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2015年12月アーカイブ

Canadian Independent Music Association主催、トレード・ミッション レポート:ニュース / NEWS

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Canadian Independent Music Association(CIMA)が主催する、カナダの音楽アーチストを紹介するトレード・ミッションが来日。過去3回の訪日ミッションでは、350万カナダドル(約3億2800万円) にも上るビジネスが生まれ、208件もの商取引が成立。第4回目の今回は音楽会社/団体12社と8組のミュージシャンが来日。最新のカナダ音楽を紹介し、原盤や著作権のライセンス、肖像権等の著作隣接権、レコードデビュー、コンサート機会の創出、そしてデジタルやモバイルコンテンツを通して新しい音楽ビジネスでの成果を目指すことを目的とした。

そのショーケース・ライブ『Canadian Blast』が11月17日(カナダ大使館内・オスカー・ピーターソン・シアター)、19日(渋谷・duo music exchage)の2日間にわたって行われました。

17日(火)は主にジャズ、アダルト・コンテンポラリー、インストゥルメンタル・ミュージックを、19日(木)はロック、、ヒップホップ、インディ・ロックのアーチストが参加。日本ではまだ馴染の少ないカナダの音楽シーンやその魅力についてインタビューと共にご紹介します。

TEXT/INTERVIEW:常見登志夫 Toshio TSUNEMI(ライター)






―ショーケース・ライブに先立ち、CIMAの会長、Stuart Johnston氏にコメントをもらいました。

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「Justin Timeとかジャズに強いレーベル、アーチストも来ています。今回はBop度はそんなに高くはないんですが、前回よりは強くなっているかもしれません。基本的には3年前のミッションと同じなんですが、知り合いや協力者も増えているので、より日本の事務所、プロモーターとの関係性を強くしたいと考えています。日本を含めたアジアの市場は、カナダにとって非常に有益な市場。これまでの3回で取扱い件数は約200、4~5億円くらいのビジネスが生まれています。共通性もあるし、カナダの造詣の深いマーケットであります。団体の代表として言いますが、日本がジャズに対して親しみがあり、造詣が深いというのはよく理解しています。だからこそこういうショーケースを設けて金銭的なビジネスをするべく来ている。ここから生み出せる可能性を期待している。例えばブランディ(vo,b)のプロデューサー、ジム・ウェストはオスカー・ピーターソンとも仕事をした人。ジャズを理解して日本のオーディエンスに可能性を感じているのは変わらないのでは。数ある大使館の中で、カナダ大使館がこういったショーケースを後押しするのは、珍しいほうかもしれない。ベルリン、ダラス、NY、LA、オーストラリア、シンガポールでもCIMAが動いています。公的資金、私的資金を投じていますが、確かに盛んな方かもしれませんね。国や放送局などが協力してくれています」

Canadian Independent Music Association
Justin Time Records


―17日に出演したアーチスト4人(組)のプロフィールとコメントをご紹介。


1.The Jessica Stuart Few
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The Jessica Stuart Fewはボーカル/ギター/琴を演奏するジェシカ・スチュアートがリーダーのトリオ。

プロフィールに「ジョニ・ミッチェルをほうふつとさせる抒情的なボイス」とある通り、確かに耳に残るボーカルが魅力。フォークジャズなるムードは、確かに頷かされる響きをもっている。
日本の琴を大胆にフィーチャーするなどオリエンタルを前面に押し出すのは、日本のマーケットでは逆に難しいとは思うが、ステージを見る限りかなりのテクニックを持っている。幼いころ、母親に習っていたとのことで、日本にも短期間だが住んでいたことがある。

2013年には日本ツアーを行い、モーションブルー横浜や横濱ジャズプロムナードにも出演。
3作目の『Same Girl EP』(2015)をリリースしたばかりだ。前回の来日と同じく、トロントで日本人が主宰するCreators' Loungeが全面的にバックアップしている。

「子供の時に日本に住んでいて、お母さんが琴と三味線をやっていて習いました。まず、ギターやドラムスのバンドのためにまず作曲をしますが、琴はちょっと違ったインスピレーションのために入れています。(琴の譜面はまった違うが)そんなことはありません。あまり関係ない。琴の譜面は番号で書いてあるけど、琴のパートのプレイそのものは覚えてしまっているから。ジャズのイディオムにもあまり支障がない。琴は9歳、ギターは15歳からやってました。ミリアッドにも曲を提供しています。マイルスやコルトレーンはもちろんアイドルだったんだけど、大学時代にデイブ・ホランド(b)を初めて聴いたとき、あ、これもジャズ、と感じました。グルーブが強いんだけど、タイミングがいつも変わっている。ちょっと変わっているかもしれないけど、ジャズの入り口としてはデイブ・ホランドが印象的でした。でもジョニ・ミッチェルとかスティービー・ワンダー。日本はジャズの楽しみ方がカナダと違うと思うので、自分たちが等身大で演奏できる、そのことを楽しみにしています。」


Setlist
Easier Said Than Done/Open Door/Talk About It/The Letter/Here Comes The Rain/(Don't Live Just For The) Weekend


【The Jessica Stuart Few - "Don't Ya"】



The Jessica Stuart Few




2.Brandi Disterheft
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Ariel Pocock
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Brandi Disterheft(ブランディ・ディスターヘフト)は、オスカー・ピーターソンからも"オスカーにもShe is what we call serious."と賛辞をもらったベーシスト/ボーカリスト。NYでロン・カーターに師事。2008年にリリースしたデビューアルバム『Debut』がJUNO Awardの「Jazz Album of the Year」を獲得している。クラシックも好きだけあってアルコでのピッチも見事だ。

ブランディ自身のプロデュースによる『Gratitude』が最新盤となっている。ビンセント・ヘリング(as)、リニー・ロスネス(p)、グレゴリー・ハッチンソン(ds)など、NYの中心ミュージシャンが参加している。

なお、今回ピアノで参加したAriel Pocock(アリエル・ポーコック)は2013年にシーマス・ブレイク(ts)、ラリー・グレナディア(b)といったNYの強力なアーチストと共演したコンテンポラリー・ジャズのアルバムをリリースしたボーカリスト・ピアニストでもある。

「(ブランディ)オスカー(ピーターソン)は私にとっての恩師で、リズム感がレイ・ブラウンと近い、と言ってくれたり、とても優しくしてくれました。

ベースを始めたのは高校生の時。母親がB3(ハモンド)オルガンやピアノを弾くなど、家庭の環境もありました。ベースのアイドルはスコット・ラファロやレイ・ブラウン。今はNYに住んでいて、ビンセント・ヘリング(as)やサイラス・チェスナット(p)、ジョン・ファーンズワース(ds)とよくセッションしています。日本人とも共演していますよ。寺久保エレナ(as)さんとか。ビンセントの家で一緒にセッションしました。NYではビバップ中心ですね。

(これからリリースされる)4枚目はピアノ・トリオで、ハロルド・メイバーン(p)、ジョン・ファーンズワース(ds)と共演。1枚目(『デビュー』)がカナダのJUNO賞をもらいました。高校が同じだったリニー・ロスネス(p)やグレゴリー・ハッチンソン(ds)とのトリオ。今日一緒に演奏するアリエル(ポーコック)もリニーを彷彿させるプレイのピアニストです。リニーは今、ロン・カーターと一緒にプレイしていますが、そのロンが私のベースの先生でした。

今回の来日では、リニーやビンセントも一緒に連れてきたかったんですが、日程の調整が付かず...。次回は別の形で一緒に来れたらいいと思っています。7年前にも一度来日しています。その時はワールドミュージック寄りのフルート奏者に雇われて、という感じで。

叔母がセルジオ・メンデスのバンドでボーカルをやっていたので、その影響でボーカルも始めました。ベース奏者としてはスタンダードを中心としたビバップなんですが、ボーカルではオリジナルもやりますし、いろんなスタイルでやっています。今回はこのショーケースだけですが、次回はぜひ小さなジャズ・クラブで演奏したいですね。」


Setlist
He May Be Yours(Helen Humes)/May I Love(G.Gershwin)/If Dreams Come True(sung by Nancy Wilson)/Gratitude(Brandi Disterheft)/Tritocism(Lucky Thompson/Oscar Pettiford)/Compared To What(Les McCan)


【Brandi Disterheft Trio- I'll Remember April】



Brandi Disterheft
Ariel Pocock




3.Myriad3
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Myriad3(ミリアッド・スリー)は、Chris Donnelly(p,syn)、Dan Fortin(b)、Ernesto Cervini(ds,per,cl,bcl)が2010年に結成したトリオ。リーダーは設けず、曲もそれぞれが提供している。2作目『The Where』(Alma Records/Universal)を2014年6月にリリース。

「E.S.T.とかバッド・プラスと比較されることが多いけど、ロックとかエレクトリックとかにも影響を受けてて、ジャズという大きな傘には入っているかと思う。そういう意味ではパワフルな感じというのは合っているのかも。だからプレイするのは90%はオリジナル。今日も1曲はスタンダード(C.ジャム・ブルース)をやるけど、僕らのアレンジ、バージョンでやらせてもらう。3人とも曲を書くし。

レコーディングの時はシンセを使ったりするけど、アコースティックなピアノ・トリオであることは間違いない。エフェクターも使わない。E.S.T.のファンにはきっと好まれるだろう、と書かれることがあるけど、それはコンポジショナル・アプローチというか、作曲のアプローチが独特で、曲のストラクチャーとか曲の発展性とか、一つひとつのピースをどうやって組み合わせていくかとか、そのアプローチが似ているから、かもしれない。

実は3人ともまったく違うテイストなんで、共通のアイドルもいないんだ。その3人が組み合わさっているからこそユニークなトリオになっているのだと思う。」


今回は5回目のツアーの途中で、ちょうど全米(NY、バルティモア、デトロイト、クリーブランド、フィラデルフィア、)や、ドイツ、オーストリア、チェコほか、ヨーロッパで9か所ツアーを行ってきたばかり。11月13日(金)にパリでテロがあった現場(バタクラン劇場)から2ブロックのところで演奏していたそうだ。

「とても怖かった。日本もそうだけど、アジアは行ったことがないので、これを突破口にしたいと思っている。東京ではここ(ミュージック・ミッション)だけなのでとても楽しみにしている。今日のステージを見ていただいてこの次はもっとできるとうれしい。バンドとしての来日は初めて。僕(Ernesto、ds)はジーン・ディノヴィ(p)と一緒に日本ツアーを行ったことがある。僕が20歳の時、ジーンは80歳だった(笑)。それぞれの仕事で何度か日本には来ているよ」


Setlist
First Flight(Chris Donnelly)/Undertow(Chris Donnelly)/C Jam Blues(Duke Ellington)/Western(Ernesto Cervini)/Skeleton Key(Chris Donnelly)


【Myriad3 First Flight】



Myriad3
Chris Donnelly
Dan Fortin
Ernesto Cervini




4.Declan O'Donovan
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Declan O'Donovan(デクラン・オドノバン)は、コメントにもあるように、往年のアーチストに多大な影響を受けているシンガー・ソングライター。実は、このカナダ大使館でのイベントに一般のファンから、どうしても聞きたいと電話でのリクエストがあったアーチストでもある。大使館側では、都内では下北沢で2日間ライブを行っているのでそちらを紹介したそうだ。
ステージはMyriad3のDan Fortin(b)とErnesto Cervini(ds)がサポート。入国して初めてのリハーサルとなったが、圧倒的なステージを繰り広げた。
8月に国内盤『Declan O'Donovan』(P-vine)がリリースされている。

「(P-vineプロデューサー田中氏) 今年の5月にトロントで音楽の見本市"カナディアン・ミュージック・ウィーク"が開かれて、私どものスタッフが見に行きました。彼に勧められて私がYouTubeで見たところ無茶苦茶かっこよかったので、これは単純にもっとも自分の好みの音楽だ、これはぜひ日本でリリースさせていただきたい、ということになって、直接本人にコンタクトしたわけです。それまで全くノーマークの存在でした(笑)。

CDの日本でのマーケットも厳しくはなっていますが、こういった洋楽のアーチストを紹介していかないと日本ではまったく広まらないので、少しでも貢献したいです。」


「(オドノヴァン) ピアノは4歳から、作曲は高校入学した16,7歳くらいの時に書き始めました。

当時はトム・ウェイツ、ボブ・ディラン、ランディ・ニューマンがアイドルでした。今日のメンバーの中では、いわゆる王道ジャズではないとは思いますが、ピアノを習ったときに、ラグタイムやストライド奏法も習っています。

今日は3人でステージに上がりますが、ふだんは一人で演奏しています。またステージの雰囲気にもよりますが、オリジナルを演奏することが多い。カバーは先ほど挙げたトム・ウェイツやボブ・ディランも歌うんですが、カナダのバッド・アンクルとかアメリカのジョー・ヘンリーといった現在のソングライターの曲を取り上げることもある。オリジナルでは第3者的な語り口をモットーにストーリー性を重視しています。(日本のデビュー盤は)"旅立ち"をテーマにしています。」


Setlist
Hank/Crumble/Cheap Souvenir/Something To Run Away From/Death Of A Salesman/Reckless/I Want You Close


【Declan O'Donovan "Hank"】



Declan O'Donovan


夜ジャズミーティング2015:スタッフの声 / FROM STAFF

ジャズDJが集い、その年を振り返りつつベストディスクを発表するという、
年末恒例企画「夜ジャズミーティング」。
昨年に続き、今年も「HMV record shop渋谷」にて公開収録を行いました!!

■夜ジャズ.Net
//www.jjazz.net/programs/yorujazz/
(配信期間:2015年12月16日~2015年1月20日)


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参加メンバーは、松浦俊夫さんとSOIL&"PIMP"SESSIONSの社長。

前半は、3人が関わったジャイルス・ピーターソンのドキュメンタリー、
『ブラジル・バン・バン・バン』や今年話題をさらった注目のテナー奏者、
カマシ・ワシントンについてなど、2015年のトピックを振り返り。
そして後半戦はそれぞれの年間ベストディスクについて。


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その模様は番組でお楽しみ頂くとしまして、ここでは皆さんの年間ベスト3作品をご紹介。
レギュラーメンバー、沖野修也さんのセレクションも届いております。

昨年に続き今年も新世代のジャズが注目されましたが、
2015年はKyoto Jazz SextetやSunaga t experienceのアルバムがブルーノートからリリース!
その他、才能溢れる日本の若手ジャズミュージシャンにも
焦点があてられた1年でもあった気がしますね。

現在「HMV record shop渋谷」ではこれらの作品が展開されています。
是非お店にもお立ち寄り下さい。

[Text:岡村誠樹]


収録協力:HMV record shop渋谷


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【2015年 年間BEST3アルバム】


selected by 須永辰緒


No.1
Tの讃歌


Tの讃歌 / T字路s

リリース:2015年6月24日
Vivid
製品番号:HXCD9210

こんな「隙間」(褒め言葉)があるのかと今年一番衝撃を受けた。ドメスティックではエゴ・ラッピン以来かもしれない。ボ・ガンボスから森進一までカヴァー選曲の妙にも底知れないセンスが。やられた、という感じです。踊れないけど、このボーカルの生命力は今このフロアでこそプレイすべきだと思ってパワープレイしました。








No.2
People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm


People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm (25th Anniversary Edition) / A Tribe Called Quest

リリース:2015年12月18日
Jive/legacy
製品番号:88875172371

A.T.C.Q.25thイヤー。確か年始にはJ PeriodによるQ-TIP音源だけのMIXが無料で配信されたりしていて"予感"満載だったけど、7インチ変形BOX SETがリリースされたり(海外のみ)締めくくりは豪華リミックス入りの新装丁25thリィシューという"らしい"仕掛け満載な一年になりました。ファレル(ウィリアムス)のリミックスが収録されてますが、これだけでも買う価値があると思います。




No.3
Mission


Mission / Kyoto Jazz Sextet

リリース:2015年4月15日
ユニバーサルミュージック
製品番号:UCCJ2121

ガビーンでした。同時期にアルバムを制作していた身(発売はKJMの方が先。同じBLUE NOTEからのリリース)として全く異なるアプローチをされていたので焦った。どちらかというと拙「STE」の方が分かり易くダンスに寄せたので、名曲カヴァーの生演奏で最先端UK主導クラブマナーをリロードするという観点は僕には思いつかなかった。ダンスミュージックを熟知していないとこういったジャズ作品は作れないという見本。










【T字路s / 少年】



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【須永辰緒 プロフィール】
Sunaga t experience =須永辰緒によるソロ・ユニット含むDJ/プロデューサー。 DJとして東京、大阪でレギュラー・パーティーを主宰 。DJプレイでは国内47都道府県を全て踏破。欧州からアジアまで海外公演も多数。MIX CDシリーズ『World Standard』は10作を数え、ライフ・ワークとも言うべきジャズ・コンピレーションアルバム 『須永辰緒の夜ジャズ』は15作以上を継続中。国内から海外レーベルのコンパイルCDも多数制作。多数のリミックスワークに加え自身のソロ・ユニット"Sunaga t experience"としてアルバム4作を発表。最新作は 『夜ジャズDigs Venus Opus1~5』(Venus)『World Standard Crazy Ken Band』(UNIVERSAL)『VEE JAYの夜ジャズ』(ビクター)等。多種コンピレーションの 監修やプロデュース・ワークス、海外リミックス作品含め関連する作品は延べ200作を超えた。日本一忙しい"レコード番長"の動向を各業界が注目している。

須永辰緒 Official Site  




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selected by 松浦俊夫


No.1
The Epic


The Epic / Kamasi Washington

リリース:2015年5月16日
Brainfeeder
製品番号:BRFD050

2015年を代表する作品と言ったらこれしか思い浮かびませんでした。春にはじめて音源を入手し、ラジオでプレイして以来、この衝撃を超える作品はついに現れませんでした。ライヴも体験し、インタビューも叶いました。この作品をBrainfeederがリリースしたということも大きな意味があったと思います。来年も引き続き注目していきます。










No.2
Elaenia


Elaenia / Floating Points

リリース:2015年11月4日
Beat Records
製品番号:BRC487

実際の年齢とはうらはらに過去の音楽まで熟知しているミュージック・ラヴァーが5年の歳月をかけて作り上げた素晴らしいファースト・アルバム。久し振りに世界中のDJたちがこぞって楽曲をプレイした注目作品。さて、我が国では?。












No.3
BigSun


BigSun / Chassol

リリース:2015年5月18日
Tricatel
製品番号:TRICDFR046

とても才能のあるアーティストCassolに出会うことが出来た2015年。春の初来日時にインタビューし、夏にパリで再会し、秋に東京で同じフェスティバルに出演を果たしました。さて、2016年は?楽しみです。












【Kamasi Washington - 'Change of the Guard'】



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【松浦俊夫 プロフィール】
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。日本におけるクラブカルチャー創世記の礎を築く。12年間で5枚のフルアルバムを世界32ヶ国で発売し、高い評価を得た。独立後も精力的に国内外のクラブやフェスティバルでDJ。さらにイベントのプロデュースやファッション・ブランドなどの音楽監修を手掛ける。2013年、4人の実力派ミュージシャンとともに、東京から世界に向けて現在進行形のジャズを発信するプロジェクト"HEX"を始動。Blue Note Recordsからアルバムをワールドワイド・リリース。InterFM"TOKYO MOON"(毎週水曜23:00)好評オンエア中。

松浦俊夫 Official Site  




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selected by 社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)


No.1
BigSun


BigSun / Chassol

リリース:2015年5月18日
Tricatel
製品番号:TRICDFR046

今年一番聞いたし、人に勧めたのはやっぱりこれですね。フランスのCHASSOLさん。彼のルーツであり、僕が今一番行ってみたい島であるマルティニークでの"フィールドレコーディング=映像"を素材として"コラージュ+構築"されたアルバム。聞いてると脳内に勝手に映像が生成されていきます。そして彼が撮影した映像とリンクしたライブを生で体験することで、この作品は完成します。ブラボー!








No.2
JInto Forever


Into Forever / Matthew Halsall & The Gondwana Orchestra

リリース:2015年10月2日
Gondwana
製品番号:GONDCD013

和、というかオリエンタルがテーマだそう。音階に懐かしさを感じつつも、ストリングスによってビルドアップされていく壮大な世界感にどんどん入り込んでしまいます。そこに乗っかってくるボーカルのオニヤマさんの声がまた呪術的でミステリアスな雰囲気満点。ちなみにこのアルバム録音したマンチェスターの80Hertzスタジオ、こないだ行ってきましたが、いい音録れますよ。






No.3
Ancient Mechanisms


Ancient Mechanisms / LV

リリース:2015年10月9日
Brownswoo
製品番号:BWOOD0143CD

ダークなフロアからムクムクっと湧き上がって来たようなビートと、TIgran Hamasianのキラキラした繊細なピアノが重なり合うことで出来上がったのは、こんなにも美しく文学的なアルバム。この手のアプローチの作品は2015年豊作だったような感触がありますが、アルバム通して何回も聞きたくなるのは、やはりこれでしょう。










【Chassol - Reich & Darwin (Big Sun)】



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【社長 プロフィール】
現メンバーでの活動12年目に突入した「SOIL&"PIMP"SESSIONS」のアジテーター。ジャズの枠組みを超えたパンキッシュでエネルギーに満ち溢れたパフォーマンスは世界中で高い評価を受け、数多のビッグフェスティバルに出演中。また、社長のもう一つの顔であるDJとしては96年より活動を開始し、ジャズを軸にしながらジャンルの壁を超えた選曲で、高揚感に包まれたフロアを演出している。さらに、2014年10月よりJ-WAVEの毎週土曜日深夜にて、ジャズバラエティ番組『V.I.P.』(25:00-27:00)のナビゲーターを務めるなど、ラジオDJとしても活躍中。

SOIL&"PIMP"SESSIONS Official Site  




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selected by 沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)


今年の3枚は国産ジャズの中から選んでみました!『STE』は、まさに日本でしか作れないアルバム。「Dirty30」におけるジャズと日本語ラップの邂逅は奇跡的ですらあります。同じBLUE NOTEからリリースされた『Mission』を手前味噌ながら入れさせて頂きました。単なるカバーではなく、60年代~現代までのブラック・ミュージクとのマッシュ・アップでもあったんですが評論家からもスルーされ・・・(苦笑)。ま、20年後位に価値が理解されるかなと。大塚広子が手掛けたコンピも日本ならではの作品。若手のユニークなジャズが満載でしたね。来年もJAPANESE JAZZに期待!!


STE


STE / Sunaga t experience

リリース:2015年5月20日
ユニバーサルミュージック
製品番号:UCCJ2123


















Mission


Mission / Kyoto Jazz Sextet

リリース:2015年4月15日
ユニバーサルミュージック
製品番号:UCCJ2121

















PIECE THE NEXT JAPAN NIGHT


PIECE THE NEXT JAPAN NIGHT / V.A

リリース:2015年12月2日
Key of Life+
製品番号:KOL3

















【KYOTO JAZZ SEXTET-Speak no evil】



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【沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE) プロフィール】
DJ/作曲家/執筆家/選曲評論家/Tokyo Crossover/Jazz Festival発起人/The Roomプロデューサー。KYOTO JAZZ MASSIVE名義でリリースした「ECLIPSE」は、英国国営放送BBCラジオZUBBチャートで3週連続No.1の座を日本人として初めて射止めた。これまでDJ/アーティストとして世界35ヶ国140都市に招聘されただけでなく、CNNやBILLBOARD等でも取り上げられた本当の意味で世界標準をクリアできる数少ない日本人音楽家の一人。ここ数年は、音楽で空間の価値を変える"サウンド・ブランディング"の第一人者として、映画館、ホテル、銀行、空港、レストラン等の音楽設計を手掛けている。著書に、『DJ 選曲術』や『クラブ・ジャズ入門』、自伝『職業、DJ、25年』等がある。2011年7月、2枚目のソロ・アルバム『DESTINY』が、iTunesダンス・アルバム・チャート第1位、総合アルバム・チャートでも第3位を獲得。2013年11月にはバーニーズ ニューヨーク新宿店で初のイラストレーション展を開催。2015年4月、新たにプロデュースしたプロジェクト、Kyoto Jazz Sextetのデビューアルバム『Mission』をブルーノート・レーベルよりリリース。現在、InterFM897『JAZZ ain't Jazz』にて番組ナビゲーターを担当中(毎週水曜日22時)。有線放送内I-12チャンネルにて"沖野修也 presents Music in The Room"を監修。タブロイド誌「SANKEI EXPRESS」音楽ページにて連載を担当している。


沖野修也 Official Site



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石若駿インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

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石若駿インタビュー


ジャズ・ドラマー石若駿。1992年生まれのこのドラマーは10代で日野皓正、石井彰、金澤英明、TOKUなどベテランに見出されて活動を共にしてきた紛うことなき逸材だ。ジャズ・ドラマーとして活動しつつも高校から日本のクラシックのメッカとも言える東京藝術大学で学び、近年はテイラー・マクファーリン等ビートシーンからの注目も集めるというまさにジャンルを軽々とまたぐ彼がいったい何を考え、彼には何が見えているのか。同世代ながら僕はかなり遠い存在のように思っていたのだけれど、インタビューが始まると「僕と同い年なんですよね?やったぁ!」と生い立ちから、初のリーダーアルバム、さらには石若が今"面白い"と思っている音楽までたっぷりと語ってくれた。

2015/11/30 @JJazz.Net
インタビュアー:花木洸 HANAKI hikaru(音楽ライター)





――まず石若くんがドラムを一番最初にはじめたきっかけは?

[石若駿]
「まず両親が結構音楽に絡んだ仕事をしていて。父親が高校で音楽を教えていてブラスバンドとかをやっていたんですよ。母親は小さい子たちにピアノを教えていて。だから家の中ではクラシックとかジャズとか70年代~80年代のポップスみたいな音楽がずっと流れていて。それである日父親に「ライブ観に行くぞ」って言われて観に行ったのが、森山威男さんと松風紘一さんのデュオだったんですね。それが4歳くらいの時です。ドラムセットとサックスだけ置いてあるステージで、1時間半とか2時間とかぶわーってずっとフリージャズをやっているのを一番前の席で観て。そのステージでの森山さんに圧倒されて一番最初にドラムに興味を持ちました。」


――へぇー。最初がフリージャズなんですね。

[石若駿]
「それでおもちゃのドラムセットを買ってもらって遊んで叩いているうちに、1997年にX JAPANが解散するんですね。そのX JAPANが解散したっていうニュースでYOSHIKIがドラムをぶっ壊したり叩いている映像にまた衝撃を受けて。そこで本格的にやりたくなってエレキドラムを買ってもらいました。

それからしばらく家で一人で叩いてたんですけど、小学校4年生の時に新聞で「札幌・ジュニア・ジャズスクール」っていう小学生の為のジャズのビッグバンドのメンバーを募集している記事を見つけたんですね。「これに入ったら人と一緒に出来るな。しかも音楽やってる同世代とかと一緒に出来るな。」と思って応募してオーディションを受けて。それまではX JAPANとかhide(X JAPANのギタリスト)の音楽とかばっかり聴いていたんですが、ジャズのビッグバンドに入ってからだんだんジャズを聴くようになっていったっていう。」


――じゃあジャズを知るのとドラムをはじめるのと、どっちが先かというと...

[石若駿]
「ドラムが先ですね。いわゆるドラム少年だったと思います。小学校の低学年の頃はずっとロックばっかり聴いてました。X JAPANのアルバムを全部聴いて全部叩けるようになったらhideのソロ・プロジェクトにまたどっぷりハマって、そこからX JAPANやhideが影響を受けたミュージシャンを掘り下げていって。KISSの来日コンサートの映像を借りてきて観たりとか、hideがライバルとか言ってたマリリン・マンソンの音楽も気になって聴いたり、マンソンからスリップノットを聴いたり...」


――へぇー!すごい意外です。石若くんはずっとジャズをやってるのかと思ってたから。

[石若駿]
「まぁそれは小学校の3年生までで、4年生でビッグバンド入ってからまた大きく変わりました。ビッグバンドは道内から本当に音楽がやりたい子達が集まっている所だから、ほんとにみんな音楽が好きで嫌々やってる子は一人もいない、みたいなところだったんです。結構演奏の機会もあって、「サッポロ・シティジャズ」の前身になった「サッポロ・ジャズ・フォレスト」っていうフェスに出たりとか。その頃は北海道に倶知安ジャズ・フェスティバルとか、室蘭ジャズ・クルーズとか、いわみざわキタオン・ジャズ・フェスティバルとかジャズ・フェスティバルがいっぱいあって。それのオープニング・アクトに必ず僕らが呼ばれて行って演奏して、プロのジャズ・ミュージシャンとも交流があってっていう夏を毎年過ごしていたんですね。

そんな中で小学校5年生の時にハービー・ハンコックのトリオが来て、そのトリオのオープニング・アクトを僕らがやって。その前日にハービー達がバンドクリニックをしてくれた時にハービーが目をつけてくれて、「なんでお前はそんなドラムソロが出来るんだい?」って話しかけてくれた体験とかから段々と「ジャズで頑張ろう」っていうパワーをもらいました。それが夏で、冬にも同じようなコンサートがあって。その冬は日野皓正さんのクインテットが来て、その時も同じようにバンドクリニックがあって日野さん達と出会って。そこの出会いが今にも続いているような感じですね。」


――じゃあやっぱりジャズドラマーになっていったのはビッグバンドに入ったのが一番大きいきっかけというか。

[石若駿]
「そうですね。やっぱりプロのミュージシャンとの交流が沢山あったっていうのは大きかったです。マーカス・ミラーも来てオープニング・アクトをやらせてもらったし、僕らのビッグバンドは熱帯ジャズ楽団とも交流があったりして。そういう色んなタイプのミュージシャンと交流があって。」


――ちなみにジャズを始めてからは、やっぱりジャズを聴いていた?

[石若駿]
「そうですね。小学校の高学年の頃はバディ・リッチ・ビッグバンドとかいわゆるビッグバンド・サウンドの音楽を沢山聴いていたんですけど、だんだんラテンにハマっていって。よく『モダン・ドラマー・フェスティバル』っていう色んなドラマーが集まったDVDを買っていたからそれでアントニオ・サンチェスとかオラシオ・エルナンデスを観たりして彼らの演奏にハマって。

今現在ニューヨークというかアメリカでどういうジャズが流行っているのかっていうのに興味を持ち始めて見事にハマったのが中学校1,2年の頃ですね。ちょうどその頃東京JAZZでハービー・ハンコックのバンドでブライアン・ブレイドが来てたり、ダイアン・リーブスのバンドでグレッグ・ハッチンソンが来てたりっていう、いわゆる現代のアメリカのジャズ・ミュージシャンをテレビで観るわけです。それにまたハマっちゃって。タワーレコードに行ってブライアン・ブレイドの参加しているCDをひたすら買ったりっていう時期もありました(笑)だから中学時代にジョシュア・レッドマンのカルテットのCDも全部買ったし。僕、ちょうどロイ・ハーグローヴのRHファクターの1枚目が出た時に<なんだこれは!って買っていたんですよ。でも日本の同世代でリアルタイムでずっと聴いてる人ってなかなかいなくて、音楽の話があうミュージシャンって大抵年上なんですよね(笑)」


――それで、中学校を出て東京藝大の附属高校に入るわけですね。僕はそこが結構気になるんです。決して簡単に入れる学校では無いし、ここまでの流れがあってどうしてクラシックの勉強をしようと思ったんですか?

[石若駿]
「やっぱり家庭が音楽一家だったことが原点にあって。クラシックも身の回りに溢れていたし、母親がピアノの先生で僕も4歳くらいから母親にピアノを習っていたからクラシックにもずっと繋がっていて。
小学校6年生の時に日野さんに「お前は中学校卒業したら俺のバンド入れよ」って言われて、その時はポカーンと「は、はい」みたいな感じだったんですけど、自分で色々考えて「高校には行った方が良いよな」って(笑)でもこれからも日野さん達とずっと一緒にやりたいからその為にどうしようって考えたのが東京に行くことだったんですね。わざわざ東京に行くんだったら普通の勉強じゃなくて音楽をちゃんと勉強したいな、と思っていたら藝高を見つけて、「あ、ここに入ったらオーケストラも授業にあるし、藝大の先生が来て専門実技のレッスンも毎週受けられるし最高じゃん!」と思って。そのために中学校の3年間はクラシックのレッスンを受けたり、時にはジャズとかドラムを封印してクラシックの奏法とかソルフェージュの勉強をしたりしてすごい頑張りました。とにかく東京に出たいっていうのと、音楽の根本的な理論とかクラシックを学んでる同世代達と一緒に勉強したいなって思って。それで東京に行けたら好きなミュージシャンとも一緒にジャズが出来るじゃないかっていう。今思えばすごいポジティブな考えですね(笑)」


――だって定員が40人とかですよね?

[石若駿]
「そうです。しかも楽器ごとの定員ではないから、僕が5年ぶりの打楽器での入学者でした。」


――やっぱり東京に出てきたら全然違いました?

[石若駿]
「そうですね。まず一人暮らしがはじまってそれがもう最高で(笑)学校の授業終わったら高田馬場のイントロに行ってジャムセッションをしたりとか。あと当時はTOKUさんにお世話になっていて。TOKUさんは日野さんとはじめて出会った時にゲストで一緒に出ていて、上京してからもお世話になっていました。「今日ブルーノートに出てたロバート・グラスパーのカルテットがセッションに来るからお前も来いよ」って言われて夜中にセッションに行ったりとかして。そのTOKUさんに連れられて行った秘密のセッションみたいなのはすごい僕にとって良かったですね。(グラスパーのバンドの)ケーシー・ベンジャミンとかとも一緒に出来たし。」


――へぇー!それはいわゆるジャズのセッションに普通に入ってるんですか?

[石若駿]
「そう。普通にサックス持ってきてスタンダードの"Body & Soul"を一緒にやったりして。ロイ・ハーグローヴとも一緒に出来たし、ジャリール・ショウとかも一緒にやったし。面白かったですよ。」


――その一方、学校ではどんな事を勉強していたんですか?

[石若駿]
「学校ではオーケストラを勉強したり、マリンバを4マレットで現代曲を練習したりとか。まぁ卒業したいし藝大行きたいから学校も頑張ってました。高校は同級生みんなとにかく音楽を頑張っていて、授業が終わったらみんな練習に没頭するみたいな。ヘタしたらもう色んな仕事をしてる人もいたし、ヨーロッパのコンクールを目指してる人もいたし。今はもうみんなそれぞれが第一線のプレイヤーになっていて、たまに会って「最近どうよ?」って話をすると「N響でさ~」とかそういうビッグな話が飛び交ってます(笑)

そのかたわらで面白いやつらも沢山いて、文化祭になったら東京事変とか椎名林檎のコピーバンドやろうぜ、みたいな。そういうのもやりましたね。「青二祭」とか「閃光ライオット」みたいなバンドコンテストにも出たりとか。あと高校生ってみんなよくカラオケ行くじゃないですか?僕らのクラスもカラオケにめちゃくちゃ行ってたんですよ。だからポップスとかロックとかで良い曲ないかな?って探してたんです。自分で歌いたいから。その中で、くるりとかに出会ったりするわけですよ。」


――ちなみにその頃に今回のアルバムに参加メンバーにはもう出会ったりしてるんですか?

[石若駿]
「そうですね、金澤さんは小学校の時からなので。あとのメンバーもみんな僕が高校生の時からの付き合いです。吉本(章絋)さんのバンドで初めて演奏したのも高校2年生の春とかで、その頃にアーロン(・チューライ)も一緒に出会って。(中島)朱葉もその頃はまだ和歌山にいたから、僕が金澤さんと石井さんのトリオで夏休みとか冬休みを使ってツアーに行っていて、その時によく飛び入りしたり終わった後のセッションにいたりって感じでしたね。その時は朱葉もいたし、アルトサックスの早川惟雅くんとか、ドラムの中道みさきちゃんとかもいたし。井上銘くんとは鈴木勲さんのトリオとかOMA SOUNDでよく横浜で演奏してたし。(高橋)佑成はその頃まだ中学校1年生で。日野さんがやってる世田谷ドリームジャズバンドに僕がよく遊びに行っていて、彼は石井彰さんの弟子なんですけど<生徒に中学校1年生の男の子がいて、なかなかやるんだよ。>とか言われて紹介されたのが最初です。彼もすごい面白いピアニストになったからちょくちょく一緒にやっていて。」


――井上銘くんとか中島朱葉ちゃんはその後アメリカ、バークリー音楽院に行っちゃうんですよね。石若くんはアメリカに行こうとは考えなかったんですか?

[石若駿]
「僕は高校2年生の夏にバークリーのサマーセミナーに5週間行ってるんです。その時に寺久保エレナとか馬場智章とか曽根麻央とかみんな一緒で。バークリーに行こうっていう考えも少しはあったんですけど、藝高入ったし藝大行きたいなって。3年間でクラシックの勉強を終わりにするよりはもっと色んなことやりたいと思っていたからあんまり考えなかったですね。まぁ大学卒業しても本当にアメリカに行きたかったら色々考えるだろうな、と思ってたんですけど。」


――卒業した今はどうですか?

[石若駿]
「今はやっと<ジャズドラマー>になったわけですから、卒業を待っていてくれた人達のところに行って自分も頑張ろうと思ってます。でも、ここ最近はニューヨークから来ているミュージシャンとの交流がすごくあるから、もしかしたらこれから行くことになるんじゃないかな?とは思っています。例えば黒田卓也さんと交流があったりとか、大林武司くんも僕が中学生で彼が19歳の頃から一緒にやっているから。

大学を卒業した今は、大学の夏休みが続いてるみたいな感覚ですね(笑)「もう学生じゃないんだ」っていう「一社会人として、一アーティストとして」っていう自覚は徐々に芽生えて来てますけど。大学卒業したてって言ってもキャリア的に見たら結構年数重ねて来たから、下手なことは出来ないなっていうプレッシャーもあったりしますけど、より音楽に熱中出来ている感じです。例えば今回のアルバムのために考える時間とか、研究する時間とかが増えて。」


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――じゃあそろそろアルバムの話を。まずメンバーの事を聞いていきたいんですけど、今回のアルバムのメンバーは結構いつも一緒にやってるメンバーですよね?

[石若駿]
「その通りです。僕のバンドで誘う人っていうだけじゃなく、それぞれが色んな所で繋がっている人達っていう感じです。僕がメンバーを選ぶ時に考えることは、それぞれが持っている音楽性はもちろんだけど人間として好きな人達っていうのもあって。例えば演奏するだけじゃなくて何でも無い日にご飯を食べに行ったり、何でも無い日に飲みに行ったりっていう。仲間ですから。そういうのも僕は結構大事にしていて。演奏終わってすぐ<お疲れ様でした>っていうのは僕はあんまり好きじゃなくて。だからこのメンバーは結構強い絆で結ばれてる人達だと思ってます。」


――じゃあ今回のアルバムはこのバンドのイメージがあって、それから曲を書いたんですか?

[石若駿]
「僕のバンドって決まった編成っていうよりはコロコロ替わることが多くて。サックスが一本のカルテットの時もあれば、サックスとギターが入ったカルテットだったりとか。

だからまず曲を書いて、「この人のサウンドでこの曲やったら面白いんじゃないかな?」っていう風にして今回は振り分けたんです。あと「このメンバーだから」ってイメージして書いた曲もあって、それが「The Way To Nikolaschka」っていう曲でアルバムの一曲目です。「ニコラシカ」はお酒の名前なんですけど、このメンバーでよくお酒を飲みに行くお店の名前でもあって。そういうのも良い思い出だなって思ってつけたタイトルです。」


――なるほどね。僕はこのアルバムの曲はサックスがメロディをとるっていうのをイメージして書かれた曲が多い気がしたんですけど。

[石若駿]
「それはイメージしましたね。僕も色々考えたんですけど。朱葉とか吉本さんが持っているトラディショナルでバップなサウンドで僕の曲をやってくれたらいいなって。」


――今回はこの選曲とか曲順は全部自分で決めたんですか?

[石若駿]
「曲順は自分で結構悩んでわかんなくなっちゃったところで「こうじゃない?」って提案してもらったのがしっくり来たっていう。その中でも多少の前後はありましたけど。やっぱり客観的にみてもらったおかげで、聴いた人が気持ちいい並びになったと思います。」


――間に短い即興の曲が入っているのがいいですよね。

[石若駿]
「僕はもともとこの3人で即興をやりたくて。金澤さんと須川さんが一緒にいるのってレアじゃないですか。すごい高級な感じがするから。僕とベーシスト2人で面白い曲を作ろうかとも思ったんですけど、それよりも絶対この場で一発で即興をやるほうがいいなと思って。全部で3回録ったのをそのまま入れてるって感じです。これは全部一発録りで編集はして無いんですよ。」


――今回のアルバムタイトル『Cleanup』はどういう風に決まったんですか?

[石若駿]
「アルバムのジャケットを作ろうってなった時に、僕が参加しているJAZZ SUMMIT TOKYOのメンバーでもあるSrv.Vinciってバンドの常田大希くんがアートディレクションをしてくれて。録音をしたスタジオで撮ろうってスタジオに行ってケーブルを巻いて写真を撮ってその写真をまた加工して...って出来たのがあのジャケットなんです。あのジャケットと曲名を並べて見た時に「Cleanup」っていうのがイメージに合うなと思って。この言葉には「4番打者」って意味もあるしこれは良いなと。それにこの曲が一番4ビートを叩いているし、ジャズのアルバムって事で象徴的にも。」


――あのジャケット、James Blakeみたいでカッコいいですよね。

[石若駿]
「そうそう!僕、結構テクノとかエレクトロとかインディー・ロックみたいなアルバムジャケットがすごい好きで。そういう風にしたいなと思って常田くんにアートディレクションを頼んだんです。ちょっと攻めてみようかなと思って。レコードショップとかに行ってLPのジャケットを観ているとカッコいいじゃないですか。で、バンドTシャツだとジャケットがプリントされてるだけでカッコ良いやつってあるじゃないですか。だから今回はを目指して作りましたね。」


――曲名がなんだかユニークなんですけど、それについて教えて下さい。例えば「A View From Dan Dan」とか。

[石若駿]
「実はこの曲はこのタイトルになる前に<日暮里>ってタイトルがついていて。僕は日暮里のそばに住んでるんですけど、そこから谷中とか根津とか...いわゆる谷根千のちょっと下町な感じの景色とか雰囲気とかが好きで。「日暮里」ってタイトルにしようかと思ったんですけど、もっと具体的にしようと思って。日暮里から谷中銀座に行く手前に<夕焼けだんだん>っていう階段があるんです。そこから見える夕焼けが本当にきれいで。」


――へぇー。じゃあ「Professor F」は実在するんですか?(笑)

[石若駿]
「実在しますね(笑)藝大の人がみたらみんな分かっちゃう。僕が尊敬している先生で、ジャズドラマーとしてCDを出したけど、<藝大で学んだことを忘れるな>っていう自戒の意味も含めたタイトルですね。だからこの曲は藝大でも4年間副科で専攻したピアノを弾いています。」


――こうやって見ていくと曲のタイトルはみんな身近なところから来てるんですね。

[石若駿]
「そうなんです。僕が今までの人生で見てきたものとか。「Darkness Burger」も某ハンバーガーショップで曲を書いていて、それがロックなサウンドのために書いたっていうそれだけなんですけど(笑)「Into The Sea Urchin」もツアー中の出来事からついたタイトルだったりとか。」


――石若くんは曲は基本的に何から作りますか?

[石若駿]
「僕はコードというかハーモニーから作ることが多いですね。でも基本的にピアノで作るので、メロディとハーモニーを一緒に組み立てていってっていう感じです。

でも今回レコーディングして気づいたのが、ドラムのイメージが全く無いなって事で。このアルバムの曲は昔作った曲も多いし、あんまりバンドで演奏されなくて自分の構想だけのものが多かったので。例えばアルバムのコンセプトが「ビート物のアルバムを作る」とかだったら「ドラムがこういうビートでそれに合うハーモニーを」って考えたり、人のバンドで演奏する時は「この人はこういうサウンドだから、こういうのが合うな」とかイメージが湧くんですよ。だけど自分のこういうサウンドに対してどうしようっていう。そうやって悩んだ結果こういう風な演奏になったから、自分の曲に対して新しい感覚がつかめたのは今回の収穫ですね。」


――「Big Sac」も「A View From Dan Dan」も、曲の途中で色んなリズムが入ってきたりフィールが変わったりっていうのがあるからそこはバッチリ決まってるのかと思ってました。

[石若駿]
「曲に対して大まかなフィールは決まってたりするんですけど、具体的な部分は決まってなかったりというか。例えば4ビートとは決まっていても、どういう感じのスウィングで行くのかは決まってなかったり。「Big Sac」とかも何のビートかわかんないし(笑)まぁやっぱり自分が後回しになるからだろうな。バンドメンバーに「ここはこうやって」、「ここのハーモニーはこうやって積んで」、「ベースはこっちの音域でやって」ってディレクションをしていって一番最後に最後に「自分はどうするの?」ってなってるから。だから難しかったのかも知れない。」


――その割にアーロン・チューライとか井上銘くんとかコード楽器陣がすごい自由に演奏している感じなのはライブ感があって良いなと思いました。

[石若駿]
「そうなんです。指定するところは指定してあとは自由にやってって感じで。でもやっぱり銘くんやアーロンは摩訶不思議で予想不可能だから。銘くんなんかいきなりリングモジュレーターで<ボコボコボコッ>とか、ずっとハウリングしてたりとか。そういうのも楽しみましたね。僕がメンバーを選ぶ時に考えるのは、知らない景色を見せてくれる人が好きで。例えばスタンダードでも<こんなコードやったらこんな響きになるのか!>ってなるような人が好きで。ベースの金澤さんとか須川さんもそういう人だし。それで全然違う景色になって面白かったり。」


――石若くんはこれまでにも色んなバンドで沢山レコーディングをしてますけど、やっぱりライブとレコーディングでは全然違いますか?

[石若駿]
「今回はレコーディングも2日で終わってコンパクトでしたし、ほぼ一発だったので「面白―い」ってみんなで面白がってる間に終わったって感じですね。気分的にはやっぱり構えますけど。「間違っちゃいけない」とか「何か起こしてやろう」とかそういう邪念みたい出てきたりしますけど(笑)でもそういうのって一番ダメなんですよね。やっぱり自然体でハプニングした時に一番良いテイクが録れるんです。」


――今回はまさにそんなハプニングが詰まったサウンドですよね。めちゃくちゃストレートで。

[石若駿]
「そうなんですよね!かなりライブ感のある仕上がりになってると思います。でも自分では完成するまでどんなサウンドになるのか全く想像出来てなくて。で、いざ完成して並べて聴いてみたら<おぉ、ジャズじゃん(笑)みたいな。僕としてはこのアルバムは自分の曲の作品集的な、自分の書いてきた曲を録音して収めてっていうイメージでもあったんだけど、一貫してジャズのサウンドになったんです。ジャズのアルバムを作ろうって意識したわけではなくて、「何も気にしなくていいよ」って好きにやらせてくれたんですけど、いざ曲が出てきたら自然とそういう感じになりました。」


――石若くんは録音作品を作るっていう事に対してモチベーションはありますか?

[石若駿]
「ありますね。僕はレコーディング自体もすごい好きで、曲を書くこともすごい好きだから。あと自分の音楽を世の中に確立したいっていうのはやっぱり夢なので。ドラマーなんだけど、自分の音楽っていうのを1アーティストとして確立させたいっていうのがあるから、これからも色んなことをやって作品として世に出せたらいいなと思ってます。そうしないとあんまり意味が無い気がしていて。やっぱり憧れがあって。例えば森山さんも日野さんもマイルスも、作品を追っていくと<こういう音楽を聴いてきたんだな>とか<この時はこういう音楽を目指してたんだな>とか、その人の歴史がわかるじゃないですか。そういう一生を通して作品があることで、その人の音楽が見えるっていうのを自分もやりたいなと思って。」


――自分名義でフルサイズのアルバムっていうのは今回が初めてだけど、石若くんは参加作品の数がすごいですよね。

[石若駿]
「もう30枚くらいになってますね。実はこのアルバムが発売日にも僕の参加してるアルバムが合わせて3枚くらい出ると思うんですよね(笑)ジャズDJの大塚広子さんがプロデュースしている「RM JAZZ REGACY」っていうユニットと、「PANDA WIND ORCHESTRA」っていう藝大の吹奏楽のバンドのアルバムで。(インタビューの)2日後には北園みなみさんのアルバムが出ますし。」


――石若くんはそういう風にジャズでも、ジャズじゃない音楽でも演奏してたりするわけだけど、やっぱり自分のなかでプレイは別物になるんですか?

[石若駿]
「最終的に音をだすのは僕なので、そんなに別物感は無いですね。クラシックでもジャズでもポップスでも僕のサウンドっていうのがあるので。」


――石若くんが最近<面白いな>って思うのはどんな音楽なんですか?

[石若駿]
「最近はジャズはもちろん聴くんですけど、「世界を揺るがす音楽」みたいなものに敏感にアンテナを張って聴くようにしています。いわゆるレコードショップで推されているものとかを全然知らないアーティストでもとりあえず聴いてみてカッコ良かったら買う、みたいな。最近買ったのは天才バンドの『アリスとテレス』ですね。YouTubeでトラベルスイング楽団とやってるのを観てから奇妙礼太郎が結構好きで。あと最近好きなのはポートランドのアンノウン・モータル・オーケストラとかオーストラリアのテーム・インパラとか好きだし、スウェーデンのオキシゲンとか、あとタイ・セガールとかも好きだし。ちょっとサイケな歌もの、みたいなのはすごい好きですね。サウンド的には昔のサウンドを今のフィルターを通してやってる人が好きです。アラバマ・シェイクスとかはまさにそういう感じですぐ買いましたね。あと星野源もすごい好きで武道館公演も見に行きました。僕はよくラジオを聴いていて、大体それで出会ってますね。」


――日本のバンドとかだとミュージシャン同士で交流があったりするんですか?

[石若駿]
「最近あったのは、サカナクションのドラムの江島啓一さんですね。僕がテイラー・マクファーリンと一緒にやった時に観に来てくれていて出会ったんですけど、それからJAZZ SUMMIT TOKYOにもクラウドファンディングに参加してくれてライブも観に来てくれて。こないだはスガダイローさんのバンドで世武裕子さんとケイタイモさんと一緒に出来たりっていうのがありました。今年はポップスにも結構参加することが出来て、原田知世さんのバンドでもやらせてもらったし、MONDAY満ちるさんとも出来たし。そうやって色んな人と交流したいんですけど、やっぱりなかなか機会が無いですね。」


――ドラマーだと最近はヒップホップのトラック用のレコーディングとかもありますよね。フライング・ロータスとかケンドリック・ラマーのアルバムにジャズ・マンが入っていたりとか。

[石若駿]
「最近はそういうビート系のもので呼ばれる事も多いですね。「Stones Throw」ってヒップホップのレーベルがあるじゃないですか?こないだそこのダドリー・パーキンスってラッパーが日本にちょうど来ていて、「トラック作りたいから」って呼ばれて。宮川純くんとDJ YUZEさんと一緒に行ってレコーディングしました。そこではいわゆるJディラ的なヒップホップのビートを叩いて。リリースされるのかはわからないですけど、レーベルの人もたくさん来てたから形にはなるんだろうなって。あと去年は黒田卓也さんに「ホセ・ジェイムスのロンドンチームのキーボードが来てるから一緒にレコーディングしよう」って誘われて3人でレコーディングしたりとか。」


――石若くんも今後まだまだ色んな方面からオファーありそうですよね。

[石若駿]
「あったらすごく嬉しいです。偉そうな感じかもしれないけど、本当に僕がやってる音楽が好きでオファーされたら最高だなって思います。」


――石若くんが今注目している自分より若手のミュージシャンって誰かいますか?

[石若駿]
「僕より若い人ですか?アルバムに入ってる侑成はもちろんですけど、高橋陸ってベーシストがいて、彼は共演するたびに良くなってるなって思います。初めて会った時彼が高校1年生で、今19歳とか。彼はバークリー行くかもしれないんですけど着実に良くなっているので楽しみです。あと最近直接観れてないんですが、ちびっこドラマーで有名だった鬼束大我くんが今高校生になっていて、すごいって噂を色んな所から聞きますね。」


――最後に石若くんが最近やってるプロジェクトを教えて下さい。

[石若駿]
「実は去年からスタジオに篭って一人でピアノを弾いてドラムも叩いてゲストのボーカルを入れて僕の曲に歌詞を書いてもらって歌ってもらうっていう作品をこっそり作ってます。こないだは<けもの>の青羊さんに歌ってもらったし、サラ・レクターさんにも歌ってもらったし。角銅真実さんに歌ってもらったりとか。ゆくゆくは配信にするか自分でプレスして手売りで売ってみようかとも思うし、どこかがリリースしてくれたらなとも思うし。今のところ5曲たまっていて。

あとは「Ki-Do-Ai-Raku」っていうパーカッション・カルテットを藝大の同期4人で組んでいて、3月にそれのファースト・リサイタルがあるのでそれの為に動いていたりとか。これは今年の2月にその4人でルクセンブルクにコンペティションを受けに行って、セミファイナルまで行けたから<これで終わるのはもったいないから日本でもリサイタルをしよう>って。」


――へぇー。じゃあこれからやることもジャズに限らずって感じで。

[石若駿]
「そうですね。とにかく自分がやりたい事とか興味がある事は全部やりたいって感じですね。このバンドでも1月にリリースライブをするので是非見に来てほしいです。」


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Recommend Disc

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Title : 『CLEANUP』
Artist : SHUN ISHIWAKA 石若駿
LABEL : SOMETHIN'COOL
NO : SCOL1011
RELEASE : 2015.12.16

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
石若駿 Shun Ishiwaka (ds)
吉本章紘 Akihiro Yoshimoto (ts, ss)
中島朱葉 Akiha Nakashima (as)
井上銘 May Inoue (g)
アーロン・チューライ Aaron Choulai (p)
高橋佑成 Yusei Takahashi (p)
須川崇志 Takashi Sugawa (b)
金澤英明 Hideaki Kanazawa (b)


【SONG LIST】
1. The Way To Nikolaschka
2. Dejavu #1
3. Darkness Burger
4. A View From Dan Dan
5. Cleanup
6. Professor F
7. Ano Ba
8. Dejavu #2
9. Into The Sea Urchin
10. Big Sac
11. Siren
12. Wake Mo Wakarazu Aruku Toki
13. Tanabata #1







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【石若駿】(ドラム)

1992年生まれ、札幌出身。10歳のときに来日中のハービー・ハンコックに見出され、その後15歳にして日野皓正(tp)バンドに抜擢。東京藝術大学付属高校を経て同大学打楽器科へ進学。在学中よりファーストコール・ドラマーとして数々のバンドのレコーディング、ライブに参加。またアニメ「坂道のアポロン」では主人公・千太郎のドラムモーションと演奏を担当。2015年東京ジャズにおいては、沖野修也率いるKyoto Jazz Sextetにて出演し、リチャード・スペイヴン(ds)と披露したツイン・ドラム・ソロがテレビでもOAされ話題となっている。ジャズ演奏の傍ら今年藝大打楽器科を首席で卒業。ジャズ界、クラシック打楽器界、そしてポップス界、誰しもがその後の動向に注目する中、初のフル・リーダー作発表となる。


石若駿 Official Site

Monthly Disc Review2015.12.15:Monthly Disc Review

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Title : 『CLEANUP』
Artist : 石若駿



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今や若手ナンバー・ワン・ドラマーであることはもはや疑いの余地が無くなった石若駿。1992年生まれ、今年大学を卒業したばかりの彼の、初のフルアルバムとなるのがこの『Cleanup』だ。


メンバーにはこの連載でも紹介した吉本章紘カルテットのメンバーである吉本章絋(sax)、アーロン・チューライ(pf)、須川崇志(b)に加えて、石若と同い年の中島朱葉(sax)、1つ年上の井上銘(gt)、年下の高橋侑成(pf)、さらに石若をここまでフックアップし続けてきた大ベテランの金澤英明(b)とサウンドのテイストから年齢まで実に多彩なメンバーが集まっているが、その音楽の多彩さはそのまま石若自身の音楽の多彩さも物語っている。


ほぼ全曲がリーダーである石若のコンポジション。オーネット・コールマンを彷彿とさせるフリーキーなタイトル曲や、現代のジャズジャズらしい#1、フォーキーなギターとローズが心地よい#4、さらには石若自身のピアノとベースとのデュオによる#6などフォーマットは様々だが、一貫してサウンドは彼がこれまで積み重ねてきたジャズそのもの。


メンバーがどこまでも自由に演奏できるように用意された楽曲は、吉本や中島の持っているトラディショナルなサウンドに完全にフィットしているし、アーロンや井上の時に突拍子もないような大胆なプレイも受け入れ、実際にプレイの面でも彼らと反応しあう石若のドラムは真剣勝負なのだけれどどこか楽しげで愛嬌に溢れている。メンバーの中ではギターの井上銘のプレイが秀逸。時にはローコードでギターを鳴らし、時にはフィードバックでノイジーなソロをとり、時にはエフェクトを多様しながらもストレートなラインでソロをとったりと楽曲に様々なテクスチャーを持ち込んで色付けしていくセンスは、近年の日本のジャズギタリストの中でも確実に頭一つ飛び出た才だ。


リーダー自身の作曲とディレクションによって進み派手なドラムソロが無いという点では「ドラマーのリーダー作」として、とても現代的でスマートにも見えるのだけれど、この作品はどうやらそれだけではない。リーダーが用意した大小様々な額縁の中にメンバー各人が自由にペイントしていくようなこの作品は、演奏がヒートアップすると額縁からはみ出し、時には額縁そのものが変化していくような、キメを抑えながらもかなり自由奔放でハプニングとスリルに溢れた作品になっている。


文:花木洸 HANAKI hikaru


石若駿リーダー作のリリースに合わせ、花木さんがインタビューを行いました。
生い立ちから、初のリーダーアルバム、そして彼が今"面白い"と思っている音楽まで語ってくれました。
石若駿が何故これだけ注目されるのかを知ることのできる興味深い内容です。

石若駿インタビュー(インタビュアー:花木 洸)



Recommend Disc

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Title : 『CLEANUP』
Artist : SHUN ISHIWAKA 石若駿
LABEL : SOMETHIN'COOL
NO : SCOL1011
RELEASE : 2015.12.16

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【MEMBER】
石若駿 Shun Ishiwaka (ds)
吉本章紘 Akihiro Yoshimoto (ts, ss)
中島朱葉 Akiha Nakashima (as)
井上銘 May Inoue (g)
アーロン・チューライ Aaron Choulai (p)
高橋佑成 Yusei Takahashi (p)
須川崇志 Takashi Sugawa (b)
金澤英明 Hideaki Kanazawa (b)


【SONG LIST】
1. The Way To Nikolaschka
2. Dejavu #1
3. Darkness Burger
4. A View From Dan Dan
5. Cleanup
6. Professor F
7. Ano Ba
8. Dejavu #2
9. Into The Sea Urchin
10. Big Sac
11. Siren
12. Wake Mo Wakarazu Aruku Toki
13. Tanabata #1


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11




Reviewer information

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

JJazz.Netプロデュース、「CASIO TRACKFORMERムービー」公開!:ニュース / NEWS

JJazz.Netがプロデュースしたムービーが公開されました!




このCASIOのデジタルダンスミュージックギア"TRACKFORMER"は新感覚の楽器で、
シンセサイザー、シーケンサー、サンプラー、エフェクターなどが一つになった「XW-PD1」と、
スクラッチやミックスのできる「XW-DJ1」の2種類。

今回のムービーで使用したのは「XW-DJ1」。
これ何が凄いって電池駆動可能でスピーカーが内蔵されていること。
つまりアンプやスピーカーにつながなくとも、これ一台でどこでもパフォーマンス可能なんです。

出演はモデルとしても活躍されているDJ HICOさん。
そしてムービー内で"実際に"ミックスしている音源は日本が誇るトラックメーカー、
MAKOTOさんの楽曲「Girl I'm Running Back 2 U」です。

【Makoto Feat. Christian Urich - Girl I'm Running Back 2 U (Makoto 4x4 Remix)】

『SOULED OUT / MAKOTO』(selective records)
YZDI-0017



撮影してくれたのはJJazz.Netの番組「WHISKY MODE」でもお世話になった
クリエイティブ集団「HATOS」のカメラマン、石阪大輔さんです。

日常×音楽をテーマに、
HICOさんの普段の生活に寄り添う音楽というイメージで撮影しました。
松陰神社前の緑溢れるカフェ、STUDYさんで撮影したのですが、
外から入るやさしい自然光の中、終始リラックスした雰囲気でしたよ。

TRACKFORMERは、「djay」や「TRAKTOR」といった人気のDJアプリを使って
簡単にミックスできるので、プロの方だけでなく、DJ経験がない初心者でも楽しめます。
なんといってもそのフォルムが可愛らしい!
屋外やちょっとしたパーティーでも活躍してくれそうですね。

ちなみにHICOさんにはイベントで「XW-DJ1」を使用してもらったのですが
大きなスピーカーを通しても遜色なく良い音でフロアを沸かせておりました。

スリップマットの滑り具合もアナログの感覚で再現。
スクラッチもできますし、イベントでのDJプレイにもオススメします!

CASIO DJ HICO XW-DJ1 MOVIE

DIGITAL DANCE MUSIC GEAR特別ページ


関連リンク
DJ HICO Official Site
MAKOTO Official Site
selective records
STUDY
hatos

"TOUCH OF JAZZ"アルバム - MAYA セレクト:TOUCH OF JAZZ

青木カレンがナビゲートする番組「TOUCH OF JAZZ」では、毎回ゲストの方に
自身の「TOUCH OF JAZZした作品=ジャズに触れた作品」を紹介いただいています。


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今回のゲストは、ジャズヴォーカリストのMAYAさん。

ブロッサム・ディアリーやこのビヴァリー・ケニーのヴォーカルスタイルは繊細でいて物憂げ。
ジャズへのアプローチは様々、その人の好みにあったジャズというのがありますね。
それこそがまさにTOUCH OF JAZZ。


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『BORN TO BE BLUE / BEVERLY KENNY』


「私が人前で歌を歌い始めた時期にこのアルバムに出会い、彼女のことを知りました。

誰よりも魅力的な声、どことなく漂う哀愁感、翳り、女性の繊細さ、そしてストレートなフレージングなのに聞き手に迫ってくる彼女の唱法に衝撃を受けました。

それまで、私はジャズシンガーというのは、エラ・フィッジェラルドやサラ・ヴォーンのようにスキャットバンバン、野太い声で歌うものだと思っていました。そうでなければジャズシンガーでないと思い、私にとってジャズはある意味近寄り難い世界でした。そんな時にこのアルバムに出会い、いわばその対極にあるともいえる彼女が、誰にも真似出来ない世界観のある歌を歌っていたのです。

特に彼女の、どこか遠くを見つめながら語りかけているような切ないバラードにはすごく感銘を受けました。歌に彼女の人生観が反映・投影されている。だから彼女にまつわる、恋愛関係のもつれで精神を病んでしまったこと、30歳前に若くして亡くなったこと、そういった人生の全てが、歌を通して彼女の一部として感じ取れてしまうのです。

独学でJAZZを歌うようになった私にとって、当時衝撃的な出会いであり、今の私のJazz魂を作ってくれたシンガーでもあります。」

MAYA


■タイトル:『BORN TO BE BLUE』
■アーティスト:BEVERLY KENNY
■オリジナル発売年:1958年

Beverly Kenny500.jpg

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【Beverly Kenney - Born to Be Blue】




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■タイトル:『jazz a go go』
■アーティスト:MAYA
■発売日:2015年12月2日
■レーベル:THINK! RECORDS
■製品番号:THCD-370

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[収録曲]

01. さよならを教えて
02. シャンゼリゼ
03. 恋心
04. 可愛い花(小さな花)
05. ジャズ・ア・ゴーゴー
06. 枯葉
07. ビューティフル・タンゴ
08. 哀しみのダンス
09. 甘い囁き
10. シェルブールの雨傘
11. バラ色の人生


[メンバー]
MAYA(vo)
松尾明(ds)
遠藤征志(p)
熊坂路得子(acc)
新岡誠(b)
関根彰良(g)
扇谷研人(p,key)
嶌田憲二(b)
高橋康廣(ts、fl)

■プロデュース:松尾明、塙耕記

私は歌の中でドラマを演じる。 いつも自由で気紛れでいたいの。そう、だからジャズソン。 ジャズとシャンソンが今の気分。 -MAYA-




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【MAYA】
JAZZ&LATIN ボーカリスト。 JAZZを基本にジャンル、スタイルにとらわれず9ヶ国語(英語・スペイン語・ポルトガル語・仏語・露語・クレオール語・日本語・イタリア語・中国語)で歌い分けるMAYA独自のオリジナリティ溢れる世界観で、現在までベスト盤含め14作品のCDがリリースされている。2000年"Why Try To Change Me Now?"、2002年"She's Something"とインディーズ レーベルより2枚のアルバムをリリース。コロムビアミュージックエンタテイメントより2004年、アルバム"MAYA"でメジャーデビュー。同作にてSwing Journal選定「ゴールドディスク」受賞。翌2005年にはベスト盤を含めた5thアルバム"Love Potion No.9"にて、第39回Swing Journal選定「ジャズディスク大賞・ボーカル賞(国内部門)」受賞。2006年6thアルバム"Kiss Of Fire"リリース。同年上海ジャズフェスティバルにて初の海外公演をつとめる。2008年Disk Unionに移籍し"MAYA+JAZZ"をリリース。再びSwing Journal選定「ゴールドディスク」受賞。間を置かず、自身初となるX'masアルバム"Have Yourself A Merry Little Christmas"をリリース。2009年ラテンを特集したセルフプロデュース作"マルチニークの女~FANM MATINIK DOU~"をリリース。続いて同年横浜の老舗ライヴハウスBarBarBarのプロデュースによる"Once Upon A Time"がリリースされた。2010年には再びラテンアルバム"You Belong To Me"をリリース。2011年、1st&2ndアルバム復刻発売。2012年最新作はブルースをテーマにした高音質アルバム"Bluesy MAYA in Hi-Fi"をリリース。2014年、夏にDisk Unionからリリースした7枚のアルバムから選りすぐったベスト盤『MAYA Style』をリリース。LIVEではエキゾティックな雰囲気、インパクトのある存在感と歌声が聴衆を魅了する。進化を続けるMAYAは期待、注目を集めるアーティストである。

MAYA Official Site

bar bossa vol.52:bar bossa

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vol.52 - お客様:高橋悠さん(カフェ KAKULULU)


【テーマ:KAKULULUでよく流れている10曲】


いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回は池袋のカフェ・カクルルの高橋悠さんをゲストにお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですがお飲物はどういたしましょうか?


高橋;バス・ペール・エールをください、と思ったのですが、やはりなかなかお店では飲めない泡モノでオススメをお願いします。


林;それでは今、ちょうど面白いロワールの赤のビオのスパークリングがあるんです。ビュル・サルトワーズっていうんですけど。それにしますね。さて、高橋さんの簡単なプロフィールを教えていただけますか?


高橋;高橋悠です。1985年11月4日に父親の仕事の都合で西ドイツのボンで生まれました。でも、1~2歳の時に日本に戻ってきたので、ドイツの記憶はありません。日本では一番最初に川崎に少し住み、その後、東京の池袋寄りの文京区で育ち今に至ってます。


林;85年生まれなんですね。このブログのゲストで最年少ですね。ご家族や音楽の環境などは?


高橋;母は出版関係の人であったためたくさんの本に囲まれて暮らしてましたが、音楽はビートルズ、セルジオメンデス&ブラジル66、サウンドミュージックのサントラ、荒井由実などを聴いていたみたいです。父親はずっと仕事部屋に篭っているような人で、オペラやクラシックが流れてきて、子供の頃は何か「触れてはいけない音楽」という印象でした。後にCDラックを見てみるとグラモフォンのドイツ作曲家のCDがたくさんありました。ドイツ政治の仕事をしていた人なので、音楽ももしかしたら仕事の一つとして聴いていたのかもしれません。


林;おお、羨ましい環境ですね。楽器とか音楽体験はありますか?


高橋;音楽は小学校低学年の時にピアノを習っていたのですが、メカニカル・トレーニングがどうしても嫌いで、ある日鍵盤の上に足を投げ出して「僕はもう十分弾いた」と言ってやめてしまったみたいです。今、考えると本当に失礼で勿体ないことをしたなと思います。


林;十分弾いた!(笑) 最初に買ったCDは?


高橋;初めて買ったCDは小学二年生の時、藤井フミヤの「True Love」です。小学三年生になるとクラス替えがあるということで、最後のクラス会で担任がギターで弾き語りをしてくれて、そのままCDを買いに行ったのを覚えてます。


林;85年生まれだとそんな感じなんですね。その後は?


高橋;小学校高学年になるとバスケブームで自分も小学校のミニバスケットボールからやりました。その頃、NBAプレーヤーが番組ホストをしていて、ブラックミュージックのPVと好プレーを混ぜたビデオシリーズがよく出ていて、夢中で4つ上の兄と見ていました。多分、音楽的原点はそこだと思います。


林;なるほど。NBAからブラック・ミュージックという道があるんですね。


高橋;中学生になると兄と誕生日とお年玉など全て合わせて、ターンテーブルとミキサーを買ってもらいました。そこからヒップホップ一辺倒です。日本語ラップから、西海岸モノ、東海岸。2パックとかディアンジェロ、コモンなどを聞いて、オーバーサイズの服を着たりとか兄と友人で代々木公園のB-Boy Parkとかに遊びに行ったりしてました。年上の人と遊ぶことが多かったかもしれないですね。


林;高橋さんの世代の音楽好きって一度ヒップホップを通過していますね。興味深いです。


高橋;高校は美術をメインにした少し特殊な文化学院に行きました。そこは先輩にDJやバンドマンが一杯いたり、音楽好きだらけだったので、凄くカルチャーショックを受けましたね。中学の時に音楽談義をできる友人がいなかったので。
クラブイベントを企画したり、その頃にはもう将来カフェみたいなスペースをやりたいと漠然と思ってました。当時がカフェブームというのもあったでしょうけど、お店にDJブースがあったり、絵の展示をやっていたり、「明日、何をするか分からない場所」という意味で物凄くカフェに憧れました。


林;カフェブームっていろんな種をまいていますね。


高橋;音楽的挫折ではないのですが、高校の中盤くらいにあんなに大好きだったヒップホップが急に聴けなくなった瞬間が来てしまいました。慌ててデ・ラ・ソウルやア・トライブ・コールド・クエストを引っ張り出して聴いてもまったく感動しなくなってしまい、凄く困ってしまい...
ただ、当時、近所に住んでいて、今、渋谷のBar Fellowのマスターをやっている藤井潤くんという人が選曲したミックステープにGONTITIやゲッツ・ジルベルトが入っていて、ガットギターの音色に救われた記憶があります。
学校が御茶ノ水にあったのもあり、すぐに楽器屋に中古の安いガットギターを買いに行き、弾き始め、ヒップホップのネタモノのソウルやジャズ、ブラジル音楽など聴きあさるようになりました。


林;お、来ましたねえ。


高橋;高校卒業後はカフェの専門学校など入ったりしたんですけど、馴染めずに半年足らずでやめてしまい、ミュージシャンへの憧れが増すばかりで、菊地成孔さんの私塾ペンギン音楽大学に理論を習いに行ったり、伊藤ゴローさんにギターを教わったりしてました。もちろん、開業の夢も捨てきれず、カフェで働きつつ音楽の道も進んでました。
その頃、池袋西武のコミュニティカレッジでヴィヴィモン・ディモンシュの堀内さんとケペル木村さんがブラジル音楽講座をやっていて、そのスピンオフ企画でブラジルツアーがあり、応募をして初めてブラジルに行きました。リオ、サンパウロ、ブラジリア。またブラジルにはいつか行きたいと常に思ってます。


林;あの二人のブラジルツアー行かれたんですね。


高橋;その後、カフェで働くのと並行して、企業のプロモーション用の音源制作などの仕事も始めましたが、基本ノンクレジットの仕事で、自分より「安くて、早くて、巧い」人が出てきた瞬間にこの仕事は危ないと常に危機感を持ってました。

そんな時期に、今のお店の物件に偶然出会いました。建物に地下があり、そこをスタジオ的な使い方できれば良いなと思ったのですが、お店を始めたら音楽を作る時間などはまったくないですね。なので、「カフェを開業したくて物件を探した」というわけではなく、物件が先に見つかって何やるかと言えば自分ならカフェだったという話です。
建物自体は築45年近く、古い小さなビルをリノベーションして初めました。前が新聞配達所の居抜き物件だったため、業者さんに頼んで、お風呂や間仕切り壁やトイレなど全て解体して、一度スケルトンに戻しました。その後は、友人を呼んで壁を塗ったりしてなるべく自分の手を汚す形にしたのですが、これまた悩む時が来てしまって...。

自分が塗った壁は愛着はあるけど、果たしてお客さんから見たら、この壁はただの誤魔化しなのか、それとも綺麗な壁なのかと考えるようになってしまったら、お店に関わる全ての判断基準がブレてきてしまって。


林;なるほど。


高橋;それで、前からお店の家具として導入を考えていた山形県の家具デザイナー「アトリエセツナ」の渡辺吉太さんが「店舗デザインもしますよ」と言ってましたので、結局、アトリエセツナさんに店舗デザインを投げる形で落ち着きました。ただ、こちらの人生を賭けた勝負なので、会った回数を少ない人に全てを委ねるのは怖いなと思い、出会って二回目で「渡辺さんの仕事場が見たい」と山形まで行ってお店、共通の価値観、好きな音楽などについて朝まで呑みながら話しました。こういう年上の方と仲良くなるのは、昔からの遊び方の影響なんでしょうね。その後、仕事仲間でもあり友人となって、お店は納得いく形で2014年5月にオープンすることが出来ました。


林;誰かの懐に入っていけるってひとつの才能ですよね。


高橋;ちなみに、アトリエセツナさんを知るきっかけになったのは伊藤ゴローさんなんです。元々、アトリエセツナさんが山形ブラジル普及委員会のメンバーでして、ゴローさんと徳澤青弦さんが山形にツアーで行く際に、アトリエセツナさんの事務所で石郷岡会長が「伊藤ゴローをまさぐる会」という勉強会をしていて、そこで名前を知りました。
なので、アトリエセツナさんの設計した空間の中で、ゴローさんの演奏を聴くのがKAKULULUとしての一つの目標になってます。


林;さて、みんなに聞いているのですが、これから音楽はどういう風になるとお考えでしょうか。


高橋;正直にいうと、チャート音楽の人はこれからはもっと困るでしょうけど、あまりオンチャートの音楽を聴いているという意識はないので、そんなに自分の周りは変わらないかなと思います。ただ、Apple Musicなどの配信であれだけの古今東西の音楽が聴けるとなると、音楽はより質量を持たない物になるのかな。
ただ、お店を通して出会った音楽などはあるので、今後店舗の方でCDの販売もしていきたいなと考えています。やはり、思い出の音楽はどこで買ったというエピソードも重要だと思うので、そういうお店になって音楽の手助けみたいなのはしていきたいですね。


林;今後、お店の方はどうされるご予定ですか?


高橋;ギャラリーとしての運営を考えていた地下スペースが今や食料庫になってしまっているので、今後早い段階で稼働していきたいと思っています。あとはお店は本業のカフェを主軸にしつつ、常に余白を持っていきたいですね。「面白いことがあれば、それをやれる場所」というのがやはり偉大なる先輩たちが残したカフェ文化だと思うので。
あと池袋周辺で素敵なお店が増えてきているので、その方々と協力して「池袋」のイメージを変えたいですね。これが一番難しそうだけど。


林;池袋、面白くなると良いですね。それではみんなが待っている選曲の方ですが、まずテーマは?


高橋;「KAKULULUでよく流れている10曲」です。


林;直球ですね。楽しみです。


【1、開店前の音楽】
Carlos Nino & Miguel Atwood Ferguson - Fall in Love

高橋;本当はあってはいけないのかもしれないのですが、やはりお店に立つと「お店で流せる音楽フィルター」があって、その制限をいかに掻い潜った音楽を流せるかが店主として毎日楽しんでいます。Jディラをオーケストレーションしたこの作品は眠い体を少しずつお店モードにするには丁度良い一枚。このヒップホップを丁寧にオーケストレーションした作品というのがもっと聴けたら面白いかなといつも思ってます。日本であれば、ヌジャベスさんとか。


林;眠い体を少しづつお店モードに、っていうのがすごくわかります。


【2、お昼時の一時間勝負の音楽】
Joao Gilberto - Izaura

高橋;お店がある東池袋は古い住宅地と高層マンション、オフィス街が大体同じ比率であるのですが、お昼時の12時からの1時までのランチタイムがお店として一番活気がある時間です。凄く混む時もあれば、雨が降ると凄く暇になったり。この一時間はお客さんが入って、頭がフル回転になっている時でもジョアンの声が聞けたら自分が落ち着けるし、暇ならジョアンが癒してくれると勝手に思っております。なので、ジョアンを聞くことが多いですね。


林;ランチタイムにジョアン!


【3、昼下がりの音楽】
Julianna Barwick - Call

高橋;お昼時を外すとここからはゆったりしたお店になります。自然光の中、ソファ席で読者する方なども多く、お店として一番好きな時間かもしれないです。邪魔にならないように、でも音楽を演出したい。音量にも一番気を使っている時間帯です。ソロ・ピアノやフォーク、アンビエント、室内楽など「クワイエット・コーナー」な時間だと思っています。


林;カフェのこの時間はそういう演出が必要なんですね。


【4、夕暮れ時の音楽】
伊藤ゴロー / Glashaus

高橋;お店を初めてまだ一年半ぐらいなので、お店のテーマ曲みたいなのはまだそんなに多くないのですが、やはり伊藤ゴローさんの"Glashaus"はお店に調和した音楽だなと勝手に思っております。


林;これ、本当に名盤ですよね。


【5、少しずつ夜に備えて】
Gustave Coquiot / Routine

高橋;お店を初めてから出会うミュージシャンも多く、ギュスターヴ・コキオの河合卓人さんもその一人です。このUSインディーみたいな質感を作ったのが日本人というのがどうしても信じられなくて。本人に「お店をやってます」とメールをしたら、すぐに来てくれて...。
そんな河合さんは今JAZZシーンに飛び込んでいて、日本では数少ない男性のJAZZヴォーカルでバックグラウンドにはこのサウンド。イチオシのミュージシャンです。


林;お店をやっているとミュージシャン本人が来店してくれるのが一番嬉しいですよね。


【6、夜の音楽】
Brian Blade / At the Centerline

高橋;選曲の悩みがあるとしたら、お店でソウルミュージックがなぜかしっくり来ないのです。スタッフやお客さんはそんなことはないと言ってくれるのですが。ブライアン・ブレイドがシンガーソングライターとしてデビューしたこのアルバムは少しスモーキーなフォークで、ソウル欲も満たしてくれる愛聴盤です。


林;お店にしっくりこない音楽があるの、本当にわかります。あれ、どうしてなんでしょうね。自分のお店のはずなのに、勝手にお店に人格が出来ているとしか思えないです。


【7、夜の音楽 2】
Robert Glasper / J Dillalude

高橋;「今ジャズ」や「ジャズ・ザ・ニューチャプター」と呼び方は様々な現行ジャズの流れはヒップホップを聴いて育った今の僕ら世代としては大ウェルカムで全く違和感なく聴けます。一度彼のローズとピアノ捌きを見るために真後ろの席を取って見たことがあるんですが、演奏中に背中をポリポリ掻いていたり、携帯で1stステージの残り時間を確認していたり。全然ショーマンではないことが、あのクロスオーバーさを生み出すんでしょうね。


林;背中をポリポリ...(笑)


【8、夜の音楽 3】
類家心平/中嶋錠二 - Nearness Of You

高橋;ジャズトランペッターの類家心平さんは10年ぐらい前からの知り合いで、お店初のライブも中嶋さんとVJの中山晃子さんの組み合わせで開催しました。日常となっているお店が、ライブの日に非日常な空間になったことにとても感動して、お店を持った感動と相まって少し泣いてしまいました。だから、この二人のアルバムは凄く大切な一枚になってます。


林;うわ、高橋さん、自分のお店のライブで泣く人なんですね。それは良い話を聞けました。


【9、赤ちゃんが来た時】
The Innocence Mission / Moon River

高橋;土曜日に多いのが赤ちゃん連れのお客様です。ここはもういかに寝かしつけれる音楽をかけれるか、腕の見せ所だと思います。大きなソファ席で綺麗に収まって寝ている赤ちゃんを横目に小さめな音量で喋る若い夫婦。ジャケットからかどうしてもこの音楽やモリー・ドレイクなど流したくなってしまいますね。


林;赤ちゃん、OKなんですね。それは貴重なカフェです。


【10、閉店後の音楽】
Frank Sinatra / Just Friends

高橋;正直売り上げでクローズ作業で聴く音楽は変わってしまいます。惨敗の日は音楽をゆっくり聴いて優雅に締めるって発想はなく、いかに早く帰って今日を忘れられるか、なので。ということで、最後はもし深夜帯のバータイム営業を始めたら...カウンター席のみの営業で、シナトラのブルーバラード集をかけて、林さんみたいにネクタイします!


林;今、シナトラのこういうのがかかるお店、ないですよね。是非!


高橋さん、お忙しいところどうもありがとうございました。
池袋、盛り上がると良いですね。今後の飲食業、音楽業界を支えて下さいね。


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さていつの間にかもう年末ですね。今年はどんな年でしたか? 良い音楽には出会えたでしょうか?
それではまた来年もこちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林伸次


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【バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由】
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bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
12:00~15:00 lunch time
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
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Monthly Disc Review2015.12.01:Monthly Disc Review

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Title : 『Rothko Chapel - Morton Feldman/Erik Satie/John Cage』
Artist : KIM KASHKASHIAN, SARAH ROTHENBERG, STEVEN SCHICK, HOUSTON CHAMBER CHOIR, ROBERT SIMPSON



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いわゆる現代音楽の入口を探して、
ペルトやライヒに手を伸ばして耳を傾ける。
ジャズやポップスに慣れ親しんだ身としては、
その未体験の音楽に胸の奥の方がザワザワとする。
少しだけ奥に足を踏み入れては立ち止まり、また探り探り歩みを進める。
まだ100%の信頼を置いていないけれども、なんだか気になる。
今のところ、現代音楽との付き合い方はそんな感じだ。
自分の中にそれらの居場所が定まっていないが故に得られる快感、
というようなものを求めての行為だろうか。


この「ROTHKO CHAPEL」も、そんな快感を求めて手に取ってみた。
抽象画家マークロスコの壁画に囲まれ、すべての宗教に開かれ、
祈り、瞑想、対話の空間として設計建築されたという
ロスコ・チャペルの完成式の為に書かれた「ROTHKO CHAPEL」。
約26分に及ぶこの曲は、確実に我々を瞑想状態に誘う。
実際にロスコの作品に囲まれたチャペルの空間を体感し、
そして、祈り、瞑想するには
ヒューストンまで行かなくてはならないのだが、
フェルドマンによって書かれたこの音楽によって、
間違いなく疑似体験が可能だ。
何を祈り、瞑想し、対話をするかは、
個々にゆだねられているものだろうけれども、
残念ながら、祈りと、瞑想と、対話が必要な時代であることを
感じずにはいられない日々だ。


ロスコや、フェルドマン、サティ、ケージという名に惹かれ
手に取ったアルバムだが、
今、「ROTHKO CHAPEL」を聞くことは、
何か大きな意味があるような気がする。


世界は、祈りと、瞑想と、対話を必要としている。


文:平井康二


Rothko Chapel(ECM)





Recommend Disc

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Title : 『Rothko Chapel - Morton Feldman/Erik Satie/John Cage』
Artist : KIM KASHKASHIAN, SARAH ROTHENBERG, STEVEN SCHICK, HOUSTON CHAMBER CHOIR, ROBERT SIMPSON
LABEL : ECM(ECM 2378)
RELEASE : 2015.10.2



【MEMBER】
Kim Kashkashian (Viola)
Sarah Rothenberg (Piano, Celeste)
Steven Schick (Percussion)
Sonja Bruzauskas (Mezzo-Sporano)
Lauren Snouffer (Soprano)
Houston Chamber (Choir)
Robert Simpson (Conductor)


【SONG LIST】
01. ROTHKO CHAPEL
02. GNOSSIENNE NO. 4
03. FOUR²
04. OGIVE NO. 1
05. EAR FOR EAR (ANTIPHONIES)
06. OGIVE NO. 2
07. GNOSSIENNE NO. 1
08. FIVE
09. GNOSSIENNE NO. 3
10. IN A LANDSCAPE


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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Reviewer information

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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cafeイカニカ

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●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
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