vol.71 - お客様:三原秀章さん(yama-bra会員no.167)
【テーマ:ミルトンから始まった音楽の旅路 10選】
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
今回はyama-bra会員no.167 三原秀章さんをゲストにお迎えしました。
林; こんばんは。早速ですが、お飲物はどうしましょうか?
三原; 静かにサンバを聴きたい夜にオススメの飲み物を下さい。
林; 良いですねえ。でしたらやっぱりカイピリーニャですね。
三原; お願いします。
林; さて、簡単なお生まれのことを。ええと三原くんは僕と同い年だから
三原; 1969年ですね。東京で生まれました。父の仕事の関係で関東を転々とした後、小3から宮城県矢本町、中1から仙台市です。
林; あ、転校生だったんですね。では、小さい頃の音楽の話をお願いします。
三原; 音楽が身近にある環境ではなかったです。数少ない音楽のエピソードをあげると、父が愛車フォルクスワーゲンでトリオ ロスパンチョスを好んで聴いていたこと。母が三味線を習っていて、一緒に稽古に行くと、時々ソノシートがおまけについた雑誌を買ってもらえるのが嬉しかったこと。それが音が鳴るものCD.LPが好きな私の原点かも知れません。あとは普通にテレビで歌謡曲を聞くぐらいでした。
林; お母さんが三味線を習っているって渋いですねえ。最初に買ったレコードは?
三原; はじめて買ったEPはゴダイゴの銀河鉄道999。ワクワクする曲調が好きだったのかな? ちなみに音楽の授業は嫌いでした。愛読書は少年ジャンプ。
林; え、999? 同じです。でも僕はサントラLPでした。さすが同い年ですね。では中学はどうでしたか?
三原; 中学時代、MTVの放送が始まりまして、プロモーションビデオを見ることで、音楽が好きになりました。はじめて買ったLPは高橋幸宏の「僕、大丈夫!」アルバムタイトルとジャケットが気に入ったから選んだのでしょうか?YMOじゃないところがひねくれ者の自分らしいかなと思います。中2くらいからの愛読書は宝島。サブカルの洗礼を受けました。中3でアズテックカメラ、スミスなどネオアコが好きになって、デヴィッド・シルヴィアンがアイドル。ファッションに目覚めたのもこの頃でした。親にせがんで当時人気があったパーソンズの原色ド派手なピンク色のジャケットを買ってもらい着てました。
林; ああ、その辺りがやっぱり仙台って都会なんですね。仙台や札幌や博多で育った人ってすごくお洒落ですよね。高校はどうでしたか?
三原; 高校時代は中学からの友人、坂井薫くんとつるんで洋服屋めぐり。そこでhip hopやレゲエ、J.B.などクラブミュージックに目覚めました。同級生たちはバンドブームだったのでBOOWYなどのコピーバンドをやってましたが、自分の趣味じゃなかったですし、楽器演奏は興味なかったです。高3くらいからクラブ、ディスコに通う毎日。幸か不幸か顔が広い仲間のおかげで全て顔パスでタダで遊べたのでした。そんな訳で道を踏み外してしまいました。外ではhip hopやJ.B.で踊り、家ではデヴィッド・シルヴィアンを聴くというのが自分らしい統一感の無さでしょうか(笑)愛読書はclub kingのフリーペーパーのdictionary、ソノシート付きの音楽雑誌techii。
林; なるほど。僕はバンド側でしたが、やっぱり違いますね。その後は?
三原; 高校卒業後は浪人生活とは名ばかりの遊んで暮らす日々でした。親不孝者ですね。DJブームだったこともあり、自分にとって音楽は演奏するものではなくて、調べて、探して、聴くものでしたので、レコード屋に通う日々。今でもコンサートに一緒に行く友人、米地くんにニューオリンズやニューウェーブなど教えてもらって聴いてました。細野晴臣、ヤン富田、小西康晴。彼らがある意味で私の音楽の先生ですね。愛読書はミュージックマガジン。
林; ああ、僕もその時期からミュージックマガジンを読み始めました。レコファンに入ったきっかけは?
三原; 友人が突然亡くなったショックから立ち直るため、そして遠距離恋愛の彼女がいたので東京へ。なんでレコファンで働くことになったのか?よくおぼえていませんが、たまたま求人情報がタイミングよくあり、契約社員として働きはじめることに。そこで林くんと出会いました。休憩時間にレコ屋に一緒に行ったりしてましたよね。当時の林くんは、下ジャージで上フェイクファーのコートのロンドンぽい格好をしていた印象が強いので、ネクタイ姿の林くんは違和感があります(笑)
林; あ、そうか(笑)。
三原; 林くんがレコファンみんなのベスト盤を集めた文集を作ってくれたんですよね。後に多方面で活躍する人はバイタリティがあって、違うなと思います。その後ブラジルに行くからとレコードを何十枚ももらったんですよ。最近、林くんが録音してくれた20年前くらいのカセットテープを聴き直してみたら、ほとんどバール ボッサのコンピレーションCDと基本的には変わらない内容なんで驚きつつ笑っちゃいました、、林くんには、バール ボッサを渋谷で始めたことと、後に結婚される中島さんとつきあっていることを知った時と、二回驚かされました。
林; え、僕、そんな文集作ったんでしたっけ...
三原; えっ文集のこと忘れたの?(笑)
野球チームに入ったり、同僚の広木くんや松浦さんとしょっちゅう飲みに行ったり、好きな音楽が沢山聴けたレコファンは楽しい職場で辞める理由はなかったけど、東京の人混みが苦手だったのと、ずっと東京で暮らすつもりはなかったので、仙台に戻ることにしました。その時には仙台で中古レコード屋を始めたいと思ってました。ハワイにレコードを買い付けにいったりもしましたが、上手くいかず、その夢を諦め、今に至ります。現在、音楽は趣味です。10代から変わらないのは音楽が好きだってこと。この20年近くはブラジル、アルゼンチン音楽を主に聴く日々。
愛読書はケペル木村さん編集のフリーペーパーMPB。最近の愛読書はlatinaです。
林; さて、これからの音楽はどうなると思いますか?
三原; コンテンツとして、アナログとダウンロードのセットが音の良さ、コレクターズアイテムとしても最強だと思いますが、値段が少し高いのと今持っている大量のCDをLPで買い直すことは難しいから個人的にはCDを買い続けると思います。CDになれてしまいLPを裏返したりクリーニングするのが面倒に感じてしまいますし。
あとはアルバムジャケットのこだわりも大事だと思います。カルロス アギーレの一つとして同じものがないcremaや、植物の種が入っているrojoのアートワークは本当に驚きました。
それからメジャーからインディーズにあえて移り、新作CDをレコ屋で売らない。そしてクラウドファンディングでDVDを作ったりするクラムボンの活動は興味深いです。
林; なるほど。今でも買い続けている人ならではの意見、さすがです。これからの予定は?
三原; これからの予定は特にありませんが、yama-braのメンバーとして、1人でも多くの方にブラジルやアルゼンチンの音楽の素晴らしさを知ってもらえたらと思っています。あとは無人島に行く時に備えて、無人島ディスクの選定作業にいそしみたいです。あらためて私の音楽リスニング人生を振り返る機会をいただけて感謝します。ありがとうございました!
林; そんな三原くん、みずくさい... それではみんなが待っている選曲に移りますが、テーマは何でしょうか?
三原; 「ミルトンから始まった音楽の旅路 10選」です。
林; おお、それは期待できますねえ。
01. milton nascimento / milagre dos peixes
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三原; 私が本格的にブラジル音楽の底なし沼にハマるきっかけはmiltonでした。ボサノヴァは多少聴いてましたが、今まで聴いてきたものにはないプログレ?宗教音楽的な音世界に衝撃を受けました。novelliの普通じゃないベースラインが肝なのかな?当時はネット環境もなくフリーペーパーMPBを読みつつ、レーベル買いをしたり、手探り状態でいろいろと聴いていました。
林; ブラジルはミルトンからだったんですね。確かにミルトンは他にはない世界観があって、はまると出てこれなくなりますね。
02. renato braz.monica salmaso
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三原; miltonのCDを買うために通うようになった新星堂カルチェ5仙台店のワールド担当の笠原さんにmiltonが好きならと勧められたのがrenatoとmonicaでした。その凡そ10年後の2008年にrenatoのコンサートを笠原さんと一緒に観れたのは嬉しかった。素晴らしい歌声を持つ2人ですが、eduardo gudinのグループがキャリアのスタートだったはずです。いつか共演アルバムを作って欲しいです。
林; うわ、三原くんとはレコファン以来、全然音楽の話をしていないのに、同じところを好きになってるんですね。グヂン周辺、モニカも良いですよね。
03. roda de samba sururu na roda
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三原; 新星堂にはサンバのCDも沢山あり、いろいろと聴くうちに好きになったsururu na roda。林くんが働いていたシェラスコのお店バッカーナにレコファンの皆さんと遊びに行ったときに演奏してたのがnilze.silvio carvalho兄妹だったと後に知った時は驚きました。この映像にはサンバの神が宿っています。名曲espelho美しいメロディのコーラスがたまりません。ちなみにバッカーナが作ったnilze達も参加したCDを探しています。余分に持っている方がいたら、是非お譲り下さい!
林; あ、そうか。レコファンをやめた後に僕はバッカーナで働いたから、その時、レコファンのみんなが来てくれたんですよね。僕はこの左から3番目で歌っているニルゼと仲良くなって、ブラジルではニルゼのお家で居候しました。そのCDを持っている人は是非、お声をかけてください!
04. puente celeste / milonga del bicho feo
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三原; yama-braのメンバーになったある日の打ち上げの時に、会長がpuente celesteの新譜の話をしていて、その時が音響派以来アルゼンチン音楽を再認識した最初です。その後carlos aguirreやaca seca trioなどを聴きアルゼンチン音楽の底なし沼にもハマってしまいました。今一番コンサートが観たい凄腕メンバーが揃ったグループです。
林; というか、僕は三原くんがヤマブラ・メンバーだって聞いて、びっくりましたが、みんなアルゼンチンに流れましたよね。
05. marcelo camelo / teo e a gaivota
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三原; marcelo cameloもまたyama-bra会長がブログで絶賛しているのを読み、好きになったミュージシャンです。ブラジル音楽の要素があまりないロックだけど、よじれて、もたった音にだるそうに美しいメロディを歌うmarceloの音楽は最高です。ブラジルならではの観客の熱狂の合唱が鳥肌ものです。
林; みんな歌ってますねえ。確かによじれて、もたった音にだるそうに美しいメロディです。
06. roberta sa.chico buarque / mambembe
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三原; この曲の歌詞の乗せ方リズム感が凄いです。サンバやショーロをベースとしたchicoの作品は美しい名曲の宝庫です。roberta saの歌の上手さとキュートさmarcello goncalvesのギターのグルーヴも素晴らしい。大好きな曲です。ほんとブラジルはギター王国ですね。
林; うーん、良いですねえ。ホベルタ・サー、ブラジル人女性のすごく可愛い感じが出てて良いですねえ。シコもいいし、ギター一本でこのグルーヴもすごいです。
07: esperanza spalding / us
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三原; 私のアイドルesperanza。彼女のベース、歌声が大好きです。この時のツアーで最初に演奏していたのがこの曲。メンバー紹介から始まるのも珍しいし、こんなにかっこいいメンバー紹介は、ちょっと聴いたことがないです。当時、小学生だった娘と行った忘れられないコンサート。esperanzaの良さがわかる小学生って我が子ながらすごいなと思い嬉しかったです。
林; 三原くん、エスペランサ、好きなんですよね。わかります。娘さんと行ったんですね。それは良いですねえ。
08: GUIRO / いそしぎ
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三原; 仙台のレコード屋さんvolume1(ver)に通うようになって知ったグループです。このお店は店長さんのチョイスが素晴らしいんです。最近はネットで買ってばかりでしたが、やっぱりレコ屋は楽しいです。。ちなみにこの曲は2007年発売の1stアルバムから。私は、ほとんど歌詞カードを見ない人間ですけど、断片的に聴こえる歌詞がすごくいいんです。昨年末久しぶりの新譜ABBAUが出ましたが、これまた傑作です。
林; へええ。すごく良いですね。レコード屋さんでの出会い、最近は少なくなってきましたが、やっぱりいいものですね。
09: itibere zwarg&grupo / festa no cariri
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三原; itibereはhermeto pascoalの音楽を次世代の若者たちに伝える活動をしています。一風変わってますが、ブラジル北東部のルーツに根ざした童心を忘れない自由な音楽です。ドライブしながら大音量で聴くとゴキゲンです。今年、観たhermetoのコンサートは音楽をする&聴く喜びに溢れていました。
林; ああ、三原くん、エルメート好きそうですね。うーん、カッコいいですね。
10: tatiana parra.vardan ovsepian / choro meu
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三原; ラストはこれです。今まで沢山の素晴らしいコンサートをyama-braで観ましたが、ベスト3に入ると思います。tatianaのハイトーンボイス、vardanのピアノの美しさ、会場の雰囲気、全てがよかったです。このpvでvardanが着ているシャツに似たものをyama-braメンバーで着て2人を出迎えたら、とても喜んでくれたんですよ。
林; そんなシャツの演出まで... ヤマブラ、楽しそうです。
三原; 私はライブに行くより、CD.LPを買って聴くのが好きだったのですが、改めて10選したものを見るとライブ作品が多いのが面白いですね。若い時は、ロックのギターソロやジャズのアドリブソロなんて必要ないって思ってましたが、年を重ねて趣味、趣向が変わったのかもしれないですね。
林; 確かに音楽の趣味って年齢で変わっていきますね。これからもまた変わるかもしれないと思うと楽しみです。
三原くん、お忙しいところどうもありがとうございました。
●三原秀章 Twitter
●yama-bra web
もうすっかり夏の気配がしていますね。みなさん良い音楽は聞いていますか?
それではまた来月こちらのお店でお待ちしております。
bar bossa 林伸次
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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!
■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646
【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn
【林 伸次 近著】
■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本
「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!
「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より
bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。
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