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2024年1月アーカイブ

Slawek Jaskulke インタビュー [インタビュアー黒沢綾]:インタビュー / INTERVIEW

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ポーランドの代表格ピアニスト、スワヴェク・ヤスクウケ。
2017年の「THE PIANO ERA 2017」以来6年ぶりとなる来日公演を、昨年5月に行いました。
めぐろパーシモンホール大ホール「POLISH PIANISM Concert」を皮切りに
金沢(白鷺美術)、奈良(listude)、神戸(100BANホール)、岡山(蔭凉寺)、米子(米子新生教会)と、各地で大きな反響を呼びました。


そのツアーの中から、5/18に岡山の蔭凉寺で行ったライヴがこのたびCD化。
エネルギーに満ちた空間を創り出す彼、導き出された音楽。
まばらに滴る小雨のなか、観客を集中・没頭させた特別な時間です。


来日時に応じていただいたインタビューでは
「ピアノと向き合っているのではなく自分と向き合っている」
という彼の言葉がとても印象的でした。


番組でオンエアしきれなかったインタビューと、彼に選んでもらった夜に合うアルバムをこの機会にまとめましたのでどうぞお楽しみください。


[Interview:黒沢綾]
[取材協力:ポーランド広報文化センター]
[通訳:杉浦 綾 (ポーランド広報文化センター)]


スワヴェク・ヤスクウケ インタビュー


■久しぶりの来日ですね。まずは率直な感想を聞かせてください。


[スワヴェク・ヤスクウケ]
ただ興奮してしています。パンデミックのせいでしばらく日本に来ることができなかったからね。
日本はどこか自分に合う雰囲気を感じているので恋しかったんだよ。


■今回は全国 6 ヶ所を回る⽇本ツアーです。
アップライトピアノやセミグランドピアノなど、会場によってピアノが違います。いつもはじめてピアノに向き合う時に⼤切にしていることは?


[スワヴェク・ヤスクウケ]
ポーランド国内で演奏をする時は、常に自分のピアノを持ち歩いているので問題はないのですが、国外や今回のように会場によってピアノが異なるときは、できるだけニュートラルにピアノと向き合うようにしています。
ピアノの状態や年数は様々だけど、できるだけその場にあるピアノに注文を付けないようにしているよ。そのピアノに自分が合わせるんだ。ピアノはあくまでも道具であって、伝えたいことは自分の中にあるものだから。どんなピアノであってもそれが伝えられると確信しているんだ。


■本当にその通りだと思います。
ではピアノのチューニングに関してお聞きしたいのですが、通常は440Hz~442Hzで調律されるものですが、『Senne(夢の中へ)』は432Hz、『Music on canvas』はさらに低い428Hz(!)に調律されたピアノですよね。


[スワヴェク・ヤスクウケ]
私が音楽を作るときのテーマのひとつが『音色を暗くすること』。
まず『Senne(夢の中へ)』の432Hzは、一説によるとマジックナンバーとも言われていたりもするそうだね。私は、調律を低くすることによってより親しみやすいトーンになる気がしたんだ。
『Music on canvas』はラファウ・ブイノフスキの絵画にインスパイアされたから、彼の作品にできるだけ近づけたかったしね。彼の絵画はトーンの低い色で描かれているので、音楽の温度も低くしたかった。本当は415Hzまで最大限低くしたかったんだけど、やってみたらピアノの響きがなくなってしまって、、、少しづつ戻しながらその妥協点を探ったよ。その結果428Hzに落ち着いた。
決してネガティブな意味ではなく、シックで深みのある音を追及して辿り着いたのが、428Hzだったんだ。


その時に演奏していたピアノは普通のピアノではなくて、弦がストレートなピアノで、、、日本だとなんていうのかな?
スウェーデンで作られた世界に3台しかない珍しいピアノ。そのうち、きちんと演奏できるものが1台、たまたまポーランドにあるんだ。専用というわけではないけれど『Music on canvas』を演奏する時には特別に使わせてもらってる。
そのピアノの特徴は、低音の響きが普通のピアノに比べて広がること。それが気に入ってところだよ。


■なるほど。そのようなピアノを使用しているからなのか、弦楽器のような響きを感じました。ピアノは鍵盤楽器でありながら弦楽器なのだと改めて思いました。まるでコントラバスみたいな響きだなと感じたんです。


[スワヴェク・ヤスクウケ]
そこまで感じてもらえて嬉しいよ。まさしくそういう楽器なんだ。構造上、普通のピアノより低音の弦が長くなっているから、コントラバスみたいな響きが聞こえたのだろうね。私自身もそういうサウンドを狙っていたから、そのように感じてもらえたことは嬉しいよ!


■弦がストレートなピアノを調べていただきました。マルムシュー社のピアノですね。マットな質感で、レトロな雰囲気を醸し出していますよね?


[スワヴェク・ヤスクウケ]
『Music on canvas』はブイノフスキの作品に近づけられるよう音色にこだわったよ。まず、そのマルムシューのピアノ、そして録音に関して言うとマイクはアナログで、テープに収録。スタジオも音をありのまま録れるところを選んだりね。


■ありのまま、ですね。鍵盤をタッチする音、息づかい、ホワイトノイズ、など様々な環境音を含めた音像が印象的な作品が多いですよね。


[スワヴェク・ヤスクウケ]
若いころは全く別の音楽をやっていたんだ。ロックとかね。でも人生のステージや生活が変わっていくにつれて、自身の音楽も変わっていったかな。
私にとって大切なことは、普段なら何気ない日常の音ひとつにクローズアップすること。たとえば子供の声、鳥の声。ノイズとしてキャンセルせず大切に拾い上げているよ。
今進めている新しいプロジェクトについて紹介することになるけど、次の作品も自然とともに録音しようかと。テーマは『雨と森と川』といったところかな。
長いこと構想を練っているんだけど、3部構成で考えていて、全体で2.5~3時間くらいの作品になるかもしれない。長い作品になるけれど、まるで雨の中に、まるで森の中にいるような、そんな作品にしたいと思っているよ。
CD収録の際には短くすることはあるかもしれないけど、Spotifyなどのプレイリストでは長編でリリースしようと考えているよ。


■雨と森と川ですか。日本はいま、気候や自然を楽しむにはもってこいの季節です。ヒントがあると良いですね。


[スワヴェク・ヤスクウケ]
そうだね。レコーダーを持参したから、日本の自然の音も録音しようと思っているよ。気に入った音があれば次のアルバムに入るかもしれないね。


■それは楽しみです!それでは最後に、あなたが思う『夜に合うアルバム』を教えていただけますか?


[スワヴェク・ヤスクウケ]
Piotr Orzechowski(ピョートル・オジェホフスキ) というポーランドのピアニストがいます。彼は才能あふれる若手アーティスト。
必ずしも夜に合う作品ばかりではないですが、彼の作品群はとてもおすすめです。
 
Piotr Orzechowski - PIANO HOOLIGAN


 
他には、同じくポーランドのピアニスト、ハニャ・ラニ。
私の場合は即興演奏がメインですが、彼女はほとんど即興はやっていない。クラシカルな彼女の作曲作品は夜にぴったりかもしれませんね。




そして、日本ではあまり知られてないかもしれませんが、Kamil Piotrowicz(カミル・ピオトロヴィチ)というピアニスト。
彼の作品はとても味わい深いので是非ご紹介したいです。




■貴重なお話を、どうもありがとうございました!Dziękuję bardzo!


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ALBUM情報

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タイトル:『蔭凉寺ライヴ』
アーティスト:Sławek Jaskułke
発売日:2024年1月24日
レーベル: CORE PORT
製品番号:RPOZ-10091



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】
01.Kintsugi 
02.Music on canvas II
03.Flying Flowers
04.Music on canvas I
05.Sea 
06.夕暮れ
07.East & Easy




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スワヴェク・ヤスクウケ(Sławek Jaskułke)プロフィール

ポーランドを代表するピアニスト/作曲家。1979 年、バルト海沿岸でポーランド最北部の街プツク生まれ。ジャズのスタイルとポスト・クラシカル、モダン・コンポジション・シーンにまたがる才能溢れるアーティストとして評価され、ポーランドの文化・国家遺産省から「ポーランド文化功労者」の名誉勲章も授与されている。グランドピアノ、アップライトピアノをその表現方法によって効果的に選びソロ演奏する。ピアノの機能を知り尽くしたその演奏スタイルはモジュレイターのセット、フェルトの使用、調律の調整他で自在に独特のアンビエントな音響世界を作り上げる。ジャズではハービー・ハンコック、マッコイ・タイナー、クラシックではバルトーク、ヒンデミット、ラフマニノフ他に影響を受けているがヒップホップやエレクトロニカ、ポストロック等からも影響を受け、ポーランドの若者に大人気だったパンク・ジャズ・ユニット「ピンク・フロイト」にも活動の初期は参加していた。また、映画音楽での活動やモダン・クラシカルの仕事にも関わっている。2002年の初リーダー作以来、共演を含め既に13枚のアルバムをリリースしている。自身が住んでいるバルト海沿岸ソポトの海をテーマにした『Sea』、眠る時の音楽を聴きたいという娘からのリクエストに応えた『夢の中へ (SENNE)』、ポーランド・ジャズ史上最高の作曲家/映画音楽家クシシュトフ・コメダの作品を再構築した『コメダ RECOMPOSED』、ソポト・ミュージアムの野外庭園で鳥の鳴き声などと共に演奏した『パーク・ライヴ (Park Live)』、ポーランド現代美術シーンの先端を走るラファウ・ブイノフスキのペインティング画とコラボレイトした『ミュージック・オン・キャンバス (Music on canvas)』他名作を数多くリリースしている。新作はワルシャワ名門ライヴ・ハウスでのソロ・ライヴ『ライヴ・アット・ジャスミン (live at Jassmne)』。
https://jaskulke.com/


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黒沢綾 (Singer,Pianist) プロフィール

幼少よりクラシックピアノ、作曲、クラシック声楽を学ぶ。尚美学園大学JAZZ&POPSコースに入学後、自然な流れでジャズに傾倒。在学中よりプロとして活動をスタート。同コースを首席で卒業。以降、都内近郊でジャズシンガーとして着実にキャリアを重ねながらオリジナル曲を制作。2009年アルバム『うららか』、2013年『Twill』をリリース。ソングライターとして確かな実績を持つ。また上田力率いる【Jobim my Love】プロジェクトに10年以上ヴォイスアーティストとして参加。南米音楽への造詣を深める。ジャズの形式を用いた自由な音楽性、歓びに満ちたサウンドスケープをモットーとする。透明感あるクリスタルヴォイス、また楽器としての声による即興的なアプローチを得意とすることからヴォイス・プレイヤーとしてジャズ・コンテンポラリー作品に参加。参加作品は、栗林すみれ『Pieces of Color』、千葉史絵『Beautiful Days』、岸淑香『feat.手』等。またparis matchのコーラスを2011年から務め、Billboard Live TOKYOをはじめコンサートやツアーに参加。相撲と着物とジャズをこよなく愛す和洋折衷シンガー。
現在、インターネットラジオ・ステーションJJazz.Netの番組ナビゲーターをつとめる。
https://ayakurosawa.me/

My First Jazz Vol.70-中林薫平:My First Jazz

Title : 『Basie Big Band』
Artist : Count Basie Orchestra

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ジャズベーシストの中林薫平です。
私の初めてのジャズ・アルバムは、Count Basie Orchestraの『Basie Big Band』というアルバムです。


中学生当時ブラスアンサンブル部に入っていました。その部活はジャズのビッグバンドを演奏するという珍しい部活で、一つ上の学年には現在N.Y.で活躍されているトランぺッター・黒田卓也さんがいました。昔から黒田さんは面倒見がよくて、後輩である僕に色々と指南してくださったり、「これを聴いて」「こういうのもあるよ」などと沢山CDを貸してくださった記憶があります。
その中の一枚がこのアルバムです。


当時ビッグバンドを演奏していたこともあって、このアルバムに収録されている「The Heat's On」という曲を聴いた瞬間「これはすごいな、かっこいいな」と思いました。その時まではジャズも聴いたことなかったし、さらにはベースという楽器が何なのかもよく理解していない時にこのCDに出会って衝撃を受けたのを覚えています。


このアルバムは、Sammy Nesticoという人がアレンジをされていて、それがまた素晴らしくて。3分ないくらいの曲にもストーリー性のある素晴らしいアレンジがギュッと詰まっています。


最近、自分のバンド中林薫平オーケストラをやっています。そこで、そういったアレンジの精神や技法を取り入れ、大いに参考にさせていただいています。
ジャズを聴いたことがない方やビッグバンドをあまり知らない方、カウントベイシー聴いたことない方にも、お薦めできるアルバムです。
実は最近レコードにハマっているのですが、このアルバムをレコードで買い直して聴いてみたところやはりいいなぁと思いました!


中林薫平






My First Jazz

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Title : 『Basie Big Band』
Artist : Count Basie Orchestra
LABEL : Pablo
発売年 : 1975年



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【SONG LIST】
01.Front Burner
02.Freckle Face
03.Orange Sherbet
04.Soft As Velvet
05.The Heat's On
06.Midnight Freight
07.Give 'M Time
08.The Wind Machine
09.Tall Cotton




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日本のトッププレイヤーが集結するドリームチーム!!中林薫平オーケストラのライヴ盤!!


黒田卓也、広瀬未来、西口明宏、宮川純、、、シーンの先頭を走るトッププレイヤー10人で編成される"中林薫平オーケストラ"が、東京・丸の内の〈COTTON CLUB〉で行ったライヴの記録。
サルサ、ショーロ、チャカレラなど、ベーシックなリズムから発想・展開していく独特の音楽構成が生み出す個性的なサウンドが、生々しくパッケージ。
客席を大いに沸かせた腕利きミュージシャンたちのエキサイティングなプレイ楽しめる作品。










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中林薫平
1981年生まれ。高校入学と同時に甲南高校ブラスアンサンブル部に入部し、ウッドベースを始める。2005年に活動の拠点を東京に移す。山口真文バンド、佐山雅弘トリオ、鈴木勲「OMA SOUND」、市原ひかりGroup、古谷淳トリオ、清水絵理子トリオ、「Megapteras 」等でプレイする。
2008年に自己のカルテットを結成し、ミニアルバム「Graffiti」をリリース。2012年には全てオリジナル曲によるセカンドアルバム「The Times」をリリース。2012Jazz page人気投票においてベストインストアルバム部門で1位を獲得。同時に同サイト上で2012ジャズマンオブザイヤーを獲得する。
2022年10人編成の中林薫平オーケストラを立ち上げ、アルバム「circles」をリリース。2023年には中林薫平オーケストラ2ndアルバム「Live at COTTON CLUB」をリリース。
ジャズだけでなくポップスのサポート、海外からのミュージシャンのサポート、国内外の音楽イベントやジャズフェスティバルへの出演、劇団とのコラボレーションなど活動は多岐にわたる。




Latest Album

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Title ︓『Live at"COTTON CLUB』
Artist : 中林薫平オーケストラ
LABEL : Days of Delight
RELEASE : 2023.9.14



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】
01.Circulo
02.Evenfall
03.Daddy Duty
04.Passing
05.Choro for Charlie
06.Partagas
07.R.B.






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【KKBOX Podcast「My First Jazz」】
JJazz.Netとの連動によるオリジナルコンテンツ。
ジャズ・ミュージシャン本人の音声コメントをお届けしています。
KKBOX Podcast


KKBOX
500以上のメジャー・ローカル音楽レーベル様や権利者様と提携し、9,000万曲の楽曲を配信。
なかでも世界最大数を誇るC-POPを取り揃えているアジア大手の音楽聴き放題サービス。
2022年より日本でも音声コンテンツ/ポッドキャストの提供がスタート!


明けましておめでとうございます。マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。

来月2/3と2/4に、恒例の「Mao Sone Plays Latin Jazz」公演が恵比寿Blue Note Placeであります。ぜひお越しください!
また4/12と4/13には福岡でソロ公演もあります。福岡の読者の皆様、お待ちしております!  
詳しくはウェブサイトのスケジュールを見てください。


さて、今日はCharlie Hadenの1989年のアルバム『Silence』をご紹介します。


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Title : 『Silence』
Artist : Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins



レコーディングは1987年で、このアルバムにおいてゲスト的存在のChet Bakerが亡くなる6ヶ月前の演奏が収録されている、ということでも有名です。


メンバーはベーシストCharlie Hadenがリーダーとして、またはバンドのサウンドの中心的存在として素晴らしい演奏を披露しています。

イタリアのピアニストEnrico Pieranuziの限定的な和音と美しい旋律、タッチでも印象的なアルバムであります。

名ドラマーBilly Higginsも参加しています。私は彼のことを名盤製造人間だと思っているのですが、今回も的確で非常に綺麗なシンバル・レガートが全体を通して聴くことができます。

そしてChet Baker。私の大好きなトランペッターです。即興演奏ではまるで元々書かれているかのように、美しくもシンプルな旋律を組み立てる。そんな彼がゲスト的な立ち位置でアルバム全体に参加しています。

Hadenのベースはピッチが正確なのは言うまでもなく、音色に芯があり、この上ない美しい音色を奏でることができたジャズ・レジェンドの一人です。彼オンリーのユニークな音色だと思います。
Ornette Colemanとのフリージャズ演奏が最も有名かもしれません。Ornetteの一見ルールに縛られないように感じるフリージャズですが、実はその中には数多くの制約や、ユニークな作曲活動があってこその美があります。その根底を支えていたのがCharlie Hadenです。そのバンドでもバッテリーを組んでいたBilly Higginsとのコンビネーションがこのアルバムでも聴けるのは嬉しいですね。

またHadenはPat MethenyやMichael Breckerなどのフュージョン・サウンドとも相性が良く、数多くの名盤を残しています。
個人的にはBreckerのアルバム『Nearness of You』でもHadenの素晴らしさがキャプチャーされていると感じます。

この『Silence』はHaden1人が音色が美しい奏者というわけでではなく、参加している4人とも、楽器の音色をシンプルに美しく奏でることに長けたミュージシャンであると思います。
特にHigginsのシンバルワークは素晴らしく、彼の演奏動画を見るとその正確さと細やかなスティックの運びを見ることができます。
演奏内容は全然違うのですが、Charles Lloydととのデュオ動画は特に彼の特色を感じ取ることができるので、是非、番外編として見ていただけると嬉しいです。




さて、この『Silence』では最初の3曲(おそらくアナログのA面)が特に素晴らしく、各ミュージシャンの特色をよく捉えて、バラエティーに富んだ選曲。普段の演奏では聴けない参加ミュージシャンの一面を見ることができます。

1曲目の「Visa」はCharlie Pakerのビバップ曲。
しかしこのメンバーで演奏するとまるで違う、ウエスト・コースト・ジャズのようなサウンドで表現されています。
Chet Bakerのソロ中にはピアノが和音を伴奏してない時間が長く、まるでバリトンサックスのGerry MulliganとChet Bakerのカルテットでウエストコーストサウンドを築き上げた時代の演奏のように聞こえます。それに触発されたEnrico Pieranuziのソロ演奏も和音が少なくシンプルな中低音を使った旋律で表現されています。




2曲目の「Silent」はCharlie Hadenの有名なオリジナル・バラードです。この音色の美しい4人が奏でるのに相応しい曲と言えると思います。




3曲目の「Echi」はピアニストのEnrico Pieranuziのオリジナル曲。
このアルバムでは珍しくコンテンポラリーな作品になっています。ベースとピアノの左手で旋律のユニゾンがあったり、あまり古典的なジャズには見られない和音や構成です。
作品としてはこの同時期か少し後のTom Harrellのような雰囲気に近いかもしれません。こういったコンテンポラリーな作品をChetが吹くのは珍しい気がします。
Higginsのコンポジションの解釈も素晴らしくドラムセットで上手くオーケストレーションしています。スネアのサウンドもとても美しいです。




続く3曲はスタンダードで構成されており、「My Funny Valentine」ではChetの歌も収録されています。
「Conception」はGeorge Shearing の書いたいわゆるジャズの難曲の一つですが、このメンバーにかかると難しさは感じられずただひたすら美しく心地よい演奏になっています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Silence』
Artist : Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins
LABEL : Soul Note
発売年 : 1989年



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【SONG LIST】

01.Visa
02.Silence
03.Echi
04.My Funny Valentine
05.'Round About Midnight
06.Conception



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

守屋純子オーケストラ2024年定期公演/Tribute To Carla Bley and More...:ライブ情報 / LIVE INFO

ジャズの分野で最も権威のある米国セロニアス・モンク・コンペティション作曲部門で優勝。
輝かしい実績を持つピアニスト/作・編曲家の守屋純子。

自身がリーダーを務める「守屋純子オーケストラ」は毎年定期公演を行い
これまでに発表した9枚のリーダー作品の内、6枚がビッグバンド作品と
日本を代表するビッグバンドとして知られています。

教育活動にも熱心で、様々なジャズコンテストの審査員を務めるほか
全国で学生・社会人ビッグバンドの指導、また、米国・豪州・フランス・香港など、海外でも学生を指導しています。

そして今年も「守屋純子オーケストラ」が、渋谷さくらホールにて定期公演を開催!

今回のテーマは「Tribute To Carla Bley and More...」。
彼女が影響を受けたミュージシャンの一人で、昨年亡くなったピアニスト・Carla Bley
そして同年3月に亡くなった巨匠・Wayne Shorterの作品を再構築。
一夜限りの演目を聞かせてくれます。
日本を代表する素晴らしいミュージシャンが揃うこのオーケストラ、どうぞ体感してください!






 
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■守屋純子オーケストラ2024年定期公演/Tribute To Carla Bley and More...■


2023年10月17日、Carla Bleyが亡くなりました。私にとっては、作曲家・ピアニストとして最も影響を受けたミュージシャンの一人で、直接お話ししたこともあり、彼女の音楽制作に対する真摯な姿勢をいつも見習いたいと思ってきました。今回は彼女のOne & Onlyの世界を、私なりに再構築してお届けします。また、同年3月に亡くなった巨匠・Wayne Shorterの作品やスタンダード・オリジナルの新曲も演奏します。この公演でしか聴けない音に、どうぞご期待ください。
 守屋純子


【日時】
2024年2月16日(金)
18:15開場、19:00開演


【出演】
守屋純子(P,ARR)、安カ川大樹(B)、加納樹麻(DRS)、 岡部洋一(PERC)
近藤和彦(AS,SS,FL)、緑川英徳(AS)、岡崎正典(TS,CL)、吉本章紘(TS.FL)、Andy Wulf(BS)
佐野聡、東條あづさ、駒野逸美(TB)、山城純子(B-TB)
佐久間勲、Mike Zachernuk、奥村晶、岡崎好朗(TP)


【場所】
渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
(東京都渋谷区桜丘町23-21 渋谷駅より徒歩5分)


【チケット】
一般:4500円(税込)学生:2500円(税込)


e+(イープラス)
チケットぴあ
ローソンチケット


【HP販売について】
チケットは上記サイトでもお求めになれますが、最も良いお席は守屋純子HPより座席指定で御求めいただけます。
また学生券もこちらよりお申込み下さい。
守屋純子オーケストラ2024年定期公演・特設ページ


【問合せ】
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12-15時)



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【守屋純子】(ピアニスト/作・編曲家)
早稲田大学"ハイソサエティーオーケストラ"でジャズを始め、ニューヨークのマンハッタン音楽院修士課程修了。アメリカ・ヨーロッパ各地で演奏活動を行う。
2000年より、"守屋純子オーケストラ"が芸術文化振興基金の助成対象事業となり、毎年定期公演を行っている。2004年、自己のカルテットでインド公演。

2005年に CD"Points Of Departure"が、第18回ミュージック・ペンクラブ賞を受賞する。同年9月、ジャズでは最も権威のあるセロニアス・モンク・コンペティション作曲部門で、東洋人としてまた女性として初優勝の栄誉に輝き、ワシントンのケネディーセンターでの授賞式に招聘されて受賞曲を演奏し、日米で話題を呼ぶ。
2008年 9月、米"モンタレージャズフェスティバル"に自己のカルテットで出演、その後、サンフランシスコ・ロサンゼルスでも公演を行う。2008・09年フランス・ツアー。2014-16年、毎年オーストラリア・パースにてビッグバンド指導。2014年より2019年まで、7回にわたり、ロシア・サンクトペテルブルク、ウラジオストクで公演。

これまでに9枚のリーダーCD(内6枚はビッグバンド作品)を発表。2018年7月、安土桃山時代の画伯<長谷川等伯>を題材としたジャズ組曲を収録した最新ビッグバンド作<Art In Motion>を発表する。

教育活動にも熱心で、 "山野ビッグバンドコンテスト""浅草ジャズコンテスト""ヤマハエレクトーンコンクール"等の審査員や、全国の小中高生のためのビッグバンドの指導、講演なども行なっている。2013年以降は、米国・モンタレー、オーストラリア・パースなど、海外でも学生を指導している。昭和音楽大学・尚美学園大学非常勤講師。早稲田大学エクステンションセンター講師。


守屋純子オフィシャル・サイト

SUPER JAZZ NIGHT 2024年1月18日(木)@文京シビックホール:ライブ情報 / LIVE INFO

BS日テレ「今宵☆jazzyに!」などで音楽を担当するピアニスト、クリヤ・マコトを中心に、トップクラスの実力を備えたアーティスト達が結集するスペシャル公演!

クリヤさんのコメント
「確かなキャリアと実力を備えた名アーティストが結集し、本物の品格と高度なエンタテインメント性を兼ね備えた妙技を堪能いただけるよう、一同張り切っています。 全員の技術と個性を生かした飽きさせないロングステージは、たとえ開演に間に合わなくても尚お得!絶対後悔させない渾身のパフォーマンスをお届けするのでご期待ください!」

新年のスタートに相応しく華やかなステージを、どうぞお楽しみに!



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【SUPER JAZZ NIGHT】


BS日テレの異色歌謡番組「今宵☆jazzyに!」シリーズのバックバンドを務める素晴らしいメンバー。かねてより熱いリクエストが持ち上がっていた、このjazzyバンドをフィーチャーしたジャズコンサートがついに実現。
本邦ジャズシーンにおける問答無用のベテラン名プレイヤーが結集します!


【日時】
2024年1月18日(木)
開場17:30 / 開演18:30


【出演】
クリヤ・マコト(pf)
渡辺香津美(g)
寺井尚子(vn)
マリーン(vo)、
エリック・ミヤシロ(tp)
本田雅人(sax)
納浩一(b)
則竹裕之(ds)
安井源之新(perc)
MARU(vo)
KOTETSU(vo)
森口博子(mc/vo)


【場所】
文京シビックホール
東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター


【料金】
SS¥8500 / S¥7500 / 2F¥7000 / 学生¥5000(税込み全席指定)


【チケット】
チケットぴあ:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2339706
イープラス:https://eplus.jp/sf/detail/2737060003-P0030006P021001
ローチケ:https://l-tike.com/order/?gLcode=74724
CNプレイガイド:https://www.cnplayguide.com/evt/evtdtl.aspx?ecd=CNI27925


■協賛:セイコーグループ株式会社
■協力:公益社団法人日本観光振興協会
■主催:株式会社エフ・エー・ブイ

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【クリヤ・マコト】
米ウェストバージニア州立大学在学中から、10年あまり米東海岸でジャズ・ピアニストとして活躍。学生時代に活動を共にした黒人ミュージシャンたちから、アメリカ最貧地域に根付くディープなジャズスピリットを学んだ。そのプレイが徐々に評判を呼び、ついにグラミー受賞者チャック・マンジョーネのツアーに参加。これ以来、数多くのジャズの巨匠たちと共演を重ねた。
帰国後にリーダー活動を開始し、現在までに20枚以上のリーダー作をリリース。納浩一、則竹裕之とソニーレコードからリリースした「アコースティック・ウェザー・リポート」シリーズは、最先端の無修正DSDレコーディングを行いインストゥルメンタル・ジャズ作品として異例のヒットを記録した。2024年には安井源之新と結成したスーパー・コンテンポラリー・クロスオーバー・ユニットRHYTHMATRIXで、日本やブラジルからのゲストを迎えた最新作をリリース。
たびたび欧州ツアーを行い、ブラジル・ツアー、オーストラリア・ツアー、モロッコ公演、エジプト公演、インド公演、インドネシア公演、台湾公演も成功させるなど、ワールドワイドに活動を展開する。時にジャズメンという枠に収まらぬ多才ぶりを発揮し、平井堅、八代亜紀などポップスの作・編曲家、プロデュサー、映画音楽監督としても活躍。BS-TBS「報道1930」、BS日テレ「今宵☆jazzyに!」などで音楽を担当。「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズのピアニストの一人としても知られる。
https://makotokuriya.com/

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