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JJazz.Net Blog Title

2015年6月アーカイブ

Monthly Disc Review2015.0615:Monthly Disc Review

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Title : 『Moving Color』
Artist : 吉本章紘カルテット



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今月のレコメンドは、日本人サックス奏者吉本章紘の最新作『Moving Color』。
前作『Blending Tone』から3年ぶりとなるリーダー作。ベースを須川崇志に替えた以外は前作と同じメンバーで、このバンド以外でもメンバーはそれぞれのグループに参加しあうなどかなり気心のしれたメンバーと言えるだろう。

全8曲が吉本のオリジナル曲で、アルバムタイトル通りの色とりどり鮮やかな曲が続く。作曲者の吉本が思い描いたサウンドの彩りを担っているのは、ビート・メイカーでもあるパプアニューギニア出身のピアニストアーロン・チューライ(pf)、辛島文雄トリオや日野皓正カルテットで活躍した須川崇志(b)、今や名実ともに若手ナンバーワンドラマーとも言える90年代生まれのドラマー石若駿(ds)というバンドメンバーだ。


1曲目の「Deep-Sea Fish Waltz」から全体を通してアーロン・チューライと石若はかなり自由度が高く、アンサンブルの中に色を散りばめ、須川のベースがそこに1本軸を通すように鳴ることもあれば、よりアグレッシブにフロントと反応しあう場面もありという全員が提案しつつ、反応しつつ繰り広げられるメンバー間のインタープレイはかなり聴きもので、聴きながら思わず感嘆をもらすような場面がどの曲にもある。コンテンポラリーな楽曲が続く中で、「The Mystery Of Onion Rings」では4ビートのブルースという伝統的な枠を使いながらも、それぞれの解釈で現代的にアップグレードされた新しい音を使って良い意味で遠慮のない会話がなされる。


このバンドの一番の魅力は何と言ってもこの遠慮の無い「会話」であるように感じた。「Nostalgic Farm」での美しいサックスにからむ端正なサウンドから次曲、「Sabaku No Akari」でバンドサウンド全体が大きな生き物のように唸って魅せる爆発力。このコントラストに代表されるように、バンドメンバー全員の楽曲への理解、イメージの共有のレベルが尋常ではない。この一時間近いアルバムのレコーディングを1日で終えたことがそれを物語っている。一分の隙も油断もなく次々に展開されるこのバンドサウンドは、今も日々ライブで磨きがかかっていっていることは間違いない。是非ライブに行ってその目で確かめて欲しい。


正直、まだ6月だが今年のベスト候補のジャズアルバムが出てきてしまったと思っている。これはジャズに限った話ではないが、「日本人のジャズ」を海外のジャズと区別して考えている人が多いのではないか?と思うことが多々ある。

そんな現状を軽々と飛び越えるようなこのアルバムは、ジャズを志す日本の若者にとって、何より日本でジャズを聴く僕にとっての希望である。


文:花木洸 HANAKI hikaru




【Akihiro Yoshimoto Quartet 『Moving Color』視聴】






この連載の筆者、花木洸が編集協力として参加した、金子厚武 監修『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)が発売になりました。シカゴ音響派などジャズとも互いに影響しあって拡がった音楽ジャンルについて、広い視点から俯瞰するような内容になっています。

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■タイトル:『ポストロック・ディスク・ガイド』
■監修:金子 厚武
■発売日:2015年5月30日
■出版社: シンコーミュージック
■金額:¥2,160 単行本(ソフトカバー)

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20年に及ぶポストロック史を、600枚を超えるディスクレビューで総括!貴重な最新インタヴューや、概観を捉えるためのテキストも充実した画期的な一冊。90年代に産声をあげた真にクリエイティヴな音楽が、今ここに第二章を迎える。





Recommend Disc

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Title : 『Moving Color』
Artist : 吉本章紘カルテット
LABEL : MOR Records
NO : MOR 1001
RELEASE : 2015.5.15

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【MEMBER】
Akihiro Yoshimoto Quartet
吉本章紘 Akihiro Yoshimoto - Tenor Saxophone
アーロン・チューライ Aaron Choulai - Piano
須川崇志 Takashi Sugawa - Bass
石若 駿 Shun Ishiwaka - Drums

【SONG LIST】
1. Deep-Sea Fish Waltz
2. The Mystery Of Onion Rings
3. Possum
4. Nostalgic Farm
5. Sabaku No Akari
6. Reminiscing About Banana Beer
7. Ice Castle
8. Water Drops

All Songs written by Akihiro Yoshimoto

Recorded at Studio Dede - Feb 28 2014 by Tsukasa Okamoto
Mixed & Mastered by Akihito Yoshikawa(Studio Dede)
Design:Yosuke Wada


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 




Reviewer information

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

JAZZ in NEW YORK#6 - What I got in New York:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが、6月5日(金)渋谷JZ Bratで行われます。


JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの(本日ですね)約1ヵ月間、毎週金曜日に更新してきました。

今週は遂に最終回。
「どんなにつらい思いをしても、それでもここにいたいと思えるNYという街。」
と中原さんは綴っているように、わたしたちも彼女のストーリーを追いながら、
ジャズの街、NYの空気感を知ることができました。

このコラムを読んでいても中原さんがどんどんタフになっていくのを感じられましたよね。

アメリカへ来てから6年と5ヶ月。
そして遂に完成したアルバム『A Ray of Light』。
アルバムに収録されているオリジナルは、勇敢に闘っている様子や、
迷いながらも進んでいく様子を表現したものだそうです。

その音を是非生で体感して下さい。
本日、6/5(金)渋谷JZ Bratにて、中原さんの凱旋ライブが行われます。


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■What I got in New York


2012年、1年間のOPT期間の終了が近づくまで悩み続けたものの、NYでの活動を続けるために、アーティストビザを申請することを決意。締切まであまり時間の残されていなかった2013年1月半ばから本格的に準備を始め、弁護士の指示を仰ぎながら2ヶ月強で提出書類を完成させた。5月に出演したかったショーがあったため急いだ。そしてちょうど間に合うタイミングで無事ビザを取得できた。その3年間のビザももう既に残り1年となってしまった。


2013年は自分のバンドでのライブもできるだけ多くやった。あるギタリストをゲストに迎えてのライブは、 イタリアからのフライトが天候不順で欠航になったとのことで、彼がリハに来られないままの本番だった。(余談ですが、そのライブには、日本から漫画家の方が聴きにいらしていた。ジャズをテーマにした漫画を書こうと調査に来られたとのこと。その後、本当にジャズ漫画を描かれているようですね。) 時間をかけてスケジュール調整や準備をしても、アクシデントがよくある。ライブ当日メンバーが来られなくなって、代わりの人にほぼ初見で弾いてもらったり。2時間のリハに2時間遅刻してくる人がいたり。


そうしているうちに、音楽活動の幅も広がり始め、ポップミュージックのバンドのライブにも出演したり、別のバンドでは70年代のR&Bを演奏したりした。


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2014年には、教会でも毎週日曜日に賛美歌やゴスペルの曲を演奏し始めた。そこでは初見が基本。何の打ち合わせもなく演奏することもある。コーラスの人たちがいきなり歌い出すので、初めて聴く歌でも、キーとコード進行を瞬時に判断してそれに合わせて伴奏していく。オルガンとドラムだけなので、責任重大。心の優しいコーラスの方、本番で歌いながら号泣されることも。いかに歌をサポートし、気持ちを盛り上げてもらえるかということを考えながら弾いている 。そういえば大好きだった映画「天使にラブ・ソングを」の世界だ。
毎週オルガンを弾くという機会をいただいたおかげで、オルガントリオでのライブに挑戦することもできた。


そして貴重な出会いもあった。ジャズクラブKitanoのジャムセッションで共演したシンガーMs. Blu。ブルージーでパワフルな彼女の歌、楽しく歌う姿、ブルーの衣装がとても印象的だった。私のライブにたまたまいらっしゃって、一曲バンドと一緒に歌っていただいた。その後まもなく、彼女のバンドのメンバーとして演奏を始めた。彼女はあたたかくピュアな心を持っていて、音楽をとても愛している。ライブ中のMCで、涙を流しながら話すMs. Bluを観ていると、このショーをいいものにしようという気持ちになる。信頼できる方で、"I'm here for you."と言ってくれるお友達。
つらいときに、

"I really want you to know that whatever is going on that upset you and keeps you sad from time to time you can confide in me. I am a good friend and I don't repeat anything that someone tells me in confidence I'm here for you."
"I feel like I've always known you. You have a beautiful heart!"

と支えてくれた。
私の名前「美野」ですが、「野」は"心"という意味も持つということで、美しい心を持ってほしいと両親がつけてくれた。本当にそうなりたい。


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[Ms Blu @ SOMEHIN' Jazz Club]


遡ってNY1年目。お世話になっていた方(Tさん)が、ご親戚の男性を連れてライブを聴きに来てくださった。そのご親戚の男性が演奏をとても気に入ってくださって、Tさんに直筆のお礼状を送られたとのこと。「彼女の演奏はDiana Krallを想起させる。アレンジも素晴らしい。とても特別な夜になった。誘ってくれてありがとう。」と、身に余るお言葉を頂戴した。Diana Krallファンの皆様から苦情が来るでしょう。でも、演奏している音楽は大分ちがうけど、Diana Krallは私の憧れ中の憧れ。(この間 Beacon Theaterで初めて彼女のライブを観られて、静かに大興奮だった。) 感激で、思わずバンドメンバーに手紙のことを報告してしまった。

その後、その男性はライブのご案内をすると必ずお返事をくださり、たびたび応援にいらしてくださった。あるライブでは、「ごめんね、あなたのピアノを聴きに来たんだけど他の楽器が僕にはうるさすぎるから」と1st setで帰られてしまったけど、また聴きに来たいと言ってくださった。

2014年の5月、Tさんから突然お電話があり、その方がお亡くなりになったとの知らせを受けた。びっくりした。その年の1月に新年のメッセージをお送りしたら、「次のライブに必ず行くから」とお返事をくださっていた。しばらく涙が止まらなかった。そのとき、こんなに悠長に過ごしていてはいけない、と強く思った。アルバムを作らなければ。早く活動の場を広げなければ。応援してくださっている方々の期待に応えたい、と。すぐにRiro MuzikのRozhanにメールをした。一緒にレコーディングをしたいメンバーに出会えていて、Sureと言ってもらえて、ラッキーだ。日程調整に時間がかかったものの、7月にレコーディングを実施することに決めた。


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メンバー全員の予定が空いていたのは一日だけ。真夏日、朝10時集合で夜9時まで、11曲を数テイクずつ録った。録音中はエアコンを止めなければならず、スタジオ内は暑く、ピアノを弾く手もすぐ汗ばんだ。唯一ブースに入っているサックスのChadが、なだれこむようにこちら側へ出て来て床で転がったりしていた。


その後、経済的事情で、録った音源がそのままになってしまった。本当にこれを世に出していいのか、という不安もあった。

そして同年の12月。ある出来事がやむなくまた私を動かした。「やばい。自分を支えられるのは自分しかいない。」と。その出来事を受け、父が、アルバムを完成させてほしい、と制作費のサポートをオファーしてくれた。以前にレコーディング音源を聴いていただくことをご相談していた、NY でプロデューサーとして長年ご活躍されているある方にやっと音源を送った。「今立て込んでいるから少しお時間をください」とのお返事。ところがその後すぐ、「聴きました」とのご連絡をいただいた。「なんで今までほっといたんですか、早く完成させて、世に出して下さい」と、叱咤激励のお言葉。

1ヶ月間廃人のようになっていた私はやる気を取り戻した。
そうしてアルバムを完成させる決意をした後も、色々なことがまた起こった。ようやく動き出せた3月から、息をつく暇もないようなスケジュールで制作を進め、3週間ほど前に出来上がりました。お電話をいただいた時からちょうど1年。


アメリカへ来てからの6年と5ヶ月。本当に色々あった。特にニューヨークでは、一難去らないうちにまた一難以上来た。NYで培ったことは、たぶん、強く生きること。ここでの生活は、常に戦っている感じ。約束が守られないことは日常茶飯事。What???と言いたくなるような信じられない出来事がいっぱい起こる。理不尽なことに対していかに負けずに闘えるか。特にジャズミュージシャンとして生活するのは苦労が絶えない。

でも、ここでは、小さい頃の夢だったことが知らない間にかなっていた。シンガーのバックで演奏したい。ピアノの先生になりたい。レストランでBGMを演奏したい。ウェディングでピアノを弾きたい...。色々な苦難やトラブルが絶えずあり、それに阻まれて、思うようにつき進んでいけないことがとてももどかしく、自分の目指しているところにはまだまだ達していない。けど、サポートしてくれる方々のおかげで問題を解決してこられて、今ここでミュージシャンとして少しずつ前に進んでいけていることをとても感謝しています。


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どんなにつらい思いをしても、それでもここにいたいと思えるNYという街。これまでの記事でも一部ご紹介させていただいたように、数えきれないほどたくさんの尊敬する憧れのミュージシャンの演奏を聴くことができた。本当に幸せなこと。ライブで、聴いている方がよい演奏にすぐに反応し、Yeahと言って盛り上がる雰囲気も好き。そして、もはや憧れというレベルの方でもないHerbie Hancockは、ライブ鑑賞だけでなく、書店Barnes & Nobleで行われた彼の書籍"Possibilities"の発売イベントにも参加できた。ご本人からMiles Davisとのエピソードや、"Watermelon Man"のリズム、フレーズができた過程などを聞けて、感動だった。そして、この冬にその本を読んでいたら、初期のNYでの生活など彼のストーリーにわくわくし、ミュージシャンとして生きる機会を得られていることを大事に思い、そうありつづけられるようにがんばろうという気持ちになれた。


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病気が見つかり、NYで手術を受けた2月のある日。気温マイナス13度の朝5時に電車で病院に向かうとき、なんとなく自分の曲を聴こうと思い、まだMix/Mastering前の"Take Five"と"Jay Street"を聴いた。不思議と元気が出てきた。バンドメンバーの演奏に励まされた。


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もしアルバムを聴いてくださる方がいらっしゃって、私の音楽で元気を出してもらえることがあったら、本当に嬉しいです。

タイトルの"A Ray of Light"は、直訳すると「一条の光」という意味ですが、自分の中で一本筋が通っている状態、目標に向かって一本光がまっすぐに伸びているイメージを表したいと思って付けました。収録されているオリジナル曲は、タイトル曲ほか、勇敢に闘っている様子や、迷いながらも進んでいく様子を表現したものなど。皆様にはどのように感じていただけるのか、感想をお聞きするのが楽しみです。ジャズのスタンダード曲も、オリジナルバージョンとはだいぶ違った雰囲気にアレンジしているので、ぜひ一度チェックしていただきたいです。アルバムを聴いたMs. Bluは、"The arrangements are Rocking! I have not heard any new jazz material that I could fall in love with until NOW!" とメッセージをくれて、すごく嬉しい。


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リリース日の5月23日は、私の誕生日ですが、自分へのプレゼントではなく、アメリカへ来てから応援しつづけてくれた両親への感謝の気持ちとしてアルバムを送りたかった、という思いがあります。
本日6月5日のリリースライブ。フライヤーを作成していただいたのですが、それを置いてもらうために、両親が何日間もかけて、電車に乗って都内の34ヶ所の音楽教室を訪問してくれました。


昨年11月の東京での初ライブでは、約10年前、ライブで衝撃を与えてくださり、私がジャズミュージシャンを目指すきっかけともなったお一人、ドラムの大槻"KALTA"英宣さん、そして土井孝幸さん、西口明宏さんという素晴らしいミュージシャンの方々との演奏の夢が叶いました。


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本日渋谷JZ Bratでのライブでは、その10年前のライブのバンドリーダーであったサックスの太田剣さんとついに一緒に演奏させていただくことができます! 矢沢永吉さんのZ's Tourの最終公演を終えて駆けつけてくださいます。

会場の皆様に楽しんでいただける、またご協力くださった皆様にそうしてよかったと思っていただけるライブになりますように :)


今年の5月のNYは、爽やかな日が多かった印象です。深夜4時になってもまだ近隣から大音量でラテンミュージックが聴こえるWest Harlemのアパートで、Broadway沿いの小さなカフェで、Bryant Park横のNew York Public Libraryで、日本に向かう飛行機の中で、6回に渡るこのコラムを書きました。


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機内でたまたま観た映画、「Song One」。ニューヨークを舞台に、Anne Hathaway演じる主人公が、ミュージシャンの弟や彼の大好きなミュージシャンと関わっていくお話。自分がここで観ているものや、自分自身のことと重なった。

圧倒的に多いミュージシャンの数。ジャズだけではない。毎日数々のライブハウス、レストラン、地下鉄の駅、電車の中で演奏している。無名のミュージシャンが葛藤したり、逆に一気にジャズシーンに入り込んでいったりする様子を私も他人事ではなく傍で観ている。映画を観て改めて、数えきれない選択肢の中で、その人の演奏を聴きに行っている、というのはすごいことだと思った。 ライブに来てくださるお客様、お友達にはいつも心から「ありがとう」と思う。


コラムを読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
お会いできる日を楽しみにしています。


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

Jef Neve "ONE" Japan Tour 2015:ライブ情報 / LIVE INFO

ホセ・ジェイムスとのデュオ作品『For All We Know』で注目を集め
今年1月のシドニー・フェスティバルでは、現地の"ジャズグルーヴ・マザーシップ・オーケストラ"に、
マリア・シュナイダー(指揮)と共にスペシャルゲストとしてフィーチャーされた、ジェフ・ニーヴ。
新作を引っさげての日本ツアーが決定しました!

本国ベルギーでは"ネクスト・トゥーツ"との評判も高い俊英が、
ピアノ一台で美しくドラマティックな音世界を表現。
今観ておきたい公演です。
6/19の静岡「Lifetime」公演ではスペシャル・ゲストとしてTOKUさんが出演!


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【Jef Neve "ONE" Japan Tour 2015】

ベルギーで最も有名なジャズミュージシャンであるトゥーツ・シールマンスに続く存在として期待されているピアニスト、ジェフ・ニーヴがモーション・ブルー・ヨコハマに初登場を果たす。2003年のデビュー作以来、発売するアルバムは国内のジャズチャートで常に1位を獲得。レマンス音楽院でジャズと室内楽を学び、クラシック分野でもフランドル放送管弦楽団のためのピアノ・コンチェルトを書き下ろすなど幅広く才能を発揮している。ホセ・ジェイムスとのデュオ作品『For All We Know』は、後にホセがブルーノート・レーベルからデビューしたことで再注目されることになった。今年の豪州ツアーでは、現地のビックバンドにマリア・シュナイダー(指揮)と共にピアニストとしてフィーチャーされ絶賛を博した。ジェフ自身が「これまでの録音のなかで、最もチャレンジングだった」と語る新作『One』を携えての本公演。ピアノ一台で美しくドラマティックな世界を表現する。

【メンバー】
Jef Neve(piano)

【日程】
6/14 (日) 茨城「自由が丘スタヂオ」 
310-0035 茨城県水戸市東原2-7-40 tel:029-221-5538
開演18:00 ¥3,000
http://www5.plala.or.jp/Jiyugaoka/

6/16 (火) 東京丸の内「Cotton Club」
100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2F tel: 03-3215-1555
開演 18:30/21:00 入替制 ¥5,000円〜
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/jef-neve/

6/18 (木) 横浜「Motion Blue Yokohama」 
231-0001 神奈川県横浜市中区新港1-1-2 横浜赤レンガ倉庫2号館3F tel: 045-226-1919
開演 18:00 開演 19:30 入替なし ¥4,000
※120分のステージを予定しています
※ステージ間に30分の休憩を予定しています。
http://www.motionblue.co.jp/artists/jef_neve/index.html

6/19 (金) 静岡「Lifetime」 
静岡県静岡市葵区紺屋町11-1 tel:054-250-0131
開演 19:30 2sets
前売¥6,500 当日¥7,000
Special Guest: TOKU(vo, flh)
http://www.fugetsuro.co.jp/lifetime/index.html

6/20 (土) 兵庫「伊丹市立演劇ホール AI HALL」
664-0846 兵庫県伊丹市伊丹2-4-1
開演 14:00(終演15:00予定)¥1,800(全席自由)
予約 Way Out West編集部 takao@jazgra.com
http://jazgra.com/jef620/


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【Bar Music × CORE PORT特別企画】 Precious Time for 23:00 Later "JAZZ":ニュース / NEWS

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渋谷の一角にある音楽ファンのオアシス、Bar Music。
店主の中村智昭氏(MUSICAÄNOSSA)はDJ/選曲家/音楽ライターとしてもお馴染みですよね。

そのBar Music中村さん選曲によるコンピレーションAL
『Bar Music × CORE PORT Precious Time for 23:00 Later』が、5/20にリリースとなりました。
この作品は、世界中の良質なサウンドを次々と送り出す素敵なレーベル
CORE PORTの音源の中からセレクト。
テーマは" Precious Time for 23:00 Later"、夜の音楽です。

そこで今月の「PICK UP」では
中村 智昭さんとCORE PORTのレーベルオーナー、高木洋司さんとの対談模様をご紹介。
2人がイメージした音の世界、そしてそれを構築する為のメソッドなど、非常に興味深い内容です。

聴く人によってそれぞれのストーリーを感じてもらえればとは思いますが、
こうやって選曲者の意図を知ると、より深くその音の世界に入り込めるような気がします。

音楽愛を感じる対談をお楽しみ下さい。


「PICK UP - JUNE」 (配信期間:2015年6月3日~2015年7月1日)
//www.jjazz.net/programs/pick-up/


【Bar Music × CORE PORT特別企画】
Precious Time for 23:00 Later "JAZZ"

ここでは特別企画として中村 智昭(Bar Music)さんと高木洋司(CORE PORT)さんのお二人に
"Precious Time for 23:00 Later"のジャズ編として、
夜11時以降にオススメ、夜に聴きたいジャズナンバーを3曲ずつセレクトしていただきました。
いずれも夜に聴くと色んなストーリーを生み出してくれそうです。


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【夜に聴きたいジャズ】

中村 智昭(Bar Music)

以下の三曲を切っ掛けに+αの更なるジャズと出会いがあるよう願いをこめて、自分が組んだコンピレイションから選びました。


「Music / Sathima Bea Benjamin」





アブドゥーラ・イブラヒム(=ダラー・ブランド)の妻であるヴォーカリスト、サティマ・ビー・ベンジャミンによるその名も「Music」。Bar Musicという場においてはキャロル・キングの同名異曲と表裏一体となるあまりに素晴しいワルツ・ソングで、一日の終わりに心を穏やかに鎮めてくれる。アルバム『Dedications』『African Songbird』にも、それぞれ編成/アレンジの異なるテイクが収録されている。


[収録アルバム]
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Title : 『Bar Music 2013 Love Spartacus Selection』from Love Light(Enja)
Artist : V.A
LABEL : Musicaanossa Gryps(MNGP-1)
RELEASE : 2013.10.23

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「The Lamp Is Low / Carmen Lundy」





今回コンピレイションCD『Bar Music × CORE PORT-Precious Time for 23:00 Later-』に、カーメン・ランディの「Grace」という最高の楽曲を収録することができたが、彼女との出会いはここから。アンディー・ポッター&デヴィット・エリック・ティルマンの2枚のアルバムへの客演・楽曲提供を経て85年にリリースされた処女作で、慈愛に満ちたこの「The Lamp Is Low」は、無敵のグルーヴィー・チューン「Time Is Love」と共にキャリアを代表する名曲。アーティストとして持つイマジネイションとヴォーカリストとして持つ資質が、見事なまでに実を結ぶ。


[収録アルバム]
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Title : 『MUSICAANOSSA 3 Sienna Jazz Lounge』from Good Morning Kiss(Justin Time)
Artist : V.A
LABEL : Rip Curl Recordings(RCIP-124)
RELEASE : 2008.12.4

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「Anyway? What Did You Think It Was That Needed To Be Loved〜The Police / Mitchel Forman」


ピアノ・ソロでメドレー的に描く澱みない完璧な美しさと、その先にある感動の波。特にクライマックスにあたる「The Police」を、CALMが真夜中のBar Musicで初めてプレイした時の胸の高鳴りを忘れることはないだろう。また、ニューヨーク出身のピアニストである若きミシェル・フォアマンを自身のツアー・メンバーに抜擢し、イタリアのレーベルであるソウルノートからリリースを行うきっかけをつくったのが、名盤『Night Lights』から時を経たジュリー・マリガンであるというエピソードも、ジャズ・ファン的観点からはとても嬉しい事実。


[収録アルバム]
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Title : 『Bar Music 2014 Lost Relief Selection』from Only A Memory(Soul Note)
Artist : V.A
LABEL : Musicaanossa Gryps(MNGP-5)
RELEASE : 2015.6.24

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高木洋司(CORE PORT)


「Look What I Got / Betty Carter」





夜の静かな海にたゆたう波のようなリズム・セクションと、ベティ・カーターの雄大でいて包み込まれるような歌唱。単調なリズムでありながら逆にその反復性が、大きく美しく、そして静かなグルーヴを作りだした奇跡の如き名演。カタルシスに満ちた夜の音。


[収録アルバム]
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Title : 『Look What I Got !』
Artist : Betty Carter
LABEL : Verve
オリジナル盤発売年 : 1988

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「You Must Believe in Spring / Claudio Filippini Trio」





エンリコ・ピエラヌンツィが絶賛したイタリアのピアニスト。甘さは程よく抑えめで、凛としたタッチで奏でるルグラン・ナンバーは、もちろんビル・エヴァンスでお馴染みの曲。ただし、より地中海的なジューシーな香りがあり、深夜の空気を生き生きとしたものに変えてくれる。


[収録アルバム]
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Title : 『The Enchanted Garden』
Artist : Claudio Filippini Trio
LABEL : CAM Jazz(CAMJ7839)
RELEASE : 2011.10.10

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「Don't You Know I Care / Archie Shepp」


アーチー・シェップのソプラノ・サックスによる冒頭の美しいタンギングが、本格的な夜の到来を知らせてくれる。デューク・エリントン作のスロウ・バラッドではあるが、シェップの奔放なソロが安っぽくない現実感あるリアルな夜の時間へと同化させていく。


[収録アルバム]
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Title : 『Day Dream』
Artist : Archie Shepp
LABEL : Denon
オリジナル盤発売年 : 1978





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■タイトル:『Bar Music × CORE PORT Precious Time for 23:00 Later』
■選曲:中村智昭 (MUSICAÄNOSSA / Bar Music)
■発売日:2015年5月20日
■レーベル: CORE PORT
■製品番号:RPOZ-10010

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渋谷の一角で音楽ファンのオアシスとして知られるBar Musicと、新レーベルCORE PORTがコラボレイト。テーマは夜の音楽。日付が変わる直前の落ち着いたひととき、静かなグラデーションの彩りとともに時計の針をいつのまにか明日へとエスコートするようなコンピレイション・アルバム。心地よく熱を帯びるジャズやフォークに、ブラジル、アルゼンチン、フランスといった異なる国々の名演が鮮やかに交錯、さらにはキャロル・キングやビリー・ジョエルの絶品カヴァーも収録の全18曲。新たな音楽との出逢いが今日の心を鎮め、やがて明日への希望となる。


[収録曲]

01 エミ/トリオセンス
Emi (Bernhard R.Schüler) / triosence
From "One Summer Night " (CORE PORT RPOZ-10003) 2014 [Germany]
02 ティレリー/ベッカ・スティーヴンス・バンド
Tillery (Becca Stevens) / Becca Stevens Band
From "Perfect Animal " (CORE PORT RPOZ-10005) 2014 [U.S.A.]
03 ペドロ&リス/ジェニフェル・ソウザ
Pedro & Lis (Jennifer Souza / Artênius Daniel / Ludmila Fonseca) / Jennifer Souza
From "Impossível Breve " (CORE PORT RPOP-10006) 2013 [Brasil]
04 青い蝶/アカ・セカ・トリオ&ディエゴ・スキッシ・キンテート
Panambí Jovhé (Ramón Ayala)/ Aca Seca Trio + Diego Schissi Quinteto
From "hermanos" (CORE PORT RPOP-10003) 2014 [Argentina]
05 ふたり/ダニエル・ミル
Tous les deux (Daniel Mille / Jean-Christophe Maillard) / Daniel Mille
From "Les heures tranquilles " (SARAVAH / CORE PORT) 1995 [France]
06 ブレリアス・エルマノス/アルマディージョ
Bulerias Hermosas (Nino et Nanasso Baliardo) / Armadillo
From "Armadillo " (SARAVAH / CORE PORT) 1991 [Spain]
07 ノ・ノルチ・ド・ポロ・スル/ナナ・ヴァスコンセロス、ネルソン・アンジェロ、ノヴェリ
No Norte Do Pólo Sul (Nelson Angelo) / Nana Vasconcelos, Nelson Angelo, Novelli
From " Nana Nelson Angelo Novelli " (SARAVAH / CORE PORT) 1974 [Brasil]
08 マフィーンに捧ぐ歌/チック・ストリートマン
Ode To Maffen (Chic Streetman) / Chic Streetman
From "Growing Up " (SARAVAH / CORE PORT) 1975 [U.S.A.]
09 小さな森/ジャック・トリーズ
Le petit bois (Jack Treese) / Jack Treese
From "me and company " (SARAVAH / CORE PORT) 1970s [U.S.A.]
10 ルールケリー/ル・コック
Rourkerie (le coq) / le coq
From "interludes " (SARAVAH / CORE PORT) 2002 [France]
11 ドゥー・ユー・シング/ル・コック
Do Your Thing (Louis Hardin) / le coq
From "Tête de gondole" (SARAVAH / CORE PORT) 2005 [France]
12 良いときも 悪いときも/ジョー・バルビエリ
Nel Bene E Nel Male (Giuseppe Barbieri) / Joe Barbieri
From "Cosmonauta Da Appartmento" (CORE PORT RPOP-10008) 2015 [Italy]
13 シークレット・ハート/ライラ・ビアリ
Secret Heart (Ron Sexsmith) / Laila Biali
From "Live In Concert " (CORE PORT RPOZ-10006) 2014 [Canada]
14 去りゆく恋人/クリスティーン&リアム
So Far Away (Carole King) / Christine Tobin & Liam Noble
From "Tapestry Unravelled " (Christine Tobin) 2010 [Ireland]
15 グレイス/カーメン・ランディ
Grace (Carmen Lundy, Simphiwe Dana) / Carmen Lundy
From "Soul To Soul" (CORE PORT RPOZ-10004) 2014 [U.S.A.]
16 そして今は/ライラ・ビアリ
And So It Goes (Billy Joel) / Laila Biali
From "Tracing Light " (Laila Biali) 2010 [Canada]
17 チルドレンズ・プレイソング/ヒルデ・ヘフテ
Children's Playsong (Bill Evans) / Hilde Hefte
From "memory suite" (CORE PORT RPOZ-10002) 2014 [Norway]
Original From "playsong the music of Bill Evans" (Hot Club Records) 2001
18 カム・サンデイ/ノーマ・ウィンストン
Come Sunday (Duke Ellington) / Norma Winstone
From "London in the Rain" (CORE PORT RPOZ-10001) 2014 [U.K.]
Original From "Like Song, Like Weather" (Enodoc Records) 1998

TOTAL TIME 75:11


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Bar Music
コアポート──2014年の東京で産声をあげた新たなレーベルの名は、「その核となる揺るぎない音楽性を有したアーティストや作品が集う港とする」という発足理念に由来する。わずかに一年の履歴においてすでにアメリカ、イギリス、フランス、アルゼンチン、ブラジル、イタリア、ドイツ、カナダ、日本から届いた様々なスタイルの良質な音楽を、僕たちリスナーに紹介している。さらにはフランスの吟遊詩人、ピエール・バルーが60年代から現在に至るまで手掛け続けるレーベル、"サラヴァ"の膨大なカタログを有することも、特色の一つである。
「Bar Musicの23時あたりの雰囲気をイメージしたコンピレイションを、コアポートの音源で」という依頼を頂戴したのは、まだ寒さも厳しい折りの、やはり終電を目の前にしたころだっただろうか。これまでDJの現場やUSENの選曲の中で繰り返しプレイしてきたベッカ・スティーヴンス「Tillery」やジェニフェル・ソウザの「Pedro e Lis」、デビュー時からのファンであるヨーロッパ・ピアニズムの至宝、トリオセンスのライヴ盤の存在もすぐに脳裏を過った。カーメン・ランディの「Grace」に至っては、僕のレーベル"ムジカノッサ・グリプス"からリリース予定のBar Music最新コンピレイションにリストアップしたところで、ライセンスの申請をまさにコアポートにお願いするタイミングでもあった。そうしてヒルデ・ヘフテによるビル・エヴァンス「Children's Playsong」の美しいカヴァーへと最終的に着地するような選曲イメージも、すぐに湧き上がったのだった。何より、おそらく多くのコラボレーションのアイデアがある中で、まっ先にBar Musicを指名してくれたことが嬉しかった。

以前、インタビュー取材の中でBar Musicという場を語るときに、"小舟"をモチーフとしたことがある。豪華客船のような優雅さやスケールの大きさはなくとも、あらかじめ定められた航路はなく、丁寧に風向きと潮の流れを読みながら、日常における小さな感動の刹那に立ち会わせてくれる──。言うならば本コンピレイションCDは、2015年の春にBar Musicがその名もコアポートという港へ寄港した際の、確かな記録というところだろうか。
ご乗船、誠にありがとうございます。時刻は日付をまたぎ、貴方に、深い静寂の刻が訪れようとしています。

2015年 3月 中村 智昭(MUSICAÄNOSSA / Bar Music)
http://www.musicaanossa.com/


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CORE PORT
真夜中、静かに頭が覚醒していく時間がある。リラックスはしているのだが、ただ弛緩しているのではなく、何ものかに導かれながら自分の中にあるノイズが薄まっていく時間。本来の自分など勿論たいしたものではないが、それでもその本来の自分を取り戻していく貴重な時間だ。そんな時間をたびたび渋谷のBar Musicで経験した。この渋谷の一角にあるお店で、店主の中村さんがセレクトして流れる音はひたすら心地良い。上っ面の心地良さであればそれは通り過ぎていくだけだが、その場と時間をひとつの物語にしてしまうような意志ある選曲によってこのBar Musicという森に包まれていくような快感がある。リラックスしながらも絶妙な刺激があり、細胞をゆっくりと揉みほぐし、この時間帯の覚醒を助長してくれる。

コアポートは「一聴すると心地良いが、その音楽の背景には広大な平野が続いている」という音楽を紹介しようと心掛けている。それは発売される個々の作品によって表現されるべきものだが、レーベルの全体像を端的に提示できないものかと考えた時、Bar Musicで"リラックスしながらも絶妙な刺激"と自分が感じたものが、ひょっとしてどこかでシンクロするのではと思った。それがこのコンピレイションCDの出発点だった。そしてBar Musicにいる真夜中の時間は、それに相応しい音が鳴っている時間だ。

結果的に、中村さんが持つモダンな感覚が濃厚に反映され、レーベルの音源に膨らみを持たせてくれた。収録曲ではル・コックのセレクションに驚いた。サラヴァ・レーベルの2000年代初期、ピエール・バルーの息子バンジャマン・バルーがそのセンスを開花させていた時代の音響感が今に通じると気付かせてくれるかと思えば、ジャック・トリーズのハニーバスの如き田園フォーク的なテイストにはQuiet Cornerとの関連も感じた。アルマディージョのフラメンコ・ギターとネルソン・アンジェロのギターの並びは、大西洋を横断してスペインとブラジルを一線上に見据えたような響きを持つ。そしてアカ・セカ・トリオのハーモニー、クリスティーン・トービンの静謐でいてソウルフルなアイリッシュ・ヴォーカル、ノーマ・ウィンストンの気高い声、いずれも心を鎮めてくれるという意味では同一のスピリチュアルである。多くの視点が混在していながらも、深い夜の時間に向けて全曲が一丸となって穏やかに疾走していく不思議で魅力的なCDに仕上げていただいた。ぜひ真夜中に聴いてみてください。

2015年 3月 髙木洋司 (CORE PORT)
http://www.coreport.jp/

"TOUCH OF JAZZ"アルバム - ウィリアムス浩子 セレクト:TOUCH OF JAZZ

青木カレンがナビゲートする番組「TOUCH OF JAZZ」では、毎回ゲストの方に
自身の「TOUCH OF JAZZした作品=ジャズに触れた作品」をご紹介いただいています。


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今回のゲストはジャズ・ヴォーカリストのウィリアムス浩子さん。

浩子さんをジャズの世界へ導いたアニタ・オデイの「A Nightingale Sang In Berkeley Square」。
この曲を巡る不思議なつながり。
ジャズに触れるだけではなく、運命を感じさせる1曲です。


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『This Is Anita / Anita O'Day』


「このアルバムに収録されている「バークリー・スクウェアのナイチンゲール」を聴いた時、世の中にこんな美しい曲があるんだっていうことに感動したんです。当時アマチュアバンドを組んではいたけれど、ジャズの事は知らなくて。だからこの曲でジャズを知ったんです。それからは"アニタ・オデイ"と見つけると買い集めるようになって。そしたらその先にオスカー・ピーターソンとかポール・チェンバース、そしてバド・パウエルとかビル・エヴァンスとかジャズの巨匠たちが出てくる。アニタは、そんなジャズの世界へのきっかけをくれた存在。


中でも「バークリー・スクウェアのナイチンゲール」があまりにも好きで(笑)、いつか自分のアルバムを作ることがあるのなら必ず1曲目に入れようと思って、2008年の最初のアルバムに入れました。そして私のレーベル名も「Berkeley Square Music」に(笑)。
1946年のそんなに有名でもない曲なのに、この歌が気になっていたという海外の人から連絡をもらったり、この曲によって人とのつながりができたりと、本当に運命を感じる1曲です。


そういえばこんな事があったんです。私がこの「バークリー・スクウェアのナイチンゲール」を歌った時に目の前の女性が泣きはじめて。後で話を聞いたら彼女がサンフランシスコに住んでいた時に、自分の娘がこの曲を口ずさんでいたそう。「どうして(私の好きな)この曲を知ってるの?」と尋ねたら、隣のおじいちゃんがいつもサックスでこの曲を演奏していたそうなんです。そしてそのおじいちゃんというのは、戦時中にバークリー・スクエアの近くの爆撃によって恋人を亡くしていたんです。それをひきずって、彼女の事を忘れないようにいつもこの曲を練習していたそうなんです。その話を聞いた娘が感動し、それをお母さんに伝え、お母さんはそれが重なって私の歌を聴いて感動して、とまさに時空を超えて人を結びつけるようなチカラを持つ、不思議な曲です。」

ウィリアムス浩子


■タイトル:『This Is Anita』
■アーティスト:Anita O'Day

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【A Nightingale Sang In Berkeley Square / Anita O'Day】




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■タイトル:『MY ROOM side2』
■アーティスト:ウィリアムス浩子
■発売日:2015年4月15日
■レーベル : Berkeley Square Music
■製品番号:BSM-7

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[収録曲]

1. If
2. Someone To Watch Over Me
3. Danny Boy
4. I'll Weave A Lei Of Stars For You
5. You Must Believe In Spring


(メンバー)
ウィリアムス浩子(v)
馬場孝喜(g)

あくなきクオリティの追求を続ける「MY ROOM」プロジェクトの第2弾。 その音楽的内容と高品位なサウンドが高く評価され、前作「MY ROOM side1」は、ジャズ批評誌「ジャズオーディオ・ディスク大賞2014」ヴォーカル部門で『銀賞』を獲得。 これは、世界のトップシンガーたちと肩を並べての受賞であり、日本人ヴォーカリスト初の快挙として話題となった。 長く共演を続けてきたギターの名手・馬場孝喜とのデュオによる息の合ったパフォーマンスは、「If」「Danny Boy」といった名曲に新たな息吹を吹き込む。 オーディオルームでの一発録りは、「互いの音のかぶり」の問題など録音面では困難をともなうが、エンジニア・新島誠氏の手にかかれば、ここまでハイクオリティなサウンドも 可能であることを実証するオーディオ作品でもある。絶妙にチューニングされたオーディオルームならでの響きまでブレンドされたその『生音(なまおと)』は、リアルなヴォーカル &ギターとともに空気感、部屋感までも心地よく味わえる。温かみあるサウンド、人間くさいこの生の音は、今の時代だからこそ切望されるのだろう。




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【ウィリアムス浩子】(ヴォーカリスト)
都内を拠点に全国のライブシーンで活躍するシンガー。アルバムが4作連続ジャズチャート1位を記録。最新作「My Room side2」は発売1週間でオリコン9位を記録し、いまなお好調なセールスを続ける。作編曲家・服部克久氏に「最高のエンジンを積んだロールスロイスが時速 100kmで優雅に走るよう」と言わしめるほどのその歌声は、ジャズの枠を越えて多方面から熱い注目を集める。また、各作品の優れた音づくりは、オーディオ界からも高く評価され、専門誌にたびたび取り上げられ、オーディオ評論家のリファレンス・ディスク(試聴盤)としても使われている。「ジャズ批評」の『ジャズオーディオ・ディスク大賞』では、激戦のヴォーカル部門にて、アルバム「a time for Ballads」(2012年)が第 10位、「A Wish」(2013年)が"銅賞"、そして「MY ROOM side1」(2014 年)が日本人初となる"銀賞"に輝くなど、世界のトップシンガーと並び称されるまでに躍進を遂げる。さらに、イタリアはじめ欧州・アジアのオーディオショップでもアルバムが販売されるなど、その活動は世界へと広がりを見せている。MRO ラジオ北陸放送「ウィリアムス浩子のご一緒にジャズはいかが?」パーソナリティ。 日テレプラス「Mint Jazz」にて、昨年のライブの模様がリピート放映中。


ウィリアムス浩子 オフィシャルサイト
http://www.hirokowilliams.com/J/Hiroko_Williams.html

Monthly Disc Review2015.0601:Monthly Disc Review

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Title : 「Double Circle」
Artist : Enrico Pieranunzi, Federico Casagrande



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ちょうど三年前の2012年の今頃、Marc Johnsonの演奏を追いかけていて、Enrico Pieranunziに行き当たる。正直、イタリアのジャズに関しては、未聴の分野で"ピエラヌンツィ"って響きがいいね、なんていうくらい。EGEAでのリリース作品を何枚か買い漁っているうちに、2000年に発表された『Raconti mediterranei』の冒頭の一曲目"The Kingdom(where nobody dies)"に出会うことになる。

"地中海物語"というアルバムの邦題のとおり、青い地中海の景色を想像させる作品で、なかでも"The Kingdom(where nobody dies)"は、梅雨から夏に向かっていく憂鬱なこの時季に、カフェでは欠かせない一曲となり、毎日毎日、この曲を流すことに。お客様にも、"この曲は何?"と何度となく尋ねられ、その度に、"ピエラヌンツィ"と呪文のように繰り返しては、アルバム『Raconti mediterranei』をお勧めして、何人もの方が購入した模様。

そして、今回の『Double Circle』。PieranunziのピアノとFederico Casagrandeのアコースティックギターのデュオ作品という前情報を得て、"The Kingdom(where nobody dies)"に匹敵するカフェでのへヴィーローテーション曲があるのではないかと秘かに期待をしていたのでした。そして先日、届いたばかりのアルバムをお客様のいない夕暮れのカフェで試し聴き。

答えは、大正解。
冒頭の一曲目、"Ann Blomster Sang"の、その美しいメロディとそれを奏でるピアノとアコースティックギターの響きは、カフェにこの上ない心地よい風を運んで来てくれて、まさにこれからの時季にうってつけの一曲。『Raconti mediterranei』同様、この先夏の終わりくらいまでcafeイカニカにいらっしゃったお客様は、この"Ann Blomster Sang"を聴かされ、アルバム『Double Circle』を薦められることになると思われます、ご容赦を。

加えて最後に収録されているのは、タイトルが"Charlie Haden"そう、彼への追悼の一曲。確かに、晩年のCharlie HadenとPieranunziのデュオ作品も聴いてみたかったなぁ、と思いを巡らせたりも。トータルタイム48分46秒という理想的なアルバムサイズの中に、今のPieranunziの美学が凝縮された、これからの季節に必携の奇跡的な一枚だと言っても大げさではないかもしれないですよ。


文:平井康二




【I Piccoli Live di Auditorium TV - Enrico Pieranunzi & Federico Casagrande "Let's make it strange"】







Recommend Disc

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Title : 「Double Circle」
Artist : Enrico Pieranunzi, Federico Casagrande
LABEL : Cam Jazz(CAMJ 7885)
RELEASE : 2015.5.20

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【MEMBER】
Enrico Pieranunzi (p)
Federico Casagrande (g)

【SONG LIST】
01. Anne Blomster Sang
02. Periph
03. Sector 1
04. Clear
05. Dangerous Paths
06. Within The House Of Night
07. No-nonsense
08. Beija Flo
09. Disclosure
10. Sector 2
11. Charlie Haden


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1




Reviewer information

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


logo2015.ai.jpg

cafeイカニカ

●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
お店の情報はこちら

bar bossa vol.46:bar bossa

bar bossa


vol.46 - お客様:田村示音さん(the sleeping beauty)


【非音大出身者のためのクラシック】





いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はthe sleeping beautyの田村示音さんをゲストに迎えました。


林;こんばんは。お飲み物はどうしましょうか?

田村;赤ワインをグラスでお願いします。初夏の夜にお勧めなものはありますか?

林;初夏にあう赤ワインですか。でしたらアルザスのピノ・ノワールなんてどうでしょうか? チャーミングで良いですよ。

田村;お願いします。

林;早速ですが、お生まれは?

田村;生まれたのは1965年、場所は四国の松山です。といっても、2才の時に千葉に引っ越したので、残念ながら松山の記憶は思い出せません。でも母がよく「千葉は田舎だ。文化が無い。松山では...」とぼやいていたので、いつか再訪してみたいと思ってます。

林;四国だったんですね。小さい頃の音楽のことを教えていただけますか?

田村;小学4年までは親の務める会社の社宅に住んでいました。いわゆる団地街で、あるブロックは三井化学、あるブロックは住友化学の社宅と、住んでいる場所で会社がわかるという、いま考えると不思議な環境ですね。小学1年の時、階段を挟んだ隣に住んでいるお姉さんがエレクトーンを習っていて、親に自分も習いたいと言い張ったそうです。エレクトーンには地区大会などもあり、しばらくは熱心に弾いていた記憶がありますが、小学4年の時に引っ越すことになったのと、級を上げるために高い機種への買い換えを薦める様子に違和感をおぼえて、止めてしまいました。

林;なるほど。

田村;小学生時代の音楽環境といえば、家がキリスト教だったので、日曜日に賛美歌を歌う経験は大きかったですね。賛美歌って、事前に習ってから歌うのではなく、その場で周りに合わせて歌わなければならないことが多いので、初めての曲の場合は「タラララ・ラララー」と歌ったら、次は「タラ・ラーララー」かな?などと、次のフレーズを予想しながら歌う癖がついてきて、自然と即興でメロディや曲の構成を思い浮かべる訓練になっていた気がします。もちろん、予想が外れて見当違いなメロディーで声をあげて恥ずかしい思いをすることも、しょっちゅうでしたが(笑)

林;讃美歌体験って大きいという話は色んな人からよく伺います。中学になるとどうでしたか?

田村;中学進級時、家族で秋葉原に行ってターンテーブル、チューナー、カセット・デッキが揃ったシステムを買ってもらったのですが、はじめて自分のお金で買ったレコードは「STAR WARS」のサウンド・トラック盤という、普通の中学男子でしたね。当時は、中1の間は月1,000円、中2で2,000円とお小遣いも少なく、アルバムはなかなか買えなかったので、ラジオや、それを録音したカセット・テープが音楽生活の中心でした。

林;エアー・チェックですよね。

田村;特によく覚えているのが、小林克也さんがDJをしていた「ライブ・フロム・ザ・ボトムライン」という番組で、ホール・アンド・オーツの「サラ・スマイル」に痺れた記憶があります。そのサウンドは今でも頭に浮かぶくらい最高な演奏で、ライブ音源があったら手に入れたいくらいですね。

林;お持ちの方、いらっしゃいましたら、JJazzさんの方にご連絡を!

田村;同じくFM東京に、1日2、3曲、1週間でアルバム全曲がかかるという番組もあったのですが、そこで録音してはまったのが大貫妙子さんの「Cliché」でした。高校時代になると、少しは小遣いも増えてアルバムも買えるようになったので、「SIGNIFIE」以降はリアルタイム、それ以前のアルバムは遡って購入していきました。

林;大貫妙子って示音さんの世代にはすごく大きい存在みたいですね。

田村;小学4年の時にエレクトーンを止めてから、音楽の授業以外に楽器を演奏することは無くなったのですが、大学に入って突然にクラシック・ピアノの愛好会に入りました。そこには親切な先輩がいて、初歩から指導してくれたんですね。サークルでは年2回の演奏会があって、そこで弾く曲を決めて練習していくのだけど、さすがに「エリーゼのために」を大学生の演奏会で弾くのもちょっとなぁ、ということで、エリック・サティの「ジムノペティ」、「グノシエンヌ」、「彼の鼻眼鏡」、ドビュッシーの「小さな羊飼い」、「雪の上の足跡」など、「音数が少なくて、弾けそうな曲」を探して弾くようになりました。そうした演奏会で自作の曲も混ぜて弾くようになったのが、いまの the sleeping beauty の萌芽になっています。

林;「音数が少なくて、弾けそうな曲」ですか...。なるほど。

田村;クラシック以外では「イギリス音楽の時代」がしばらく続きました。ケイト・ブッシュ、XTCといったメジャー・レーベルのアーティストだけでなく、 シェリアン・オルファン、ペイル・セインツ、コクトー・ツインズなどの4AD、ドゥルッティ・コラムのファクトリー、チェリー・レッド、エルなどインディペンデント・レーベルから面白い音楽がいっぱい出てきて、飽きませんでした。ベルギーのクレプスキュール、フランスのサラヴァなどもあったから、イギリスの時代というよりインディ・レーベルの時代だったと言った方がいいかな?

林;ああ、懐かしいです...。さて、みんなに聞いているのですが、これから音楽業界はどうなると思いますか?

田村;レコードやCDを作って食べていく、という産業が縮小しているのは事実でしょう。ただ、飲食業界でも、景気が良く地価が高騰している時代は大資本やチェーン店でなければ出店できない場所で、家賃が下がってくると個人経営で面白いお店がぽつぽつと増えてくる、ということがありますよね。音楽業界も、録音、プロモーションに大金が必要な時代は大手のレコード会社に圧えられていたところ、独立系レーベルや自主制作でもおなじ土俵に立って作品を発表できるようになったというのは、悪いことではないと思います。

林;ポジティブで良いですねえ。

田村;最近の若者はYouTubeを観るばかりでアルバムを買わないと言われますが、僕も学生時代はラジオ、貸レコードやカセット・テープ中心の生活だったので、彼らを非難する気にはなれません。いいものにお金を払うというのは、大人の責任ですよね。きちんと音響設計された空間やスタジオで、経験豊かな匠によって録音、ミックス、マスタリングされた作品を買って、じっくりと聴く。ライブに出かけて、言葉にならない感動を覚える。そんな「時間」、「体験」の素晴らしさを伝える努力をしていけば、「もの」を買うことへの興味が薄いといわれる世代にも、「かけがえのない体験には対価を払っても良い」という気持ちを育てていくことができるのではないでしょうか?

林;「いいものにお金を払うというのは、大人の責任」これは、もう本当にその通りです! 今後のご予定は?

田村;具体的な予定はないけれど、生きている限り「この感じを記録しておきたい」、「形にして共有すれば、何か感じてもらえるかもしれない」という瞬間はなくならないと思います。それが音楽作品という形になるのか、ライブ演奏という形になるのかは不明ですが、どこかで出会ったら、聴く時間を持っていただけるとうれしいです。

林;みなさん、the sleeping beautyに、出会ってくださいね。それでは、みんなが待っているらしい選曲に移りましょうか。テーマを教えて下さい。

田村;「非音大出身者のためのクラシック」というテーマはいかがでしょうか? 僕自身が「非音大出身」なので、正規の教育を受けてきた方には「何を言ってるんだか」と呆れられる内容だと思いますが、「ジャズやボサノバはよく聴くけれど、クラシックはあんまり」という方には楽しんでもらえるかもしれません。

林;面白いテーマです。では1曲目は?


01. Arthur Honegger: Romance

田村;オネゲルは、エリック・サティに続く「フランス6人組」の一人です。『パシフィック231』という蒸気機関車の動きを思わせる曲など、迫力のある作品も多い作曲家ですが、このフルートのための「ロマンス」という3分足らずの小曲は本当に愛らしくて、大好きです。旋律の動き、転調の仕方が、ちょっと大貫妙子っぽいですよね?

林;オネゲル、僕は『パシフィック231』のイメージしかなくて、こんなロマンティックな曲があるんですね。確かに大貫妙子的です。


02. Darius Milhaud: La Cheminée du Roi René, Op.205

田村;同じくフランス6人組を代表する作曲家、ダリウス・ミヨーの木管5重奏作品です。ジャン・コクトーがサティ、6人組を擁護したアフォリズム集『雄鶏とアルルカン』の中に書いた「その中で泳げる音楽でも、その上で踊れる音楽でもない。その上を歩ける音楽を」(佐藤朔訳)という言葉の通り、簡素で明晰ながら、はぐらかし、ひねりといったユーモアに溢れていて、聴いている間ずっとニヤニヤしてしまいます。その点では、ジョアン・ドナートの「かえるの歌(O sapo)」みたいですね。『雄鶏とアルルカン』が収められたジャン・コクトー『エリック・サティ』(深夜叢書)は、小さいけれど装幀、用紙の選択など細部まで気が配られていて、手にするたびに「紙の本って、いいなぁ」と思わせてくれる一冊なので、古本屋などで見かけたら手にとってみることをお勧めします。

ジャン・コクトー『エリック・サティ』(深夜叢書)(BOOKS+kotobanoie)

林;示音さんの博識さがたまんないです。今、これを見た文科系女子がキューンと来てますよ(笑)。

田村;いやいや、博識なのではなくて、偶然に良い本や音源に出会う運に恵まれているだけだと思います。


03. Claud Debussy: Sonate en fa majeur pour flûte, alto et harpe

田村;コクトーの『雄鶏とアルルカン』では、「ペダルがリトムを溶かし、近視眼的な耳にお誂え向きの、ぼうっとした一種の気候を作り出している」などと批判されているドビュッシーですが、晩年に作曲された「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」は、少しも「ぼうっと」していません。この作品が到達した自由さ、純粋さは、後にも先にも他に類を見ないレベルだと思います。各楽器のフレーズが別のフレーズを触発する感じは、ビル・エヴァンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンのトリオなど、最上級のジャズ・ミュージシャンによるインタープレイを思わせます。ドビュッシーは、耳を澄まして、遠くに聴こえる旋律を手繰り寄せる天才ですね。

林;「ドビュッシーは、耳を澄まして、遠くに聴こえる旋律を手繰り寄せる天才」という言葉にくらくら来てます。


04. Gabriel Faure: Piano Quintet No.1

田村;作曲されたのは1903年から1906年と、先ほどのドビュッシーのソナタより約10年前の作品です。ベルトラン・タヴェルニエ監督の映画『田舎の日曜日』に使われた「ピアノ五重奏曲第2番」もいいですが、この「第1番」の2楽章は、「美しい音楽の定義は?」と問われたら「これです」と差し出したい作品です。旋律、和声ともとても美しいのだけど、その美しさに酔わず、ためらいや儚さを感じさせるからでしょうか。このビデオ、ノイズ混じりで、画像も乱れる所もあるけれど、いい演奏なので我慢してみて下さい。

林;フォーレ、僕そんなには聞いていないのですが、ピアノ五重奏曲良いですよね。「その美しさに酔わず」という個所、本当にわかります。


05. J.S. Bach - Canons

田村;時代がフォーレから飛びますが、バッハです。このカノン、追っかけ合うフレーズの単位がとても短く、ほとんどミニマル・ミュージックみたいに聴こえますよね。作品のBWVを見ると1072から1078と、BWV1079の「音楽の捧げもの」の直前にあたります。「音楽の捧げもの」も実はアバンギャルドな曲ですが、ここに並んだカノンには遊びが感じられ、音の重なりによるモワレ効果といった音響的な実験も楽しんでいたのでは?とさえ思わされます。

林;ほんとミニマル・ミュージックそのものですね。「バッハが全部やりつくしてた」とよく言われますが、ほんと、そうなんですね。


06. Terry Riley: In C Mali by Africa Express

田村;ミニマル・ミュージックといえば、フィリップ・グラス、テリー・ライリー、スティーブ・ライヒが有名ですね。個人的に一番良く聴くのはスティーブ・ライヒなのですが、このアフリカの音楽家によるテリー・ライリー「In C」は、映像、音ともに最高で、40分間、どっぷりと楽しめます。昔、トーキング・ヘッズの「ストップ・メイキング・センス」、ローリー・アンダーソンの「0 & 1(Home of the Brave)」など、ライブ映像を収めた映画を映画館で観る、ということがありましたが、これは、そうやって映画館の大画面、音響設備で観てみたい作品です。

林;うわ、こんな映像があるんですね。めちゃくちゃカッコいいです。確かにこれは映画館の大画面で観ると、みんなでトリップ出来ますね。


07: Kate Moore: Dances & Canons by Saskia Lankhoorn

田村;映画といえば、これはたった3分半の「アルバム宣伝ビデオ」なのだろうけど、初めて観た時に映画を1本観たような感触が残りました。ケイト・ムーアは1979年生まれのオーストラリア人作曲家です。アルバムのライナーノートでは、「自分はミニマリストだと考えていますか?」という問いに対して、「ミニマリズムって、私にとっては、特定の時代と場所で特定のグループに属した人たちを指し示す言葉だわ。私は数世代後の人間なので。調性があり、繰り返しパターンを使っているという意味で共通点はあるかもしれないけれど、その点にこだわっている訳ではないの。ミニマリストが、時間経過によるプロセスを構築するためにパターンを使うのに対し、私は求める色、形、場を生み出すために使っているだけ」と語っています。

林;アルバムの宣伝ビデオなのに、このテンション。ECMってやっぱりすごいですね。


08: Laura Mvula: NPR Music Tiny Desk Concert

田村;これはいわゆる「クラシック」ではありませんが、紹介させてください。ローラ・マヴーラ本人はバーミンガム音楽院卒、妹さんがヴァイオリン、弟さんがチェロを弾いているので、音楽一家ですね。もう、和音の選び方、その流れと歌を聴いているだけで泣けてくるほど、素晴らしいです。

林;うわ、ほんとすごく泣けますね。なんでこんなに涙腺に訴えかけるんでしょう。


09: Sufjan Stevens: Holland

田村;2012年には現代音楽、ポピュラー音楽の垣根を超えて活躍する作曲家ニコ・ミューリー、ブルース・デスナーと「プラネタリウム」というコンサートを開いていたスフィアン・スティーヴンス。最新作の「Carrie & Lowell」も素晴らしいアルバムですが、僕が最も好きなのは、この曲と、クリスマス関連の曲を集めたボックス・セットに収録された「The Worst Christmas Ever!」の2曲です。世の中には、とても良く出来ているけれど聴く気がおきない曲と、拙さが残っていても聴かずにおれない曲があるのですが、その違いは「切実さ」の有無だと思っています。スフィアン・スティーヴンスに惹かれるのは、いつもヒリヒリするほどの切実さを感じるからかもしれません。

林;示音さんの「その違いは切実さの有無だと思っています」に1票を投じます! あらゆる表現行為についての完璧な言葉だと思います。


10: the sleeping beauty: prairie home suite part 1

田村;最後に、私達のアルバム『auguries』から。発売時に林さん達からいただいたコメント、雨と休日さんなどのお力添えもあり、多くの方に聴いていただくことができました。ありがとうございます。

http://www.madeleinerecords.com/artists/the-sleeping-beauty/auguries/(madeleine records)

林;示音さんの選曲を聴いた後にこれを聴くと心に沁みますね。

それでは示音さん、今回はお忙しいところ、どうもありがとうございました。the sleeping beautyの今後の活動、期待しております。


そろそろ日本は梅雨の時期ですね。鬱陶しい季節ですが、この雨をこの列島の緑は待ちわびているんですよね。雨の季節にあわせて、示音さんの音楽、聞いてみて下さい。

それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林伸次


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■タイトル:『auguries』
■アーティスト:the sleeping beauty
■発売日:2008年11月17日
■レーベル: Madeleine Records
■製品番号:MARE-008

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[収録曲]

1. prairie home suite - part 1
2. prairie home suite - part 2
3. prairie home suite - part 3
4. prairie home suite - part 4
5. clock
6. á la musique
7. till it comes
8. in the park


ピアノの響きが空気に漂い、声、アコーディオンとサックスが流れを起こす。春や秋の訪れを知らせる、柔らかい空気。霧雨の向こうから聴こえてくる鳥や虫たちの声。遠くで遊んでいる子どもたち。そんな、日常のささやかな存在に気付かせてくれる音楽。「エコール・ド・坂本龍一」入賞後、カフェ、ギャラリー、美術館等で演奏を続けてきたthe sleeping beauty。2008年春、森岡書店にて行われた高木やよいの個展で限定発売され好評を博したCDを、susanna 等の仕事で知られるボブ・カッツがリマスタリング。NHK「世界美術館紀行」、NHK Hi Vision「岡本太郎~全身で過去と未来を表現した男~」などで使用され、ミュージアム・ショップを中心にロングセラーになった前作『liv』同様、日常生活の様々な場面で繊細な感覚を呼び覚ますBGM としてだけでなく、ソファに沈み込んで聴く喜びも味わえるアルバムに仕上がっている。

●madeleine records web
http://www.madeleinerecords.com/

●the sleeping beauty facebook
https://www.facebook.com/pages/the-sleeping-beauty/230264537768


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bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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