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Shai Maestro インタビュー [インタビュアーNenashi]:インタビュー / INTERVIEW

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世界中で高く評価されたシャイ・マエストロ初のソロピアノ・アルバム『solo:Miniatures&Tales』に続き、ニュー・アルバム『The Guesthouse』が、2026年3月に発売されました。
シャイの創造世界の中心にある「内省と拡張」という二面性を際立たせ、境界が溶け合う豊かでシネマティックな空間を創り上げています。
ゲストにはグラミー賞2部門にノミネートを果たした最先端ジャズヴォーカリスト、マイケル・マヨ。ジェイコブ・コリアーのツアーバンドに参加する最注目シンガー・ソングライター MAROなど、現代の音楽シーンを牽引する超注目アーティストが参加しています。


jjazz.netではこの作品についてシャイ・マエストロにZOOMインタビューを行いました。 
今月の新譜紹介番組「PICK UP」ではそのインタビューの模様をお送りしています。

【JJazz.Net「PICK UP」】(毎月第1水曜日更新)
https://www.jjazz.net/programs/pick-up/

放送期間:2026年5月6日〜2026年6月3日(17:00まで)




インタビュアーは、歌、ラップ、ビートボックスまでを自由に使いこなすマルチ・シンガー Nenashiさん。Nenashiさんの視点から、今作のシャイの想いを深掘ってもらいました。
音声とテキスト、合わせてお楽しみください!


[Interview:Nenashi]
[通訳:Miho Haraguchi]



Shai Maestro インタビュー


[Nenashi] 今回アルバム『The Guesthouse』をリリース。この作品について色々お伺いします。
昨年リリースしたアルバム『solo:Miniatures&Tales』からレーベルが"Naïve"へ移りました。制作環境やアプローチはどんな風に変わりましたか?


[Shai Maestro] まず、それ以前にECMから2作リリースできたことはとても良い経験だったと思います。創設者のマンフレートと仕事をする中で、彼の美学に浸り、ともにECMのサウンドを探究している感覚でした。豊かで広がりがあって素晴らしい経験でした。
Naïveに移った今は、完全に別の側面へと足を踏み入れたような感覚です。前作『solo:Miniatures&Tales』は、以前より親密な作品になったと思いますが、ECMの世界にまだ少し近いサウンドだったとも思います。
今回の『The Guesthouse』に関しては、ゲストを招き様々なカラーを取り入れ、エレクトロニクスの要素が含まれる実験的な点でも、ECM時代とは正反対の作品に仕上がったと思います。
ECMとNaïveは全く異なるカラーやメンタリティを持っています。Naïveに移ってからリリースした2枚はそれらが共存し、より豊かな全体像を生み出しているかもしれません。 


[Nenashi] 今回のコンセプトについて。
ルーミー(13世紀に活躍したペルシア文学史上最大の神秘主義詩人)の詩『The Guesthouse』にインスピレーションを受けたとのこと。どういうイメージだったのかを教えて下さい。 


[Shai Maestro] 現在私はスペインに住んでいるのですが、その理由はこの場所でパートナーのGloriaとの出会いがあったからです。それが「Gloria」という曲のインスピレーションにも繋がっています。
彼女はバルセロナのすぐ側にあるブディズム・センター(仏教施設)の創設者のひとりで、私はそれをきっかけに仏教に由来する世界観や哲学に親しみを感じるようになりました。
そこに住んでいる先生が『Guesthouse』というタイトルを薦めてくれたのですが、とても良い考えだと思ったんです。長年自分が親しんできたルーミーの詩と強く結びついていると思ったからです。その詩のテーマは「受容」。どんな感情が訪れたとしても、遠ざけたり憎んだりするのではなくゲストとして受け入れる、ゲストが自分に何かを見せてくれたり教えてくれる存在である、という内容です。

今の世の中、暴力や拒絶、分断が蔓延していますよね。歓迎し共存する「受容」の心というものが、今の世の中には必要だと強く感じました。
それは音楽的にも素晴らしいコンセプトだと。様々なミュージシャンを自分の音楽へと招き入れ、彼らを受け入れることで自分自身をも変化し、広がっていく。そんなメッセージを伝えることができたらと、このコンセプトでアルバムを完成させました。


[Nenashi] なるほど。ルーミーはスーフィー(イスラムの神秘派)。宗教は違えどどこか共通するテーマがあるのでしょうね。

それではサウンドについても伺います。
今作はエレクトロや、ポストプロダクションもあり、キーボーディストをフィーチャーしたりと今までとは全く違うアプローチですね。
また歌ものを取り入れ、作詞はシャイ自身だそうですね。どのような過程で進んでいったのでしょう?


[Shai Maestro] プロジェクト全体を通して、その流れの中にずっといました。スタジオでアコースティック楽器を録音している間も、パソコンでは電子音を流してクリエイティブな流れを生み出そうとしました。
単にアコースティックな録音上にエレクトロニクスを重ねたわけではなく、生演奏と合わなければ新しく構築したり、また逆もあります。アコースティックとエレクトロニクスが互いにインスピレーションを受け合って進行していました。
常に色々なことが起こって、動く生きもののように有機的でダイナミックな作業でしたね。

今までのやり方を全て捨ててエレクトロの要素をたくさん取り入れたことで、自然な流れで「song」として形となっていたんです。そうなると必然的に歌詞が必要になっていき、そしてシンガーが必要になっていった。この作品はシンガーが中心のプロジェクトになるかもしれないと感じました。
そして歌う人をイメージし始めた。MARO や Michael Mayo が参加することが決まった瞬間に徐々に歌詞が湧き出てきました。
例えば「Gloria」の歌詞は完全に仏教的なもので、ハート・スートラからインスピレーションを受けています。仏教のお経の中でも最も美しいもののひとつと思っています。これは自分のパートナーGloriaに捧げる内容になっていますが、それはMAROが歌うことを想像することで降りてきた歌詞でもあります。


[Nenashi] ハート・スートラとは般若心経のことですね。興味深いテーマです。


[Shai Maestro] ハート・スートラは仏教における「空」の概念について語った美しい経典です。仏教の理論に深く立ち入るつもりはないけれど、そこには物事の虚構性、物事には始まりも終わりもなく変化し続ける、ということが書かれています。
「Gloria」の歌詞にはその考えが色濃く反映されている。自分にとって大切なテーマなんだ。



[Nenashi] では、作品に参加したシンガーについてお聞きします。
MARO や Michael Mayo を迎えた理由を聞かせてください。


[Shai Maestro] まず私は二人の大ファンです。二人の歌を長年聴いてきています。
MAROは素晴らしい作品がたくさんありますが「HORTELÃ」という作品が特に大好きです。自分の人生のサウンドトラックになっています。オーガニックで誠実で、心をそのまま映し出したような音楽です。
彼女に歌ってもらった曲は飛行機の中で思いついて、そして歌詞が必要だと感じたんですね。

Michael Mayoとは Ben Wendelの「High Heart」で共演して以来の友人です。宇宙一のヴォーカリストだと私は思っています。彼のように歌える人は他にいないでしょう。ボビー・マクファーリンかジェイコブ・コリアーか、、、
楽器のように声を操るし、ハーモニーの知識があります。無理難題を彼にリクエストしてもやってのけてしまうんだ。
MAROもだけど、彼らの声のトーンが素晴らしいですね。Michael Mayoは特にジャズのバックグラウンド、またゴスペルの要素もある。彼がそれらを駆使して提案する音楽が素晴らしいんです。
シンプルで適切な音を使って、テクニカルで複雑なサウンドを奏でる才能があります。


[Nenashi] 私も Michael Mayo が大好きでライブに行きました。オンラインでプライベートレッスンを受けたこともあります。
シャイがおっしゃる通り声が楽器ですよね。まるでMIDI鍵盤を鳴らしているように正確で素晴らしいです。



[Nenashi] Guesthouse Quartet としてのツアーがスタートしています。この作品の世界観をどう表現されるのでしょうか? 


[Shai Maestro] ギター、ヴォーカル、キーボード、サブベース、フルート、トランペットやサックスなど様々な楽器の要素が詰まった作品なので、それをステージで再現することはとても難しいところですね。
同時に、どんな状況でも演出が無くても通用・成立する曲を作るのが私のゴールでもあり、それこそが良い曲の基準と考えています。今回、ピアノトリオでツアーをする案も悪くはなかったのですが、制作にかなり力を入れたのでそのままステージに持っていきたいという気持ちは強かったです。
そうなると誰かの音と手を借りないとなりません。サンプラーやデジタル楽器を熟知しているだけでなく、ジャズプレイヤーでもある人間を探す必要があった。例えばクレイジーな変拍子や、即座の転調にも対応できるようなね。
そんな万能すぎる人いないと思っていたけれど、、、、以前 Michael Mayoと「Alone Together」をレコーディングしたときに現場にいた Gadi Lehavi。
彼はジャズミュージシャンでありながらサウンドエンジニア、映像制作までをこなすオールラウンダーだったんだ。彼しかいないと感じたよ。
それからは彼と一緒にたくさんの機材を駆使して、オタクみたいにひたすら作業する日々。作品のサウンドを良いかたちでステージに持って行けるようにね。
今回のツアーバンドのメンバーは柔軟性があるし、一緒に演奏していてハッピーだよ。



[Nenashi] では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします! 


[Shai Maestro] 親愛なる日本の皆さん!大好きです!
日本でのコンサートはなぜかいつも最高なものになる。
皆さんの音楽をきく姿勢、そして愛情を注いでくれているから、私たちの音が花開き、より深いものになるんです。次回の来日が待ちきれない、早くお会いしたいですね。


ありがとうございました!


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ALBUM情報

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タイトル:『The Guesthouse』
アーティスト:Shai Maestro
発売日:2025年3月6日
レーベル:naïve records


アマゾン 

【SONG LIST】
1. The Time Bender
2. Nature Boy - ft. Immanuel Wilkins
3. Gloria - ft. MARO
4. Moon of Knives
5. Strange Magic ft. Michael Mayo
6. Refuge
7. GG's Metamorphosis
8. Sleepwalking Roses
9. A Little Thank You Note
10. The Lion And Me ft. Alon Lotringer
11. The Guesthouse's Old Piano 



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Shai Maestro
1987年、イスラエル生まれのジャズ・ピアニスト。5歳からクラシック・ピアノ、8歳か らジャズの演奏をスタートさせ、テルマ・イェリン国立芸術高等学校でジャズとクラシッ クを学び、その後ボストンのバークリー音楽大学へ入学。2006年からはイスラエル・ ジャズ・シーン確立の立役者の一人であるベーシストのアヴィシャイ・コーエン(b)のグルー プに参加し注目を浴びる。2017年には自身のバンドで東京JAZZのメイン・ステージで 演奏した他、これまでに度々来日公演を行なっている。2026年3月には最新アルバム 『ザ・ゲストハウス』をリリース。


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Nenashi(Singer)
歌、ラップ、ビートボックスまでを自由に使いこなすソウルシンガー、プロデューサー、Hiro-a-keyによるプロジェクト。
アジア人としてR&B 、ソウルミュージックを世界に向けて発信することに対するレッテルや先入観をなくし、純粋に音楽だけを聴いてほしいという思いから、共通言語である英語で歌い、国籍や顔などアイデンティティーを一切公表せずに活動を開始。
これまでアメリカ、カナダ、ブラジル、バハマ、アルゼンチン、韓国、香港、タイ、カザフスタン、フランス、イギリス、ドイツ、スイスなど20ヶ国以上の地域を転々と旅しては異文化に触れてきたHiro-a-keyは、自らを"根無し草"と重ね合わせ、アーティスト名をNenashiと名付ける。
2024年4月にリリースしたデビューアルバム『Found in Tokyo』では、Hocus Pocusの20syl (フランス)、J.LAMOTTA すずめ (イスラエル)、Daichi Yamamoto (日本)、FORD TRIO (タイ)、Mike Larry Draw (アメリカ) など世界各国の豪華アーティストをフィーチャー。
ストリーミングで総再生回数が1,100万回を越える。
そして2025年 1st EP『TIME SLIP』、2026年7月に2ndアルバム『MOMENT』をリリース。
1920年代から現在までのSoul / R&B、Jazz、Blues、HipHopを1つにまとめ上げるという壮大なテーマを掲げたEPが世界中の音楽ファンの間で話題となり、FUJI ROCK FESTIVAL、GREENROOM FESTIVALや、アジアのフェスなど国内外の大型フェスに多数出演、タワーレコードの広告シリーズ「NO MUSIC, NO LIFE.@」への登場、さらに中国、タイを巡るアジアツアーを果たすなど注目を集めた。
また、オーディオブランド「Beats」のスペシャルムービーのテーマ曲を担当。
ホセ・ジェイムズ、Chara、加藤ミリヤ、Aile The Shota、Ovall、Sincere、LHRHND、THE SUPER FLYERS、SMOKIN'theJAZZ、maeshima soshi、Snowk、Halia Beamer、Shigge、Mashoe、AVOCADO BOYSなど国内外のアーティストのプロデュース・客演・ソングライディング・コーラスを手がけるなど積極的に活動の場を広げている。
アイデンティティを明かした後もさまざまなジャンルや世界の文化からインスピレーションを得て、作品ごとに進化するNenashiの旅は続く。

My First Jazz Vol.97-馬場智章:My First Jazz

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Title : 『Tales From The Hudson』
Artist : Michael Brecker


サックス奏者の馬場智章です。

私の初めてのジャズアルバム。
今回紹介させてもらうのは大好きな Michael Brecker のアルバムで『Tales From The Hudson』です。
1996年リリースのアルバムで、この中でも特に5曲目に収録されている『African Skies』という曲が大好きです。

私が小学生だった当時は、まだそんなに体が大きくなかったのでアルトサックスを吹いていたんですね。そのあとテナーサックスを始めてみませんかという話があって、私は渋々というか嫌々テナーを吹くことになったんです。ある時、同じバンドに所属していたドラマーの石若駿から Michael Breckerというアーティストを教えてもらい、様々なアルバムを聴いてみました。
当時、ジョン・コルトレーンだとか、ソニー・ロリンズだとか、ビバップのジャズに興味が持てなかったのですが、そんな中でマイケル・ブレッカーのオリジナルや演奏スタイルというものが刺さったんですね。こんな風に演奏してみたい、と。以降、彼の音楽にハマりまして、自分もテナーサックス奏者として上手になりたいと思えるようになりました。
そういう意味で、印象に残っている初めてのジャズ・アルバムとしてお薦めさせていただきました!

先程も言いましたが、マイケル・ブレッカーは演奏はもちろん作曲も素晴らしくて、その『African Skies』という曲に関してもアフリカの匂いのする、行ったことはないけれどもワイルドな景色が広がるような、ジャングルを歩いているかのような、想像が生まれる楽曲です。
自分も情景が浮かぶような作曲が好きだったりするので、そういった面からも思い出に残っている、、、指針となっているアルバムです。


馬場智章



My First Jazz

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Title : 『Tales From The Hudson』
Artist : Michael Brecker
LABEL : Impulse!
RELEASE : 1996年

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【SONG LIST】
01. Slings And Arrows
02. Midnight Voyage
03. Song For Bilbao
04. Beau Rivage
05. African Skies
06. Introduction To Naked Soul
07. Naked Soul
08. Willie T.
09. Cabin Fever



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"今"もっとも注目すべきサックス奏者 馬場智章 率いる
現代音楽シーンのキーパーソン・プレイヤーが集結!


【馬場智章 88 Soundscape -Evolving Jazz Special Guest Takuya Kuroda】


【日程】
2026年5月30日(土)17:15開場/18:00開演

【会場】
板橋区立文化会館 大ホール

【出演】
馬場智章(sax)、渡辺翔太(pf/key)、Marty Holoubek(b)、小田桐和寛(ds)
Guest:ermhoi(vo)
Special Guest:黒田卓也(tp)
ーLive Electronicsー Of The New World(DJ)

【チケット】
全席指定
S席 5,000円
A席 4,500円
※未就学児入場不可

文化会館WEB
◆文化会館窓口・電話 
TEL:03-3579-5666(9:00~20:00 ※施設点検日は17:00まで)
◆区内チケット取扱店
チケットぴあ (Pコード320-741 ) 
ローソンチケット (Lコード70640)


【主催】
(公財)板橋区文化・国際交流財団

【制作】
RUN/トップシーン




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【馬場智章】
1992年、北海道札幌市生まれ。2005年、ボストンのバークリー音楽大学タイアップの「北海道グルーブキャンプ」を受講し、優秀賞を受賞。2010年、テリ・リン・キャリントンが指揮するバークリー・サマー・ジャズ・ワークショップのメンバーに選抜され参加。2011年のバークリー音楽大学入学後は、テリ・リン・キャリントン、テレンス・ブランチャード、ジェイミー・カラム等のアーティストと共演。
卒業後はニューヨークに拠点に活動。2016年から4年間、テレビ朝日系「報道ステーション」のテーマ曲を所属するバンド「J-Squad」で担当し、同バンドで2枚のアルバムをリリース。2020年に帰国後はリーダー・プロジェクトに主軸に置き、これまでに『Storyteller』(2020年)、『Gathering』(2022年)の2枚のリーダー・アルバムをリリース。
2022年、日本で初開催された「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN」に、DREAMS COME TRUE feat. 上原ひろみ, Chris Coleman, 古川昌義, 馬場智章、aTak、Answer To Rememberの3バンドで出演。翌年の同フェスティヴァルには自身のバンドで出演を果たした。
2023年公開のアニメーション映画『BLUE GIANT』(音楽:上原ひろみ)にて、主人公・宮本大のサックス演奏を担当。
また、ルイス・コールのバンドの一員として国内外のツアーに参加するほか、マーク・ジュリアナ、マカヤ・マクレイヴン、マーキス・ヒル、ユリシス・オーエンス・ジュニア、ベン・ウェンデルなど世界各国のミュージシャンとのコラボレーションイベント「BaBaBar」をオーガナイズしている。
2024年 メジャーデビューアルバムとなる『ELECTRIC RIDER』をリリース。
http://www.tomoakibaba.com/



Latest Album

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Title : 『ELECTRIC RIDER』
Artist : 馬場智章
LABEL : Universal Music
RELEASE : 2024年9月4日

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】
01. PRIME (feat.BIGYUKI & JK Kim)
02. Season of Harvest (feat.Weedie Braimah)
03. WHAT IS??
04. Fade into you
05. Reprise (feat.JK Kim)
06. 88 (feat.BIGYUKI)
07. Circus II (feat.Yusuke Sase & Weedie Braimah)
08. BaBaBattleRoyale (feat.Kei Koganemaru)
09. Still Remember (feat.ermhoi)





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【KKBOX Podcast「My First Jazz」】
JJazz.Netとの連動によるオリジナルコンテンツ。
ジャズ・ミュージシャン本人の音声コメントをお届けしています。
KKBOX Podcast


KKBOX
500以上のメジャー・ローカル音楽レーベル様や権利者様と提携し、9,000万曲の楽曲を配信。
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2022年より日本でも音声コンテンツ/ポッドキャストの提供がスタート!


曽根麻央 Monthly Disc Review2026.4_ Keith Jarrett : The Melody At Night, With You:Monthly Disc Review

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Title : 『The Melody At Night, With You』
Artist : Keith Jarrett


みなさんこんにちは、曽根麻央です。 今日は究極にプライベートなアルバム、そしてリラックスしたい時にピッタリな名盤を聴いていきたいなと思います。

皆さんは朝目覚めて、最後にきちんと自分の時間に余裕を持って過ごせたのはいつでしたか? 現代は携帯の通知もひっきりなしですし、仕事のタスクも可視化されて、なんだか便利になればなるほど忙しくなるなという感じがしています。そんな現代人の心にピッタリと寄り添ってくれるのが、このアルバムかもしれません。なぜなら、このソリスト、キース・ジャレットも当時、自身の過酷な体調と闘い、ピアノに向かうことで自分自身を癒やし、再び音楽と繋がろうとしていたからです。


1996年末から、キースは慢性疲労症候群(CFS)により、演奏活動はおろか、ピアノの前に座ることすら困難な状態に陥りました。そんな中、1997年の後半から少しずつ体調が回復し始めた頃、自宅の「ケイヴライト・スタジオ(Cavelight Studio)」で、自分自身を癒やすように録音を進めていったようです。
1999年のインタビューで、彼はこう振り返っています。


「1997年の12月、妻へのクリスマス・プレゼントとして録音を始めました。ちょうどハンブルク・スタインウェイをオーバーホールしたばかりだったので、その状態を試してみたかったのです。
スタジオは自宅のすぐ隣にあるので、目が覚めて、体調がいくらかマシな日があれば、テープ・レコーダーを回して数分間だけピアノを弾きました。それ以上続けるには、あまりにも疲れすぎていたのです。
やがて、マイクの配置や楽器の新しいアクションといったものが、不意にカチッと噛み合い始めました。これほどまでに静かに弾けるものか、と。そして、メロディが、楽曲そのものが持つ、内面的なダイナミクス。それは、心の準備ができている者にしか訪れない、小さな奇跡の一つでした」


こんな言葉からもわかるように、この演奏自体がキース・ジャレットにとってのセルフ・メディテーションだったのかもしれない。そんな気がする音楽なのです。

私自身、年子の幼い子どもたちの子育てが重なり、3〜4時間ごとに夜も起こされる日々が2年続いています。それでもなお続く制作と本番を必死にこなしていく毎日。正直、今の私はかなり「疲れている人間」の部類に入るでしょう。そんな私の心にスッと入ってきた、だからこそ今、この作品を皆さんにご紹介したいと心から思ったのです。

このアルバムには、決して派手なリハーモナイズや、キース特有の技巧的なメロディラインがあるわけではありません。しかし、その1秒1秒に輝きがあります。 音楽家はやはりどこかで自分を誇示したい生き物ですから、私たちはつい「新しい解釈を」「面白いリハモを」と足し算をしてしまいがちです。しかしこのアルバムは極限の「引き算」です。シンプルなコード、抑えられたダイナミクス、そこに究極の美しさを感じます。

選曲もジャズ・スタンダードやミュージカル・ナンバーなど、元々「歌詞」を持つ楽曲が多く、それら本来のメロディが持つ意味を最大限に引き出すような演奏スタイルになっています。 また、プライベートな空間で至近距離に配置されたマイクで捉えられた音は、キースとの距離を驚くほど近くに感じさせます。ソフトに弾いているにもかかわらず、鍵盤が底に当たる音や弦の響きまでもが、すぐ耳元で鳴っているかのような臨場感があるのです。

そして、ピアノの音が減衰して次の音に移るまでの「間」も、非常に印象的です。当時の彼に体力がなかったからこの「間」が生まれたのかはわかりませんが、その空間には、聴き手である私たちの溜息や感情が入り込む余白があります。音楽が積極的に何かを主張するのではなく、ただそこに寄り添ってくれる「受容的」な響き。それが私たちの癒やしとなってくれることは確かです。

2017年にコンサート活動を休止して以降、彼の演奏をリアルタイムで体験することは難しくなりましたが、彼が遺したこうした作品は、今後も何度も再注目され、後世に多大な影響を与え続けることでしょう。



文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『The Melody At Night, With You』
Artist : Keith Jarrett
LABEL : ECM
発売年 : 1999年



アマゾン 


【SONG LIST】

1. I Loves You Porgy
2. I Got It Bad and That Ain't Good
3. Don't Ever Leave Me
4. Someone to Watch Over Me
5. My Wild Irish Rose
6. Blame It on My Youth/Meditation
7. Something to Remember You By
8. Be My Love
9. Shenandoah
10. I'm Through with Love




<<曽根麻央 公演情報>>


2026年4月17日(金)
KOBUSHI TRIO
会場:東京・浜離宮朝日ホール
出演:三浦一馬(bn)、浅野祥(三味線,歌)、曽根麻央(p,tp)、KAN(per) 
https://eplus.jp/sf/detail/4474970001?P6=001&P1=0402&P59=1


2026年4月25日 (土)
浅野祥 津軽三味線コンサート「響」
会場:宮城・仙台市シルバーセンター
ゲスト:曽根麻央 (Piano & Trumpet)、ビルマン聡平 (Violin)、佐山裕樹 (Cello)
https://www.edward.co.jp/live/search/detail/1323/


2026年5月8日(金)
Marty Friedman Plays Piazzolla And More Concert Hall 2026
会場:東京・浜離宮朝日ホール
出演:マーティ・フリードマン(g)、三浦一馬(bn)、曽根麻央(p)  
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2533736


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』2025.10『Crystal Silence / Gary Burton & Chick Corea』2025.11『North Sea Jazz Legendary Concerts / Wayne Shorter』2025.12『Merry Christmas / Bing Crosby』2026.01『銀界/山本邦山』2026.02『Flugel / Andris Mattson』2026.03『Live at the Piano / Cory Henry』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

My First Jazz Vol.96-藤枝伸介:My First Jazz

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Title : 『Charlie Parker Story On Dial Vol.1』
Artist : Charlie Parker


サックス奏者のSINSUKE FUJIEDAです。


今回ご紹介するアルバムは、Charlie Parkerの『Charlie Parker Story On Dial Vol.1』です。
アルバムを久しぶりに聴き返しまして、改めておもしろいことに気づきました。
タイトルに"Story"と入っていますが、これまではあまり意識していなかったのですが、改めて聴くと本当に一つの物語のように感じられます。

例えば「The Famous Alto Break」。
ほんの数秒のアルトサックスのフレーズには、ビバップの、そしてジャズの歴史が煌めく瞬間があります。

そして「Lover Man」。
テーマが終わった後のブレイク、ソロが始まる音を聴いた瞬間、思わずYeahと声が出てしまいました。

この録音は、Charlie Parkerが酩酊した状態で録ったことが知られていますが、私は、彼が新しいハーモニーの響きを無意識に掴んでいたのだと感じました。
天才の閃きと、人間の弱さ、両方が同じレコードに刻まれている、、だからこのアルバムは単なる名演集ではなく、本当にCharlie Parkerの"Story"なんだと思います。


藤枝伸介



My First Jazz

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Title : 『Charlie Parker Story On Dial Vol.1』
Artist : Charlie Parker
LABEL : Spotlite Records
RELEASE : 1985年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】
01. Diggin' Diz
02. Moose The Mooche
03. Yardbird Suite
04. Ornithology
05. The Famous Alto Break
06. A Night In Tunisia
07. Max Making Wax
08. Lover Man
09. The Gypsy
10. Bebop
11. This Is Always
12. Dark Shadows
13. Bird's Nest
14. Hot Blues (Cool Blues)
15. Cool Blues (Hot Blues)
16. Relaxin' At Camarillo
17. Cheers
18. Carvin' The Bird
19. Stupendous



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SINSUKE FUJIEDA GROUP LIVE IN FUKUSHIMA "福島" Live at Jazz Spot MINGUS

【LINE UP】

■LIVE

SINSUKE FUJIEDA GROUP
■SELECTORS (DJs)

MARCY
SEEYA
STILLMOMENT

【DATE】

2026/3/21 (SAT)
 
OPEN 19:00 / LIVE 21:00

【VENUE】

Jazz Spot MINGUS
福島県福島市大町1-7 大町ビル2F

【ENTRANCE】

ADV ¥5,000|80 Limited

DOOR ¥5,500
  ※入場時、別途1ドリンク

【TICKET】

Tel: 024-522-5341

Mail: mingus@neo-jnet.com

Infomation: https://www.jeynet.ne.jp/~mingus/




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【藤枝伸介】
藤枝伸介(SINSUKE FUJIEDA)は、日本のサックス奏者・作曲家。
自身のリーダープロジェクト SINSUKE FUJIEDA GROUP を中心に、演奏・作曲・プロデュースを一体化した活動を展開している。
2025年、フランスの Superfly Records よりリリースしたLP『福島』が世界的評価を獲得。
Juno Records、Discogsでは即完売・高評価を記録し、売上チャート1位を達成。
iTunesジャズアルバムチャートでは、タイ1位、フィンランド2位、イギリス4位、ベルギー5位、アメリカ7位など、50か国以上でランクインした。
同年、Fuji Rock Festival 2025 最終日・Crystal Palace Tent のクロージングアクトを務め、大きな注目を集める。
最新作はCD『福島』完全版(2025年12月10日リリース)。
同日、LP『福島』セカンドプレスも発表。
アコースティック・ジャズを軸にしながら、クラブジャズ世代からオーセンティックなジャズリスナーまで幅広い支持を集めている。
2012年より自身のレーベル SoFa Records を主宰。
作品制作からリリース、ライブ制作、流通までを一貫して手がけ、国内外で活動を展開。
現在は、生活・演奏・思考が分離しない表現を軸に、独自の音楽活動を続けている。
http://www.sinsukefujieda.com



Latest Album

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Title : 『FUKUSHIMA 福島(完全版)』
Artist : SINSUKE FUJIEDA
LABEL : SoFa RECORDS
RELEASE : 2025年12月10日

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】
01. FUKUSHIMA
02. FLOAT IN ORIENTAL SPRING
03. SILENT NIGHT
04. NOBODY KNOWS
05. PERSPECTIVE
06. ABSTRACTION JAZZ MODE
07. HORIZE
08. JIVA
09. FLYING STEPS





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【KKBOX Podcast「My First Jazz」】
JJazz.Netとの連動によるオリジナルコンテンツ。
ジャズ・ミュージシャン本人の音声コメントをお届けしています。
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曽根麻央 Monthly Disc Review2026.3_Cory Henry : Live at the Piano:Monthly Disc Review

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Title : 『Live at the Piano』
Artist : Cory Henry


みなさんこんにちは、ジャズピアニスト、トランペッターの曽根麻央です。
今日は2023年にリリースされた、オルガンの名手Cory Henry(コーリー・ヘンリー)の『Live at the Piano』をご紹介します。
第66回グラミー賞(2024年)の「Best Alternative Jazz Album」部門にノミネートされたことでも話題になりましたが、今日はその魅力をお伝えできればと思います。


オルガンの名手である彼が、あえてオルガンを封印。ピアノとボーカルマイク、そして右足にバスドラム(キックドラム)を配置した独自のセッティングで挑んだソロ・ライブの様子が、生々しくも大迫力で記録されています。
収録はロサンゼルスのApogee Studiosで、観客を入れた公開収録スタイルで行われました。この時のライブ映像は、ApogeeのオフィシャルYouTubeチャンネルでも見ることができます。
Apogee(アポジー)とは、我々音楽家の間で名高いオーディオインターフェースのメーカーです。オーディオインターフェースというのは、音というアナログ信号をデジタル信号に変える機器のことで、パソコンでのレコーディングが一般的な現在のミュージシャンには必需品です。この機材がないと録音ができないと言っても過言ではありません。 僕自身、学生時代からずっとApogeeの製品を愛用しているファンなのですが、このアルバムが最新機材のPRも兼ねて制作されたと聞き、そのバックグラウンドを知るだけでワクワクしました。
音響機器メーカーが主導した録音ですから、とにかく音がクリアです。ピアノの響きも鮮明ですし、ボーカルマイクから聞こえてくる息遣いまでもがグルーヴィー。そういったささやかな「声」にまで耳を澄ませてしまいます。そして、右足のバスドラムがしっかり低いところで鳴り響き、全体のサウンドのコア(核)となっています。


このアルバムでは、ソリストとしてのCory Henryを純粋に体験することができます。
普段は完成されたバンドサウンドの作品が多い彼ですが、今回は素のままのCory Henryといえます。InstagramなどのSNSでふと見かける、あの圧倒的に格好いい演奏の断片が、そのまま最高峰の音質でパッケージされたようなイメージです。
音楽性も、彼のルーツである教会音楽からジャズ、さらにはキース・ジャレットのようなモダンな響きまでを感じさせるクロスオーバーな世界観が素晴らしく、この密度をソロで聴かせていることに驚かされます。ピアニストとしての卓越した技術、拍を突っ込んだり遅らせたりといった自由自在な駆け引き、遊び心のあるフレーズ、そしてソウルフルな歌声......彼の魅力が凝縮されています。


特に注目したいのは、彼がオルガニストとして培ってきた「足が自由に動く」という利点を活かし、バスドラムをピアノ演奏に組み込んでいる点です。
ピアノを弾きながら、ここまで正確にペダルを踏み込むのは至難の業です。単に4分音符を刻むだけでなく、「Our Affairs」では裏拍で踏み込んだり、「Switch」では複雑な左手のリズムパターンを補完するようにベースドラムがグルーヴの基盤を作っています。手と足の独立(インデペンデンス)をここまで高精度に実現できるのは、まさにオルガニストとしての身体特性をピアノに落とし込んだ、素晴らしい工夫だと言えるでしょう。

収録曲は古い教会音楽や、自身の過去のアルバムからのセルフカバーが中心です。
1曲目の「Testimony」では、まるで日曜日の礼拝での告白(Testimony)のように、「今日目が覚めたら......」という自然な語りから始まります。音楽が常に生活のすぐそばにある、そんな彼の歩みを感じ取れるアルバムです。
ぜひ聴いてみてください。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Live at the Piano』
Artist : Cory Henry
LABEL : Philips
発売年 : 2023年



https://ingrv.es/live-at-the-piano-du1-s


【SONG LIST】

1. Testimony
2. Down Through the Years
3. Dreaming Of
4. Icarus
5. Happy Days
6. Switch
7. Our Affairs
8. No Guns
9. Dedicated




<<曽根麻央 公演情報>>
2026年3月21日(土)
会場:The Moment Jazz Club
和田明 (Vocal) & 曽根麻央 (Piano & Trumpet)
アルバム『Sings & Plays』の世界を、気鋭のヴォーカリスト和田明と共に。


2026年4月2日(木)
曽根麻央:Cinema Jazz -Love Story-
会場:東京・Hakuju Hall(渋谷)
ピアノ、ヴァイオリン、チェロによるピアノ・トリオ編成で贈る、映画音楽とジャズの夕べ。
出演:曽根麻央(p)、ビルマン聡平(vl)、西谷牧人(vc) 
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2603267


2026年4月17日(金)
KOBUSHI TRIO
会場:東京・浜離宮朝日ホール
文化の枠を超えたクロスカルチャー・プロジェクト。
出演:三浦一馬(bn)、浅野祥(三味線,歌)、曽根麻央(p,tp)、KAN(per) 
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2603078


2026年5月8日(金)
Marty Friedman Plays Piazzolla And More Concert Hall 2026
会場:東京・浜離宮朝日ホール
世界的ギタリスト、マーティ・フリードマンを迎えた異色のコラボレーション。
出演:マーティ・フリードマン(g)、三浦一馬(bn)、曽根麻央(p)  
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2533736


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』2025.10『Crystal Silence / Gary Burton & Chick Corea』2025.11『North Sea Jazz Legendary Concerts / Wayne Shorter』2025.12『Merry Christmas / Bing Crosby』2026.01『銀界/山本邦山』2026.02『Flugel / Andris Mattson』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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