レイ・ブライアントは1972年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでもソロ演奏を行い、その模様は『Alone at Montreux』(Prestige, 1972)として残されています。これはオスカー・ピーターソンが直前に出演をキャンセルしたため、急遽ブライアントが代役を務めた公演でした。準備不足の中で初のソロ公演を見事に成功させたことで、その後のソロピアニストとしてのキャリアの出発点となった、伝説的なステージです。
今回取り上げる『Montreux '77』は、その5年後に同じフェスティバルで行われたステージで、より洗練されたアレンジと、一般のリスナーにも親しみやすい選曲が並ぶ充実作です。個人的には『Alone at Montreux』以上におすすめしたいアルバムです。
Take the "A" Train(Billy Strayhorn)
有名なイントロに続き、左手の8分音符が強力な推進力を生み出す冒頭曲。ソロはエリントン楽団でのレイ・ナンスの名演を踏まえたフレーズから展開されます。ブライアントは即興よりも、あらかじめ練り上げたアレンジを繰り返し披露するスタイルで知られ、この公演でも完成度の高いソロが聴けます。
Georgia On My Mind(Hoagy Carmichael, Stuart Gorrell)
ストライド奏法を基盤にしたスロー・スウィング。低音で10度をつかむ左手は、彼の大きな手のリーチあってこそ。豊かな響きが魅力です。
Jungle Town Jubilee(Ray Bryant)
短いオリジナル曲ですが、快活なテンポとストライドのリズム感が光ります。ラグタイムの伝統を継承しつつ、現代的なスイングに昇華しています。
If I Could Just Make It To Heaven(Traditional)
ゴスペル/スピリチュアルの伝承曲。ブライアントが好んで取り上げた一曲で、祈りに満ちた美しい演奏です。
Title :『Montreux '77』
Artist : Ray Bryant
LABEL : Pablo Live
発売年 : 1977年
【SONG LIST】
01. Take The "A" Train
02. Georgia On My Mind
03. Jungle Town Jubilee
04. If I Could Just Make It To Heaven
05. Django
06. Blues N° 6
07. Satin Doll
08. Sometimes I Feel Like A Motherless Child
09. St. Louis Blues
10. Things Ain't What They Used To Be
【パブロ・シーグレル】
名門ブエノスアイレス音楽院で金賞を受賞、首席で卒業。14歳でクラシックピアニストとしてデビューする。ガリア・シャルフマンとアドリアン・モレーノにピアノを、ヘラルド・ガンディーニとフランシスコ・クロプルフに作曲法を学んだ。
作曲家として映画 「Tacos Altos」(1985)、ドラマ映画「Adios Roberto」(1985)、演劇 「Polvo de Estrellas」、テレビシリーズ 「La Noche de los Grandes」、バレエ、コマーシャル等の作曲を数々手掛け、演劇「Traición」の作曲でアルゼンチンのアルレキン最優秀作曲賞を受賞する。
当時アルゼンチンで絶賛されていたパブロ・シーグレル・トリオの評判を聞きつけ、クラシックピアニストとしてヴィルトゥオーゾかつジャズの即興の才をもつピアニストを探していたタンゴの革命児アストル・ピアソラに、アストル・ピアソラ五重奏団のメンバーとして招かれる。1978 年から1989年の師の引退まで10年余巨匠を支え、ピアニストとしてヨーロッパを中心とする世界ツアーに参加し、オーケストラとの公演にも出演。ピアソラ五重奏団の音楽的発展に大きな影響を与える。ピアソラの黄金時代にリリースされた「Zero Hour」、「La Camorra」、「The Central Park Concert」、「Live At The Montreal Jazz Festival」[5]等にも参加する。1990年にパブロ・シーグレル四重奏団を立ち上げる。
イタリア人歌手ミルバ、メゾソプラノ歌手デニーズ・グレイブス、テノール歌手・指揮者プラシド・ドミンゴをはじめ、バレエダンサーのフリオ・ボッカ、ポール・テイラー・ダンスカンパニー等バレエ団、ゲイリー・バートン、ブランフォード・マルサリス、パキート・デ・リベラ、レジーナ・カーター、ケニー・ギャレット等ジャズアーティストとの共演を重ねるほか、オルフェウス室内管弦楽団、ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団、シドニー交響楽団、トルコ国立大統領交響楽団、コロラド交響楽団をはじめ世界を代表するオーケストラと共演を果たす。
ロイヤル・アルバート・ホール、ボローニャ市立劇場、カーネギーホール、コロン劇場、シドニー・オペラハウス、オランダハーグ王立劇場、コンセルトヘボウ、リンカーンセンター、ソウル・アーツセンター(韓国)、ラヴェンナ・フェスティバル、ギルモア・ピアノフェスティバル、ブルーノート、バードランドなどで演奏活動を行う。
最新アルバム「タンゴジャズ」で、2018年のグラミー賞最優秀ラテンジャズアルバムを受賞。ヌエボタンゴでラテンジャズ部門の初受賞をもたらした。2013年のラテングラミー賞にノミネートされたアルバム「アムステルダム・ミーツ・ニュー・タンゴ」では、シーグレルの代表作がジャズオーケストラ編成用に編曲がされた。同年には、シーグレルがプロデューサー、ピアニスト、編曲家として監修したサックス奏者フリオ・ボッティのアルバム「タンゴ・ノスタルジア」もラテングラミー賞にノミネートされた。2011年には、ベースバリトンオペラ歌手アーウィン・シュロットのアルバム「ロホタンゴ」でシーグレルは音楽監督、編曲家、ピアニストとして参加し、同作品をエコークラシック賞に導いた。シーグレルの2005年の「バホ・セロ」はラテングラミー賞を受賞し、2008年の「ブエノスアイレス・レポート」は同賞にノミネートされた。
2012年にはシーグレル編曲版「ブエノスアイレスの四季」日本初演が東京オペラシティ文化財団主催にてオーケストラ編成で上演される。2016年には横浜芸術振興財団/横浜能楽堂による委嘱で新作「12 Horas」~重なる瞬間(とき)~を尺八、琴、ピアノ、バンドネオン、弦楽五重奏、和打楽器、ドラムのために作曲し、みなとみらいホールにて藤原道山(尺八)、奥田雅楽之一(箏)をゲストに世界初演。作品は日本伝統音楽とアルゼンチンのヌエボタンゴとの壮大なクロスオーバを遂げたことで絶賛される。同作品は、2018年9月にアメリカ初演された。
2020/2021年シーズンには、リヨン国立管弦楽団、サンパウロ交響楽団、ジュネーブ室内管弦楽団、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団との共演および、モーツァルテウム音楽院におけるマスタークラスの開催が予定されている。
教育者としても、ニューイングランド音楽院、バークリー音楽大学、インディアナ大学、ハーバード大学、イーストマン音楽院等、世界各地で後進の育成にも力を注いでいる。
高校一年生のとき、近所の図書館に行って何枚かジャズのCDを借りてきた中の一枚 『Bill Evans At The Montreux Jazz Festival』。この中に収録されている「Someday My Prince Will Come」が僕の運命を変えました。
知っている曲のはずなのに、全く聴いたことのないピアノ。。本当に痺れました。音楽を聴いて稲妻に打たれたような感覚、衝撃を受けたのは初めてでしたし、その後もほとんどない経験かもしれません。それだけ自分にとって衝撃的で、ジャズを始めると決意した瞬間でした。
今 Bill Evansを聴いてもたくさんの発見がありますし、大好きな、尊敬するジャズピアニストです。
林正樹
My First Jazz
Title : 『At The Montreux Jazz Festival』
Artist : Bill Evans
LABEL : Verve Records
RELEASE : 1968年
【SONG LIST】
01. One For Helen
02. A Sleeping Bee
03. Mother Of Earl
04. Nardis
05. I Loves You Porgy
06. The Touch Of Your Lips
07. Embraceable You
08. Someday My Prince Will Come
09. Walkin' Up
Title : 『Ten To Sen』
Artist : 相川瞳・林正樹
LABEL : 相川瞳
RELEASE : 2025年7月30日
【SONG LIST】
01. Marigold
02. Ambiguous
03. Empty Cages
04. Pulsating
05. Translucent
06. Ten To Sen
07. 紅碧
08. At the Boundary Between Green and Blue
09. 童話で書かれた生態系
10. 日日是好日
【KKBOX Podcast「My First Jazz」】
JJazz.Netとの連動によるオリジナルコンテンツ。
ジャズ・ミュージシャン本人の音声コメントをお届けしています。 KKBOX Podcast