一番前でにこにこして聴いてくれていたでしょ?それですごい気分よく演奏できたよ」って言ってくれた。ますます彼のファンになった。対照的だったのはある女性シンガー。ライブはすごく魅力的で、彼女はステージから近かった私に歌いながら微笑みかけてくれて、いやー素敵だわ〜と思いながら聴いていたのに、終わった後その感動を彼女に伝えに行ったら、ものすごくそっけなくて、がーん、てなった。何このギャップ!でもこれがアーティストなのね、と納得もした。


話はそれるけど、演奏後ミュージシャンに「素晴らしかった!」とお伝えするとき、私もミュージシャンであることを知ると、特にアメリカ人のミュージシャンは、「I wanna hear you playing sometime.」とか「Hope to play with you sometime.」と言ってくれることが多い。本当にそう思ってるわけではなさそうだけど、とりあえず会ったら「How are you?」って聞くけど特に答えは求めてない、という感じの会話と同じ種類のもののようで、不思議な心境だけど、それもまた好き。


その他、Terence Blanchard(tp)のライブでは、バンド全体の演奏の素晴らしさに加え、そこで初めて聴いたFabian Almazan(piano)の創作的な演奏に目と耳を奪われ、Clayton Brothers QuintetでのJohn Clayton(bass)とGerald Clayton(piano)の親子の共演も素敵で、ジャズっていいなと思えたし、Dr. Lonnie Smith (organ) Trioにも身を乗り出すぐらい魅了された。Mulgrew Millerの、何でもないように自然にピアノを弾く姿も強く印象に残っている。


次に、Smalls Jazz Club。ジャズミュージシャンが集まる場所。


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SmallsのあるWest VillageエリアにはBlue NoteやVillage Vanguard等ジャズクラブが多くあり、そのどこかでライブを観終わった後には自然に、じゃあsmalls寄って行こうかってなる。今日は誰が演奏してるのかな?って気軽に立ち寄る。ちょっと時間が空いたなってsmallsに行く。ジャズミュージシャンから、今夜はハングアウトするの?って聞かれたら、大体今日smalls行くの?っていう意味だったりする。ここでできた友達も多く、行くと必ず誰か知り合いのミュージシャンに会える。ひきかえに、場所が狭くすぐいっぱいになってしまう上に、ミュージシャン同士近況を語りあったり盛り上がったりするし、お客さんもお酒で気分よくなって大声で話したりするから、結構うるさくて音楽があんまり聴こえないこともあるものの、必ずここに戻りたくなってしまう。毎晩のように通っている人も多い。ニューヨークでジャズを発信している場所、といっても過言ではないはず。


数年で数えきれないほどのライブを観た。Jonny O'neal、Jean-Michel Pilc、Ari Hoenig、Taylor Eigsti、Gerald Clayton、Aaron Parks、Joe Sanders、Joe Martin、Lage Lund、Sullivan Fortner、Emmet Cohenなど...
Smallsで最初に聴いたのは、Peter Bernsteinのソロギターだったけど、何故か一番前の席で、そこから猫がステージ付近を歩いているのが見えたし、なんだ、この小さな不思議な空間は、と思った。まさかそんなに重要な場所で、頻繁に訪れることになろうとは。


ニューヨークに来て1年目、2年目の誕生日の夜は、どちらもsmallsで過ごした。1年目には、初代オーナーであるMitch Borden(私は当時スタッフの一人だと思っていた)が、初対面の私にHappy Birthdayを即興の歌詞付きで歌ってくれた。予想外に長くて周りの目がちょっと気になったけど、すごく嬉しかった。2年目には、私の憧れのピアニストであり、現オーナーSpike Wilnerの学生時代の同期でもあるBrad Mehldauがライブを聴きにいらしていて、10秒くらいお話をすることができ、感激だった。


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ミュージシャンが集まるという意味では、Fat Catもそう。Cover Charge(入場料)が3ドル。深夜4時までミュージシャンがセッションをしたり、様子を伺ったりしている。ここは、同じ空間にビリアードやピンポンをしたり、ただ飲んで盛り上がっている人たちも共存していて面白い。金曜、土曜はとくにとっても騒がしくてほとんど音楽が聴こえないけど。


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Village Vanguardは、紹介するまでもなく、超一流のミュージシャンが出演する老舗のジャズクラブ。 ローテーションのように、毎年決まったミュージシャンが似たような時期に出演している印象もある。私が実際に観たライブも、生で聴けることにどきどきしてしまうようなミュージシャンばかり。Brad Mehldau Trio、Brian Blade Fellowship、Kenny Barron Trio、Barry Harris Trio... Christian McBride Trioは、ピアノのChristian Sandsに圧倒された。23歳でこんな演奏ができるんだ、と。翌年も迷わず聴きに行った。Joshua Redman Trioは色々な意味ですごくかっこ良かった。もともとJoshua Redmanの曲が大好きだったけど、彼のミュージシャンシップにより惹かれることになった。ピアノなしだったけど、ピアニストとして聴いていて物足りないこともなく、Matt PenmanとGregory Hutchinsonとの3人の演奏から目が離せなかった。Rudy Royston(drums)のSextetは、中村恭士さんとMimi JonesのTwin Bassで、Rudyの演奏も曲もかっこよくて美しく、すごく好きだった。


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Dizzy's Club Coca-Colaも、好きなジャズクラブの一つ。バンドが演奏している後ろの一面の窓から夜景が見えて美しく、雰囲気がよいのでリラックスして演奏を聴ける。ここでは、Cedar Walton Quintetを聴く機会にも恵まれた。先日は、レコーディングメンバーLeonが参加しているシンガーAllan Harrisのバンド、その翌日にChadが参加しているClarence Penn(drums)のバンドの演奏を聴き、すっかり癒された。


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そして最近注目しているのは、2013年9月にオープンした新しいヴェニュー、SubCulture。内装も美しく落ち着いた雰囲気で、バーもあり、コンサートホールとクラブの中間みたいな感じ。6番線Bleeker Street stationとB, D, F, MラインのBroadway/Lafayette stationの出口からすぐで便利。Steinwayのピアノの存在感がすごい。オープンしたての頃開催された、Piano Festival。2日間で、Aaron Goldberg、Gerald Clayton、Taylor Eigstiのソロピアノをゆっくり聴くことができた。 Gretchen Parlato, Becca Stevens, Alan Hamptonをvocalに迎えたプロジェクト、Taylor Eigsti's Free Agencyの演奏はここで2回観たけど、最高だった。


他にも、何か聴きたいなと思ったらスケジュールをチェックしているジャズクラブはいっぱいある。お料理が美味しいと評判で、大体いつも満席の、HarlemにあるSmoke Jazz and Supper Club。


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ギタリスト、シンガー、オルガニストが多く出演している55 Barでは、Mike Stern(gtr)、Ferenc Nemeth(drums) 等の演奏を聴いた。新しいプロジェクトのコンサートを聴ける印象のあるThe Jazz Gallery。昨年末参加させていただいた忘年会は、今をときめくミュージシャンだらけでした。
などなどご紹介しきれません!


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NYには、ジャズクラブだけでなく、魅力的なジャズイベントもたくさん。
1月に行われるWinter Jazz Fest。金曜日と土曜日の夕方6時から深夜2時まで、Greenwich Villageとその周辺に位置する10箇所のジャズクラブやライブハウスで、合計100以上のグループが代わる代わる演奏するもの。1日券または両日券を買って、自由にクラブを行き来して自分の聴きたいアーティストの演奏をキャッチする。私は2012年から毎年行っている。とっても魅力的なラインアップです。


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公園のフリーコンサートも数多くある。
2012年、2013年の秋、紅葉の時期に開催された、"Jazz & Colors Festival"と題されたCentral parkでのジャズイベント。公園内のあちこちでバンドが演奏していて、地図を観ながら移動。場所が離れているから、たどり着くのが大変なときもあるけど、それよりも、ニューヨークでは、11月はかなりの寒さ。演奏するミュージシャンの方が大変。もちろん防寒着だけど、演奏中は手が冷たくなってつらそう。お友達も、演奏し終わった後、寒い寒いと言っていた。聴く方は、綺麗な景色とともにジャズを楽しめて、あ~よかったーと帰りました。でも、この企画は、Metropolitan Museum of Artで、Indoorのイベントとして2015年1月に復活したみたいだから、Cenral parkではもう開催されないのかな。
http://jazzandcolors.com


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夏にはMadison Square Parkでのフリーコンサート。2012年のGrechen Parlatoのバンド、2013年のAnat Cohenのバンド、どちらも素晴らしく、いい天気で気持ちがよかった。
http://www.madisonsquarepark.org/tag/jazz


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もう一つはBryant Park。普段からとても大好きな公園の一つで、隣接するNew York Public Libraryも通る度に美しいなと思う。


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初夏から数ヶ月間、これから来る!というバンドやソロピアノの演奏を聴くことができる。2013年は、もう一人のレコーディングメンバー、ドラマーPeter Kronreifが参加しているバンド、Le Boeuf Brothersがフィーチャーされていた。


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長くなっちゃった。
さて私自身は、Tomi JazzでのNY初ライブをきっかけに、少しずつ自分のバンドでの演奏機会を増やしていった。Berkleeに同時期に通っていたお友達、同じ頃にボストンから引っ越してきたミュージシャンに連絡をとり、またニューヨークで出会ってすごい!と思った人たちにもすぐに声をかけ、バンドメンバーとして演奏してもらった。


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Somethin' Jazz Clubも度々演奏させていただいたジャズクラブの一つ。池袋のSomethin' Jazz Clubには、私がまだジャズピアノを習い始めた頃に2回ほど行ったことがあった。NYで再会したオーナーSteveさんにその話をしたら、喜んでくださり、応援してくださった。若手に演奏機会を提供してくれるジャズクラブだったと思う。でも、意外なミュージシャンも出演していた。前述のピアニストChristian SandsがNYに引越し、自身のトリオで最初にライブをしたのもここだった。メンバーは中村恭士さんとRodney Green。ブルージーでセクシーで、ノックアウトでした。そのSomethin' Jazz Club NYは、2015年3月でクローズしてしまい、寂しい限りですが、ライブ演奏とは別の場面で事件もあり、とても思い出深い場所となりました。


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中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

Monthly Disc Review2015.0515:Monthly Disc Review

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Title : 『Fast Future』
Artist : Donny McCaslin



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今月の一枚は、マリア・シュナイダー・オーケストラやアントニオ・サンチェスのグループで活躍中のサックス奏者、ダニー・マッキャスリンのリーダー作『Fast Future』。


一曲目からセンターに定位したバスドラムとそれよりも音域的に下に位置するベースラインが現代の録音作品としてのジャズを思わせる。左右に乱反射しながらアンサンブルに溶け込んでいくJason Lindnerのシンセサウンドがとても心地よく、空間を満たす。それらを塗りつぶすようなバリバリのアドリブによってアンサンブルを引っ張っているのがMcMaslinのサックスだ。硬質なMark Guilianaのドラムは、リーダー作『Beat Music: The Los Angeles Improvisations』でみせたような過激なエフェクトは無いにせよフレーズと同時にそのサウンドでバンドに新鮮味をもたらしている事は疑いようがない。

前作ではBoards Of Canadaの「Alpha and Omega」を見事にジャズに昇華させたMcCaslinだが、今作ではAphex Twin「54 Cymru Beats」、Baths「No Eyes」の上で見事なインプロビゼーションを聴かせる。ジャンルの融合とも言うべくこれらのチャレンジはSkrillexやAphexからの影響を語るMcCaslinと共に、これらの音楽に造詣の深いバンドメンバーの力もあって成し得た技だ。そしてこのバンドはそれらの感覚・言語でもって従来のアドリブソロというジャズルールも見事に乗りこなしている。どこまでがその場のケミストリーによって生まれたアドリブでどこまでが作曲によるものなのかがわからなくなるほど見事な緊張感に包まれたアンサンブルだ。


この作品だけに言えることではないが、近年のジャズの大きな潮流として「作曲」と「即興」の意義が最も変化しているように思う。作曲はスコア上のものだけでなく録音物のテクスチャーに及び、時に即興も作曲の一部分へと姿を変える。アドリブ・ソロをもはやスキルやセンスの戦いの場としてだけでは無く、トータルサウンドの背景の一部として配置される事も多々ある。テクスチャーだけでなくチル・アウトしていくリフレイン・フレーズの心地よさ、ビートがブレイクした瞬間の爽快感はエレクトリック・マイルス以前から長年ジャズが内包しつつもその外側からの「再発見」によって再び評価と注目を集めている魅力であるように思う。


「唸るようにサックスが吹きまくり、4ビートに思わず体が動き出すようなおおよそ僕達が期待するジャズ」

前回の記事はこのような文から書き出した。今やこのような語法では現代のジャズの全てを語ることは出来ない。だがしかしそれらは今も同一の地平にある音楽だ。


ー追記ー
Donny McCaslinの過去の活動については北澤氏がまとめた以下が国内外含め最も詳しいと思うので参照されたし。

第4回:ダニー・マッキャスリン ニュー・アルバム『Fast Future』カウントダウン特集 | ジャズとソーシャル・ミュージック - Mikiki
http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/5973


文:花木洸 HANAKI hikaru




【Donny McCaslin's 'Fast Future' live at the 55 Bar】







Recommend Disc

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Title : 『Fast Future』
Artist : Donny McCaslin
LABEL : Green Leaf
NO : 1041
RELEASE : 2015.3.31

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
Donny McCaslin (ts)
Jason Lindner (key)
Tim Lefebvre (b)
Mark Guiliana (ds)

【SONG LIST】
01. Fast Future
02. No Eyes
03. Love and Living
04. Midnight Light
05. 54 Cymru Beats
06. Love What is Mortal
07. Underground City
08. This Side of Sunrise
09. Blur
10. Squeeze Through


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 




Reviewer information

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

元BEAT CRUSADERSのメンバー、ケイタイモ率いるプログレッシブ吹奏楽団、WUJA BIN BIN。
類家心平、池澤龍作などジャズミュージシャンも参加するこの大所帯バンドと、
大阪を代表するお祭りバンド、赤犬が周年記念ライブを開催。


【赤犬・WUJA BIN BIN 対抗歌合戦】

赤犬 東京での公演は2012年から実に3年ぶり!!!

WUJA BIN BINの謎のボーカリストBAが経営する中野のBAR『バカフェ』、赤犬ベースのリシュウによる大阪味園ビル『マンティコア』、奇しくも同日オープンという奇跡を記念して、両店の8周年感謝祭 『赤犬・WUJA BIN BIN 対抗歌合戦』を開催します! 8周年とはちょっと半端で弱いので、代官山にある都内屈指のLIVEハウス 『UNIT』の11周年と合わせてお送り致します!東西を代表するお祭りバンド、WUJA BIN BINと赤犬〜総勢約30名の中年による狂演、是非お楽しみ下さい!

2007年のFRF'07ホワイトステージのLIVEなど、数々の伝説を残して来た大阪を代表するお祭りバンドとして名高く、今年になって、映画『味園ユニバース』に本人達役で出演し注目を浴びている中で、東京でのLIVEは実に4年振りの『赤犬』。衝撃のデビューより、他に類を見ない圧倒的なライブパフォーマンスと唯一無二の音楽性&楽曲のクオリティを武器に「楽しい音楽&ライブ」を展開する『WUJA BIN BIN』。そんな気心知れた東西同年代2組が混合で繰り出す特大の衝撃波を体感しに、7/5は是非代官山UNITにお越し下さい!


<日時>
2015年7月5日(日)
開場/開演 18:00 

<出演>
赤犬 / WUJA BIN BIN
DJ Taichi(stim)/ 珍盤亭娯楽師匠

<場所>
代官山UNIT(東京都渋谷区恵比寿西1-34-17Za HOUSEビルB2)
最寄り駅東急東横線 代官山 徒歩 2分
東京メトロ日比谷線 中目黒 徒歩 5分
山手線 恵比寿 徒歩 7分

<料金>
前売り/¥3,000 当日/¥3,800(共にワンドリンク別)
シルバー割(ドリンク別)/チャイルド割あり
身分証明書をご提示頂ければ60歳以上の方と未就学児童は入場無料!!

<予約>
https://www.funity.jp/tickets/WUJABINBIN/showlist

<詳細>
http://www.unit-tokyo.com/schedule/2015/07/05/150705_utagassen.php(代官山UNIT web)

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【赤犬】

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「平成のブラームス」という異名で歌謡界にその名を轟かせた作曲家・クスミヒデオが、自らの追求する音楽性を究極の形で具現化するため、すべての財産を投げ売り、バンド「赤犬」を結成。木こり、ボクサー、投資家など、さまざまな業種からスカウトされたメンバーたちは皆、歌のイロハを一から叩き込まれ、今や唯一無二のアンサンブルを形成するまでに成長。2015年には映画「味園ユニバース」にてメンバー全員、野武士役でスクリーンデビュー。東京での公演は2012年から実に3年ぶりとなる。

赤犬 オフィシャルサイト


【WUJA BIN BIN】

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ケイタイモ(ex. BEAT CRUSADERS)が抱き続けた妄想の中から生まれた楽曲を具現化する為に結成された、総勢13名の大所帯プログレッシヴ吹奏楽バンド、その名も「WUJA BIN BIN(ウジャ ビン ビン)」2010年より少しづつ活動を続けてきた彼らが2012年に本格始動。ケイタイモ自身の本来のベーシストとしてのプレイは圧巻。プラス多方面で活躍中の個性豊かな豪華メンバーが集まり、形に捕われず好き放題演奏していくスタイルにより、JAZZ、FUNK、ブラジル音楽、映画音楽、等々を内包した、今までに無い「WUJA BIN BIN」という音楽ジャンルを確立すべく活動中。フランク・ザッパなどの変態性とデューク・エリントンなどの正統性、ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンドのような確かな演奏力を武器に、ROVO、菊地成孔DCPRG、渋さ知らズなどに対する次世代の解答というべき音楽を展開している。  

WUJA BIN BIN Official Site

JAZZ in NEW YORK#2 - ニューヨークのジャズ事情:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。

2回目となる今週は「ニューヨークのジャズ事情」。
ジャズの本場、NYのリアルな空気感が伝わってきます!
ジャズクラブやジャズの情報誌なども教えてくれているのでNYに行かれる際は参考にされてみては?


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■ニューヨークのジャズ事情
Jazz scene in New York



ニューヨーク。今はとても大好きな街。
ボストン在住のとき、何度かニューヨークに行ったことがあった。 2010年には、カーネギーホールへハービーハンコックのThe Imagine Projectを聴きに。またBarry Harrisのワークショップを受けに。2011年には、自由の女神に会い、B.B. King Blues ClubでMr. BIGを聴くために。そしてBlue NoteへハービーハンコックとチックコリアのDuoを聴きに。目的のコンサートはいずれもビッグイベント。素晴らしい経験だった。でも、いずれも日帰りで、早朝に出て深夜に戻った。片道4時間半のバスでの往復に疲れ、ニューヨークにまた行きたい!という気持ちにはあまりならなかった。 その頃、どこがメインのジャズシーンなのか私にはわかっていなかった。


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でも、やっぱりジャズの本場であるというニューヨーク。様子を知りたかった。卒業後すぐの12月に、アパート探しのために事前に1週間ほどNYへ滞在。運の良いことに、最初に見学しに行った アパートがよい印象で、そこに住むことが決まった。クリスマスイブの夜、ツリーを観ようと、ブルックリンの滞在先から一人でRockefeller Center駅まで電車で移動した。ところがなんとツリーにたどり着けず。いったいあの有名なツリーはどこに?と疑問だけが残った。そんなふうに何もわからない状態で、2012年の1月にNYへ引越した。しばらくボストンでのライブもあり行ったり来たりの生活。やっと落ち着いた3月中旬頃から、本格的にニューヨーク生活を始めることとなった。


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数ヶ月だけ住んで日本へ帰る予定だったから、ライブへ行けるだけ行こうと思っていた。 「Hot House Jazz Guide」 (http://hothousejazz.com/)、「The New York City Jazz Record」(http://www.nycjazzrecord.com/)、「Jazz Inside Magazine」(http://jazzinsidemagazine.com/)といった、ジャズクラブ等に置いてあり無料で配布されているジャズの情報誌を手に入れ、ジャズを聴けるところがたくさんあることを知る。そこに掲載されている1ヶ月間のスケジュールをチェックして、毎晩のように音楽を聴きに出かけた。最初の頃は自分が既に知っているアーティストが中心で、Blue Note、Village Vanguard、Birdlandといったジャズクラブへも度々行った。そういう有名なアーティストの演奏を頻繁にスケジュールの中に見つけることができるというのも、NYのすごい所。


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そのうちに足を運ぶジャズクラブの幅も広がっていった。ジャズにはあまり興味のない人々も訪れる、観光客も多い、超有名ジャズクラブだけではなく、ミュージシャンが集まるジャズクラブへ。(それについては来週また詳しく。) 友達のライブがあれば必ず駆けつけた。そこで出会ったのが今のバンドメンバーの一人でもある。ジャズクラブだけでなく、レストランや公園でも、めちゃくちゃレベルの高い人たちがジャズを演奏している。 至るところで多くのミュージシャンがライブをしていて、自分の憧れのアーティストの演奏を近くで、日本よりも低価格($10~25)で聴くことができ、また新たな素晴らしいミュージシャンにも次々と出会い、実際に話したりお友達になれたりもする。ジャズファン、ジャズを学ぶ人にとっては他では得難い経験のできる街だと思う。


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私がニューヨークへ来てからの数年の間にもクローズしてしまうクラブがいくつかあったが、それでもジャズライブスポット(venue)は多いと思う。しかしそのヴェニューの数以上に、ミュージシャンの数が多い。非常に多い。そのレベルもものすごく高い。そして皆、どこかで演奏したいと思っている。

例えば、いわゆるモンクコンペティションと呼ばれる、Thelonious Monk Institute of Jazzが主催するインターナショナルなコンペティション。2013年はサックスの年だったが、そこで入賞した3人、Melissa Aldana、Tivon Pennicott、Godwin Louisはいずれも、ニューヨークで大活躍している人たち。


NYのジャズシーンで活躍しているミュージシャンには学生も多い。名高いミュージックスクール、Manhattan School of Music、New School、Julliard、NYU等の学生が、在学中からどんどんsmallsやDizzy's Club等のジャズクラブで演奏をし、有名なアーティストのバンドに雇われる。


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Smalls、Fat Catなどでは毎日深夜に、Zinc Barでは毎週火曜日にセッションが行われているが、そこへ行くと特に、若く勢いのあるミュージシャンがたくさん集まっていて、そのレベルの高さがわかる。上記の人々はもちろん、世界中から実力を持った人たちが集まっている。皆上手く、そして皆仕事が欲しい。英語では、「Intimidating」というけど、やはりそこには入りづらい雰囲気がものすごくある。すでに常連のミュージシャンでコミュニティは出来上がっているし、ピアノであれば、演奏中にこの人だめだ、と思われたら席をどかされることもある。打ち合わせもなく誰かが曲を演奏し始めれば他はそれについていかざるを得ないし、ついていけるのが当然。Cleopatra's Needleなどでは、日本人ミュージシャンがホストをされていることもあり、優しく招き入れてくれたりするので、すぐ入ることができたが、上記のジャズクラブでは、競い合うように皆がステージへと上がり、誰も譲らない。Zinc Barは記名制だが、ホストバンドと仲の良いミュージシャンが現れると優先的に通される。サックス等ホーンのソロが何人も続くこともあり、1曲は必然的に長くなり、1曲に一人しか弾けないピアニストは結局一晩で数人回るぐらい。そこに物怖じせずに入っていける人がやはり強い。


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セッションには、すでに名のあるミュージシャン、引っ張りだこのミュージシャンもふらっと立ち寄ったりする。Roy Hargrove(tp)、Joel Frahm(sax)、Ben Williams(bass)、Linda Oh(bass)、Eric Lewis (piano)、Beka Gochiashvili(piano)等々。彼らが直々に指導をしたり、励ましたり、刺激を与えたりしている。セッションの最初の1時間は、ホストバンドの演奏であることが多いが、それも素晴らしい。その演奏を聴き、セッションの様子をしばらく観たり聴いたりするのも勉強になった。でもそれだけでは足りないとわかっていた。けれども、その中に入っていくのに1年以上かかった。


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NYへ来てすぐ演奏の機会を得たが、それは元々友達がやっていた仕事。日本食レストランでの週1回の演奏。フード・ドリンクは提供してもらえたものの、ギャラはなし。チップジャーは置けたが、お客さんもあまりいなかったし、日本食を食べたくて来ている日本人がほとんどで、チップはほとんど入らなかった。NYにはそういうギグも多い。そしてその仕事をしていた間、ミュージックスクールでピアノとフルートを教え始めたが、他に自分のパフォーマンスの機会を獲得することができないでいた。数ヶ月で帰るなどという考えはいつの間にかなくなっていた。せっかくニューヨークに来たんだから、一度も演奏しないで帰るわけにはいかなかった。そのレストランも6月にはクローズし、いよいよ演奏の仕事がなくなる危機に。その後改めて気づくのだけど、友達から譲り受けた仕事、友達から紹介してもらった仕事、というのは、自分が得る仕事の中で、意外と大きな割合を占める。やはり人脈は重要だ。


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そんなとき、ちょうどよいタイミングで、以前にメールで連絡をとっていたTomi Jazzから、ライブのブッキングのお返事が来て、そこでのライブが私のバンドのニューヨークでの初の演奏となった。それが2012年7月のこと。

中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

"TOUCH OF JAZZ"アルバム - 平戸祐介 セレクト:TOUCH OF JAZZ

青木カレンがナビゲートする番組「TOUCH OF JAZZ」では、毎回ゲストの方に
自身の「TOUCH OF JAZZした作品=ジャズに触れた作品」をご紹介いただいています。


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今回のゲストは活動休止されたquasimodeのメンバーとしてもお馴染み、ジャズピアニストの平戸祐介さん。

影響を受けた作品はジャズ史上一番といっていいほどの問題作。
マイルスのこのアルバム、確かに今聴いてもぶっとんでますよね。


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『BITCHES BREW / MILES DAVIS』

「マイルスの姿勢が好きなんです。その時代に一番求められている最前線の音を鳴らしている。特にこの作品はタブーとされていたロックやファンクとの融合を初めてジャズ界に投げかけたという意味でも凄い。レコーディングの時に譜面や決まりごとが全くないですからね。そういう自由さが好きだしそういう事をやろうとしていたマイルスのチャレンジ精神も好きなんです。特に1曲目の「Pharaoh's Dance」。不気味なデイブ・ホランドのベースがたまらないですね。
ちなみに僕が監督をしている草野球チームの名前が"BITCHES BREW"で、坪口昌恭さんやcro-magnonもメンバーなんです(笑)。」

平戸祐介


■タイトル:『BITCHES BREW』
■アーティスト:MILES DAVIS

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【Miles Davis - Pharaoh's Dance】




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平戸祐介初のピアノソロアルバム

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■タイトル:『Voyage』
■アーティスト:平戸祐介
■発売日:2015年4月15日
■レーベル : Apollo Sounds
■製品番号:APLS-1506

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[収録曲]

1.One for Bishop (music : Y.Hirado)
2.Nica's Dream (music : H.Silver)
3.In a gloomy mood (music : Y.Hirado)
4.Cry me a river(music : Arthur Hamilton)
5.生まれたてのメロディ(music : Y.Hirado)
6.Body and Soul (music : Johnny Green)
7.Love for sale(music : Cole Porter)
8.Moments Notice(music : J.Coltrane)
9.Hope (music : Y.Hirado)
10.Barry's sketches (music : Y.Hirado)


(メンバー)
平戸祐介:ピアノ
recorded on 2015 Jan 9,10th
recorded at Pastoral Sound


quasimodeの活動休止発表後、自分自身の音楽的ルーツに立ち返るべく、ジャズのスタンダードナンバーと自身のオリジナルナンバーをソロピアノで取り組んだ今作は、これまでに見せなかった新たな平戸祐介の魅力を披露する。まるでビバップのスタンダードナンバーかのようなキャッチーなオリジナル曲「One for Bishop」からスタートし、ホレス・シルバーの名曲「Nica's Dream」で緊張感の高い演奏を披露したかと思えば、オリジナルナンバー「In a gloomy mood」ではメロウな演奏を見せる。「Cry me a river」、「Body and Soul」、「Love for sale」、「Moments Notice」と有名なジャズのスタンダードナンバーと、自身の代表曲「生まれたてのメロディ」を含むオリジナル5曲を収録して作られた本作は、平戸祐介自身の音楽的ルーツとなったバリー・ハリスやウォルター・ビショップJr達へのオマージュと、それらを踏まえた上での自己のピアニズムへの探求と決意表明である。録音は本人の希望により出来るだけリバーブ感を外し生ピアノの音を重視した質感となった。力強く勢いがあり、時に繊細で美しいピアノのサウンド、一音一音に明確な意思の伝わる演奏。ピアノソロアルバムの決定盤であり、平戸祐介の新たな旅立ちとなるアルバム『Voyage』を是非お聴きください!


【平戸祐介アルバム『Voyage』告知動画】






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【平戸祐介】(ピアニスト、キーボーディスト)
長崎県生まれ。ジャズ喫茶を経営する父親とクラシック・ピアノの教師をする 母親の間に生まれ、4歳の頃よりピアノを弾き始める。父親の所有す る膨大な ジャズ・レコードを聴きながら育ち、中学生の頃からジャズピアニストとして活動を開始。高校時代にはNYマンハッタン音楽院のサマー・ ワーク・ショップで トップ・レベル・コンボに抜擢され、最優秀賞を獲得。高校卒業後渡米し、NYに あるニュース クール大学ジャズ科に進み、Walter Bishop Jr.に師事する。1995 年にはRichard Davis (Bs), Winard Harper (Ds)と共演、ジャパン・ツアーで成 功を収める。大学卒業後に帰国、上京し、quasimodeを結成。2012年には自身初となるソロ作品 「Speak Own Words」をリリース。好評を博す。2015年2月をもってquasimodeが活動を休止、個人活動を充実させるべく、待望の2ndソロアル バム 「Voyage」をリリース。


平戸祐介 オフィシャルサイト→http://yusukehirado.net/

BVLGARI ITALIAN JAZZ LOUNGE 2015:ライブ情報 / LIVE INFO

銀座でイタリアンジャズを楽しむ事ができる『BVLGARI ITALIAN JAZZ LOUNGE』が今年も開催。

会場はブルガリ銀座タワー8Fのプライベートラウンジ。
ジョー・バルビエリ、ニコラ・コンテ、エンリコ・ラバといった
イタリアのミュージシャンのステージを最高のロケーションで堪能することができます。

東京の夜を彩るイタリアン・ジャズ。スペシャルな一夜をお約束します。


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【BVLGARI ITALIAN JAZZ LOUNGE 2015】

ブルガリ ホテルズ & リゾーツ・東京レストランは、昨年に引き続き、4月より「ブルガリ イタリアンジャズ ラウンジ2015」を開催しております。会場となるのはブルガリ銀座タワー8Fのプライベートラウンジ。一夜限りのエクスクルーシブなコンサートに出演するのは、ニコラ・コンテ、ジョー・バルビエリといった日本でも人気のイタリアン・ジャズミュージシャンたち。最高の音楽と共に、エグゼクティブシェフ ルカ・ファンティンのディナーも堪能頂けるプランもご用意しております。

【日程予定アーティスト】
Stefano Bollani Piano Solo (4/24)
Flavio Boltro/ Dailo Rea Duo (5/15)
Joe Barbieri Sextet (6/12)
Nicola Conte Jazz Combo (9/11)
Enrico Rava meets Soupstar, Giovanni Guidi/ Gianluca Petrella (10/17)

【場所】
ブルガリ銀座タワー8F プライベートラウンジ
東京都中央区銀座2-7-12

【料金】
Jazzのみ
¥12,000/1名様
(イタリアの高級スパークリングワイン カ・デル・ボスコ ロゼ グラス1杯&アペリティーボのフード5品込)

Dinner + Jazz 
¥30,000/1名様
(イタリアの高級スパークリングワイン カ・デル・ボスコ ロゼ グラス1杯&イル・リストランテ ルカ・ファンティンでの4品のコースメニュー、ライブ会場でのカ・デル・ボスコ ロゼ グラス1杯&スナック込)
上記金額には消費税およびサービス料が含まれます。

【お問い合わせ】
ブルガリ ホテルズ & リゾーツ・東京レストラン
03-6362-0555
http://www.bulgarihotels.com/ja-JP/

JAZZ in NEW YORK#1:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

そんな中原美野さんが、ライブまでの約1ヵ月間、
"JAZZ in New YORK"シリーズとして毎週JJazz.Netにコラムを届けてくれることになりました!

大学卒業後、一般企業に就職していた彼女が何故今NYでジャズを演奏しているのか?
このコラムではNYのジャズ事情と共に、彼女のストーリーも紹介してもらいます。
毎週金曜日の更新をお楽しみ下さい。


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■NYに渡った理由
The reason why I moved to New York (the US)



大学を卒業後、何年か会社員をしていたんです。
それがなぜかこんなことに。


4歳(5歳になる2ヶ月前)からYAMAHAでピアノを習い始め、小学校に入ってからは専門科コースというところに所属し、週3回レッスンに通い、アンサンブルや音楽理論を学び、頻繁にコンサートや作曲の課題をこなした。学校では部活等でフルートやトロンボーンなど色んな楽器を演奏したし、合唱団で歌も伴奏もしたし、ポップスも大好きで、「ミュージックステーション」も「Hey!Hey!Hey!」も「Countdown TV」も毎週楽しみにしていた。


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受験する高校を選ぶときに、音大付属を受けることも考えた。けど、音楽の道は厳しいからやめといたら、というアドバイスを受け、そうですね、とあっさりあきらめた。そのとき私の選択肢には「クラシックのピアニスト」しかなく、コンクールに向けて毎日何時間も一人で練習練習、プレッシャーとの闘い、というイメージしかなかったから。苦しいだけだろうと思った。受験のためしばらくピアノを中断したが、高校入学後、ピアノを再開。その後、就職活動のタイミングでまたピアノから遠のいた。就職後しばらく経ち、また音楽をやりたくなった。せっかくだから新しい楽器をやってみようと思い、アルトサックスを習い始めた。


先生のライブに行って初めて、ジャズってかっこいいな!と思った。ジャズの「バンド」の演奏に魅力を感じ、先生のライブでピアノを弾かれていた今泉正明さんが参加されていた、別のバンドのライブにも行ってみた。御茶ノ水NARUで、そのライブにめちゃくちゃ衝撃を受ける。なんだこのエネルギーと迫力は!!!そこで演奏されていたのは太田剣さんのバンド。ドラムが大槻カルタ英宣さん。それ以来、剣さんのバンド、カルタさんのバンドに何度も足を運び、ほかのミュージシャンの方々のライブへも行った。曲のかっこよさ、メンバーの一体感、楽しく演奏されている様子に、仕事で疲れたり落ち込んだりしていても、元気をもらえた。週4回くらいジャズのライブに行っていた時期もあったのでは。母に心配されたくらい。


慶応義塾大学に通っていたものの、在学中はジャズに興味を持っておらず、ジャズ研に入ろうというアイディアも全くなかった。働き始めてから、やっとジャズに出会いました。オーディエンスとして、かっこいい!!楽しい!という思いが持続すると同時に、私もジャズをちゃんと学んで上手くなって、あの方々と一緒に演奏したい!!という気持ちがどんどん強くなっていった。


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ジャズだったら楽しく演奏できそうな気がした。始めたばかりのサックスでは無理だ、とピアノにまた戻って来た。前述のピアニスト今泉さんに直接連絡をし、レッスンを受け始めた。週一回会社の後にメーザーハウスに通ってジャズ理論も勉強した。ですが、会社に行きながらのレッスン。まったく練習をせず、いつも今泉さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。音楽だけに集中できる環境に身を置きたい、と思い始めた。年齢関係なく学生としてなじめそうだったこと、父が海外で単身赴任をしていたこともあり、海外の生活にずっと憧れがあったこと、そしてその学校の評判から、バークリー音楽大学入学を考えた。同校を卒業されている今泉さんからの、音楽を仕事とする、という点に関しての反対も押し切って、同校の奨学金オーディションを受けた。反対されながらも、オーディションに向けての準備に全面的にご協力くださった今泉さんに、とても感謝しています。


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そして無事オーディションに受かったのですが、すぐに渡米せず、マーケティングを学べるという理由で、あるベンチャー企業に転職した。働きながらもずっとバークリーのことは頭にあったが、本当に経済的に安定した生活を捨てていいのだろうか、いったんやめたら戻って来て再就職したいと思っても難しいのではないか、など現実的な恐怖がいっぱいだった。(もともと渡米するなら1年間だけ音楽を勉強して日本に戻ろうと思っていた。) でも、音楽に挑戦したかった。挑戦せずにあきらめるのは嫌だった。一方、仕事の方は、転職前は営業のサポートや経営管理といった仕事だったので、営業職がまったくうまくいかずなかなか成績が出なかった。ただ負けず嫌いな性格で、いったん営業という仕事を始めてしまったからには、結果を出さずにやめるのは不本意だった。心配してくださっていた先輩から、せっかく受かったんだからバークリーに行った方がいいよ、という説得を何度か受け、その度に葛藤があった。結局、1年半程でやっとそれなりの成績を出すことができ、それをきっかけに入学を決意した。
でも結果的に、このタイミングで渡米できて本当に良かったと思っている。そして、働いた二つの会社で鍛えられたことが、ミュージシャンとして生きるのに十分役立っている気がする。営業、プロモーション、さまざまな手配、事務処理、税金の申請などの手続、全部自分でやらないといけないので。


日本で音大や専門学校に行っていたわけではなく、オーディションも入学の手続きも自分で行ったのですが、手続に関しては、学校とのやりとりが全くスムーズに行かなかった。今となっては「アメリカなら普通のこと」ですが。もうこのときからこのアメリカの文化との終わりのない戦いが始まっていたのですね。


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そして2009年の1月に無事ボストンに渡った。予定の1年間なんて、あっという間に過ぎた。アメリカの生活や学校のシステム、英語に慣れること、人間関係の問題(最大の敵)。そういったことをクリアするのに大半の力を使った。ジャズには足を踏み入れられてもいない、くらいのレベルだった。


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こんな段階で帰れない、とすぐ悟った。幸い働いて貯めたお金、奨学金なども手伝って、結果的には3年間、泣きながら(本当に泣きながら)学生生活を送り、無事卒業に至ることに。


アメリカで海外の学生が大学を卒業するとその後1年間、OPTという職業訓練のためのビザを申請することができる。バークリーを卒業したら、そのビザを利用して、数ヶ月間だけジャズの本場のニューヨークを味わって帰ろう、と思った。在学中から、プロフェッサーからニューヨークは競争が激しい、優秀な卒業生も苦労して悩んでる、と聞いていたので、そのシーンで戦える気は正直していなかった。バークリーはとんでもなく才能あるミュージシャンだらけでその人たちでさえ苦戦しているのだから。


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そんな予定が、今ニューヨークに来て4年目。ちょっと味わおうなんて、とんでもない!!
すみませんでした!!この続きはまた。

中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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Monthly Disc Review2015.0501:Monthly Disc Review

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Title : 「In maggiore」
Artist : Paolo Fresu/Daniele di Bonaventura



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トランペットの音色を耳にすると、どうしてもマイルスのそれと比較して聴いてしまうというのは、帝王が残した功罪のひとつだ。トランペットという楽器を選び、ジャズを志すというのは相当な覚悟が必要なのではないだろうかと想像出来る。Paolo Fresuも当然、マイルスからの影響を読み解かれ語られてきたプレイヤーの一人なのであろうが、僕の中ではもう、帝王のことはどうでもいい。イタリア・サルデーニャ島に生まれたという時点で、Paoloが見てきた世界はマイルスとは随分と違うはずだ。それは、今作が見せてくれる景色が雄弁に語っている。マイルスが常に纏っていた重苦しい空気はなく、イタリア男が纏う色気と哀愁のようなものが全面に匂い立っているのだ。(これは日本人が抱くイタリアへの勝手なイメージであることを承知の上で。)

今作は、Paolo Fresuのトランペット、フリューゲルに同じくイタリアのバンドネオン奏者、Daniele di Bonaventuraが絡むデュオ作品。バンドネオンの音色こそ、日本人にとっては異国感を極めて強く感じる楽器で、今作は、僕らを容易く異国へ誘ってくれる。それも、イタリアの海辺の田舎町で、時間は夕暮れあたりか。少し好ましく思っている仲の良い綺麗な女性との食事の約束を控えているのだけれども、不思議と今日は気分が高揚しない。それは、沈んだ曇り空のせいか、あるいは何か別に理由が・・・というシチュエーションだ。これはあくまでも個人的な妄想だけれど、かなり視覚的刺激を与えてくれる一枚であることは間違いない。どうやら"Wenn aus den Himmel"とうタイトルでドキュメンタリーフィルムが制作されているようなので、機会があったら是非、見てみたいものだ。そのフィルムに海辺の田舎町の綺麗な女性が写っているのかどうかは知らないけれども。


文:平井康二




【Wenn aus dem Himmel... (quando dal cielo...) - Trailer HD】







Recommend Disc

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Title : 「In maggiore」
Artist : Paolo Fresu/Daniele di Bonaventura
LABEL : ECM(2412)
RELEASE : 2015.3.31

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【MEMBER】
Paolo Fresu (tp,flh)
Daniele di Bonaventura (bandoneon)

【SONG LIST】
1. Da Capo Cadenza
2. Ton Kozh
3. O Que Sera / El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido
4. Non Ti Scordar Di Me
5. Sketches
6. Apnea
7. Te Recuerdo Amanda
8. La Mia Terra
9. Kyrie Eleison
10. Quando Me'n Vo
11. Se Va La Murga
12. Calmo
13. In Maggiore


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.04 




Reviewer information

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


logo2015.ai.jpg

cafeイカニカ

●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
お店の情報はこちら

bar bossa vol.45:bar bossa

bar bossa


vol.45 - お客様:川嶋繁良さん


【定年退職の日に聴いたら泣いちゃうカモ♪、な10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はジャズ・レコードのコレクターとして有名な川嶋繁良さんをゲストに迎えました。

林(以下H);こんばんは。早速ですが、お飲物はどうしましょうか。

川嶋(以下K);え~と、素っ気ない感じの白ワインをグラスでお願いします。それと青魚のコンフィを。

H;素っ気ないですか(笑)。ではミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌにしますね。魚は今日はイワシですよ。さてさて、小さい頃の音楽の話をお聞かせいただけますでしょうか。

K;"ス~ダラ節"を歌う供だったみたいです。母は「わが子ながらあなたがス~ダラ節を歌う姿が嫌いだった」と言っていました。そこは"シャボン玉ホリデーが好き"と理解して欲しかったところなのですケドね(笑)。

H;あの、読んでいる人、僕も含めてほとんど意味が分からないかもしれません...(笑)

K;幼稚園時代には、音楽教室に通っていました。オルガン主体のグループレッスンで、この教室は本当に楽しくて一生懸命練習していたように思います。当時の譜面を見返すと「お~、こんな難しいの弾いてたんだ!」と思ったりします(笑)。

H;さすが東京っ子ですね。そういう雰囲気あったんですね。

K;そして、小学校に上がるときになって両親が「まあ、飽きずに弾いているから....」とアップライトのピアノを購入してくれて、個人レッスンに通うようになりました。ところがこれが結構つらくて....。そのうち練習をさぼるようになりました(笑)。

H;男の子はそんな感じですよね。

K;そして高学年になって衝撃的な、吉田拓郎の出現です。もちろんフォークギターをねだりました。平凡/明星の歌本の時代です(笑)。小学校卒業時の謝恩会でのクラス合唱(余興)ではギター4本くらいで伴奏しました。中学校にあがるころにはお約束の「ビートル・シャワー」です。

H;初めて買ったレコードは?

K;シングルは『結婚しようよ/吉田拓郎』、アルバムは『ミート・ザ・ビートルズ(日本編集盤)/ビートルズ』
です。

H;吉田拓朗とビートルズが並列してるんですね。こういう感覚って聞いてみないとわからないものです。さて、中学になりますが。

K;バイブルはミュージック・ライフですよね。周囲の仲間も電装化が加速していきます。"スモーク・オン・ザ・ウォーター"が踏み絵の時代です。私は当時から"ロック魂"が薄く、ビートルズ、サイモン&ガーファンクル、CSN&Y等々、歌のバックのギターをまねするようなタイプでした。

H;なるほど。ディープ・パープルの方か、サイモン&ガーファンクルの方かという住み分けがあったんですね。日本人はチェックしてましたか?

K;このころ荒井由美、ミカバンド、キャラメルママなんかの実演を観ています。ユーミンはバックバンド"パパレモン"を従えて、靴から帽子からスーツから真っ白な衣装で足で鍵盤叩いたりしていました(ピアノも白かったカナ?)。あと細野晴臣の"火星歩き"とか(笑)。

H;うわ、そういうの体験されてるんですね。演奏は?

K;ギター2本で、オリジナル曲を作って歌ってました。"歌声喫茶"のフォークソング・ナイトや公会堂クラスのイベントに出たりしました。

H;高校はどうでしょうか?

K;高校生になって変化があったのは、聴くのがジャズ一辺倒になっていった事ですね。高校を中退して音楽(jazz)の専門学校に通いだした友人からジム・ホールの「コンチェルト」とウエス・モンゴメリの「ロード・ソング」を借りて、もう本当に引き込まれてしまいました。幸せなことに、最初からジム・ホール、チェット・ベイカー、ロン・カーター、スティーブ・ガッドらの演奏に触れていたのです。その後、徐々に収集癖が表出して、お定まりの中古レコード屋さんめぐりの開始です(笑)。(それと、ジャズ喫茶でスイング・ジャーナルのバックナンバーを読むふける、とか:笑)

H;転んでしまいましたね(笑)

K;ECMとかジャズのソロピアノを聴いて、逆にクラシックのピアノ曲(特に印象派)への興味が湧いたりしているうちに、自分から望んでピアノのレッスンを再開することになりました。

H;高校生の頃にECMと向かい合ってるんですね。

K;映画を撮るっていう同級生から「音楽もすべてオリジナルにしたい、やってくれる?」と打診を受け、2人でいろんな楽器を持ち替えながら演奏してBGM素材集を作ったこともありました。

H;なんか東京の高校生って感じ羨ましいです。

K;その後、大学に入るまではしばらくはプータロー生活で喫茶店のホール係とかレコード店とかでのアルバイトに勤しんだり。お酒を覚えたりして楽しい時期ですよね。このころもジャズのレコードを集め続けています。クロスオーバー全盛時代ですね。

H;大学時代はどうでしょうか?

K;アルバイトとジャズ喫茶(と学校:笑)だけに時間を費やしていた様な気がします。ジャズ喫茶はあちこち訪ねるのではなく、ほぼ決まったところに入り浸っていました。楽器は部屋でたまに触るくらいです。もちろんレコードは一生懸命集めていました(笑)。

H;音楽を仕事にしようとは思わなかったんですか?

K;思いませんでした。そんな器量はないし(泣)。マスコミ関連などは高嶺の花ですし(笑)。まあ、誰でもそうかもしれませんが、楽器を持てばミュージシャンを夢み、小説を読めば小説家を夢見る時期を過ごしてはきたのですが、なんとか自分の生業とできそうな仕事をと思い、IT(ソフトウェア)業界にもぐりこみました。そして、水があったのかこれまで楽しく過ごしてこれました。

H;なるほど。

K;私が就職した頃は、"玉椿"、"レッドシューズ"、"ミント"、"霞町"、"島崎夏美"といったところがキーワードでしょうか?チェット・ベイカーを観れたことは幸運だったと思います。とはいえ私は"ライブよりレコード"というタイプでしたのですケド(笑)。

H;演奏はやめてしまったんですか?

K;30歳手前くらいのころBAR:Newburyで親しくなった人たちと「楽器できるの?。俺もやってたよ」という様な会話になり、「それじゃ一度集まって何かやってみようか」と...。で、そのまま今日(27年目)に至るまで一緒にバンド活動を続けています。月に一度は練習に集まって飲んで(笑)、年2~3回ほどライブに参加しているような感じです。バンドを続けていたらいつのまにか「おじさん(&おばさん)バンド」なっていました(笑)。途中で派生したユニットもいくつかあって、私はボサノバ・チームでギターを弾いたりもしています。いろいろ続けてこれたのは、ライブを行う機会に恵まれている、ということも大きいのかもしれません。

H;みんなに聞いているのですが、音楽ソフトはこれからどうなると思いますか?

K;「音楽ソフトがなくなる」と云う話は、長いスパンで考えれば間違いないのかな、と思います。ネットワークがさらに成長していけば、かなり高音質の音楽ファイルを転送することも容易でしょうし、オーディオ機器もネットワークに接続されて、現在の映画コンテンツの配信がそうなりつつあるように、自宅で数多のタイトルのなかから悠々と聴きたいソースを選ぶようになる、と。まあ、無くなると云うよりも変質するのでしょう。ネット配信になると「1曲主義」が進行するのかもしれません。気に入らないアルバム曲に付き合う必要はない、と。もともとヒットチャート的潔さはあるはずなのですけど。「アルバムという言葉を覚えている?」というプリンスの発言はポップスの世界でアルバムと云う概念が崩壊しつつあって、そのことにプリンス自身は好意的ではないことから発せられたのだと思います。グラミーの"アルバム賞"が無くなる日がいつか来るのでしょうか?

H;なるほど。本当にそうだと思います。

H;東京都内のオススメ音楽が聴ける飲食店を、いくつか教えてください。


K;まず「ナルシス」です。
新宿歌舞伎町にあるJazz喫茶/BARです。大学生時代からずっとお世話になっています。 20代のころは夜のBARタイムには恐れ多くて伺えませんでした(笑)。

次は「JUHA」「rompercicci」
林さんファンの方々はお馴染みだと思われる Jazz Cafe 2店。 両ご夫妻ともとても深くジャズを聴いていらして頭が下がります。それぞれのお店の個性が感じられるサウンドが素晴らしいです。

そして「North Marine Drive」
説明不要ですね、渋谷宇田川町辺りの素敵なバー。音楽好きにはたまらないお店です。

「SHIGET'S」
新宿三丁目にある Rock/Jazz/Soul BAR 。ご主人のお人柄も大きな魅力の音楽酒場。70年代のロックを中心にいろんなジャンルの音楽が流れます。こちらに集うお客さまにはなぜが楽器を嗜まれる方が多いのです♪。

「Newbury」
西新宿にあるPUB/BARです。音楽はBGM的ですが、とても居心地の良い空間です。時折ライブ・イベントも開催されます。

H;それではみんなが待っている選曲にうつりましょうか。まずテーマですが。

K;「定年退職の日に聴いたら泣いちゃうカモ♪、な10曲」でいきます。

H;そんなテーマですか... では1曲目は?


Hey Bulldog / The BEATLES

Beatles - Hey Bulldog [99 Remix] 投稿者 hushhush112

K;真似したくなるギター・リフとサビでのジョン節全開が魅力のこの曲。ビデオクリップも最高です。スタジオセッションながら素晴らしいバンドの一体感と推進力。1本のマイクで楽しそうに肩を寄せて歌入れするジョンとポール。ちょとおどけるジョージとリンゴ。あちこち溢れる笑顔。観ていると本当に幸せな気持ちになるのです。

H;ビートルズはこれですか。「バンド感」がやっぱりお好きなんですね。


瞑想 / 尾崎亜美

瞑想 ‐ 尾崎亜美 《歌詞付き》 ☆彡 投稿者 green7coralreef1dm

K;天才的メロディーメーカー尾崎亜美。その若くて儚げで生意気でキラキラと輝く才能を大事に大事に世に出そうとする周囲の大人達の 気持が伝わってくる様なデビュー作。少し後年のアケッピロゲな感じも魅力的ですが、この瑞々しさには得がたいものが有るように思います。バックはキャラメルママxα。エレピも美しいのです♪。

H;尾崎亜美、兄が好きだったのですが、この曲は知りませんでした。すごく良い曲ですね。ほんと、エレピがたまりません。


At Seventeen / Janis Ian

K;耳にする度に「やっぱり好きだな~」と思ってしまいます。心地良いリズムに乗るつぶやく様でいて起伏のあるメロディー、見事なギターワーク、渋く雄弁なベース、控えめで軽やかなブラス、つい間奏をハミングしてしまう程に頭に残るアレンジ。「at seventeen」とだけ歌詞を声に出してしまうことは..、許しくださいませ(笑)♪。

H;良い曲ですよねえ... そう言えば、最近SSW再評価ムーブメントでジャニス・イアンは取り上げられていないような...


Maurice Ravel - Jeux d'eau ~ Martha Argerich

K;ソロピアノを含むECM諸作を聴くようになり、そこからクラシックへ逆流し、ピアノ・レッスンを再開する大きな動機になった曲です。印象派の数々の現代的で美しい曲と、強烈な個性を持つピアニスト達を知ることの端緒ともなりました。どちらかといえば作曲者への興味が強い私ですが、ここはこの美しいピアニストの演奏を♪。

H;おお、今度はラベルですか。アルゲリッチの繊細かつ躍動感のある演奏が本当に水が戯れているようです。


あこの夢 / 鈴木勲

K;時代は"クロスオーバー"。奏者達のジャズからはみ出ていこうとするエネルギーと感傷的な曲想が10代の終わりの青臭い記憶と結びついて忘れられない一曲です(笑)。シンセ(白玉)とベースにのってチェロ(ピチカート)によるテーマがで奏でられれば、心地よい陶酔に誘われます。2本のギターは渡辺香津美と秋山一将。素敵です♪。

H;へええ。こういう演奏があるんですね。当時、日本でもいろんな試みがあったんですね。


Ordinary Fool / Soundtrack

K;映画「ダウンタウン物語」で使われたポール・ウイリアムスの曲。ナット・キング・コールも歌っていそうな雰囲気。でもちょっとモダン。エラ・フィッツジェラルドが取り上げていると知ってとても 嬉しかった。シャーリー・ホーンならどんな風に..。誰よりチェット・ベイカーが歌ってくれていたら..、と空想してしまうのです。

H;心の中で「この曲はあの人の歌で、演奏は...」って考えるの、高度な音楽の楽しみ方ですね。


ハロウィン / The Tights (ザ・タイツ)

K;1988年時点でこのタイトル(笑)。楽しく、美しく、捻じれ、僅かに裏切りを孕みながら素晴らしくポップ。やられました。一色進が率いるタイツに出会ったのはチラシを渡され向かった渋谷LAMAMAでした。当時ジャズ一辺倒だった私に「POPS・ROCKも良いな」と思わせてくれたこの曲。次のハロウィンの時には是非歌ってみてください♪。

H;すいません。僕、このタイツってバンド、知りませんでした。こういう青臭い感じ、川嶋さん、突然好きですよね。


YELLOW YELLOW HAPPY / ポケットビスケッツ

K;コンビニで買い物中に突然流れたのがこの曲でした。「もしも~」という繰り返し部分にショックを受け冷蔵ケースの前でしゃがみこみました。帰り道にふらふらとCDを購入し家で1晩中ループさせる事態に。照れ隠しのような平メロ部はちょっとアレですが..。どなたかこの曲をコラージュして映像を合せてみてはくれませんか?。

H;「ポケットビスケッツって何だっけ?」と思ったら、ありましたね。あの、本気で川嶋さんが好きってこと、僕はすごく理解してますよ。僕も「美しいメロディ」には負けるタイプですので。


齢には勝てないぜ / 吾妻光良 & The Swinging Boppers

K;大好き吾妻光良。私のアイドル・ギタリスト。ジャズ・マナーのビッグバンドを率いて楽しい歌と強烈なギダーを聴かせてくれます。ジャンプ・ブルースと分類されがちですが、もう素晴らしく個性的♪。選曲は「俺の家は会社」他、色々と迷うところですが、ここは素直にこちらを(笑)。あ~、バッパーズのライブを観たいですナ!!。

H;こんな曲あるんですね。今回はもういろんなところから川嶋さん、投げてきますね。さて、最後の曲ですが。


Time on My Hands / Chet Baker (with Bill Evans)

K;1959年。Kind of Blue前夜のマイルスのリズム隊と一人向き合うチェット・ベイカー。夢の様です。アイデアをうまく音にできないのか、もどかしげに俯きがちな旋律を綴るチェット。どこか遠慮がちなビル・エバンス。それでも聴き手に浸透するジャズの"蜜と毒"。スタジオでの彼等の会話を夢想しながら、何度でも聴き返すのす。

H;ジャズは1曲だけ... で、これですか。うーん、川嶋さんのロマンティスト具合がよく伝わりますね。


川嶋さん、今回はお忙しいところ、どうもありがとうございました。やっぱり音楽って良いですね。

みなさんGWはどういうご予定でしょうか。素敵な音楽に出会えると良いですね。
それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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