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bar bossa vol.76

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vol.76 - お客様:金野和磨さん(Gerbera Music Agency)

【テーマ:最近のオススメの日本人アーティスト】


いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はミュージシャンのエージェント会社 Gerbera Music Agencyの代表をしている金野和磨さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですがお飲物をおうかがいしますね。


金野;林さんの今日のオススメのワインをお願いします!甘口のものだと嬉しいです。


林;でしたら、今は南仏のミュスカがありますからそちらにしますね。さて、お生まれと小さい頃の音楽環境のことを教えていただけますか。


金野;1987年に宮城県の気仙沼で生まれました。住んでいる地域の周辺にライブハウスもありませんでしたし、習い事もサッカーでしたし、両親も音楽関係の仕事をしているわけではなかったので、小さいころは音楽と無縁な生活でした。両親がよくCDをレンタルしてカセットに入れていたので、自宅では流行りの音楽には触れていましたが。CDも中学に入るまで買いませんでした。


林;気仙沼ですか。畠山美由紀さんと同郷ですね。なるほど、金野さんの世代だとご両親がレンタルCD世代なんですね。その後はどうですか?


金野;中学に入ってからもサッカー三昧だったのですが、音楽に詳しい友人の影響で音楽を自分で聴くようになりました。当時はMD全盛期だったので、『俺ベスト』的なMDをつくって貸し借りしていましたね。1文字1文字楽曲タイトルを入れないといけなかったので、その作業がMDへの愛着に繋がっていた気がします。


林;確かにMDは文字を入力しましたね。懐かしい。最初に買ったCDは?


金野;初めてCDを買ったのは中学1,2年ごろに買ったBUMP OF CHICKENのメジャー1枚目のアルバム『jupiter』でした。このアルバムは当時友人・知人の間でものすごい人気でして。たぶん軽く30回は貸したと思います。最後の方はパッケージも歌詞カードもボロボロになっていて、ディスクも傷がついて再生できなくなっていました。BUMP OF CHICKENの人気の凄まじさを肌で感じましたね。


林;そうかあ、中学でBUMP OF CHICKENのCDを30回は貸すっていうのが、ほんと時代ですね。その後は?


金野;大学進学に合わせて上京したのですが、最初の住むことになった学生会館(いろんな大学の学生が住む男子寮みたいな施設)で知り合った友人に勧められて聴いたのがBLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT、THE YELLOW MONKEYでした。


林;お、カッコいいですね。


金野;この3組は周りに合わせて当時の流行りの音楽しか聴いてこなかった自分にとってかなりの衝撃で、そこから初めて音楽を自分で掘るようになります。1950~60年代のロックンロールとか、グラムロックとか、パンクとか。グラムロックやパンクはファッションも特徴的だったので、音楽とファッションのカルチャーについても調べたりしていました。


林;やっぱりみんなそこを通りますよね。


金野;社会人になってからも音楽を自分で掘る楽しみみたいなものに取り憑かれていたんですが、このころ(2010年ごろ)からオリコンの上位がアイドルやジャニーズで埋め尽くされるようになりまして、良い音楽がこれだけ溢れているのになぜそれが反映されないのか疑問に思ったんです。今思うと音楽ビジネスのことを何も知らなかったからこんなこと言えたんだなと思いますが、当時は率直に「日本の音楽業界は終わってる」と思いました。なので、自分で変えてやろうと思い、新卒で入った会社から音楽サービスの会社に転職して音楽の仕事に携わるようになりました。


林;なるほど。今のお仕事はどうでしょうか? 良いことや悪いことなどがあれば教えていただけますでしょうか。


金野;天職だと思っています。やりがいしかないので一生続けたいです。「良いこと」はとんでもないライブに出会う機会が多いこと、自分たちのサポートしているアーティストやチームのメンバーが活躍しているさまを見ることなど、たくさんあります。一方、「悪いこと」は自分の力不足でアーティストが活動休止したり、自分たちのもとを離れてしまうときなどです。これはもう経験や知識を積んでいって減らしていくしかないと思っています。


林;これからの音楽はどうなると思いますか?


金野;まず音楽とリスナーを取り巻く環境の話ですが、主にSpotifyをはじめとしたストリーミングサービスのさらなる普及によって、これからプレイリストを通じて新しい音楽と出会う機会が増えていくと思います。伴って、プレイリストの楽曲を選ぶ「キュレーター」と呼ばれる人たちの存在感も増していくと思います。


林;なるほど。


金野;また、SpotifyやApple musicは海外のリスナーとの接点になりますので、これからそれらのサービスを通じて、国内アーティストの海外進出がより積極的になっていくのだろうと思います。ライブホール「Zepp」がマレーシアやシンガポールなどアジア各都市に展開されていくことをはじめ、環境も整備されていくと思いますし。

ただ1つ補足しておきたいのが、ストリーミングによってCDが急速に淘汰されていくようなイメージは持っていません。現在ストリーミングサービスにはサザンオールスターズやジャニーズの楽曲など、解禁されていない人気アーティストの楽曲がまだまだたくさんあり、普及が思うように進まない要因の1つになっています。これらの楽曲は今後のストリーミングサービスの成長に合わせて少しずつ解禁されていくとは思いますが。そういった事情があるため、ストリーミングの普及とCDの衰退は今後もゆるやかに進んでいくイメージを持っています。また、ハイレゾとアナログはストリーミングとシェアを食い合うようなイメージは持ってませんので、今後も堅調に売上を伸ばしていくんじゃないかなと思います。


林;さすがすごく具体的で面白いです。


金野;最後にアーティストを取り巻く環境については、これからはアーティストがセルフマネジメントするための会社をつくったり、自らマネージャーや宣伝担当者を雇って活動していくケースが増えていくのではないかと思っています。これまでアーティストがのし上がっていくには事務所やレコード会社に所属する以外に選択肢がなく、自らがリスクを取って主体的にチームを動かしていきたいタイプのアーティストにはフィットしないケースが少なからずありました。そうした背景があり、所属している事務所やレコード会社から独立して活動するアーティストが少しずつ増えてきています。僕個人としては、アーティストは自らプロジェクトの責任者として全ての意思決定と実行に主体的に関わっていくべきだと思っているので、この流れをエージェントとしてサポートしていきたいと思っています。

この件に関しては先日ブログを書いたので、ご興味ある方にはぜひご覧になっていただきたいです。

http://gerbera-music.agency/course-of-action-2017/


林;すごくよくわかりました。最前線でやられている金野さんならではのお言葉ですね。さて、今後はどうされる予定でしょうか?


金野;まず、音楽業界でやりたいことをやるためには兎にも角にも実績が必要なため、いま弊社でサポートしているクライアントアーティストが成功できるよう全力を尽くしていきます。「成功」というのは武道館での単独公演やホールツアーをイメージしています。


林;まずそこからということですね。


金野;実績ができ、自社の知名度が上がってからどうするかはまだ決めていないのですが、候補としては2つあります。1つはアーティストのエージェント会社として、クライアントアーティストがより成功しやすいような環境を整備していくこと。例えばレコーディングスタジオを持つとか、ライブ制作事業をはじめるとか、グッズ制作事業をはじめるとか、そういったイメージです。

もう1つは、アーティストが音楽活動をしやすくなるようなプラットフォームをつくること。例えば自主で活動するアーティストがチームをつくりやすくなるよう、クリエイター(デザイナー、映像作家、VJ、照明)をアーティストとマッチングさせるようなプラットフォームですね。この2つのうちどちらの方向に進むかはいま現在では検討もつきませんが、より日本のアーティストが活動しやすくなるような、音楽を続けやすくなるような事業をしたいです。


林;期待しております。それではみんなが待っている選曲ですが、テーマは僕から「最近のオススメの日本人アーティスト」でお願いしたいのですが、いかがでしょうか。


金野;では、8曲、おすすめしますね。


01. ここにしかないって言って / ものんくる



金野;いま知名度を上げている「日本語ポップス×ジャズの新感覚ユニット」です。ベースはポップスでありつつもジャズの要素が自然と溶け込んでいて、身体を揺らしたくなるリズム感、グルーヴ感があります。ものんくるに限らず、最近ポップスとジャズをかけ合わせたアーティストが少しずつ増えてきている気がします。


林;ものんくる、すごくいいですよね。吉田沙良さん、すごく可愛いですし。


02. めたもるセブン / けもの



金野;女性ジャズ・ヴォーカリスト青羊(あめ)によるソロ・ユニット。80年代のシティ・ポップが好きな方には特にフィットするかもしれません。今年7月にリリースされたアルバムのリード曲で衝撃を受けてすぐにアルバム買ってライブ行きましたがどちらも素晴らしかったです。


林;この人も、僕のTLでみんながよく話題にしていますね。声の耳ざわりもいいですよね。


03. 滲んだ / nica



金野;『Urban Jazzy Pop』を掲げている男女デュオ・バンド。キャッチコピー通り、都会的で心地よいサウンドとグルーヴ感が特徴です。夜終電なくして歩いて家まで帰らないといけなくなったときにコンビニで買った酒飲みながら聴きたいです。


林;金野さんのそのコピーが秀逸です! これ、金野さんにおすすめいただいて、すごく聞いています。すごく売れてほしいですね。


04. Gospel In Terminal / bonobos



金野;6月に彼らのBillboard公演を観て感動したのですが、2017年のbonobosはネオ・ソウルや現代ジャズのグルーヴを纏っており、控えめに言って極上です。無限に聴き続けられます。すでにご存じの方も多いバンドだと思いますが、今観ておくべきだと思います。


林;確かに、控えめに言って極上ですね。曲もすごくいいですよね。


05. Midnight Cruise / WONK



金野;昨年彗星のように現れた、東京発〈エクスペリメンタル・ソウル〉 バンド。ハイエイタス・カイヨーテに代表されるフューチャーソウル/R&Bをこれだけ高いレベルで表現している日本人バンドは他にいないのではないかと思います。最初聴いたときはそのよれたリズムに面食らったんですが、何回も聴いているとそれが気持ち良く感じてくるんですよね。


林;なんか変な表現ですけど、日本人じゃないみたいですね。カッコいいです。


06. my hawaii "Setsuna" live at FEVER 2016.05.09



金野;LAで活動する日本人ミュージシャン鹿野洋平を中心に結成された6人組バンド。彼らに出会うまではこういう土っぽさを感じるゆったりとした音楽に興味を持てないでいたんですが、昨年彼らのライブを観てその魅力に気づきました。音の響きや音色に圧倒的な豊かさを感じられて、ああ、こういう音楽の魅力ってこれだったんだと、しみじみ思いました。この日のmy hawaiiは僕にとって2016年のベストライブでした。


林;へええ、LAで結成で、ジャパン・ツアーなんですね。いいですねえ。


07: ROTH BART BARON "BEAR NIGHT" | FULL SET | Dec 20th 2016



金野;三船雅也(vocal/guitar)と中原鉄也(drums/piano)の二人組からなるインディフォークバンド。昨年『hoshioto』という、星空の綺麗な岡山の野外フェスで彼らのライブを初めて観たのですが、my hawaiiのライブを観たときに近い豊かさ、美しさを感じました。
my hawaiiはメロディとハーモニーの美しさが際立っているバンドだと思っているのですが、ROTH BART BARONは生命力、力強さを感じさせる壮大なサウンドスケープが最大の魅力だと思います。


林;インディーフォークなんですね。たしかに曲はフォークですね。もう全然知らない世界でした。


08: 4AM Mellow Diver(山中さわおRemix) / ArtTheaterGuild



金野;先日チームのメンバーがTwitterでシェアしたのを聴いて知ったバンドです。最近のバンドでthe pillowsやスピッツを想起させるようなバンドに出会うことってほとんどないんですが、このバンドには似た成分を感じました。一生聴けそうなポップス。実際、この楽曲は彼らに惚れ込んだthe pillowsのリーダー、山中さわおさんがリミックスを担当しているようです。


林;おお、いいですね。抑制した感じですが少しづつじわじわ心に響きますね。


●金野さんのtwitter
https://twitter.com/konno108/

●Gerbera Music Agency
http://gerbera-music.agency/


金野さん、お忙しいところどうもありがとうございました。
金野さんの今後のご活躍、期待しております。

みなさん、もうすっかり師走ですね。
街ではクリスマスソングが流れていますが、いい音楽は聴いていますか? 
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次 ・vol.66 高原一実 ・vol.67 松岡祐子 ・vol.68 宿口豪 ・vol.69 石亀政宏 ・vol.70 愛知アンディー有 ・vol.71 三原秀章 ・vol.72 キム・ジノン ・vol.73 花崎章 ・vol.74 洞澤徹 ・vol.75 太田美帆


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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