

Title : 『After Midnight』
Artist : Nat "King" Cole
みなさんこんにちは、ジャズピアニスト / トランペット奏者の曽根麻央です。
世界が分断されつつあることを感じるご時世ですが、無事にアメリカのアーティストVisaを獲得して、現在アメリカ横断ツアー中です。
本日まではミズーリ州にあるスプリングフィールドという街でフェスティヴァルに出演したり、地元の高校へ演奏に行ったりしていました。このスプリングフィールドという街は日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、群馬県伊勢崎市と姉妹都市で、至る所で伊勢崎の名前を耳にするという、ちょっと今まで体験したことがないくらい姉妹都市同士の縁を大事にしている街です。
歴史的にも、かの有名なRoute66(国道66号)の発祥の地ということで、私も訪れてみました。
ということで、今日はその国道66号をアイコニックなものにした名曲
「(Get Your Kicks on) Route 66」が収録されている、ナット・"キング"・コールの名盤
『After Midnight』を一緒に聴いていきましょう。
このアルバムは1956年に録音され、翌1957年にリリースされました。
"キング"・コール・トリオのレギュラーメンバーでもあるギターのジョン・コリンズ、ベーシストのチャーリー・ハリスに加え、ドラムのリー・ヤングを中心としたカルテット編成で録音されています。この4人の演奏に加えて、曲ごとにサックス、トランペット、トロンボーン、ヴァイオリン、パーカッションなどの名手たちがゲスト参加しているのが大きな特徴です。
"キング"・コールの歌声を代表的なヒットソングを中心に堪能できるのはもちろんのこと、小編成だからこそジャズとしてのソロの展開も実に充実しています。"キング"・コール・トリオを中心に各楽器の名手が歌心あふれるソロを軽やかに回していく様は、まさにこの作品の聴きどころ。特にトランペットのハリー・"スウィーツ"・エディソンが入った「Route 66」や「Sweet Lorraine」などは、今なお世界中で愛され続けているジャズ史上最も有名な名演の一つと言えるでしょう。
本作はゲストによってアルバムのカラーが鮮やかに変わる作りになっていますので、ゲストごとにご紹介します。
ウィリー・スミス ー アルトサックス
参加曲:Just You, Just Me / You're Looking at Me / Don't Let It Go to Your Head
1910年生まれのサックス奏者で、ハリー・ジェームスやデューク・エリントンなどの楽団をはじめ、ビバップ以前のスウィング期から目覚ましい活躍をしていた名手です。しかし「Just You, Just Me」のようなアップテンポや、「Don't Let It Go to Your Head」のようなミディアムテンポの曲の中でも早いパッセージを聴くと、ビバップに近い洗練されたフレーズが随所に顔を覗かせます。ビバップ以前の世代のミュージシャンも後輩たちの影響を受けてスタイルを進化させていたのか、あるいはビバップの創始者であるチャーリー・パーカーが、こうした先輩たちの研ぎ澄まされたフレーズを抽出し、徹底的に研究することで新たな音楽を生み出していったのか...そんな歴史の連なりに想像を巡らせながら聴いてしまいました。
ハリー・"スウィーツ"・エディソン ー トランペット
参加曲:Sweet Lorraine / It's Only A Paper Moon / Route 66
1915年生まれ、カウント・ベーシー・オーケストラの黄金期を支えたことでも名高いトランペッターです。以前この連載でも取り上げたアルバム『Ben and Sweets』の双頭リーダーの一人でもあります。フランク・シナトラとの名演でも知られる彼のミュート・プレイですが、マイルス・デイヴィスとはまた異なる、エディソンならではのオープンで粋なハーマン・ミュート・サウンドは、今も多くのジャズファンを虜にしています。本作でも最重要と言える3曲に参加しており、その演奏はいずれもジャズ史を代表する決定的な名演として親しまれています。
ホアン・ティゾール ー トロンボーン
ジャック・コスタンゾ ー パーカッション
参加曲:Caravan / The Lonely One / Blame It On My Youth(*ホアン・ティゾールのみ)
ティゾールは1900年プエルトリコ生まれのトロンボーン奏者で、デューク・エリントン楽団で活躍し、ここに収録されている「Caravan」をエリントンと共作したことでも有名です。
一方のジャック・コスタンゾは1919年シカゴ生まれのパーカッショニスト。「ミスター・ボンゴ」の異名を取り、スタン・ケントン楽団との共演でも知られますが、"キング"・コールのグループにも長く在籍し、ドラムレスのトリオにコンガやボンゴ1本で加わってグルーヴを生み出している当時の映像が数多く残されています。
二人が揃って参加した「Caravan」と「The Lonely One」はアルバムの中でもひときわラテン色の強いトラックで、「Caravan」は誰もが知るエキゾチックなアフロ・キューバン、「The Lonely One」は哀愁漂う美しいボレロのリズムで演奏されています。
スタッフ・スミス ー ヴァイオリン
参加曲:Sometimes I'm Happy / I Know That You Know / When I Grow Too Old To Dream
1909年生まれのジャズ・ヴァイオリン奏者。ステファン・グラッペリと並び、ジャズにおけるヴァイオリン奏法のスタイルを確立した偉大な先駆者の一人です。エラ・フィッツジェラルドやディジー・ガレスピーから、果てはアヴァンギャルドの巨頭サン・ラーに至るまで、極めて幅広い音楽性や世代のミュージシャンと共演を重ねてきた事実からも、彼の圧倒的なテクニックと音楽性に誰もが絶対の信頼を置いていたことがよく分かります。
文:曽根麻央 Mao Soné
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![]() 曽根麻央 Mao Soné 曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。 |


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