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bar bossa vol.75

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vol.75 - お客様:太田美帆さん(cantus)

【テーマ:参加した思い出曲と、沢山の人に聞いて欲しい現代の音楽家の曲】


いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はcantusの太田美帆さんをお迎えしました。


林;こんばんは。お飲物はどうされますか?


太田;ご飯は済ませてきたので、食後酒が飲みたいです。ボンボンさんのガトーショコラに合うのがいい。


林;でしたら、シャンパーニュ地方のフィーヌなんてどうでしょうか?


太田;それをお願いします。


林;では、こちらどうぞ。お生まれは東京ですよね。


太田;1978年広尾の日赤病院で生まれました。


林;小さい頃から音楽と関わってたんですよね。


太田;歌うことが好きだったので、母親に合唱団を探してもらって、小学校2年生の時に、東京少年少女合唱隊に入隊しました。
代々木上原に住んでいたので、スタジオのある新大久保へは新宿から乗り換え1回で行けました。親は単純にアクセス的に子供が一人で通えるということで選んだと思うんだけど、東京少年少女合唱隊は「プエリ・カントレス」(カトリック系世界児童合唱連盟)の日本支部で、ルネッセンスの楽曲を主なレパートリーとする合唱隊でした。そこで宗教音楽とラテン語の洗礼を浴びました。合唱隊は宗派問わず学校もバラバラの小学生が「歌いたい」という気持ちだけで繋がっている特別な空間。教会旋法の響きは子供ながらにエモくて、すっかりハマってしまいました。


林;なるほど、そうだったんですね。初めて買ったCDって何でしたか?


太田;高校までは合唱隊が忙しく、音楽は聴くものではなく「やるもの」だったんです。だからCDを買って音楽を聴くという行為に目覚めたのは高校になってから。
多分初めて買ったCDは下北のディスクユニオンで買ったドアーズの『The DOORS』。「The end」という曲が好きでした。周りはエアロスミスとかボン・ジョヴィとか聞いてたんだけどしっくりこなくてドアーズに行き着きました。


林;うーん、最初がドアーズですか。なんか都心の女の子って感じですねえ。合唱、どうでしたか?


太田;とにかく合唱隊が忙しかったです。先生には「習い事だと思うな。これは仕事です」と言われていたので子供なりにプライドを持ってやっていたつもり。そういう意味では合唱隊の子供たちは態度が大きくて、現場では鼻持ちならない存在だったと思います。合唱隊、学校、サントリーホール、スタジオの往復。学校には友達がいませんでした。クラスに好きな男の子がいたのだけが救いでした。


林;そんなに... そのまま中学高校と続いた感じでしょうか?


太田;中学時代はまだ合唱隊が忙しかったです。高校時代はクラブでハウスを浴びてました。主なテリトリーは表参道のMIX。愛車のBMXで弟とナイトクルージングしてました。好きな雑誌はスタジオボイス。


林;おお、らしくなってきましたねえ。その後は?


太田;高3の時、合唱隊時代の親友とSUS4という女子2人ユニットでメジャーデビューして芸能活動スタートしました。キャッチコピーは「チャペルから飛び出した少女達」(笑)。全く売れませんでした。でも二人で歌ってるだけで十分楽しかった。
22歳でSUS4は解散して私はソロアルバムをリリース。アレンジは全て音楽家の林正樹君にお願いしました。しかし残念ながら私の力不足で作品は全く話題になりませんでした。


林;あ、そのときに林正樹さんとやってるんですね。その後は?


太田;25歳で音楽家と結婚しました。教会音楽という自分のバックグラウンドを認めてくれる初めての人で、映画、アートあらゆることを教わりました。音楽活動は続けるというより個人的にはこれしか出来ないし一応天命だと思ってるから続けています。


林;そうなんですね。さて、これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


太田;いわゆるメジャーな音楽はよりショービズ化していくんだろうし、総合芸術、新オペラみたいな感覚になるのかなぁ?
私が好きな世界観の音楽、非大衆音楽は、よりライブであることが、必要とされていくと思います。普段音楽を全く聞かないので、配信とかのシステムはイマイチわかってないです。


林;あ、そうなんですね(笑)。これからのご予定は?


太田;先にも話したけど、私にとって音楽は聴くものではなく「やるもの」です。新しい取り組みとしては、聖歌隊CANTUSとは別に、即興に個性が見出せる歌い手を集めて新しいコーラスグループを作る予定です。それと同時にア・カペラ曲を作るのも楽しいので、作曲活動も続けると思います。


林;これからも楽しみですね。それではみんなが待っている選曲ですが、テーマは何でしょうか?


太田;本当に普段音楽を一切聞かないので、音楽を知らないんです。だから、オススメのあの曲というのが思いつかなくて、「参加した思い出曲と、沢山の人に聞いて欲しい現代の音楽家の曲」を連ねます。


林;美帆さんらしいですね。それでは1曲目は?


01. 秋のワルツ / 中島ノブユキ



太田;レコーディングしたのは早稲田のアバコだったと思います。「いつもみたいに歌って」と言われて家の鼻歌の延長で30分位で録音しました。言葉もその場で載せました。オノマトペなのでライブの時はいつも思いついた言葉で歌ってました。「声も楽器の一部だから突出しなくて良い」といつも言われてました。その感覚は今でも大切にしています。


林;良い曲ですよね。この曲のファン、すごく多いですよね。


02. Mio Pianto / 高木正勝



太田;高木君も私に勇気を与えてくれた一人。いつでも優しくて柔らかくて。でも音楽に対しては1音も妥協を許さない人でリハーサルもすごくするし、映像も素晴らしいし、同年代の音楽家で一番影響受けました。


林;リハーサルすごくするんですか。なんかイメージではパッとその場で録音って感じがしますが。


03.光 / haruka nakamura PIANO ENSEMBLE feat.CANTUS



太田;harukaは可愛い弟分という感じだったけど今では音楽という灯の青い部分を表現するパートナーに変わりました。このPV映像のライブをした5日後、私は第一子を出産しました。


林;有名な演奏ですよね。うわあ、やっぱり感動的ですね。え、5日後!


04. 光 / haruka nakamura PIANO ENSEMBLE



太田;8月にリリースされたharuka nakamura piano ensemble最後のアルバム「光」のPV。最初に紹介した光から5年経ってます。同じ曲がこう変化していく様を作品化していくケースはあんまりないんじゃないかなぁと思います。


林;面白いですね。こんな風に変化するんですね。


05. Hodie / CANTUS



太田;今年の5月にインパートメントから2枚目のアルバムをリリース出来ました。全曲宗教曲。私達の源を表現したアルバム。タイトルの「オディエ」とはラテン語で「今日」という意味です。1日で収録した「今日」に捧げた作品。


林;あ、やっぱり全曲宗教曲なんですね。「今日」に捧げるんですか。深い。


06. Rhye"Open"Cover / 坂本美雨+武田カオリ+太田美帆



太田;今年の6月に「人間の声」というテーマでライブを自主企画しました。色々あってイベント自体は中止になってしまったのだけど、参加メンバーだった美雨さんとカオリさんが協力してくれて急遽ア・カペラ ライブを敢行しました。その時の音源です。三人の母の歌。人生最大級のピンチを迎えたおかげで沢山の方の人間力に触れました。ありがたすぎて言葉にならない。


林;三人の母の歌ですか。うわあ、すごい演奏ですね。こんなのあったんですか。


07: Pendulum / 林正樹



太田;林君、通称リンちゃん。リンちゃんはSUS4の頃から一緒に演奏している大切な人。同い歳。高校生の頃から天才って呼ばれてました。当然天才だと思ってるけどこの人は誰よりもピアノを弾いてるし向き合っていると思います。この音源ではわたしは歌ってませんけど、この曲が好きすぎて、リンちゃんの福岡、岡山ツアーに付いて行って歌わせてもらいました。


林;林正樹さんとそんな長い付き合いだったんですね。それも知りませんでした。天才だと僕も思います。


08: Moments musicaux - Thème / 阿部海太郎



太田;海太郎君も同い歳。蜷川さんの劇判を歌わせてもらったり、CANTUSのアルバムにもミサ曲を委嘱してもらいました。海太郎君の和声に対する感覚は粋。歌いながら毎回「くぅ、洒落てるねー!」と唸ってしまいます。そして彼の話すフランス語の綺麗なこと。良い男。


林;あ、美帆さん、この方とも共演されてるんですね。なんか美帆さん、すごいなあ。


09: in aquascape / 坂本美雨



太田;美雨さんの歌声は天女みたいだなと思います。この曲はお父様が美雨さんのために書かれた曲。美雨さんの原点、そして終着点が詰まってる気がします。この曲から生きる糧を享受する人は少なくないと思います。音楽だけではなく色々な表現の仕方で愛を表すことが出来る人。


林;一度、bar bossaでも撮影でお会いしました。猫好きで、渋谷の野良猫にすごく反応してて、うわ、本気だと思いました。


10: 私の赤ちゃん / 七尾旅人



太田;クラシック上がりの所以かピアノを弾く人と縁が多いけど、旅人さんはギターを操る魔法使い。そしてメロディセンスは他の追随を許さない。音楽のためならいくらでも身を削る、その姿勢に毎回頭が下がります。一緒にVOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE! という声のバンドを組んでます。旅人さんの曲ではこの曲が一番好きです。


林;いい歌ですね。こういう歌ってあるんですね。すごいなあ。さて、10曲終わりましたが、美帆さん、何かこれは宣伝しておきたいことってありますか?


太田;インスタがいま楽しい。「ura.cantus」を覗いてもらえたら嬉しいです。
https://www.instagram.com/ura.cantus/


林;ライブよくやってますよね。みなさんも是非、チェックしてみてください!


美帆さん、お忙しいところ今回はどうもありがとうございました。
もう冬ですね。いい音楽は聴いていますか? 
それではまた来月こちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次 ・vol.66 高原一実 ・vol.67 松岡祐子 ・vol.68 宿口豪 ・vol.69 石亀政宏 ・vol.70 愛知アンディー有 ・vol.71 三原秀章 ・vol.72 キム・ジノン ・vol.73 花崎章 ・vol.74 洞澤徹


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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