

Title : 『Dizzy Gillespie & the Double Six of Paris』
Artist : Dizzy Gillespie
今日は1963年にパリで録音されたアルバム『Dizzy Gillespie & the Double Six of Paris』を一緒に聴いていきましょう。
私自身このアルバムの存在を知らなかったのですが、偶然インスタグラムで見かけて気になり、一気に聴き入ってしまいました。ビ・バップやラテンジャズなど、ディジーにゆかりのあるレパートリーに焦点を当てた完成度の高い名盤ですが、フランスのジャズ・コーラス・グループであるthe Double Six of Paris(Les Double Six)が参加することで、どこか実験的で斬新な、映画音楽のサントラのような雰囲気も漂うユニークな作品です。
実はそれもそのはず、本作のアレンジを手掛けたのは、当時ディジーのバンドで活躍し、のちに映画『スパイ大作戦』や『燃えよドラゴン』などの名サントラを生み出す巨匠ラロ・シフリンなのです。私が直感的にサントラのような雰囲気を感じ取ったのは、まさに歴史的必然だったと言えます。
ディジー・ガレスピーは、これまでもこのMonthly Disc Reviewで何度も取り上げてきたジャズの偉人です。卓越したテクニックを持つトランペッターであり、数々のジャズ・スタンダードを残した作曲家であり、ビ・バップという現代ジャズの基礎を築き上げたパイオニアでもあります。
さらには、いち早くアフロ・キューバンなどのラテン音楽を取り入れてラテンジャズの道を切り拓き、多くのミュージシャンにとって偉大なメンターでもあった人格者でした。
時には自らボーカルを執ることもあり、その人間味あふれる歌声はまさにジャズそのものと言って良いでしょう。
共演しているLes Double Sixは、1959年から1966年にかけてジャニーヌ・"ミミ"・ペランを中心に活動したフランスのジャズ・コーラス・グループです。
彼らが得意としたのは「ヴォーカリース(Vocalese)」というスタイルで、既存のインスト曲の複雑なメロディーや即興ソロに歌詞を当てはめ、見事なアンサンブルで歌い上げます。ちなみに「Double Six」という名は、6人のシンガーが多重録音を駆使して「12人分のビッグバンド・サウンド」を声で再現したことに由来しています。ビ・バップの複雑なパッセージを高精度なピッチとタイトなタイム感で歌いこなし、ガレスピーのトランペットと繰り広げるユニゾンは、まるで最初から歌のために書かれたメロディーのように鮮やかです。
本作が録音された1963年は、個人的にガレスピーのキャリアにおける絶頂期の一つだと感じています。ビ・バップとラテンジャズという2大スタイルを確立し、トランペットの技量、音楽的表現ともに最高潮を迎えていた時期です。
一般的なCDやストリーミング配信のトラック7「Ooh-Shoo-Be-Doo-Bee」とトラック9「Con Alma」に参加しているのは、サックスのジェームス・ムーディー、当時弱冠20歳前後のピアニストのケニー・バロン、ベーシストのクリス・ホワイト、ドラマーのルディー・コリンズという当時のディジーのレギュラー・クインテットで、バンドとしての結束力と完成度が極めて高まっていたことが演奏からも伝わってきます。
そしてそれ以外のトラックでは、同じくビ・バップの語法をピアノで確立したレジェンドであるバド・パウエル、シンバル・レガートを中心に据えてドラミングに革命を起こしたケニー・クラーク、さらにフランス最高峰のベーシストであるピエール・ミシュロが参加している点も見逃せません。
今回知って驚いたのですが、なんと当時この3人はパリに在住しており、「The Three Bosses」と呼ばれ、現地のクラブ「ブルーノート」などで伝説的なトリオとして活躍していたそうです。そんなレジェンドたちがディジーとパリの地で合流しているのです。
ガレスピーの当時のレギュラー・バンドとパリ在住のビバップ創始者たち、Les Double Sixの超絶技巧コーラス、そしてラロ・シフリンの斬新なアレンジが一体となり、ディジーの名曲たちを新たな響きで再構築した名盤『Dizzy Gillespie & the Double Six of Paris』。
今まで体験したことのないビ・バップの新しい表情を、ぜひ皆さんもじっくりと味わってみてください。
文:曽根麻央 Mao Soné
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
・2020.04『Motherland / Danilo Perez』・2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』・2020.06『Passages / Tom Harrell 』・2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』・2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』・2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』・2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』・2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』・2020.12『Three Suites / Duke Ellington』・2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』・2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』・2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』・2021.04『Something More / Buster Williams』・2021.05『Booker Little / Booker Little』・2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』・2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』・2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』・2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』・2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』・2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』・2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』・2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』・2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』・2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』・2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』・2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』・2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』・2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』・2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』・2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』・2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』 ・2022.12『The Revival / Cory Henry』・2023.1『Complete Communion / Don Cherry』・2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』・2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』・2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』・2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』・2023.6『Covers / James Blake』・2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』・2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』・2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』・2023.10『MAINS / J3PO』・2023.11『Knower Forever / Knower』・2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』・2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』・2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』・2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』・2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』・2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』・2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』・2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』・2025.01『Hero Worship / Hal Crook』・2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』・2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』・2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』・2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』・2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』・2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』・2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』・2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』・2025.10『Crystal Silence / Gary Burton & Chick Corea』・2025.11『North Sea Jazz Legendary Concerts / Wayne Shorter』・2025.12『Merry Christmas / Bing Crosby』・2026.01『銀界/山本邦山』・2026.02『Flugel / Andris Mattson』・2026.03『Live at the Piano / Cory Henry』・2026.04『The Melody At Night, With You / Keith Jarrett』・2026.05『Ifrikya / Karim Ziadt』・2026.06『Sonny Side Up / Dizzy Gillespie, Sonny Rollins, Sonny Stitt』・2026.07『Round Midnight / Herbie Hancock』・2026.08『The Art of Excellence / Tony Bennett』・2026.09『After Midnight / Nat "King" Cole』
| Reviewer information |
![]() 曽根麻央 Mao Soné 曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。 |


RSS


